« October 2010 | Main | December 2010 »

November 2010

Saturday, November 20, 2010

空から山へ華麗なるN'の転身

昨日経営再建中の米GMが再上場し、売り出し価格を上回る値をつけ、NYSEの1日の取引高の1割を占める好調ぶりでした。とはいえ米FRBのよる総額6,000億ドル規模の量的緩和第二段(QE2)で無理やり資産価格を底上げした感があります。GM再上場は中間選挙で歴史的大敗をしたオバマ政権にとっては追い風となることでもあり、穿った見方ですが、FRBの緩和策はGM再上場を助けて政権に貸しを作ったのかもしれません。9月の唐突な単独為替介入で輸出企業の中間決算を助けた日本政府と大差ないかも。次なるバブル崩壊のカウントダウンが始まったとも言えます。

世界一の地位を降りたとはいえ、米国内ではシェアトップですし、加えて中国市場では外国メーカー中トップの地位にあり、以外にも中国に強いので、エコカー補助金が終わって激減の日本と、やはりGMなどビッグ3を助けようとして補助金を出したのにトヨタなど日本勢がさらった米国内市場の比重が高いトヨタよりも成長性が期待できます。余談ですがビッグ3のシェアを奪ってトップの地位についたトヨタはある意味狙われやすいポジションだったわけで、例のリコール騒動も、トヨタの対応のまずさはあったものの、尖閣問題同様政治性を否定できないところです。

一方、同様に政府支援で経営再建中のJALですが、希望退職が予定数に満たず、整理解雇に踏み込まざるを得なくなって労使の軋轢が増すなど、スピード感に欠ける展開です。財務を立て直せば本業自体は強いGMに対し、本業自体が弱体化したJALの再建の難易度は高いのです。

羽田空港の国際定期便復活と成田空港の発着枠拡大を追い風にできないどころか、政府がオープンスカイに政策転換して競争環境は増すばかり、そんな中でスカイマークがエアバスA380を5機購入して長距離国際線へ参入を表明しました。中小型機で近中距離シャトル運航というLCCのセオリーに外れた対応で、エコノミーのモノクラスなら最大800座席以上となるA380をどのように使うつもりなのか不明ですが、あるいはJAL破綻後を睨んでいるかもしれません。

そんな風雲急を告げる日本の空から山へ温泉へ華麗なる転身のニュースです。

東京新聞:特急「日光号」「きぬがわ号」 来年4月に車両一新 二社一寺をイメージ:栃木(TOKYO Web)
初代N'EX専用車253系をリニューアルの上、東武鉄道直通特急日光、きぬがわの485系、183・189系を置き換えるというニュースです。イメージイラストのように大胆な外装デザインを採用すると共に、東武スペーシアと同等の1,100mmピッチの回転リクライニングシートに多目的室など内装もリニューアルし、来年4月16日から運行開始を予定します。

種車は2002年登場の200番台で足回りもVVVF化され最高速130km/h(営業運転では120km/h)とし、外装のカラーリングは東武スペーシアに準じる二社一寺を表す赤と朱にニッコウキスゲの黄色帯をあしらった大胆なもので、100番台を名乗ります。N'EXのイメージを消す狙いもあるのでしょう。この辺はE259系登場の記事とコメント欄でも指摘しましたが、12両という両数で転用は頭をよぎったものの、N'EXのイメージが強すぎることがネックと考えておりましたので、半分だけ当たりかも^_^;。

一方で253系のブロックパターン塗装をそのまま活用するというニュースも。

長野電鉄の新車両「スノーモンキー」に 11年春に運行  :日本経済新聞
赤いほっぺのお猿さんというのが笑わせますが、経営の厳しい中小私鉄の観光特急として余分な手を加えずコストを抑える必要はあるわけですが、機能的なブロックパターン塗装にほのぼの解釈の落差が妙ですね(笑)。

とはいえ笑えないのが観光特急の利用不振の現状です。元々日光、きぬがわも東武のスペーシアに対してJR東日本が中古の485系、183・189系のリニューアル車というのが不釣合いでしたが、実際にスペーシア充当列車とは乗車率に差がある状況ということでてこ入れとしては遅きに失したのかもしれません。

加えて高速道路のETC1,000円割引の影響も受けて利用を減らしているようですし、今後高速道路無料化の影響もビジネス列車以上に出るでしょうから、省エネに反する国鉄型利用の継続もいずれ見直す必要もあり、とはいえとても新製車投入は無理ということで、経年の浅い253系200番台に白羽の矢が当たったということでしょう。

丁度近鉄でも2010年3月19日改正で、伊勢志摩特急の削減を打ち出しました。詳細はリリース(PDF)をご参照ください。加えて2012年には停車駅見直しや無人駅拡大、集電繰上げなど一層の減量ダイヤ改正を予定しており、観光輸送の比重が高い近鉄の苦悩は深刻です。

そんな中で気を吐くのがJR九州で、40系改造のはやとの風とか高千穂鉄道のレトロ車を引き取って特急海幸山幸として走らせたりと、何でもありの話題性で集客にいそしんでおり、253系の日光、きぬがわ転用はそれらに倣ったという見方も可能です。観光輸送はとにかく目先を変えないとダメということなんですね。

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Sunday, November 14, 2010

さくら・みずほに1週間先んずるはやぶさ

やや長い枕にお付き合いください^_^;。APEC開催中で鎌倉もオバマがやって来るということで交通規制で出かける気力も失せる状況です。早く終わって欲しい。

尖閣沖ビデオ流出事件は日本国内では大騒ぎですが、中国をはじめ世界は冷静で、この落差は何なんだろうかと思います。ビデオ公開の可否は少なくとも政府が非公開を選択した以上、それに不満だからとネットへ流出させた神戸海保の保安官の所業は断罪されるべきことです。これを容認する議論を敷衍すれば軍事クーデターも容認されることになり、民主政治の根幹を揺さぶることになります。しかしメディアにそのような論調はほぼ皆無で、政局がらみ報道に終始しているのが情けないです。報道が質すべきは権力の乱用であって、事態を面白がっているとしか見えない不見識は大概にして欲しいところです。

一方で公安関連の機密文書漏洩の方が遥かに大きな問題ですが、こちらは知能犯の仕業と見えて、犯人の陰すら見えない状況で、報道の後追いもほとんどなくお寒い限りです。尖閣問題も含めてデジタル時代の情報管理のあり方に対応できていない政府のあり方こそが問題なはずです。

尖閣ビデオは本来第三者の目撃証言を得にくい海上の警備行動で、海保自身が正当性を証明するために撮影されたもので、本来は公開を前提としたものが、船長の逮捕、書類送検で公判の証拠資料となったために、法令により公判前開示が制限されたもので、この時点では隠そうとして隠したわけではないんですが、一方で海事はそのビデオ映像を編集し一時庁内イントラネットの共有ホルダーに置いていたわけですから、扱いの不徹底があったことは指摘されます。その上で10月18日に馬淵国交相が管理厳格化命令を発して公開を止めたわけですから、これをネットへ漏らした行為の問題点は言い訳の余地がないことになります。尚、船長の釈放で公判の可能性がなくなったという指摘もありますが、沖縄地検は船長を処分保留としており、且つ国外退去により公訴時効が停止してますから、類似行為で再度日本の当局に拘束されたときには問題を蒸し返せるわけで、公判の証拠資料という位置づけに変わりはありません。

コピー可能でネットで拡散する性質のデジタル情報を通常の物的証拠と同じようなスタンスで扱っていたのはおそらく海保だけの問題ではないはずで、記憶に新しいところでは、大阪地検特捜部の前田主任検事によるFD改ざん事件に見られるように、その証拠能力も一定の留保をつける必要があります。同時に一旦ネットへ流出してしまえば、削除しても拡散して世界中で視聴されるわけですから、そもそも非公開は無意味との議論もありますが、政府の公式な態度の問題は依然存在するわけです。そもそも生画像は3時間を越えるもので、編集されているわけですから、編集内容次第でその証拠能力にも違いが出るわけでもあり、取り扱いが難しい問題です。情報管理面での課題です。

一方大騒ぎしたあげく本交渉への参加は見送られたTPP加盟問題ですが、こちらは意外にも加盟交渉中の9カ国から日本の参加に歓迎の態度が示されました。もちろん文字通りの外交辞令が含まれ、9カ国の交渉もはかばかしく進展しない中、日本が加わればもっと遅れるという本音を隠しているんですが、尖閣沖問題やレアアース問題などで世界が中国に警戒心を持ったことと無縁ではありますまい。中国の台頭に多国間の枠組みで対抗せざるを得ない実態が浮かびます。

そもそも高齢化と人口減少で内需が縮む日本市場を囲い込んで良いことなんか何もないわけで、国を開いて経済を活性化しようというスタンスは大賛成です。そもそも作付面積の4割も減反している米からしても、輸出して海外市場を開拓しないで持続できるわけがないんで、700%超という高率完全を維持するために、消費者が買わないミニマムアクセス米を輸入して杜撰な管理をした挙句、事故米問題を引き起こす農政は見直されるべきです。

んで、あまり話題になっておりませんが、日本が得意とする?製造業で、実は似たような構図が出てきております。例えば自動車ですが、エコカー補助金の終了で25%近く下落した新車販売ですが、冷静に実数で追えば、東麓車、軽自動車含め国内登録車両数は7,000万台程度を言われます。車の寿命を20年として年間350万台程度の買い替え需要は必ず発生するわけですが、1990年に778万台をつけた後減少を続けてますが、それでも2001年時点で596万台をつけた後、2009年には461万台まで減少しております。2010年は補助金終了の駆け込み需要もあり、2009年は超える見込みですが、それでも500万台に届かないと見られます。

350万台を底として、エコカー補助金などで需要を嵩上げした結果が、2001年水準にも届かないのは、人口減少と高齢化の進捗が原因ですが、一方の国内生産能力はフル稼働で1,100万台に達します。現実には輸出分が上乗せされますが、それでも700-800万台規模で辛うじて採算ラインの7割稼動を確保している状況です。今後高齢化と人口減少は続きますから、いずれ国内新車販売400万台割れも確実です。実は自動車産業も"減反"が必要な状況にあります。その意味で老朽化した追浜工場を閉鎖してマーチのタイ生産と逆輸入を決めた日産の判断は正しいのです。

というわけで、農業セクターから聞こえてくる「輸出企業のために農業を犠牲にするのか」という議論は既に成り立たなくなっております。恐るべき問題は既に足許で起きていて、ご存知の通り今年の新米価格が軟調で、夏の猛暑など理由付けはいろいろされてますが、実は農家の個別所得保障を原資とする買い手側の値引き圧力に屈した形で相場が形成されている結果なんです。つまり人口減少による縮む日本の胃袋がデフレのわなを引き起こしているのです。良かれと思って始めた補助金がむしろマイナスという点も共通で、現在の延長線上に未来はないのは明らかです。

その中で期待が高まるインフラ輸出で、鉄道もその1つですが、なかなか成果は見えません。注意が必要なのは、通常の消費財や耐久財と違って、インフラ輸出は海外投資という側面が強いという点で、日産がマーチの工場をタイに置くような話です。例えば東京都が水道局の技術を世界へ売り込もうとしておりますが、自治体による対外投資はリスク負担の問題が生じてそのままではできないわけで、本来は水道局を民営化して民会企業として世界に投資していくというスタンスこそ必要なんですが、それができないから商社を幹事とする官民コンソーシアムの形でお茶を濁して、欧州の水メジャーと対抗できるのかという問題が突きつけられているのです。

鉄道の世界ではJRの存在が同様に壁となっている現実があります。民営化されたとはいえ、国鉄同様にメーカーに対して支配力を有するJRがあえて海外投資でリスクを取ることに消極的で、台湾でも支援とは言いがたい半身の姿勢に終始し、中国高速鉄道でも冷たくあしらう姿勢をとったようにリスクを取りきれないJRの姿勢は問題です。

そんな中でJR東日本からはやぶさが11年3月5日デビューを発表しました。JR東日本のプレスリリース(PDF)にあるように、東京―新青森間2往復、仙台―新青森間1往復で、指定席特急料金がはやてより500円高い設定としておりますが、JR東日本としてはのぞみタイプの付加料金は新機軸です。当面はやてとの共存となることから差をつけたのでしょう。

注目すべきは3月5日という日付です。11年3月といえば、12日に九州新幹線全通で山陽新幹線との相互直通でさくら、みずほが走り出す日なんですが、僅か1週間とはいえ先んじたのは、以前にも取り上げたようにJR東日本の危機感の表れです。ビジネス需要が見込めない中でのぎりぎりの判断ということですね。

JR東日本の発表に地元は落胆を隠せません。

asahi.com(朝日新聞社):はやぶさ、もっと停車してよ… 八戸・七戸十和田ため息 - 鉄道 - トラベル
とはいえ現実は厳しく、特にうたかたの終着駅となった八戸は、開業当時こそ路線バス網が集まり二次交通の拠点となる傾向が見えたものの、開業ブームが去ると共に路線バス網が立ち枯れ、地元の南部バスはリストラを余儀なくされました。

その過程でJRバス関東、国際興業、十和田観光電鉄と4社共同運行で始まった夜行高速バス、シリウス号が揺さぶられ、JRバス関東はJRバス東北に運行肩代わり、国際興業は系列の十和田観光電鉄へ丸投げで、取り残された南部バスは共同運行から離脱、提携相手をウィラートラベルに求めてツアーバスとして運行を維持しています。裏返せばここまで追い詰められたわけです。

そういった中で迎える新青森開業は早くも八戸の悲劇の再現が囁かれております。JR東日本は従来、整備新幹線を成長分野として取り組んできて、遂に青森へ到達するわけですが、そこは成長分野としての整備新幹線事業の終着点でもあるということになりそうです。ビジネス需要が見込めなければ、時間を買う顧客は少ないわけで、リニアと同じ問題に直面します。ブームが去った後の悲惨さは想像を絶します。その中で新機軸を打ち出しながら話題を提供しブームを煽るしか打つ手がないということで僅か1週間のさくら、みずほ先行作戦ということですね。

余談ですが、JR東日本がはやぶさの愛称名を押さえたために、九州新幹線肝いりの速達列車にはやぶさが使えないのは残念でしょう。元々みずほの運行はJR九州とJR西日本の意識の差が顕在化した問題で、航空との競争を重視したJR九州の危機感の表れです。みずほは人気列車はやぶさの輸送力補完目的の不定期列車だったため愛称名として格下感があります。

ついでにえばそもそもさくらも、前身は人気列車あさかぜの輸送力補完目的の不定期特急さちかぜの定期格上げ時に改称されたもので、大元は戦前の三等特急"桜"に由来するものの、やはり格下感は否めず、はやぶさを押さえたJR東日本が恨めしいところでしょう。それでもビジネス客が見込める九州新幹線の方がビジネス的には成功確率が高いといえます。

というわけで、整備新幹線の枠組みは限界といえます。JR東日本は既に次を睨んで鉄道技術の世界への売り込みに意欲を滲ませますが、ブラジルをはじめBOT(建設、運営、譲渡)方式が前提となり、リスクを取って建設と運営を一体で行い、債務償還した後に譲渡するという枠組みとなり、通常35年程度の償還期間が設定されますから、その間のリスクテイクができなければならないわけで、ハードルは高いわけです。しかしそれでも国内に留まればジリ貧になりかねない中で、企業として成長を目指すならば避けて通れない道でもあります。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, November 07, 2010

C-ATSシアター、スカイアクセスの韋駄天走り京急のお上品

流石に中国ネタでアクセスへこみました^_^;。その間に公安データの漏洩と尖閣沖の証拠ビデオ漏洩が相次ぎ、政府の情報管理の甘さが露呈しましたが、世界ではウィキリークスという政府の機密情報の内部告発サイトがイラク戦争の民間人誤爆や捕虜の拷問など、従来知り得なかった情報がネットで流通するようになり、これを機密漏えいの犯罪行為と見るか、報道による権力監視と見るかで論争が始まるなどの事情もあり、一筋縄ではいかない問題です。

日本のメディアは専ら政権の危機管理の甘さや外交の汚点という取り上げ方で、野党は政局にしようといきり立っておりますが、むしろ国民的には中国の言いたい放題でストレスがたまっていた中で、溜飲を下げた感がありますし、中国当局も今のところ冷静です。ネットへの漏洩は打つ手なしということは中国政府自身が骨身に染みているでしょうし、結果的に問題は尾を引かないと考えられます。

元々海上の出来事は第三者の目撃情報を得にくい中で、海上保安庁は自らの行為の正当性を証明するためにビデオ撮影していたわけで、北朝鮮籍と見られる不審船銃撃事件のときのようにビデオ映像は公開することが前提だったのに、船長を逮捕して書類送検したことで、刑事訴訟手続き上公判前の証拠開示が禁止されていることから、公開予定のビデオを秘密扱いにシフトしたことが、漏洩の背景にあります。ネット時代に対応できない法令の見直しは必要でしょう。

という中で、注目したニュースはこちらです。

成田空港への鉄道利用増 スカイアクセス開業が寄与  :日本経済新聞
成田スカイアクセス開業から間もなく半年ですが、利用実態がなかなかニュースにならないなと思っていたところで出てきたニュースですが、とりあえず京成電鉄のシェア拡大ということで喜ばしいところです。スカイアクセス線と在来線の分担率はスカイアクセスが半分以上ということで、運賃差が微妙に影響しているようですが、とりあえずは狙い通りということは言えそうです。

一方のJRはE259系を投入したN'EXは好調を維持したようですが、一般列車の利用が落ち込んだということで、安さを求める利用者が新ルートでもJRよりは割安な京成へ流れた可能性はありますが、断定は避けておきます。鉄道全体としてはシェアが拡大し、バス、マイカーが減少している傾向はあるものの、鉄道シフトと言えるレベルかどうかは微妙なところですし、羽田空港の国際化によって今後も流動的と見るべきでしょう。

というわけで、とりあえず好調なスタートといえる成田スカイアクセスですが、やはりターミナルの日暮里がハンデとなっているようで、運賃料金が割高なN'EXの牙城を崩すには至らなかったと言えそうです。この辺は開業前から指摘してきたところです。

で、タイトルのC-ATSシアターですが、勘の良い方は保安装置ネタとお気づきでしょう。成田スカイアクセスのスカイライナーの160km/h運転とアクセス特急の120km/h運転を支える保安装置に焦点を当てます。C-ATSというのは、従来の1号型ATSを大幅にバージョンアップしたもので、これなくして成田スカイアクセスの高速運転は成り立たなかったものです。

その前に1号型ATSについて解説します。元を辿れば1960年の都営1号線(→都営浅草線、以下浅草線と表記)開業で京成電鉄との相互直通運転が始まったのですが、銀座線、丸の内線、大阪市1号線(→御堂筋線)、名古屋市1号線(→東山線)で採用された打子式ATSはクローズドな都市内地下鉄向けで、郊外鉄道へ直通する浅草線向けに開発された保安装置で、ベースは旧国鉄のATS-B型です。

ATS-B型は元々車内警報装置を発展させたもので、閉そく信号軌道回路を車軸で短絡することで列車の在線を示す自動閉そく信号システムに、地上のループコイルで列車を検知して逆相電流を流して見かけ上信号電流を無電圧とし、それを列車の車上子が検知してベルを鳴らし、運転士が5秒以内に確認ボタンを押して停止措置を採らないと非常ブレーキがかかる仕組みです。

1号型ATSはそれを機能拡張し、0.8秒の軌道回路オフで常用ブレーキによる45km/h速度照査、3秒オフで非常ブレーキ作動と停止後15km/hの速度照査を行うものです。3秒オフは国鉄型ATSの確認作業を自動化したようなもので、事後の15km/h以下での無閉そく運転を許容することで高密度運転線区での乗務員支援に配慮し、構造単純で使い勝手の良いシステムです。

ただし欠点もあり、絶対停止機能がないので、例えば乗務員が15km/hで無閉そく運転中に心神喪失した場合には事故を防げませんし、最高速度が青天井となりますので、成田スカイアクセスのスカイライナー160km/h運転には問題のあるシステムです。

それが2005年4月のJR西日本福知山線脱線転覆事故を契機に、それまでなかったATS設置基準が決められ、速度照査機能と絶対停止機能の付与が義務付けられることになりました。絶対停止機能を持たない1号型ATSは見直しを迫られました。

とはいえ都営、京成、京急の他、北総鉄道、芝山鉄道、新京成電鉄と6社局が関わる問題だけに簡単ではありません。協議の結果、軌道回路による情報伝送をデジタル信号化して多様な情報を扱えるようにしたしたのがC-ATSです。頭文字のCはCommon(共通)、Continuos(連続)、Contrl(制御)のCを表すもので、相互直通各社の連携を意味します。

機能は大幅に拡張され、速度照査段に25km/hを追加、そのほか閉そく信号の速度現示に対応した速度段での速度照査のほか任意の速度が設定でき、曲線部の速度制限や過走防止、誤出発防止などの機能を持たせられます。加えて車上子は1号型の機能も持たせ、受け取る信号に応じて1号型として作動したりC-ATSとして作動したりして、切替にスイッチ操作を必要としないので、地上側の整備の進捗に合わせて使えるなど工夫されております。

地上設備は現在京急及び都営浅草線で設置を追え、京成は上野駅、高砂駅で先行導入後、本線上野―高砂間、成田空港線(スカイアクセス)、金町線に導入、当然ですが北総鉄道もスカイアクセスと同時に導入されてます。スカイアクセス線ではスカイライナーとアクセス特急に対して120km/h、スカイライナーに対して160km/hで連続速度照査しており、スカイアクセスの韋駄天走りを支えているわけです。尚、上記6社局中、新京成だけは1号型ATSに絶対停止機能を付加しており、京成との直通運転ではスイッチで切り替える仕様で、将来もC-ATSの導入はなさそうです。

都営浅草線内では全線で70km/hの速度照査を行う他、押上や泉岳寺など分岐器設置駅で機能が使われるだけという使い方です。京急では閉そく信号の速度段による照査の他、過走防止や平面交差に対する誤出発防止など、目一杯機能をフル活用しております。その結果京急にある変化が言われております。

韋駄天走りといえば何より京急の専売特許だったのですが、C-ATSの導入後、かつての頻繁な加減速でジェットコースターまがいの職人芸的な運転がなくなりマイルドになったと言われます。真偽のほどは定かではありませんが、C-ATSの機能を目一杯に使うことで、全体にムリ、ムラ、ムダがなくなったということらしいです。逆に言えばそれだけ1号型ATSの融通無碍さが活用されていたとも言えるわけで、間違いなく保安度は高まったと言えます。間違っても「京急はぬるくなった」なんて思わないように(笑)。

一方、C-ATSのせいで以前より遅れるようになったとも言われますが、これも京急蒲田駅の立体化で空港線大鳥居までの長い単線並列状態で、ダイヤがタイトになったことが影響している可能性もあります。なにしろエアポート快特の蒲田通過を余儀なくされ、国会議員まで担ぎ出されたぐらいですから、厳しい状況ですが、下り線が高架化され空港線の蒲田のカーブが直線になった地点のシーサスクロッシングで上下線が合流するまでは窮屈なダイヤは仕方ないところでしょう。

| | Comments (6) | TrackBack (0)

« October 2010 | Main | December 2010 »