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Sunday, November 14, 2010

さくら・みずほに1週間先んずるはやぶさ

やや長い枕にお付き合いください^_^;。APEC開催中で鎌倉もオバマがやって来るということで交通規制で出かける気力も失せる状況です。早く終わって欲しい。

尖閣沖ビデオ流出事件は日本国内では大騒ぎですが、中国をはじめ世界は冷静で、この落差は何なんだろうかと思います。ビデオ公開の可否は少なくとも政府が非公開を選択した以上、それに不満だからとネットへ流出させた神戸海保の保安官の所業は断罪されるべきことです。これを容認する議論を敷衍すれば軍事クーデターも容認されることになり、民主政治の根幹を揺さぶることになります。しかしメディアにそのような論調はほぼ皆無で、政局がらみ報道に終始しているのが情けないです。報道が質すべきは権力の乱用であって、事態を面白がっているとしか見えない不見識は大概にして欲しいところです。

一方で公安関連の機密文書漏洩の方が遥かに大きな問題ですが、こちらは知能犯の仕業と見えて、犯人の陰すら見えない状況で、報道の後追いもほとんどなくお寒い限りです。尖閣問題も含めてデジタル時代の情報管理のあり方に対応できていない政府のあり方こそが問題なはずです。

尖閣ビデオは本来第三者の目撃証言を得にくい海上の警備行動で、海保自身が正当性を証明するために撮影されたもので、本来は公開を前提としたものが、船長の逮捕、書類送検で公判の証拠資料となったために、法令により公判前開示が制限されたもので、この時点では隠そうとして隠したわけではないんですが、一方で海事はそのビデオ映像を編集し一時庁内イントラネットの共有ホルダーに置いていたわけですから、扱いの不徹底があったことは指摘されます。その上で10月18日に馬淵国交相が管理厳格化命令を発して公開を止めたわけですから、これをネットへ漏らした行為の問題点は言い訳の余地がないことになります。尚、船長の釈放で公判の可能性がなくなったという指摘もありますが、沖縄地検は船長を処分保留としており、且つ国外退去により公訴時効が停止してますから、類似行為で再度日本の当局に拘束されたときには問題を蒸し返せるわけで、公判の証拠資料という位置づけに変わりはありません。

コピー可能でネットで拡散する性質のデジタル情報を通常の物的証拠と同じようなスタンスで扱っていたのはおそらく海保だけの問題ではないはずで、記憶に新しいところでは、大阪地検特捜部の前田主任検事によるFD改ざん事件に見られるように、その証拠能力も一定の留保をつける必要があります。同時に一旦ネットへ流出してしまえば、削除しても拡散して世界中で視聴されるわけですから、そもそも非公開は無意味との議論もありますが、政府の公式な態度の問題は依然存在するわけです。そもそも生画像は3時間を越えるもので、編集されているわけですから、編集内容次第でその証拠能力にも違いが出るわけでもあり、取り扱いが難しい問題です。情報管理面での課題です。

一方大騒ぎしたあげく本交渉への参加は見送られたTPP加盟問題ですが、こちらは意外にも加盟交渉中の9カ国から日本の参加に歓迎の態度が示されました。もちろん文字通りの外交辞令が含まれ、9カ国の交渉もはかばかしく進展しない中、日本が加わればもっと遅れるという本音を隠しているんですが、尖閣沖問題やレアアース問題などで世界が中国に警戒心を持ったことと無縁ではありますまい。中国の台頭に多国間の枠組みで対抗せざるを得ない実態が浮かびます。

そもそも高齢化と人口減少で内需が縮む日本市場を囲い込んで良いことなんか何もないわけで、国を開いて経済を活性化しようというスタンスは大賛成です。そもそも作付面積の4割も減反している米からしても、輸出して海外市場を開拓しないで持続できるわけがないんで、700%超という高率完全を維持するために、消費者が買わないミニマムアクセス米を輸入して杜撰な管理をした挙句、事故米問題を引き起こす農政は見直されるべきです。

んで、あまり話題になっておりませんが、日本が得意とする?製造業で、実は似たような構図が出てきております。例えば自動車ですが、エコカー補助金の終了で25%近く下落した新車販売ですが、冷静に実数で追えば、東麓車、軽自動車含め国内登録車両数は7,000万台程度を言われます。車の寿命を20年として年間350万台程度の買い替え需要は必ず発生するわけですが、1990年に778万台をつけた後減少を続けてますが、それでも2001年時点で596万台をつけた後、2009年には461万台まで減少しております。2010年は補助金終了の駆け込み需要もあり、2009年は超える見込みですが、それでも500万台に届かないと見られます。

350万台を底として、エコカー補助金などで需要を嵩上げした結果が、2001年水準にも届かないのは、人口減少と高齢化の進捗が原因ですが、一方の国内生産能力はフル稼働で1,100万台に達します。現実には輸出分が上乗せされますが、それでも700-800万台規模で辛うじて採算ラインの7割稼動を確保している状況です。今後高齢化と人口減少は続きますから、いずれ国内新車販売400万台割れも確実です。実は自動車産業も"減反"が必要な状況にあります。その意味で老朽化した追浜工場を閉鎖してマーチのタイ生産と逆輸入を決めた日産の判断は正しいのです。

というわけで、農業セクターから聞こえてくる「輸出企業のために農業を犠牲にするのか」という議論は既に成り立たなくなっております。恐るべき問題は既に足許で起きていて、ご存知の通り今年の新米価格が軟調で、夏の猛暑など理由付けはいろいろされてますが、実は農家の個別所得保障を原資とする買い手側の値引き圧力に屈した形で相場が形成されている結果なんです。つまり人口減少による縮む日本の胃袋がデフレのわなを引き起こしているのです。良かれと思って始めた補助金がむしろマイナスという点も共通で、現在の延長線上に未来はないのは明らかです。

その中で期待が高まるインフラ輸出で、鉄道もその1つですが、なかなか成果は見えません。注意が必要なのは、通常の消費財や耐久財と違って、インフラ輸出は海外投資という側面が強いという点で、日産がマーチの工場をタイに置くような話です。例えば東京都が水道局の技術を世界へ売り込もうとしておりますが、自治体による対外投資はリスク負担の問題が生じてそのままではできないわけで、本来は水道局を民営化して民会企業として世界に投資していくというスタンスこそ必要なんですが、それができないから商社を幹事とする官民コンソーシアムの形でお茶を濁して、欧州の水メジャーと対抗できるのかという問題が突きつけられているのです。

鉄道の世界ではJRの存在が同様に壁となっている現実があります。民営化されたとはいえ、国鉄同様にメーカーに対して支配力を有するJRがあえて海外投資でリスクを取ることに消極的で、台湾でも支援とは言いがたい半身の姿勢に終始し、中国高速鉄道でも冷たくあしらう姿勢をとったようにリスクを取りきれないJRの姿勢は問題です。

そんな中でJR東日本からはやぶさが11年3月5日デビューを発表しました。JR東日本のプレスリリース(PDF)にあるように、東京―新青森間2往復、仙台―新青森間1往復で、指定席特急料金がはやてより500円高い設定としておりますが、JR東日本としてはのぞみタイプの付加料金は新機軸です。当面はやてとの共存となることから差をつけたのでしょう。

注目すべきは3月5日という日付です。11年3月といえば、12日に九州新幹線全通で山陽新幹線との相互直通でさくら、みずほが走り出す日なんですが、僅か1週間とはいえ先んじたのは、以前にも取り上げたようにJR東日本の危機感の表れです。ビジネス需要が見込めない中でのぎりぎりの判断ということですね。

JR東日本の発表に地元は落胆を隠せません。

asahi.com(朝日新聞社):はやぶさ、もっと停車してよ… 八戸・七戸十和田ため息 - 鉄道 - トラベル
とはいえ現実は厳しく、特にうたかたの終着駅となった八戸は、開業当時こそ路線バス網が集まり二次交通の拠点となる傾向が見えたものの、開業ブームが去ると共に路線バス網が立ち枯れ、地元の南部バスはリストラを余儀なくされました。

その過程でJRバス関東、国際興業、十和田観光電鉄と4社共同運行で始まった夜行高速バス、シリウス号が揺さぶられ、JRバス関東はJRバス東北に運行肩代わり、国際興業は系列の十和田観光電鉄へ丸投げで、取り残された南部バスは共同運行から離脱、提携相手をウィラートラベルに求めてツアーバスとして運行を維持しています。裏返せばここまで追い詰められたわけです。

そういった中で迎える新青森開業は早くも八戸の悲劇の再現が囁かれております。JR東日本は従来、整備新幹線を成長分野として取り組んできて、遂に青森へ到達するわけですが、そこは成長分野としての整備新幹線事業の終着点でもあるということになりそうです。ビジネス需要が見込めなければ、時間を買う顧客は少ないわけで、リニアと同じ問題に直面します。ブームが去った後の悲惨さは想像を絶します。その中で新機軸を打ち出しながら話題を提供しブームを煽るしか打つ手がないということで僅か1週間のさくら、みずほ先行作戦ということですね。

余談ですが、JR東日本がはやぶさの愛称名を押さえたために、九州新幹線肝いりの速達列車にはやぶさが使えないのは残念でしょう。元々みずほの運行はJR九州とJR西日本の意識の差が顕在化した問題で、航空との競争を重視したJR九州の危機感の表れです。みずほは人気列車はやぶさの輸送力補完目的の不定期列車だったため愛称名として格下感があります。

ついでにえばそもそもさくらも、前身は人気列車あさかぜの輸送力補完目的の不定期特急さちかぜの定期格上げ時に改称されたもので、大元は戦前の三等特急"桜"に由来するものの、やはり格下感は否めず、はやぶさを押さえたJR東日本が恨めしいところでしょう。それでもビジネス客が見込める九州新幹線の方がビジネス的には成功確率が高いといえます。

というわけで、整備新幹線の枠組みは限界といえます。JR東日本は既に次を睨んで鉄道技術の世界への売り込みに意欲を滲ませますが、ブラジルをはじめBOT(建設、運営、譲渡)方式が前提となり、リスクを取って建設と運営を一体で行い、債務償還した後に譲渡するという枠組みとなり、通常35年程度の償還期間が設定されますから、その間のリスクテイクができなければならないわけで、ハードルは高いわけです。しかしそれでも国内に留まればジリ貧になりかねない中で、企業として成長を目指すならば避けて通れない道でもあります。

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Comments

はやぶさといえば、E5系のグランクラスはいつお披露目されるんでしょうかね?
量産車はまだ出ていないようですし、来年3月デビューという割には遅い気がします。

Posted by: yamanotesen | Sunday, November 14, 2010 10:07 PM

3月開業から逆算すれば、年内には量産車を落成させて新青森開業と同時に走り込みを始めると共に、量産先行車の量産化改造をしなければならないですね。とすると実車はまもなく登場でしょうか。鉄道ダイヤ情報要チェックですね^_^;。

Posted by: 走ルンです | Monday, November 15, 2010 09:12 PM

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