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Saturday, August 14, 2010

高速道路無料化で渋滞緩和の怪

高速道路無料化社会実験については既に取り上げましたが、無料化区間の交通量は平均1.8倍、並行一般道の交通量は2割減で。渋滞箇所も予想より少なく、一般道の渋滞解消で渋滞が消えるという良好な結果が得られております。

この傾向はお盆休み期間中もほぼ続いており、事前予想では「50km超の渋滞が頻発し史上空前の大渋滞」とされたものの、先月の3連休を含め、本日に至るも30km程度の渋滞が何箇所か見られ、特段無料化の悪影響は見られません。

過去ログを見直していたらこんな記事見つけちゃいましたが、昨年は7月の3連休時点で57kmの大渋滞ですから、今年の方が全体的にマイルドであるということはできます。

また今年はお盆期間中のETC割引が昨年の木金実施に対して、通常の週末同様土日限定となったことから、特にUターン渋滞が14,15日に集中し昨年より渋滞がひどくなるという予想でしたが、そもsも帰省ラッシュ渋滞のピークと言われた12日も大渋滞にはならず、帰省のUターンならば当然今日明日の渋滞もマイルドになると予想され、メディア報道では30km程度の渋滞で15日がピークとのことですが、そもそも50km超の渋滞予想だった事には触れず仕舞いです。予想より渋滞が少なかった事実は無視されたままですが、よほど高速道路無料化を潰したいらしい-_-;。

ま、もちろん帰省時期に台風が来て予定変更した人も多かったことは考えられますが、昨年も東名高速の盛土崩壊があり、交通量の多いルートが被災したことを考えると、今年以上にダメージが大きかったと考えられますから、災害による出控え説には説得力はありません。

一番考えられるのは、大渋滞予想が人々の渋滞回避行動を引き起こしたということに尽きるかと思います。具体的には夏休みをお盆時期からずらすとか、夜間利用などで利用が分散したとかだろうと思います。渋滞という外部不経済が明らかであれば、人々は可能な範囲で回避行動を取るのは当然です。というわけで、高速道路無料化で渋滞がひどくなるという反対論は何よりも現実によって否定された形です。

別の要因としては円高で海外旅行が増えた影響もあるかもしれません。確かに昨年と比べると海外旅行は盛況なようですが、それが高速道路の渋滞を減らすほどの影響があるのかどうかは定かではありません。また昨年は新型インフルエンザの影響で海外旅行を含め公共交通の利用が忌避されたという要素もありそうですが、どうも説得力に欠けます。

そういえば円高報道もひどいもんです。そもそも4-6月の国際収支で経常収支が前年同期比47.6%増と大幅に増えたんですから、それを受けて今のタイミングで円高に振れるのは教科書どおりの動きといえます。加えて8月は米国債の償還集中月で日本の機関投資家の保有債券が償還されればそれ自体が円高要因ですし、加えて日本の輸出企業が例年お盆休み前にドル売りで円資金確保に動くので、8月の円高は季節要因、テクニカル要因と考えて差し支えありません。実際12日に1ドル84円台をつけた相場は翌日には86円台まで戻しております。

むしろギリシャショックによるユーロ安に加えてアメリカの景気先行き懸念による金融追加緩和でドル安に振れ、中国人民元もここへ来て国内経済の減速で安くなっており、形の上では円独歩高となってきていることへの過剰反応なんでしょう。とはいえ黒字国のやることは内需拡大で輸入を増やすことです。円高kはむしろ追い風、菅内閣も家計消費の拡大を目指していたはずで、動揺するのはおかしな話です。

余談ですが日産がマーチのモデルチェンジで製造をタイなど新興国4カ国に移し、日本向けもタイからの輸入に切り替えましたが、輸入拡大という意味で時宜を得た行動です。重要なのはマーチは輸入するけどスカイラインやシーマは輸出しますから、付加価値の差分だけ儲けは出るわけで、巷間言われる空洞化は恐れる必要はありません。

世界ではジャパナイゼーション(日本化)が言われております。ギリシャショックで欧州各国が財政再建に舵を切り始めた結果、欧州景気が後退、欧州向け輸出を頼みとする米中両国も景気減速となり、またアメリカも赤字国としては財政出動を続けるのが難しい段階まで財政赤字を膨らましてしまい、欧米共に金融政策が頼みとなったものの、所謂量的緩和政策の政策効果は定かではなく、かつての日本のように有効な政策手段を見出せなくなってきたことが意識され始めているのです。当てない民主政治の帰結はグローバル市場という名の閉鎖市場への収斂だったという笑えないジョークです。

本題に戻しますが、そもそも25円/kmという賃率で100kmで2,500円という高すぎる高速道路料金ゆえに、無料化の経済効果がそれだけ大きく出るという要素はあります。付け加えると渋滞予想は鉄道にとっても追い風です。無料化やるべしです。

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Comments

最近、高速無料化も悪くはないかも?と思い始めました。ただ、お盆や正月などの繁忙期は良いとしても、閑散期に渋滞しない程度にマイカーの利用が増えて公共交通の利用が減らないか気になります。

そもそも無料化の目的は移動コスト引き下げによる経済対策であって、マイカーの利用を促すことではないはずです。高速無料化とセットで公共交通の利用を促す政策も必要だと思います。鉄道は民間企業なので無料化は無理だとしても、クーポン券を配ったりしても良いような気がします。

Posted by: yamanotesen | Sunday, August 15, 2010 12:43 AM

日程の妙っていうのはないですかね。顧客の休みも16日を入れるか入れないかで今年は二分です。16から開始は12から休み、16までというのは13から休みとばらついています。ホワイトカラーは休みの交代が可能でもメーカーは比較的集中で休む、であってもこんな結果です。

あとは旅行評論家が行っていた安近楽、都内で過ごすという家族も多かったようにみえます。13日ラクーアに行きましたがそれはそれは大混雑でした。それはサンシャイン60でも同じで、とにかく混んでいたという印象です。

私は乗用車を捨ててレンタカーにすることにしました。乗る楽しみはないし、税金は高いしですっかり車の良さを国の政策でもがれてしまったのです。40代でさえこうなんですから20代などは最初から検討課題にさえならない、事実上記の2か所も若者中心(女子が多かった)です。

車を国の作業にしている我が国でははやく産業シフトしないと厳しいですね(カメラのように輸出中心に)、警察の厳しいルールで交通事故者は激的に減りましたが、反対に雇用にあぶれて自殺者が増えるというアンバランス、同じ死なんですがセクションが違うとこうも冷たいとは・・

Posted by: SATO | Sunday, August 15, 2010 10:27 AM

公共交通への支援は必要でしょう。国交省では交通基本法の制定を準備しているようです。

中身ですが、フランスの同法に準じるならば、許認可権を地方へ移管した上で、地域の交通政策への自治体の責任と権限を定義する内容になるものと思います。

地域の交通を自治体が許認可権限と補助金を行使して整備するといったイメージで、地域ごとに課題を解決しやすくなると期待されます。

物流面では料金負担がなくなるに留まらず、スピードアップでドライバーの残業が減り、燃費改善で燃油代の節約になるなどいいことずくめのようですが、無料化を盾に荷主の値引き要求が強まっているそうですが、デフレを助長する値引き要求は問題です。円高はデフレの原因ではありませんね。

日程問題の影響はわかりませんが、ETC割引が土日限定となってUターンが14,15両日に集中して尚昨年よりマイルドなんですから、お盆シーズンのマイカー利用が少なかった可能性はあります。

その意味で安近短に流れたというのはありそうですね。そもそも首都圏在住ならば休暇を過ごすのに困ることはないですしね。

自殺者の問題はまた別の要素もありますので、深入りしないことにします。

Posted by: 走ルンです | Sunday, August 15, 2010 09:04 PM

>許認可権を地方へ移管した上で、地域の交通政策への自治体の責任と権限を定義する内容
よくわからないんですが、それで公共交通の支援になるのですか?

例えば、日光・鬼怒川に行く行楽客がマイカーにシフトした分を東武に自治体か国が補填してくれるのですか?さすがにこれを企業努力に押し付けるのは厳しい気がしますし、逆に補助すると民間企業といえど放漫経営に陥る恐れがあると思います。

Posted by: yamanotesen | Sunday, August 15, 2010 11:44 PM

事業者への許認可を自治体の権限に移管するのが基本です。加えて国としての補助制度も移管することで、国の制度ではこぼれてしまうケースも自治体の判断で補助するなど、地域で問題解決できる仕組みになると考えられます。

当然鉄道で残すかバスか、あるいはデマンド交通のような新ジャンルかなど、財政制約と納税者の理解を前提に検討されることになると思いますが。

その意味で日光観光で東武鉄道を支援するケースでも、地域活性化の観点から自治体が必要と判断すれば制度上は可能になるとは思います。ただし「マイカーに客を奪われたから助けて」は通用しないと思いますが。

例えば都市交通分野でLRT導入などはやりやすくなると考えられます。

Posted by: 走ルンです | Monday, August 16, 2010 09:00 PM

#地域の交通を自治体が許認可権限と補助金を行使して整備するといったイメージで、地域ごとに課題を解決しやすくなると期待されます。#


事業形態が違うかもしれませんが自治体経営のバスが相次いで撤退(札幌市など)やお古いところでは岐阜の市内線、確かに市内線は賛成派が少ないという辛さもあったもののあの名鉄でさえもGIVE UP 桃花台はいうに及びません。

と、地方に任せると廃止が加速されてしまう、例外は広島と長崎くらいなもので(あと富山か)、補助金を積んだところでその運用では不透明な部分も出ましょうし、現実問題は厳しいとは思います。

若干、おふざけモードも入りますが、期待が高いのが「宗教系団体」。ここに鉄道の許認可を与えたら意外にもつかもしれません。高野山もそうですし、鞍馬寺などは自社(寺社(笑))経営ですし、富士宮の臨時は正月の恒例です。

京都のお寺さんに「路面電車の上がりを非課税にするさかい、経営しなはれ」と言ったら案外受けてくれるかも(妄想御免)

Posted by: SATO | Friday, August 20, 2010 08:43 PM

少し長くなりますが、ご容赦ください。

公営交通の撤退は別の話です。そもそも公営交通といえども許認可は国が行っており、公租公課の一部免除や行政手続きの一部免除などがある以外、民間事業者との違いはありません。それどころか事業の区分経理が義務付けられており、事実上国の監視下にあります。

交通基本法で想定されるのは、許認可権限自体を地方へ移管することです。国の許認可行政も表面上は、免許制が認可制へ、認可制が許可制へ、許可制が事前届出制へ、事案によっては事後報告も可とか、特殊案件の特認など柔軟になってはおりますが、一方で例えば交通バリアフリー法による努力義務など、新たなコスト負担も生じており、経済的な参入障壁は相変わらず高いのです。

それゆえに交通サービスの維持向上には補助金の活用が避けられず、国の補助制度を利用しようとすると、条件をクリアするのに例えばバス路線では減便まで行われるという本末転倒まで見られます。つまりむしろ公的関与は強まっているのです。

だからこそ、自治体で条例で基準緩和が可能になれば、より地域の実情に合った交通政策が実行可能になるわけで、国の関与を減らす形の規制緩和でもあるわけです。

フランスではミッテラン政権時代に成立し、時間を置いてLRTブームが起きるなどの変化が見られました。日本でそうなるかどうかはわかりませんが、特認を重ねて実現した富山市のLRTでブーム到来の期待が、宇都宮市や堺市など相次ぐ事業見直しや断念に見られるように、現行法で国を動かさないと地域の問題が解決できない構図では限界といえます。

宗教法人に関しては、この場ではノーコメントとします。

Posted by: 走ルンです | Saturday, August 21, 2010 09:48 AM

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