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Saturday, June 19, 2010

再建するから金をくれ!リストラ詐欺でおJAL

経営再建中のJALですが、リストラ費用が増えたことを理由に、管財人の企業再生支援機構と共に銀行団に追加支援を要請する検討に入りました。

日航、銀行団に追加支援要請へ、1,000億円超の公算
リストラ費用、資産評価損拡大
リストラ費用の増大は、例えば昨年話題になった企業年金の減額が決まったことで、解散を前提にした試算よりも費用が膨らんだことや、早期退職制度への応募者が予想を上回ったことから、退職金上乗せ額が想定を上回ったことなどです。資産評価損はジャンボ機など古い機体の売却で相当な損が出ていることなどが原因のようです。当初から言われておりましたが、一言で言えば見通しが甘かったということです。

とはいえJAL再建はこれで何度転んだことか。その度に銀行に追加支援をお願いしてきたわけですが、その銀行自身が国際的な金融危機に伴う資本増強の規制強化や、国際会計基準(IFRS)への対応で苦しんでいるところだけに、すんなりとはいかないでしょう。元々6月末に予定されていた更生計画の裁判所提出も8月末にずれておりますが、今から交渉開始してぎりぎりのタイミングでしょう。JAL自身は羽田空港の国際化が追い風になると主張しますが、羽田発着枠がANAと同数となり有利な扱いとなったことを指すのでしょう。

何が問題なんでしょうか。リストラ費用に関しては、企業年金の減額が労使で合意した以上、今さら解散はできません。とはいえ年利1.5%の利回り水準すら、現状の金融情勢では高すぎる目標かもしれません。むしろその後も株式相場は下落してますから、その分会社負担となる積み立て不足が増えていると考えることができます。加えて早期退職者の増加による退職金積み増しが増えたとすれば、既にJAL社員は再生よりも泥舟から逃げ出すことを選択したと見るべきでしょう。外部からは窺い知れませんが、それほどJALの現場が荒廃しているとすれば、再生計画自体の実現可能性にも疑問符がつきます。

ジャンボ機など古い機体の売却損については、元々の資産査定が甘かったのでしょう。そもそも燃費が悪く座席を埋めるのが難しい大型機を喜んで買ってくれるエアラインは今どき存在しないでしょう。とはいえ保有し続ければ維持費がかかる厄介者だけに、買手の言い値で売却せざるを得ないわけです。保有資産の劣化が予想以上に進んでいたわけですが、こうなるまで手を打たなかった歴代経営陣の当事者能力のなさが恨めしいところです。本当に危なくなれば国が助けてくれるという意味で、リストラ詐欺と言いたいところですが、前のエントリーで指摘した赤字企業の損失7年繰り越しも、ある意味国が助けているとも言えるわけで、この状況で法人税減税は盗人に追い銭です(怒)。

さてこうなると政府の対応が問われます。そもそもは高すぎる日本の空港の着陸料や航空燃料税の問題が解決しなければ、更生計画にも狂いが生じる可能性は高いわけですが、法案成立6割と低水準の与党の稚拙な国会運営で、既得権にどこまで切り込めるのか、いささか不安です。しかも通常国会は既に閉会し、選挙戦モードに突入している状況で、仮に参院選で与野党逆転なんてことになればなおさらです。年初に会社更生法適用に踏み込んだ政府の対応を褒めたのですが、その後ここまで政権が迷走するとは思いもよりませんでした。

というわけで、リアルな問題として再建の頓挫も視野に入れておく必要がありそうです。前原国交相は負担軽減策を前向きに捉えています。

前原国交相、日航の軽減要望「航空産業の競争力強化に重要」
仮にJAL再建を断念することになっても、着陸料や航空燃料税の軽減はエアラインに恩恵をもたらしますし、99もの空港を整備して、結局赤字空港ばかりとなった航空行政の見直しには踏み込む意向です。

とはいえ厄介なのがANAによる大手1社体制になれば、様々な難点が出てきます。例えば日米航空協定による成田空港発着枠問題です。2国間協定で日米エアライン各2社が指名されているわけですが、JALの持分をANA1社が引き継ぐとすれば、日米で不均衡が生じるのと、航空アライアンス3陣営中、ユナイテッドとANAが加盟するスターアライアンスに偏った配分となる一方、JALが抜けたワンワールド陣営は成田の権益を失うことになり、競争政策上うまくないですね。

また世界でのANAのブランド浸透度の低さという問題もあります。これは国際線運行会社を分社してJALブランドを被せるという手はありますが、規模の点でJALの国際線部門の人員や機材をANAが引き受ける必要が生じるでしょうから、それをANAが呑むかという問題もあります。ANAはANAで国際線を分社するとしても、豪カンタス航空傘下のジェットスターのような格安航空会社(LCC)の位置づけとしたいでしょう、あとはJALグループ内でリゾート路線を中心にアウトソースしているJALウェイズ(タイ)をJALから切り離して、ANAの資本を入れて存続させ、併せてJALの成田枠の特権を維持するかといったことも考えられます。

より過激な方法としては、航空会社の外資規制を撤廃し、アメリカン航空などワンワールド陣営からの出資を募るか、場合によってはJAL完全消滅させる一方でカボタージュ(国内線就航社を国内エアラインに限定する権利)撤廃で外国エアラインの国内参入を認めるというのもありますが、米中にカボタージュ撤廃を呑ませられるならば良いのですが、可能性はほぼゼロでしょう。

菅政権発足でやたら連発される成長戦略ですが、財政出動が有効需要を創出するというオールドケインジアンの発想の域を出ておりません。それに加えて円安口先介入と見られる不適切発言や企業寄りの政策スタンスなど、口では否定する小泉改革の後追いでしかないと申し上げておきます。

幸いというか、普天間問題で8月に期限を切られた工法の決定がおそらく超えられないだろうと予想しております。鳩山政権が失速した問題ですが、明らかに官僚の巻き返しで立ち往生したと言える展開ですが、官僚の浅知恵で沖縄県民の怒りに火がつきましたから、辺野古移転容認派だった自民党系の仲井間知事まで県内移転反対に回り、公有水面埋立の認可権限を握る沖縄県の同意は不可能です。この点は実は鳩山政権の迷走以前から、沖縄県議会が反対派が多数派を占め、公有水面埋立手続きに入れなかったので、鳩山前首相がぶち壊したというのは当たらないのですが、先月末に出された日米共同声明で沖縄の負担軽減が盛り込まれ、アメリカからも地元住民の同意取り付けを求められており、現状では全く動かないと言えます。その意味で鳩山前首相は仕事したんですね(笑)。

鳩山政権が辺野古移転に傾きつつあることは予想しておりましたが、その場合は沖縄県民を説得できるような何かとセットと考えておりました。例えば米軍基地を順次自衛隊の管理下に置き、周辺事態法による自衛隊の後方支援として基地を提供するということなどです。その場合、周辺事態法の発動の判断でアメリカの軍事行動に日本政府の留保が働くわけで、且つ自衛隊基地となれば現在の日米地位協定に基づく治外法権も通用しなくなりますから、ここまで打ち出せば沖縄県民も納得するだろうと考えておりましたし、社民党も説得できたでしょう。丁度那覇空港の管制権の返還が今年行われたこともあり、タイミング的にリアリティを感じていたのですが。

しかし実際はそういったことは全くなく、政権内の閣僚などが官僚に懐柔され羽交い絞め状態で鳩山前首相は辞任に追い込まれたと見れば、この問題での鳩山政権の迷走をほぼ説明できます。となれば最初から官僚に取り込まれた菅政権ではこの問題は解決不能、参院選に敗北して責任を取って9月の民主党代表戦に出馬せず、民主党政権3人目の首相を頂いて懸案解決にまい進するも死に体となり辞任。3度政権が吹っ飛べば、いくらなんでもアメリカの態度も変わるはずですから、パンドラの箱を開けた普天間問題の最後には希望があります。

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Comments

いつもお世話になります。

以下ご参考まで。

日本航空の破綻が政府専用機の整備に影響?
http://portable.blog.ocn.ne.jp/t/typecast/58303/64067/35269510

Posted by: とまと | Tuesday, August 17, 2010 at 11:52 AM

そもそも政府専用機の存在も、紛争地の邦人救出などでJALが機体徴用を嫌ったことに由来しますので、政府の立場は微妙ですね。

経営再建が優先されるとは思いますが。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, August 17, 2010 at 10:39 PM

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