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Saturday, June 12, 2010

税、税、税、息切れ財政に蝕まれる官政権

タイトルは誤字ではありません。菅政権発足で所信表明演説が行われ、何やら世間では期待感が高まっておりますが、水を差したいと思います^_^;。まずはメディアチェック。

菅首相が所信表明、与野党で「財政健全化会議を」
まぁケチつけるつもりならば、ツッコミどころ満載なんですが、きりがないので控えますが、気になるのが成長への強すぎる拘りです。

既に指摘しているところですが日本のように長年経常黒字を続け、国内の資本蓄積が過大な国においては、労働と資本の代替性ゆえに労働力の投入量を減らすのは難しくない状況にあります。その結果賃下げや雇用調整で生産性を高めることが可能ですから、経済ショックの度に雇用調整が起こり、結果的に労働力の投入量が減って生産が元の水準に戻ることで、生産性が上がるわけですから、結果的に成長してしまい、他方経済格差は拡大してしまうんです。

結果バブル崩壊後20年間、年度ごとのバラつきはあるものの、年平均実質1%の成長が続いているわけです。一方で生産とほぼ同義である所得は伸びず、直近のGDPは500兆円割れしていて20年前の水準すら割り込んでいるように、生産性が上がって所得が伸びないという現象が起きているわけです。ミクロ重視の新古典派経済学では説明できないことです。

一言で言えば需給がミスマッチを起こしているということなんですが、指摘されて久しいにも拘らず全く改善されず、最近はむしろ悪化すらしております。原因は明らかなんで、グローバル化への不適応ゆえですね。ギリシャショック関連でも指摘したように、日本などの過剰な金融緩和で世界へ放出された過剰流動性が国境を越えて動き回るのがグローバル経済の正体ですから、世界レベルで見れば、常にどこかでバブルが生じ、不連続に破綻するということが日常となっている一方、過剰マネーは資本不足で経済成長が足踏みしていた途上国の経済を押し上げますから、実体経済そのものは悪くない状況が続くわけです。

その中で2003-2004年の大介入で輸出依存に大きく舵を切った日本ですが、そのツケとして外性ショックの度に繰り返される円高恐怖症から抜けられなくなりました。80年代、前川リポートで指摘された内需主導経済への転換の逆をやったんですから、当然の帰結ではありますが。

その意味で菅首相が所信表明で内需主導経済の重要性を指摘しているのは正しいところです。外需依存を薄めるには内需を深堀りして輸入を増やすことが重要なんで、結果為替市場の円高圧力が回避され、輸出企業にもプラスとなります。そのために内需の大きな部分を占めてきた「戦後行政の大掃除」を行うのは当然です。90年代、内需拡大の掛け声で公共事業を積み増して財政を悪化させただけの愚を繰り返さないのは当然、歳出改革こそ改革の本丸です。

その一方で財政再建ですが、先日の韓国、釜山で行われたG20でギリシャショックを契機とする財政再建が話し合われましたが、リーマンショック対応で行われた財政出動の出口を探る必要はあるものの、肥大化した歳出を元に戻し持続可能とすることが求められるのであって、必ずしも財政均衡が求められるわけではないということに留意が必要です。

そのあたりで鳩山政権時代に財政再建の必要性の口火を切ったのが財務相だった菅氏ということから見て、既に財務官僚に取り込まれている可能性があります。経済が成長しなければ税収が伸びないわけですから「成長戦略は重要」となりますし、「内需振興を社会保障で」となれば「安定財源が必要」となり、消費税率アップというシナリオに結びつけようとなるわけです。その流れの先に「増税しても使い途を間違わなければ成長できる」というトンデモ発言に結実し、かくして成長パラノイア的所信表明となったわけです。

そして成長戦略が出されますが、報道に接して唖然としました。以下の記事です。

大都市整備に基本法、新成長戦略、骨格固まる
ものの見事に官僚の作文が並びます。暇つぶしに上から順にダメだししてみます。

>環境・エネルギー
「環境未来都市」というのは、スマートシティのことでしょうか。どこで何をやるのかわかりませんが、補助金と金融支援で箱物作ってどーすんのって話です。スマートグリッドのパイロットプラントのつもりでしょうけど、それよりも電力自由化が先と指摘しております。スマートグリッドはエンドユーザーに小規模発電や蓄電設備を備えさせ、電力網のクラウド化となるのであって、通信で行った民間ベースの自由化策が参考になるはずです。また次世代自動車の割合を50%にするといっても、その次世代自動車なるものに買い換えるために現在のエコカー減税や補助金のような問題のある補助制度で行うのであれば、財政に負担をかけるだけです。それより公約されたガソリン税等の暫定税率廃止が望ましいのですが、わけのわからない理屈で見送られました。

ちなみにガソリンや軽油の暫定税率を存続させるにしても、やり方が稚拙です。現時点の小売り価格を基準とすれば、ガソリンで18%強、軽油で15%程度でしょうか。これを特定物品税と見なして消費税の上乗せの扱いとし、流通ルートも限られる特定品目としてインボイス(伝票)方式で流通させることにすれば、現在の蔵出し税であるために税率変更時の在庫の扱いが問題になる部分を売り上げ課税から仕入れ課税を控除するだけの取り扱いで済みますから、流通市場を混乱させないし、消費税率アップのときの複数税率採用などの予行演習にもなり、簡易課税制度などの益税問題解決の突破口になり得るチャンスを逃しました。

>健康大国
外国人患者受け入れなども必要ですが、その前に綻びだらけの国民皆保険制度の見直しを忘れないでほしいところです。内需主導と言いつつ外国人の財布を当てにするのはおかしいです。そういえば後期高齢者医療制度の見直しはどうなったのかしらん。

>アジア経済
「日本製コンテンツの発信強化」って、民主党が野党時代に批判した国営マンガ喫茶やるつもりかい。「インフラ海外展開」も、製品輸出の延長線上で考えていては失敗します。重要なのは従来内需依存だった鉄道、電力、水道その他のインフラ事業の分母を拡大して効率アップすることです。内需企業の効率アップは雇用を押し上げますし、外需依存の低下で為替の円高圧力を緩和します。完全に方向性を間違えております。

>観光・地域活性化
PFIの見直しは望ましいことです。上記のインフラ輸出とも関連しますが、例えば水道事業で東京都が海外展開を狙っておりますが、足元の国内で、人口減少で水道料金収入が減り、設備の更新が滞り、さりとて料金の値上げも出来ない自治体が増えており、一方人口急増で設備投資が追いつかない自治体もあり、例えば千葉県我孫子市のように仏水メジャーのヴェオリアに手賀沼の下水処理事業を委託しているなどがありますが、東京都自身が水道事業を完全民営化して受注を競うのではなく、51%出資の三セク「東京水道」に海外事業のコンサルティングを担わせるというのは、官業の「獲らぬ狸」でしかありません。国内でも老朽インフラの更新問題は重要で、民間資金の活用は課題です。他はゴミみたいな箱物志向の産物です。

>雇用・人材
ここにNPOなどの寄付金税制が出てくることが謎です。NPOに雇用を担わせようというのでしょうか。はっきり言ってゴマカシです。

>金融
これも80年代後半のバブル期から言われる「東京を世界の金融拠点に」とする論が形を変えただけです。その前に日本の閉鎖的な金融環境を規定する諸制度の改革が必要です。

そして成長戦略としての法人税減税を参院選の選挙公約とするそうです。

民主参院選公約、法人税下げ明記
利益に課税される法人税を下げることが成長につながるというのはけったいな論理です。企業の内部留保は増えるかもしれませんが、それを設備投資に回すとか、M&A資金として事業拡大するとかすれば、うまくいけば成長に寄与しますが、そもそも莫大な内部留保資金を抱えながら積極投資できずに投資ファンドの標的になる企業が多い日本で、法人税減税が成長を促すと本気で考えているのだとすれば悪い冗談です。

また他国との税率差で日本への外資の進出が阻まれているという論点もありますが、これは外資に積極的に来てもらって大いに競争しましょうという話なんで、競争回避的なほとんどの日本企業にとってウエルカムな話じゃないでしょう。

もう一つの論点としては、そもそも日本の法人企業で納税しているのは3割に満たず、7割以上の企業が実は税を納めていないのですが、例えば実態は個人事業主なのに節税のために会社にして自身への高額賃金を支払って会社を赤字にするなどの脱法行為が半ば黙認されていることと、政治的な理由で特定の業種や業界への租税特例法による税制優遇が恣意的に行われたことで、課税ベースが穴だらけということもあります。直近の例では小泉政権で銀行の不良債権処理を促進するために、課税所得の損失繰り越しを7年に延長したのですが、この結果例えば08年に6,000億円の赤字となったトヨタは、最大7年間課税所得控除が受けられるわけです。

現在のように外性的経済ショックがどこで起きるかわからない状況では、数年に1度の経済ショックを口実に大リストラをして単年度で赤字決算をして、以後暫く薄い儲けに甘んじれば、税金を払わなくて済むようになり、企業の存続だけを考えればそれでも良いとなれば、企業活力が低下するわけですから、このような祖特法によるゾンビ企業の延命を許さないということで政策減税を全て止めるのならば、現状でも25%程度に税率を下げることは可能です。しかしそれをやれば企業サイドから反対の大合唱となることは目に見えてますから、結局手をつけられず、国民の顔色を伺いながら「5%ぐらいは許してm(_ _)m」てな醜怪な話になるわけです。ま、これで参院選で民主党にだけは投票すまいと決めることが出来ましたが。

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