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Saturday, September 11, 2010

軌間可変電車の「車輪の下」

別に「車輪の下」でシリーズ化するわけじゃないんですが^_^;、テーマに沿ったタイトルです。長崎は狭軌だけだったの続編です。

今月7日、国土交通省「軌間可変技術評価委員会」が開催され、結果が公表されました。

「軌間可変技術評価委員会」の開催結果について
詳細はリンク先のPDFファイルをダウンロードして確認してください。結論としては新幹線上の270km/h、在来線直線部の130km/hの営業運転にはメドがついたものの、台車重量の増加で曲線部の制限速度が10-40km/h低下するということで、台車軸距の短縮による軽量化と線路側のレール締結強化などの対策によって実現可能とする内容です。これまで台車の改良で対応可能としてきたのに対し、線路の改良も必要としたものです。

ま、予想通りの結果ですが、問題は軌間可変技術の開発可能性が長崎新幹線の新規着工区間(諫早―長崎)の着工に前原国交相が軌間可変列車の技術開発にメドがつかない限り、新規着工を認めない姿勢を示していたことに対する専門家委員会の答案というわけですから、俄にキナ臭くなります。

以前にも指摘したとおり、軌間可変電車には疑問を持っております。尚、フリーゲージトレイン(FGT)は和製英語で、ネイティブ英語でGeuge Changeable Train又はGauge Convertible Trainですので、ここではGCTのイニシャル表記とします。

車軸と台車枠にギミックを仕込んだGCTは元々重量バランスが難しく、特に可変車軸はバネ下重量の増加となりますから、レール転動の振動による軌道破壊の度合いが強まります。また台車枠幅可変で且つ新幹線上を270km/hで安定走行するためには軸距を長めに取る方が走行安定性が増しますし、大出力モーターの架装にも好都合ですが、その結果台車重量増と曲線通過時の踏面偏移角増で車輪フランジに横圧が余分にかかり、脱線限界を超え軌道狂いを増長します。つまり脱線しやすく線路を傷めるわけです。

それに対する評価委の見解が軌道強化や脱線防止レールなど線路側に対策する必要性を指摘しているのですが、耐久性に関しては継続試験を示唆しているように、これで大丈夫というわけではないことに留意すべきでしょう。明らかにGCT開発を前提とした長崎新幹線の事業推進を前提とした結論でしかなく、むしろ展望もなく漂流する結果となる懸念があります。

既にGCTの在来線曲線部の走行性能改善を目的とした台車軸距を50mm縮めた新試験台車は、既に屋内台上試験に供されておりますが、異常振動が発生し、安定走行には程遠い状況です。台車軸距を必要以上に短縮すれば当然そうなりますが-_-;。

GCTの開発に関しては事業仕分けでもストップがかからなかったのですが、客観的に実現可能といえる状況からは程遠いのが現状です。以前にも指摘しましたが、仮に懸案を全てクリアしたとしても、700系で285km/h、500系とN700系では300km/hで、短編成化できないため山陽新幹線から消えるであろう300系と同等では使えませんし、軌道破壊の度合いが大きいのに在来線サイズで定員も少なく、かなり迷惑な存在になるという点は見逃せません。JR西日本は既に乗り入れに難色を示しております。

ちなみに、現在残っている100系N編成「グランドひかり」の短編成化バージョンは最高速230km/hで運行しておりますが、元々JR東海の100系オリジナル車より歯車比を低くして高速性能を強化しており、設計最高速度270km/hとしておりましたが、軽量化された300系との比較で軌道を傷めるため、結局営業運転では実現しませんでした。ここから敷衍すればGCTの270km/h走行の実現可能性は低いと断言できます。

あとあまり指摘されませんが、GCTの軌間変更装置の通過時間は安全への配慮などで約5分程度となり、これ以上の短縮は難しいようです。つまり計画では新鳥栖と武雄温泉の2ヵ所で軌間変更を行うわけですから、都合10分の時間ロスが発生します。新八代のつばめリレーとつばめの対面ホーム乗り換えの所要時間が3分ですから、実は速くないということも指摘しておきます。

これだけ悪条件が揃っているんですから、GCTの開発は一時凍結して、既着工区間の武雄温泉―諫早間も含めて当初計画のスーパー特急方式に戻す方が、建設するにしても適切ではないでしょうか。成田スカイアクセスのように、条件さえ整えば新線区間で160km/h運転は可能ですし、新鳥栖の乗り換えに配慮すれば、新大阪―長崎間でも対航空で競争力を持たせることも十分可能です。これこそが「政治主導」だと思いますが。

結局大人たちの勝手な期待からGCT開発を前提とした無理なフル規格着工としたため、歯車が狂ってしまったのです。技術的に可能であっても、どれだけの時間と費用がかかるかが重要なんですね。時間と費用を無限にかけられるならば、確かに大抵の問題は解決可能ですが、逆に時間と費用の制約抜きには何事も実現しないとも言えるわけです。将に「車輪の下」の悲劇です。

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Comments

そもそも九州新幹線の長崎ルートって必要なんでしょうかね?
個人的にはミニ新幹線方式か新八代方式(新鳥栖で在来線特急と対面乗換え)にした方が良いと思います。並行在来線問題がなく、ローコストで済みますからね。まあ、そうなると嬉野温泉はうれしくないんでしょうけど。

GCTはスペインのタルゴが有名ですが、電車方式では難しいみたいですね。wikiによると「タルゴの本来の開発目的は、左右独立車輪採用による車輪磨耗の軽減と、低重心化による曲線通過速度向上」らしいので、日本は皮肉にも真逆の結果になりましたね。

Posted by: yamanotesen | Sunday, September 12, 2010 at 01:25 AM

長期間、内戦と軍政で停滞していたスペインでは、鉄道のメンテナンス状態が悪く、蒸篭を傷めない車両の開発は止むに止まれぬものでした。

車軸の通っていない独立車輪を採用することで、カーブでの踏面偏倚角ゼロとなり、低重心化と軽量化も併せて軌道への負担を減らすことができたわけです。

軌間可変メカニズムは独立車輪から派生して、軸受けごと左右にスライドさせるという驚くほど単純な方法ですが、足回りのシンプルな仕組みだから可能だったわけですし、その後の高速化では、連接構造を活かして車輪のマクラバネを高い位置に置いた驚くほどシンプルな振り子システムを導入するなど改良が重ねられております。

スペインにとっては自国の鉄道の弱点を克服するためだったのが、逆転の発想で世界最先端の高速列車へと進化させたわけで、偏差値秀才を集めた官僚の模範答案では出てこないものです。

ちなみにスペインでは既に電車方式のGCTとして120系アルビアという4連の高速列車を開発済みですが、タルゴの経験があればこそでしょう。

Posted by: 走ルンです | Sunday, September 12, 2010 at 02:18 PM

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