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Sunday, September 12, 2010

GDP改定値上方修正で見えた日本経済の意外な強さ

内閣府が10日発表した4-6月期のGDP改定値が上方修正されました。

4~6月の実質GDP、年率1.5%成長に上方修正
速報値が前期比0,1%年率換算0.4%でしたので、前期比0.4%年率換算1.5%は大幅な上方修正と言えます。もちろん1-3月期の年率4.4%から見れば、減速しているわけですが。

設備投資が堅調なのと、在庫投資の上方修正です。在庫投資自体の寄与度はマイナスですが、速報値に比べマイナス幅が縮小しており、意外に消費が堅調なため在庫リスクを恐れる企業のマインドがやや強気にシフトしたのでしょう。

あと経常収支が上昇しており、中国をはじめアジア地域への輸出が堅調でした。最近の円高ドル安傾向は、素直に見れば国際収支の動向によるものと見れば自然ですが、対ドル、対ユーロでの円高に対して、アジア通貨に対してはほとんど切り上がっておらず、メディアで言われるような企業収益直撃は疑わしいところです。

ドル安は元々赤字国であるアメリカの通貨の評価が正常化する過程ですし、ユーロ安はギリシャショックをきっかけとした政府の財政赤字による信用不安の結果ですから、いずれも安くなる理由がある一方、黒字国で一応金融も痛んでいない日本の円が買われる理由は存在します。その中で貿易相手国のアジアシフトが起きており、ドル安ユーロ安の影響を受けにくくなっているのですが、騒げば政府が動いてくれるという成功体験?が忘れられない産業界は悪質です。

もちろんこれは大企業に限っての話であり、中小零細企業は苦しいということはあります。とはいえグローバル化の進捗する中、いつまでも大企業の下請けに甘んじる中小零細企業をどこまで救うべきかには議論の余地があります。元々経営者の個人保証を前提にしないと銀行融資も受けられない中小零細企業に投資マインドは育ちにくく、一方で郵貯の民業圧迫を批判する地方銀行等は借り手不在を嘆いており、明らかな需給のミスマッチがおきております。

アメリカではベンチャーキャピタルが目利きして中小企業に資金提供するシステムが機能しており、そこに目をつけた日本振興銀行や新銀行東京のように、財務諸表のデータを基準に従って評価するスコアリングシステムとやや高めの金利を組み合わせて、無保証融資を行うビジネスモデルが登場したものの、個人商店に近い中小零細企業の財務諸表が経営状態を正しく反映しているとは限らず、財務諸表だけで融資審査ができないことにこそ中小企業金融の難しさがあります。

実際日本振興銀行は設立当初から創業メンバー間の対立があったり、木村剛氏の親密先への貸し込みなど不透明な経営がなされ、あげくに融資実績を上げるために旧商工ファンドの債権買い取りなど暴走を続け、国内行初のペイオフが実行され、破たん処理されることになりました。新銀行東京は東京都の公金をつぎ込んでまで延命したものの、やはり先が見えない状況が続きます。木村剛氏が小泉政権時代の銀行処理のスタッフとして働いた経緯もあり、政権交代がなければ別の銀行に救済合併させるなどの不透明な処理がされた可能性があり、これも政権交代の成果ではあります。すると次は新銀行東京かも^_^;。

とはいえ郵政改革でゆうちょ銀行の限度額アップを決めるなど、新たな問題も出ております。民主党内部ではリレーショナルバンキング事業への参入の意見もあるようですが、国の資本が入った銀行が地場企業に目利きができるのかには疑問があります。

というわけで、日本経済は結構強いんですね。アジア地区中心に新興国の経済成長が支えとなっているのですが、恩恵を受けるのは大企業ばかりで、むしろ国内製造の空洞化で下請け企業が仕事を失うパターンですが、脱下請けのチャレンジが可能な仕組みが見当たらないのであって、政府が政策を動員すべきはこういった部分です。

例えば既に一部の地方銀行で農業向け融資に傾注しているところも出てきており、米の減反が選択性となったことで、所得補償を受けない代わりに減反に参加せず、大規模農場で輸出米を生産するなどのチャレンジが可能になります。そういった意味では農業改革のはじめの一歩にはなり得ますが、小規模農家や兼業農家まで助けてしまう点で効率化を阻害する可能性もあり、評価が難しいところですが、従来の農協や土地改良区組合などの中間組織への補助が必ずしも農業の助けになっていない点を変える可能性はあります。

というわけで、曲がりなりにも実現された子ども手当や高校授業料無償化などの政策効果を検証して見る必要はあるのではないでしょうか。消費が堅調な理由になっているかもしれません。加えて自公政権時代にスタートしたエコカー減税、エコカー補助金、家電エコポイント制度など、やりっ放しで効果の検証が疎かになっているものは多数あります。

9月末の期限前に打ち切りとなったエコカー補助金は、買い替え促進でメーカーを助けたのは間違いありませんが、需要の先食いで事後の落ち込みが心配されます。以前にも指摘しましたが、元々ドイツの制度を参考にしたスクラップインセンティブ制度で、買い替え対象の旧年式車の廃車が条件となりますので、期間中中古車の供給が細り中古市場が縮小したことが新車販売を支えた面もあり、2012年までは中古市場の枯渇を通じて新車販売を押し上げますから、落ち込みはあっても廉価な軽やコンパクトカーを中心に底堅い動きになると考えられます。

問題はむしろ廃車が増えたことで、解体、リサイクル過程でのCO2排出は増えているわけで、90年比25%削減を掲げる民主党政権として期間延長は妥当な判断だったのかは問われます。あと中古車ディーラーの廃業が相次ぎ、結果的に大企業であるメーカーを助け、中小企業である中古車屋を追い込んだのも問題です。

あと高速道路無料化ですが、2010年度に予定していた社会実験予算が6,000億円から1,000億円へ減額されましたが、メディア報道では小沢幹事長時代の幹事長室からの横槍で減額されたように言われております。しかし実際に減額査定したのは当時の藤井財務相ですし、一旦凍結された高速道路の新規着工も、麻生政権時代に週末ETC1,000円割引など一連のETC割引制度で計上された予算の流用であって、新規着工が社会実験予算の減額につながったわけではありません。早い話が前原国交相が予算折衝でしくじっただけなんですが、どうも前原氏は小沢氏に恨みを抱いているようで、今回の菅、小沢対決の構図も、前原氏の意向が働いた結果のようです。

代表選直前に鳩山氏が動いてトロイカ体制維持に傾いたときも、むしろ菅氏の方が小沢氏との関係修復を望んでいたのですが、それに対して「密室談合するなら自分が代表選に立つ」と言って菅氏を反小沢陣営に引き戻したというのですが、早い話菅氏を弾除けにして政敵を追い落とそうという話です。

政治は権力闘争であることは否定できませんし、公権力を国民のために行使するにも力が必要なのは確かで、その意味で今回の代表選は民主党としてはじめての権力闘争といえるものでしょう。そして前原氏のような若手が野心を持つことは歓迎すべきことではありますが、やや卑怯な戦法です。事後的に禍根を残さぬようにして欲しいところです。

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Comments

走ルンです様
いつも楽しく拝見してます。

>問題はむしろ廃車が増えたことで、
>解体、リサイクル過程でのCO2排出は増えている

出典ははっきりと覚えてないのですが、
自動車のLCAにおけるステージ別CO2排出で言えば
廃棄における%はさほど多くないはずです。
もちろん車種や寿命にもより一概には言えませんが、
使用のステージが大半を占めるという意味では
他の工業製品とさほど変わらないです。確か。

この論点はよく環境施策批判派が持ち出すのですが
LCAをよく理解してない一般消費者は、
騙されてしまいがちです。

Posted by: ポポロ | Monday, September 13, 2010 at 06:47 PM

ご指摘ありがとうございます。

仰るとおり、一概には言えないのですが、日本の乗用車ユーザー限定でいえば、短周期で新車に買い替え、走行キロも少ない傾向にあります。逆に商業車は概して長期間使用されますし、走行キロも長いので、平均すれば他の工業製品と変わらないかもしれません。

昨今は使用期間が延びる傾向にあり、正確にはあったと言うべきなのかもしれませんし、今回の補助金は13年以上使用した車が対象ですから、実際の廃棄ステージのパーセンテージは低いとは言えますが、総量としてCO2排出が増えていることに変わりはありません。

加えて従来13年落ち車はアジアやロシアへ輸出される率が高く、ツブす代わりに海外に売っていたのですから、おそらく輸出で使った船のCO2排出の方が廃棄ステージでのCO2排出より少ないと推定されますから、あながち間違いとは言えないでしょう。

Posted by: 走ルンです | Monday, September 13, 2010 at 09:14 PM

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