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Wednesday, May 05, 2010

信濃川欲得の饗宴

鉄ちゃん的にはあまり愉快な話題ではありませんが、重大なニュースですが、その割りにメディアへの露出は少ないですね。というか、最近のメディアの迷走ぶりにはうんざりです。

例えば普天間問題、結局県外移転は難しく、辺野古沖案の手直しと一部徳之島他への機能の分散になりそうということが明らかになりましたが、いろいろな見方があることを承知で申し上げますが、鳩山首相は現実的な選択をしたといえます。問題は辺野古沖埋立案が、公有水面埋立認可の権限を有する沖縄県が容認派の中井間知事を擁しながら、県議会の同意が得られずに膠着していたので、辺野古へ戻すのも容易ではないんです。

その意味で桟橋方式が検討されたのでしょう。埋立と違って工作物の設置ですから、厳密にはいろいろありますが、国の権限で押し切ることができるということです。当然政府は地元の説得に努めるでしょうけど、実はこの点が一番重要なんですが、最悪国の権限で押し切れるということを意味します。ある意味腹くくったわけです。

というのも、元々普天間の海兵隊は、既に米軍再編計画で主力部隊のグアム移転が決まっておりますが、有事の拠点としての沖縄を手放したくないのが米軍の本音です。日本が本気で求めれば全面撤退もありうるでしょう。しかし日本の防衛を担う米軍のディフェンスラインを後退させることを意味しますから、実は日本側の問題なんですが、国民意識として現時点で海兵隊に「出て行ってくれ」と言えるほどの覚悟が共有されているとはとても言えない状況です。鳩山首相を悪者にしても何も解決しない問題です。

同時に徳之島の拒否反応でわかるように、沖縄の負担軽減に積極的に手を上げる自治体は皆無ですが、そもそもは沖縄の負担軽減のための移転だったのに、国民レベルでの分かち合いには程遠い状況こそ憂うべきでしょう。とはいえ遅々として進まない日米地位協定の見直しの状況を考えると無理からぬところで、結局移転先をどこに決めるかよりもより大きな問題が横たわっているのですが、鳩山政権の迷走を伝えるメディアにそのような問題意識は見当たりません。

前置きが長くなりましたが^_^;、メディアへの露出が元々少ないので、現時点で参照できる記事がみつからず、ウィキペディアに情報がまとまっておりました

JR東日本信濃川発電所の不正取水問題-wikipedia
信濃川水力発電所は知る人ぞ知る施設ですが、国鉄時代から主に首都圏のラッシュ輸送時のピーク電力対応に利用されておりました。そのために新潟県から東京までの専用送電線まで国鉄が保有し管理しており、国鉄分割民営化時にJR東日本に引き継がれました。

そのJR東日本で10年間にわたってプログラム改ざんによる宮中ダムの不正取水を行っていたことが発覚、河川法による水利権取り消し処分を受けました。信濃川の異常渇水は以前から指摘されていたtころですが、民営化の影の部分と言えるかもしれません。JR東日本としては、自前電力を増やせば電力会社からの買電を減らせますから、結果的に利益を多く取れるわけで、民間企業にありがちな不正というか不祥事です。特に国営事業の民営化企業が陥りやすいということも言えるかもしれません。

そんなところを見習わなくてもと思いますが、実は上場有名企業の不祥事は結構多くて、発覚してはお詫び会見というのは珍しくありません。利潤で動機付けられる営利企業ですから、放っておけばある意味不正利得を得ようとすることは容易に理解できますが、同時に事後的な処罰を強化することで、法を犯してまでの営利行為を規律付けようという考え方がいわゆる法化社会です。

元々法人格を有する営利企業は、誤魔化して利益を拡大しようとする動機が存在するわけですから、不正が発覚したら、それに伴う利益を召し上げる以上の損失を与えるのは当然なんですが、日本の企業法制は概して甘いものです。例えばJR西日本福知山線尼崎事故で、利益優先体質を作った歴代3社長を訴追できないなど、制度面の穴が多いのです。

そういう観点から見ると、JR東日本の水利権停止自体は厳しい処分ですが、刑事訴追には至らないようですから、やはり甘さはあります。また停止された水利権をJR東日本は再申請しており、それも認められる方向です。結局宮中ダムの取水停止は1年余、これを長いと見るか短いと見るかは微妙です。

前の記事で電力自由化の話題を取り上げたばかりですが、国鉄から継承した自主電源はJR東日本にとっては重要な財産でしょう。何しろその稼働状況如何で電力会社への支払額が上下するわけですから、水利権が停止されて使えませんでは株主への説明もつかないでしょう。

ですから再申請は当然の結果ですが、そのために自治体のみならず漁協、土地改良区など複数の団体の同意が必要なんですが、この過程で飯山線と北越急行ほくほく線の活性化や関連企業の誘致、祭りやイベントの協賛など、ここぞとばかりにおねだりオンパレードで、一部は飯山線の長岡直通列車増発や信州デスティネーションキャンペーンで十日町地区を相乗りさせるなどの形で実現しております。

魚心あれば水心とはいいますが、不祥事が弱みとなって地元にたかられる図です。ある意味JR東日本は弱みを握られたわけで、なるほどこれがジャパニーズ法化社会かい^_^;とも思いますが、JR東日本にとっては高くつく話です。とはいえ公正・透明とは程遠いところです。

最後に蛇足ですが、電力自由化の議論で、巨大な送電網を自前で持っている鉄道会社に電力供給事業への参入を後押しすることで、10大電力会社の地域支配に風穴を開けるぐらいやらないと、日本のスマートグリッドは進まないと思うんですが、政府肝いりの研究会にもJRの参加は見られず、本気度が疑われます。

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Comments

長いこといつ記事を起こされるのか待ちわびました。

ありがとうございます。

趣味のブログとは言うものの、こちらのブログは重みがあります。

本来ならば、自らのブログに重みを積み重ね、
記事を起こさなければならないのでお恥ずかしいかぎりです。

人として大切なことを忘れないように生きていく所存であります。

Posted by: とまと | Friday, May 07, 2010 09:23 PM

コメントありがとうございます。

人として清く正しくとナイーブなことを言うつもりはありませんが、ネットの普及で情報を隠せなくなってきたということなんでしょう。

不正は10年間と言われますが、国鉄時代など情報が残っていないだけかもしれません。とすれば担当者は単に前任者に倣っただけで、運悪く処分ということもありえます。

難しい問題ですが、遅かれ早かれ膿を出す必要はありそうです。

Posted by: 走ルンです | Saturday, May 08, 2010 11:30 PM

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