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September 2010

Thursday, September 23, 2010

満員電車とウサギ小屋

為替単独介入から1週間、効果は守って半月の予想に反し、1週間で円高がジワリと進みます。原因は新興国の外貨準備拡大、つまり為替介入による通貨安競争が原因です。だから言わんこっちゃないんですが、欧米しか視野に入っていないからこうなるんです。

さて本題、国土交通省は21日、2010年7月1日現在の基準地価を発表しました。

基準地価、下落続く 全国平均10年3.7% 3大都市圏、下げ幅縮小
下げ幅は縮小したものの、下落傾向は止まらず、不動産不況の出口は見えません。足許ではマンション販売が好調ですが、2006-07年頃のミニバブルの崩壊による価格低下と、居住用不動産の贈与税特例の拡大(本則500万円→1,500万円)や住宅ローン減税、フラット35の優遇策などによる政策効果と見られており、持続性には疑問符がつきます。

加えて2015年問題が影を落とします。既に2005年から日本の人口は減少に転じており、子の自立、離婚の増加、配偶者の死別などによる単身世帯の増加によって世帯数は増えているのですが、それも2015年までということで、現在のように新築中心に住宅供給を増やすのはいよいよ限界という局面になっております。しかも耐用年数の短い戸建て住宅と違って長寿命であり、且つ区分所有法により区分所有権者の合意を必要とする建て替えのハードルが高いマンションでは、建て替えに期待するのは無理ですから、現在のような新築中心の住宅市場は早晩行き詰ります。

この辺は京王電鉄の新たな沿線活性化策京王アイボリー時代で取り上げた論点ですが、需給ギャップの生まれる既存住宅ストックを用途変更することで、高齢者が高度経済成長期に取得した郊外の戸建て住宅を子育て世代に賃貸することでキャッシュフローを生み出し、それを高齢者のセカンドライフ住宅として利便性に優れた都心のマンションや地方の農地付き別荘の購入費に充てる仕組みとして実現してはいるものの、政権交代後も政府の視野には入っていないようで残念です。

そのほかにも空室の多い賃貸住宅の自治体借り上げによる公営住宅強化や、強度に優れた低層マンションの減築や2区分統合による占有面積拡大などで、中古住宅の需給のミスマッチを埋め、品質を高めることで、新たな需要を掘り起こす余地は大きく、特に減築や区分統合は総戸数の減少で需給を引き締めますから、結果的に新築需要を押し上げる効果もあるのですが、デベロッパーや住宅メーカーの関心は、都心再開発による高層タワーマンションや長寿命住宅やソーラーハウスなど新築に偏っており、需給の悪化は避けられない状況です。

一部には上海など中国の不動産価格の高騰で中国人富裕層による日本のマンションへの投資熱が報じられ業界は期待しているようですが、実は中国富裕層の目から見ても日本の住宅の小ささは異常に写っているようです。マンション業者に引き合いは来ているものの、成約には至らないということで、円高の影響も指摘されてますが、中国人目から見ても日本の住宅は貧弱に見えるということで、住宅ストックの質の向上はこの点からも必要です。

例えば現在でも低層住宅の多い中央区月島地区で大規模再開発が計画されておりますが、完成時点で居住人口が拡大したときに何が起こるかは慎重に考えるべきでしょう。お隣の勝どき駅周辺は、駅勢県内の晴海地区も含めて再開発が集中した結果、平日朝は毎日駅の入場制限が行われる事態を招いております。小断面リニア地下鉄が災いして、輸送能力の限界を迎えてしまったのです。結果都心に程近い好立地なのに電車に乗るのに待ち時間が発生する結果、都心のオフィス街へは自転車が最速という笑えない状況になってしまいました。

月島の場合は有楽町線の輸送力が頼みとなりますので、勝どきの悲劇はないでしょうけど、逆に大枚はたいて勝どきにマンションを買った人たちにとっては、利便性の差から物件価格の下落を心配する必要があります。つまり身を切って安値で売って損切りするか、不便を承知で住み続けるかの究極の二択を迫られるわけです。こうして国民の住宅購買力は食い物にされるんですね(涙)。

より深刻なのがオフィス不況です。クラウド化によって大規模サーバールームが海外のデータセンターへ代替される流れの中で、オフィス供給は増え続けており、リーマンショック後のオフィスリストラの影響も続く底なし状態であることは既に取り上げましたが、企業がユーザーとなるオフィスに関しては、家計の購買力から逆算される所謂値ごろ感とは無縁で、安ければ安いほど歓迎されます。ゆえに需給が軟化すれば賃料が下落し、収益還元価格として算出される資産評価を下げる結果となります。

となればますます都心のタワーマンション開発に重心が移ると考えられます。東北縦貫線開業で用途廃止となる品川の操車場跡地開発のような大型案件が残っている状況ですから、既存オフィスのコンバージョン(用途変更)も含めて、都心のマンション供給も高水準を維持しそうです。しかし買う人がいない、住む人がいないとなれば、結局マクロに見ても値崩れは避けられず、住宅を購入する人は、ローンの負担を抱えて資産を目減りさせることになります。アメリカでは住宅ローンといえばノンリコースローン(非遡及型融資)で担保差し押さえ後に債務が残らないのに対し、日本ではリコースローンで家を失い債務も追いかけてくる地獄のような話になります。タダでさえ賃金上昇が見込めず雇用も不安定な中、住宅ローンの貸し倒れ率は10%を超えております。ローンを組んだ10人に1人は破綻するということです。

さてどうするかですが、結局勝どきの悲劇に見るように大都市の再開発で集積度を高める政策にそもそも無理があるのであって、しかも今後都心マンションの購入層は購買力のある高齢富裕層に限られるとなると、集積度が上がっても生産には寄与せず都市の活力を高めないということになります。高齢者の集積に唯一意義があるとすれば、高齢者の所在確認が容易になり、行政や介護サービスの生産性が上がるということはありますが、行政サービスや介護サービスを供給する若年世代が住めないならば効果は限られます。

基本的には大都市の集積度を下げてでも地方の定住人口を増やすことを考えるしかないと思います。人口減少はつまるところ土地の需要を下げますが、逆に言えば資源として土地を必要とする産業にとってはチャンスでもあります。例えば農業であり林業であるわけですが、従来規制に守られて競争力を持たず、また技術革新で労働生産性が上昇したこともあり、雇用を生み出すのは難しいところはあります。農業も林業もそれを核とした食品加工や木工加工などの関連産業の育成とセットで考える必要があります。

逆に高齢者層のセカンドライフ住宅として地方都市を考えれば、別のものが見えてきます。必ずしも農地付き別荘でなくても、例えば富山市の富山ライトレール沿線のように、戸建て住宅を中心とした落ち着いた住宅が集積で、LRTで通院や買い物が不自由なく行えるまちづくりということですね。所謂コンパクトシティというやつですが、地方都市ならば戸建てでも大都市圏より低価格で購入可能ですし、また行政サービスや介護サービスの担い手たる若年世代にも住みやすいといったまちづくりが可能ならば、今後団塊世代の大量退職で生じる年金富裕層を呼び込むことで高齢者関連サービスで雇用が生まれるという好循環も可能です。問題はそれをどう後押しするかです。

実際北海道伊達市では市役所に移住係を置いて積極的に高齢者誘致を行っております。北海道としては比較的温暖な気候で積雪もないなど有利な条件はあるものの、アクセスの交通手段はほぼJR室蘭本線だけで、空港も遠く高速道路も未開通だけど、移住希望者は多いようです。高齢者に合わせて段差のないまちづくりにも留意しており、結果的に住みやすさが人を呼び込み、過疎地には珍しく人口増となっております。

このように結局は地域の特性を活かした取り組み以外に出口はないのですが、この観点から言えば、需要地の市場へのアクセスを改善する高速道路無料化は、かなりの後押しとなると期待されます。バスも来ない最果ての過疎地に住んでみろと言われても、イザというときの移動手段が確保されているかどうかは重要です。だからといって全国に100誓い民間空港を整備して需要を散逸させたり、時間も費用もかかる整備新幹線の建設を行う余裕はないわけです。

しかし特に地方で利用率の低い高速道路に注目すれば、並行一般道は市街地のボトルネックで渋滞を引き起こし、、バイパス整備の必要に迫られていたりします。それならバイパス整備の費用を高速道路無料開放の原資とすれば、無駄な道路工事を省け、しかも工事の完成を待たずに成果が得られるわけですね。地方自治体にとっても、直轄事業となる国道のバイパス整備で事業費の2/3の負担がなくなる分、地方単独のアクセス道路整備や、高速道路直結の地域特産品を扱う道の駅設置などで、農業など1次産業の複合産業化が図れます。この結果雇用が生まれれば、地方の定住人口が増加する分、大都市圏の過密が緩和され、タイトルにある満員電車とウサギ小屋解消が現実味を帯びます。JRに文句を言われたぐらいで後退させるべきではありません。

というわけで、日本のエネルギー消費が少ないのは満員電車とウサギ小屋のおかげかもしれないけれど、同時に単身世帯が増えて家電品が増えた結果、エネルギー消費量を増やしているのですが、高速道路無料化で首都圏の通勤ラッシュが緩和され、住宅の居住環境が改善されるならば高速道路無料化は大いなる可能性を秘めているといえます。

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Sunday, September 19, 2010

アキカンのモダンタイムズ

ヘーゲルは「世界史上の大事件や大人物は2度現れる」と述べ、それを受けて「1度目は悲劇として、2度目は笑劇としてと付け加えるのを忘れた」とマルクスが述べたのは有名ですが、21世紀の日本でそれが実現するとは思いもよりませんでしたが。

民主党代表選の翌日、唐突に行われた日本の為替介入は、もう笑うしかありません。以前にも指摘いたしましたが、小泉政権時代の2003-2004年にかけての35兆円と言われる大規模介入によって、100円台から120円台への円安誘導を行ったことが、輸出企業に一息つかせ、輸出頼みの成長路線をひた走った日本ですが、野党時代に批判して止まなかった小泉改革と同じことをしていることに思いを致さないのでしょうか。

しかも当時の大介入と同様に、日銀が供給した介入資金を国債の一種である政府短期債券を発行して吸収する不胎化を行わず、市場へ放置して金融緩和を後押しする非不胎化という手法まで同じです。何のことはない、財務官僚が黒子として動いたってことです。それを野田財務相がわざわざ緊急記者会見で発表して見せて政治主導を演出するあざとさは、お笑い種です。前日まで代表選でそれどころじゃなかったのにね。

加えて外為特会の肥大化は財務官僚の仕事を増やしますので、官僚からみればしてやったり。非不胎化はつまるところ短期債券の代わりに日本銀行券を発行することでもありますから、いずれ短期債券発行で日銀券を吸収することになり隠れ借金と同じです。また日銀法改正で独立性が高まった日銀に対して政府が金融緩和を強要できる唯一の手段でもあり、結局のところ自民党時代の政治家による圧力発言と同じ悪質な介入とも取れます。加えて悪名高い霞ヶ関埋蔵金が増えて官僚のタンス預金が増え、しかもドル建て資産で売るに売れないから、取り崩しは結局短期債券発行で代替され、税外収入として予算編成に影響しますが、その金額を毎年度内閣が財務省にお伺いを立てるという倒錯した話です。これで政治主導?

しかも前のエントリーで指摘したように、GDP改定値の傾向から見える日本経済の強さや、日米のインフレ率の差の蓄積による実質実効レートで円は割安であることも指摘しており、客観情勢として単独介入が必要な状況にはありません。小泉改革は時代の変化に対応できなかった自民党の悲劇ですが、追随する民主党のそれは笑劇でしかありません。

敢えて言えば企業の9月中間決算を控え、想定レート90円台で輸出で稼いだドルを円に換えることを躊躇っていた中で進行した円高を抑え込むことで、決算をやりやすくする効果はあるでしょう。実際政府の介入を受けてドル売り円買いに動いた企業は多数に上ります。結局政府ぐるみの粉飾決算幇助であり、輸出補助金でしかないということです。しかもそのほとんどは輸出企業の内部留保に消え、下請け企業には行き渡りません。せいぜい仕事を切られるのが少し伸びるだけです。

現時点では様子見で小動きですが、国際収支の黒字拡大で円高要因は消えておりませんから、早晩介入の効果は剥落し、再度円高局面となることは間違いありません。せいぜい守って半月でしょうけど、企業の粉飾決算幇助ならそれで十分ではあります。問題は海外の反応です。

予想されたことですが、欧米の政府筋は公式には沈黙しております。代表選で菅首相が「ネガティブなことを言うなとは言っている」と暗に根回しを示唆しましたが、それ以前に欧米政府は日本円の為替水準に興味はなく注意を払っておりません。

アメリカでは人民元問題こそ本命であり、日本は既に視界の外。それでも人民元問題を扱う公聴会で「為替操作国は中国だけではない」と日本に矛先が向かいます。オバマ政権は輸出倍増で雇用創出を狙っており、80年代のプラザ合意直前の日本に対峙するように中国に対峙しようとしてます。赤字国であるアメリカにとって輸出増は当然の政策課題ですが、それすら日本では「アメリカがドル安容認しているから日本も為替介入すべき」となりますが、アメリカは為替介入は実施しておりませんので、客観的におかしな議論です。むしろ米政府はプラザ合意を受け入れた日本に後押しを期待していたでしょうから、内心裏切られたと思っているのが本音でしょう。

欧州は関税同盟、通貨同盟で域内市場の安定化を最優先としており、例えばドイツでGDPの40%が輸出と言われますが、半分以上は域内貿易ですから、そもそも為替への関心は低いのですが、ギリシャショックの影響でユーロ安となったことで、黒字国のドイツなどは恩恵を受けております・

中国も公式には論評しておりませんが、中国メディアが盛んに報道しており、明らかにアメリカの人民元切り上げ圧力をかわす口実になると考えているでしょう。加えてアメリカが嫌う元売りドル買いの代わりに、減価の心配が低い日本円を外貨準備に組み込むことで圧力をかわせます。実際中国の日本国債購入が増えており、円高要因の一部と見られております。逆に当面の財政赤字は中国が支えてくれるとなれば、日本政府が財政再建を急ぐ理由も希薄になります。

一番強く反応したのはおそらくブラジルでしょう。日本の介入を非難すると共に、これを口実に堂々と為替介入して先進国のけん制を跳ね除けようとする姿勢を見せており、ある意味正直な本音です。80年前の大恐慌の直後、今回のリーマンショックのように主要国は当初財政出動で足並みをそろえていたものの、アメリカが緊急対応の出口政策で赤字を縮小させると、各国それに追随して国内景気を冷やし、それを輸出で穴埋めしようとして通貨切り下げ競争になって国際貿易が縮小に向かったのは知られております。ブラジルの本音はそれを表すと共に、通貨切り下げ競争は近隣窮乏化路線でもあり国際関係がギクシャクする原因にもなります。事実大恐慌後の通貨切り下げ局面で主要国同士の摩擦が拡大し、世界大戦への道へ進むのですが、日本の今回の対応はその再現の可能性すらあります。平和国家が笑わせます。

という具合に、冷戦終結後の多極化世界を睨んだポストモダンな対応の欧米とモダン(近代)に目覚めた新興国の狭間で、日本の立ち位置の危うさが目立ちます。既にトヨタのライバルはGMよりヒュンダイですし、ソニーのライバルはGEよりサムスンという世界で、円/ドルレートばかり見ている日本の停滞はやむなしでしょう。思えば冷戦下の70-80年代は米ソ揃って停滞期でしたし、イギリスに至っては戦後40年にわたる停滞期を経験しましたが、それを乗り越えて今では1人当たりGDPで日本を凌駕しております。日本も道を間違えなければ将来再浮上は可能ですが、こんなことやってればそれは遠のきます。

そういう意味で菅政権の今後には多くを期待できないんですが、救いは片山元鳥取県知事の総務省就任と馬渕国交副大臣の国交相昇格でしょうか。元官僚で官僚の性癖を精通する片山氏には、ぜひ鳩山政権の宿題である地域主権改革を進めて欲しいところです。また民間企業経営者の経歴を持つ馬淵氏はおそらく実務家としては前原氏より上でしょう。ましてJRからのいちゃもんで高速道路無料化の熱意を失った鉄ちゃんで子ども大臣(笑)の前原氏よりも、高速道路無料化の実務を取り仕切ってきただけに期待できます。全面無料化の目標を降ろさない姿勢を就任会見でも明らかにしております。今年は羽田の国際化や成田の滑走路延長、JALの再建など課題も多いだけに、、活躍を期待したいと思います。

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Sunday, September 12, 2010

GDP改定値上方修正で見えた日本経済の意外な強さ

内閣府が10日発表した4-6月期のGDP改定値が上方修正されました。

4~6月の実質GDP、年率1.5%成長に上方修正
速報値が前期比0,1%年率換算0.4%でしたので、前期比0.4%年率換算1.5%は大幅な上方修正と言えます。もちろん1-3月期の年率4.4%から見れば、減速しているわけですが。

設備投資が堅調なのと、在庫投資の上方修正です。在庫投資自体の寄与度はマイナスですが、速報値に比べマイナス幅が縮小しており、意外に消費が堅調なため在庫リスクを恐れる企業のマインドがやや強気にシフトしたのでしょう。

あと経常収支が上昇しており、中国をはじめアジア地域への輸出が堅調でした。最近の円高ドル安傾向は、素直に見れば国際収支の動向によるものと見れば自然ですが、対ドル、対ユーロでの円高に対して、アジア通貨に対してはほとんど切り上がっておらず、メディアで言われるような企業収益直撃は疑わしいところです。

ドル安は元々赤字国であるアメリカの通貨の評価が正常化する過程ですし、ユーロ安はギリシャショックをきっかけとした政府の財政赤字による信用不安の結果ですから、いずれも安くなる理由がある一方、黒字国で一応金融も痛んでいない日本の円が買われる理由は存在します。その中で貿易相手国のアジアシフトが起きており、ドル安ユーロ安の影響を受けにくくなっているのですが、騒げば政府が動いてくれるという成功体験?が忘れられない産業界は悪質です。

もちろんこれは大企業に限っての話であり、中小零細企業は苦しいということはあります。とはいえグローバル化の進捗する中、いつまでも大企業の下請けに甘んじる中小零細企業をどこまで救うべきかには議論の余地があります。元々経営者の個人保証を前提にしないと銀行融資も受けられない中小零細企業に投資マインドは育ちにくく、一方で郵貯の民業圧迫を批判する地方銀行等は借り手不在を嘆いており、明らかな需給のミスマッチがおきております。

アメリカではベンチャーキャピタルが目利きして中小企業に資金提供するシステムが機能しており、そこに目をつけた日本振興銀行や新銀行東京のように、財務諸表のデータを基準に従って評価するスコアリングシステムとやや高めの金利を組み合わせて、無保証融資を行うビジネスモデルが登場したものの、個人商店に近い中小零細企業の財務諸表が経営状態を正しく反映しているとは限らず、財務諸表だけで融資審査ができないことにこそ中小企業金融の難しさがあります。

実際日本振興銀行は設立当初から創業メンバー間の対立があったり、木村剛氏の親密先への貸し込みなど不透明な経営がなされ、あげくに融資実績を上げるために旧商工ファンドの債権買い取りなど暴走を続け、国内行初のペイオフが実行され、破たん処理されることになりました。新銀行東京は東京都の公金をつぎ込んでまで延命したものの、やはり先が見えない状況が続きます。木村剛氏が小泉政権時代の銀行処理のスタッフとして働いた経緯もあり、政権交代がなければ別の銀行に救済合併させるなどの不透明な処理がされた可能性があり、これも政権交代の成果ではあります。すると次は新銀行東京かも^_^;。

とはいえ郵政改革でゆうちょ銀行の限度額アップを決めるなど、新たな問題も出ております。民主党内部ではリレーショナルバンキング事業への参入の意見もあるようですが、国の資本が入った銀行が地場企業に目利きができるのかには疑問があります。

というわけで、日本経済は結構強いんですね。アジア地区中心に新興国の経済成長が支えとなっているのですが、恩恵を受けるのは大企業ばかりで、むしろ国内製造の空洞化で下請け企業が仕事を失うパターンですが、脱下請けのチャレンジが可能な仕組みが見当たらないのであって、政府が政策を動員すべきはこういった部分です。

例えば既に一部の地方銀行で農業向け融資に傾注しているところも出てきており、米の減反が選択性となったことで、所得補償を受けない代わりに減反に参加せず、大規模農場で輸出米を生産するなどのチャレンジが可能になります。そういった意味では農業改革のはじめの一歩にはなり得ますが、小規模農家や兼業農家まで助けてしまう点で効率化を阻害する可能性もあり、評価が難しいところですが、従来の農協や土地改良区組合などの中間組織への補助が必ずしも農業の助けになっていない点を変える可能性はあります。

というわけで、曲がりなりにも実現された子ども手当や高校授業料無償化などの政策効果を検証して見る必要はあるのではないでしょうか。消費が堅調な理由になっているかもしれません。加えて自公政権時代にスタートしたエコカー減税、エコカー補助金、家電エコポイント制度など、やりっ放しで効果の検証が疎かになっているものは多数あります。

9月末の期限前に打ち切りとなったエコカー補助金は、買い替え促進でメーカーを助けたのは間違いありませんが、需要の先食いで事後の落ち込みが心配されます。以前にも指摘しましたが、元々ドイツの制度を参考にしたスクラップインセンティブ制度で、買い替え対象の旧年式車の廃車が条件となりますので、期間中中古車の供給が細り中古市場が縮小したことが新車販売を支えた面もあり、2012年までは中古市場の枯渇を通じて新車販売を押し上げますから、落ち込みはあっても廉価な軽やコンパクトカーを中心に底堅い動きになると考えられます。

問題はむしろ廃車が増えたことで、解体、リサイクル過程でのCO2排出は増えているわけで、90年比25%削減を掲げる民主党政権として期間延長は妥当な判断だったのかは問われます。あと中古車ディーラーの廃業が相次ぎ、結果的に大企業であるメーカーを助け、中小企業である中古車屋を追い込んだのも問題です。

あと高速道路無料化ですが、2010年度に予定していた社会実験予算が6,000億円から1,000億円へ減額されましたが、メディア報道では小沢幹事長時代の幹事長室からの横槍で減額されたように言われております。しかし実際に減額査定したのは当時の藤井財務相ですし、一旦凍結された高速道路の新規着工も、麻生政権時代に週末ETC1,000円割引など一連のETC割引制度で計上された予算の流用であって、新規着工が社会実験予算の減額につながったわけではありません。早い話が前原国交相が予算折衝でしくじっただけなんですが、どうも前原氏は小沢氏に恨みを抱いているようで、今回の菅、小沢対決の構図も、前原氏の意向が働いた結果のようです。

代表選直前に鳩山氏が動いてトロイカ体制維持に傾いたときも、むしろ菅氏の方が小沢氏との関係修復を望んでいたのですが、それに対して「密室談合するなら自分が代表選に立つ」と言って菅氏を反小沢陣営に引き戻したというのですが、早い話菅氏を弾除けにして政敵を追い落とそうという話です。

政治は権力闘争であることは否定できませんし、公権力を国民のために行使するにも力が必要なのは確かで、その意味で今回の代表選は民主党としてはじめての権力闘争といえるものでしょう。そして前原氏のような若手が野心を持つことは歓迎すべきことではありますが、やや卑怯な戦法です。事後的に禍根を残さぬようにして欲しいところです。

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Saturday, September 11, 2010

軌間可変電車の「車輪の下」

別に「車輪の下」でシリーズ化するわけじゃないんですが^_^;、テーマに沿ったタイトルです。長崎は狭軌だけだったの続編です。

今月7日、国土交通省「軌間可変技術評価委員会」が開催され、結果が公表されました。

「軌間可変技術評価委員会」の開催結果について
詳細はリンク先のPDFファイルをダウンロードして確認してください。結論としては新幹線上の270km/h、在来線直線部の130km/hの営業運転にはメドがついたものの、台車重量の増加で曲線部の制限速度が10-40km/h低下するということで、台車軸距の短縮による軽量化と線路側のレール締結強化などの対策によって実現可能とする内容です。これまで台車の改良で対応可能としてきたのに対し、線路の改良も必要としたものです。

ま、予想通りの結果ですが、問題は軌間可変技術の開発可能性が長崎新幹線の新規着工区間(諫早―長崎)の着工に前原国交相が軌間可変列車の技術開発にメドがつかない限り、新規着工を認めない姿勢を示していたことに対する専門家委員会の答案というわけですから、俄にキナ臭くなります。

以前にも指摘したとおり、軌間可変電車には疑問を持っております。尚、フリーゲージトレイン(FGT)は和製英語で、ネイティブ英語でGeuge Changeable Train又はGauge Convertible Trainですので、ここではGCTのイニシャル表記とします。

車軸と台車枠にギミックを仕込んだGCTは元々重量バランスが難しく、特に可変車軸はバネ下重量の増加となりますから、レール転動の振動による軌道破壊の度合いが強まります。また台車枠幅可変で且つ新幹線上を270km/hで安定走行するためには軸距を長めに取る方が走行安定性が増しますし、大出力モーターの架装にも好都合ですが、その結果台車重量増と曲線通過時の踏面偏移角増で車輪フランジに横圧が余分にかかり、脱線限界を超え軌道狂いを増長します。つまり脱線しやすく線路を傷めるわけです。

それに対する評価委の見解が軌道強化や脱線防止レールなど線路側に対策する必要性を指摘しているのですが、耐久性に関しては継続試験を示唆しているように、これで大丈夫というわけではないことに留意すべきでしょう。明らかにGCT開発を前提とした長崎新幹線の事業推進を前提とした結論でしかなく、むしろ展望もなく漂流する結果となる懸念があります。

既にGCTの在来線曲線部の走行性能改善を目的とした台車軸距を50mm縮めた新試験台車は、既に屋内台上試験に供されておりますが、異常振動が発生し、安定走行には程遠い状況です。台車軸距を必要以上に短縮すれば当然そうなりますが-_-;。

GCTの開発に関しては事業仕分けでもストップがかからなかったのですが、客観的に実現可能といえる状況からは程遠いのが現状です。以前にも指摘しましたが、仮に懸案を全てクリアしたとしても、700系で285km/h、500系とN700系では300km/hで、短編成化できないため山陽新幹線から消えるであろう300系と同等では使えませんし、軌道破壊の度合いが大きいのに在来線サイズで定員も少なく、かなり迷惑な存在になるという点は見逃せません。JR西日本は既に乗り入れに難色を示しております。

ちなみに、現在残っている100系N編成「グランドひかり」の短編成化バージョンは最高速230km/hで運行しておりますが、元々JR東海の100系オリジナル車より歯車比を低くして高速性能を強化しており、設計最高速度270km/hとしておりましたが、軽量化された300系との比較で軌道を傷めるため、結局営業運転では実現しませんでした。ここから敷衍すればGCTの270km/h走行の実現可能性は低いと断言できます。

あとあまり指摘されませんが、GCTの軌間変更装置の通過時間は安全への配慮などで約5分程度となり、これ以上の短縮は難しいようです。つまり計画では新鳥栖と武雄温泉の2ヵ所で軌間変更を行うわけですから、都合10分の時間ロスが発生します。新八代のつばめリレーとつばめの対面ホーム乗り換えの所要時間が3分ですから、実は速くないということも指摘しておきます。

これだけ悪条件が揃っているんですから、GCTの開発は一時凍結して、既着工区間の武雄温泉―諫早間も含めて当初計画のスーパー特急方式に戻す方が、建設するにしても適切ではないでしょうか。成田スカイアクセスのように、条件さえ整えば新線区間で160km/h運転は可能ですし、新鳥栖の乗り換えに配慮すれば、新大阪―長崎間でも対航空で競争力を持たせることも十分可能です。これこそが「政治主導」だと思いますが。

結局大人たちの勝手な期待からGCT開発を前提とした無理なフル規格着工としたため、歯車が狂ってしまったのです。技術的に可能であっても、どれだけの時間と費用がかかるかが重要なんですね。時間と費用を無限にかけられるならば、確かに大抵の問題は解決可能ですが、逆に時間と費用の制約抜きには何事も実現しないとも言えるわけです。将に「車輪の下」の悲劇です。

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Wednesday, September 01, 2010

さらばアキカン

今日から9月ですが、暑さは相変わらずで早く終わってほしいところです。以前9月に終わると予言した菅政権がまだ続いております。結局参院選敗戦のけじめを付けないまま、政権延命に汲々とするありさまで、見苦しくも暑苦しい残暑のようです。

となれば小沢前幹事長の待望論が出るのは当然、なにしろ菅首相の無能ぶりは3ヶ月でバレてしまいました。政治リーダーとして無能は罪悪なんです。少なくとも安部政権以来の短命政権の連続で国民も身に染みております。正直なところ小沢氏の強引な政治手法は好きになれませんが、リーダーとしては無能な善玉より覚悟の悪玉の方がふさわしいのも確かです。

最近の官僚の隠語に「空きカン」というのがありまして、蹴れば大音響で世間を騒がすという意味なんですが、菅首相のことを言っているんですね。財務相時代に財務官僚のレクチャーが効いて財政再建派に宗旨替えし、参院選前に消費税増税を独断でぶち上げてしまうなど、完全に官僚のマリオネットと化しております。

その効果は当の財務官僚自身も驚き、「選挙前に言うとは思わなかった」と仕掛けた側が焦る状況になってしまいました。本当は選挙後にシレッと方向転換して欲しかったのに、官僚の頭を悩ます衆参ねじれをもたらしてしまいました。結果的に菅首相始め閣僚も含めて官僚に頼らざるを得なくなったのですから、空きカン効果が効き過ぎたわけです。

とはいえ去年政権交代を望んで民主党に投票した国民にとってはとんでもない話です。あくまでも衆院選マニフェストで約束したことを実現するために十分汗をかいたとは言えません。それどころか参院選で「消費税10%」を打ち出した自民党に擦り寄ろうとして逆に「マニフェストを見直せば協議に応じる」として足許見られている状況では、政権維持に汲々とする菅首相は必ず安易な妥協に走ります。そうなれば次の総選挙で政権の座を失うことになりますが、それこそ自民党の思う壺でしょう。

野党である自民党側から見れば、菅氏と小沢氏のどちらが厭かといえば、小沢氏でしょう。陸山会事件も東京地検の2度にわたる不起訴処分が出ており、仮に検察審査会の起訴相当の評決が出れば強制起訴となり、指定された弁護士が検察に代わって起訴するのですが、弁護士は検察と違って捜査権がありませんから、結局新事実は出てこないまま、無罪となるでしょう。法的には決着が付いているといえます。

そもそも陸山会事件ですが、当初西松建設の社員などからの3,400万円の献金が事実上の企業団体献金に相当する迂回献金だという指摘だったのですが、地検特捜部が動く事件としては額も小さく、収支報告書にも記載されていて形式上違法とは言えないためアンバランスでした。

さすがに立件は見送られましたが、次に水谷建設元会長の収監中の証言により5,000万円の裏金疑惑が報じられ、岩手県の胆沢ダムの工事受注を巡る談合が疑われましたが、発注元の国交省が談合なしを証言、また公取委も動来ませんでした。加えて水落建設元会長の公判で自白調書が信用できないとして裁判官に否定されてしまい、これも立件には結びついておりません。

現在地検特捜部が捜査しているのは世田谷区の土地購入費の4億円の出所が不明として政治資金規正法の収支報告書虚偽記載が疑われているのですが、実は2004年の収支報告書で「小澤一郎より4億円借入」の記載があり、2005年に土地購入費として4億円が支払われているので、表面上辻褄は合っております。これは地検の強制捜査で小沢氏自身も証言し、記者会見でも明らかにしておりますので、そうなると何が疑惑なのかよくわかりません。

報道によれば2004年の借入の記載は「小沢氏名義の定期預金担保の銀行借入であって、土地購入費とは別」ということらしいんですが、それを示す証拠は示されておりません。総選挙での敗北濃厚だった麻生政権時代に法相の陰の指揮権による強制捜査が疑われます。

となればターゲットにされた小沢氏が首相となることで、自民党大物議員に同じことを仕掛ける可能性も皆無ではないでしょう。実際に手を下さなくても、自民党側が勝手に恐怖を感じてくれれば、結局国会運営は与党主導で進められることになります。謂わば水鳥の羽音に怯えて敗走した平家状態です(笑)。

本日の共同記者会見でも応酬がありましたが、2011年度予算の概算要求でも各省庁一律1割減というのは政治主導でも何でもありません。達成した省庁には特別枠で追加を認めるというのもバカバカしいのですが、出てきた結果は本来請求すべき項目を特別枠に移し変えて見かけを整えただけで、96兆円もの規模に達しております。こんな子供だましで済まそうとする菅政権には呆れます。

結局予算の無駄への切り込みが甘いために、官僚になめられているのです。例えば八ッ場ダムですが、本体工事は凍結されたものの、付帯工事はどんどん進んでいて既成事実が積み上がっております。どういうことかといえば、本体工事は国交省発注なので止められますが、付帯工事は県発注で政府に止める権限がないのですが、それを逆手に取られているのです。しかも国交省は公共事業の縮小を補填する一括交付金を地方に渡しており、八ッ場ダムの付帯工事に流用されているのです。加えて県発注工事の受注率は軒並み9割超と談合が疑われる水準ですが、受注企業が保守系の地元選出国会議員と県議に献金しており、謂わば公金横領で小沢氏の迂回献金疑惑などより悪質ですが、それを見過ごす政務三役も脇が甘いです。

元々前原国交相にはシンパシーを抱いておりましたが、こういった脇の甘さは若さゆえの経験値不足なのかもしれません。高速道路無料化についても、JRからクレームをもらうと鉄ちゃん大臣の性か熱意が萎んだように見えます。2010年度の無料化社会実験予算の減額を幹事長室の横槍と批判しましたが、その一方で凍結したはずの高速道路4車線化着工を復活させるなど不可解な決定をしており、担当大臣として優先順位を間違えていないかと疑われます。

マニフェストを実行したくても財源がないとよく言われますが、財源を見つけるkとができないだけです。日本の財政赤字は確かに巨大ですが、単年度でGDP比8-9%程度というのは、有効需要創出のための財政出動としては突出したものではありません。ちなみに赤字国であるアメリカやイギリスの方がGDP比が上です。

いや問題は累積赤字なんだ、その場合GDP比200%に近づいていると言われますが、これも要注意、諸外国政府の累積債務は通常政府の負債から政府保有の金融資産額を控除したネットの金額で見られます。日本の累積900兆円の赤字というのはグロスの数字で、政府保有のが金融資産500兆円ほどありますので、累積でもGDP比80%程度で特段突出した数字ではありません。もちろんそもそも政府がそんなに巨大な金融資産を保有する国はアラブの産油国など例外的で、実はこの政府保有金融資産こそが諸悪の根源なんです。

例えば外国為替特別会計ですが、本来は貿易決済が滞らないように政府が外貨を保有して備えとするのが本来の趣旨ですが、6ヶ月決済の多い貿易取引では、輸入代金の決済が滞らないための備えとして輸入額の半年分あれば万全ということになります。純輸出で07年度74兆円が直近のピークですから、その半分として37兆円にやや色を付けても40兆円あれば万全なわけですが、実際は100兆円を超えております。そのほとんどが米ドル建てで米国債で保有されております。

ここまで膨らんだ理由は過去の円売りドル買い介入の結果ですが、特に2003-2004年の大介入で35兆円ものドル資産を購入した結果です。それで円安となり外需主導で景気回復したわけですが、リーマンショックでもとの木阿弥となりました。

この外為特会は元々政府短期債券という短期国債を発行して円資金を調達して実施されますが、当然長期債である米国債の償還前に償還しなければならず、借り換えが日常的に行われます。その結果長短金利差による剰余金が発生するわけです。しかも日米で元々金利差があるので、剰余金の額はかなり大きいのです。財源問題で所謂埋蔵金といえば必ず外為特会が取り上げられますが、このように日常的に税外収入が得られるわけですね。

一方円高で含み損が出ているはずという指摘もありますが、通常米国債が償還期限を迎えても再度ドル建て債に投資されるので、日本政府がドルを売らない限り、言い換えれば円高誘導の介入をしない限り実現しない損失です。というかそもそも米国債のクーポン(金利)もドルで支払われますが、円に換えれば政府当局がドルを売ることになり、表面上ドル売り円買い介入となって相場を動かしてしまうので、ドル建ての金利分はドル資産へ再投資されるため、剰余金を税外収入とするためには、追加で政府短期債券を発行して相当額の円資金を調達することになり、ある意味国債発行と同じですが、特例国債(赤字国債)と違って予算関連法を成立させる必要はなく、より自由度が高いわけです。

逆に言えば常に短期債の借り換えで維持されている特会ですから、景気が良くなって調達金利が高くなれば剰余金自体が減ることになりますが、そのときには税収が増えるわけですから、相互補完性はあるわけですが、残高が巨額であるために、現在のような円高局面では逆に円売り介入が仕掛けられない理由にもなっていて、僅かな税外収入のために無駄にお金を積んでるとも言えます。

やや長くなりましたが、何が言いたいかといえば、巨大化した政府金融資産こそが貨幣の退蔵を助長し投資マインドを冷やす存在となっているということです。だから日銀が貨幣供給を増やしてもマネーサプライが増えず、流動性のわなが生じて経済を冷やしているのです。とはいえ一朝一夕には見直せませんから、ある程度時間をかけて無駄な政府金融資産の縮小を図る必要があります。その過程で相当額の財政資金が捻出できるのはいうまでもありません。そのためには官僚に牛耳られた国家統治を国民の手に取り戻す必要があり、そのためには突破力のある政治リーダーでなければ勤まらないのです。

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