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December 2010

Saturday, December 25, 2010

集めればカードが立つ1Cカード乗車券と電子マネー

2007年、電子マネー元年と言われましたが、その後交通系、通信系、流通系と百花繚乱。複数のカードを収める財布は厚くなるばかり。そんな皮肉を込めたタイトルです。サイドバーのフェリカの真実を読んだ上で、このニュースをどう読むか、そんな話です。

1枚あればOK…IC乗車券10種、相互利用へ : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
とはいえこのニュース自体、一部のメディアにのみ掲載されている状況でして、勘の良い人ならばとなりのメトロのTBSニュースがガセだったことを思い出されるのではないでしょうか。もちろんその後東京の地下鉄一元化の議論がスタートしたわけですが、TBS報道のニュアンスからは大幅後退しております。言うまでもなく東京都関係者のリークを裏も取らずに流したTBSの勇み足だったわけで、今回もそれに似ています。

ICカード乗車券の共通化は乗客の要望も強いようですし、検討開始はするんでしょうけど、どうも世論喚起の観測気球ではないかと思います。共通化自体は望ましいことですから、こうして情報が明らかになれば、とりあえず前へ進む力学が働くわけですね。

読売の記事中にある相互利用状況をまとめた図にあるように、JR各社はJR東日本のSuicaとの共通化はされてますが、例えばKitacaとSUGOCAなどは共通化されておりませんし、首都圏はSuicaとPASMOで幅広くカバーされ、近畿圏のICOCAとPiTaPa、福岡都市圏のSUGOCAとnimocaとはやかけんはそれぞれ共通化されているものの、共通化されているSuicaとnimocaを除く地域の異なるJR系と私鉄系のカード、あるいは私鉄系カード同士は共通化されていないなどの問題があり、特に後発のカードほど利便性が制限される一方、導入コストは高くなるわけで、先発のSuicaが一人勝ち状態にあります。

もう一つややこしいのは、スルッとKANSAI陣営が導入したPiTaPaがポストペイ式で事実上の簡易クレジットカードとなるため、事前審査が煩雑で発行枚数が伸びていないということもあり、京阪電気鉄道のように独自にICOCAに相乗りしてICOCA-Kカードというプリペイド型カードを発行するとか、広域に路線網を持つ近鉄では青山町以西限定だったりなどして足並みが乱れております。

プリペイド型ICカード乗車券は、基本的に日本鉄道サイバネティクス協議会という組織で共通化フォーマットの検討がされていて、特に磁気式ストアードフェアカードの共通化に失敗していただけに、当初から共通化はテーマだったのですが、各社の思惑が一致せず、現行のような状態になってしまいました。

ただしフォーマットは共通で、且つ同じソニーのフェリカシステムを採用してますから、共通化自体は可能なのが救いですが、それを阻む複雑な事情があります。

ちとややこしいんですが、基本的にフェリカシステムを用いたSuicaのシステムは、香港のオクトパスカードのそれをほぼ移植し、前記サイバネ協議会のフォーマットを反映させたものですが、1人のソニーの技術者の機転でメモリーを共通領域と専用領域に分け、前者に電子マネー、後者に乗車券システムなどのサイバネ規格を搭載し、両者を統合する管理レイヤーを置いたのですが、この意味はソニー首脳陣には理解されませんでした。

その一方でドル、ユーロ、円に代わる第4の通貨として電子マネーのEdyプロジェクトが始動しますが、詳しい経緯は省きますが、Edyを普及させフェリカビジネスを軌道に乗せたいと考えたソニーの開発担当者はEdyをフェリカのメモリーの共通領域に置き、専用領域にアプリケーションを置くことで、交通系に限らず銀行やクレジットカード会社や小売業など多くの事業会社の協力を得て普及させようと考えていたのですが、そんな折にJR東日本からSuicaへのEdy搭載の打診がありました。

少し解説しますと、元々Suicaの原型であるオクトパスカードでは乗車券カード機能の他に電子マネー機能も持っており、システム上はSuica単独で電子マネー事業は可能なんですが、小売店への端末設置など単独でできるはずもなく、Edy事業に相乗りしてwin-winの関係を築こうとしたわけです。

当然ソニーにとっても渡りに船の申し出だったのですが、あいにく当時の幹部の判断はEdy事業を打ち出の小槌と勘違いして単独でやることに拘り、JR東日本の申し出を断ってしまいます。結果EdyとSuicaは電子マネーとしてライバル関係となり、加盟店開拓でしのぎを削るのみならず、小売店のレジ脇にタッチセンサーが乱立することになってしまいました。

あげくに携帯電話へのフェリカチップ搭載を睨んでNTTドコモとの合弁(ソニー60%ドコモ40%)のフェリカネットワークスという会社を立ち上げるのですが、その結果奇妙なことが起こります。所謂おさいふケータイですが、1通信キャリアに過ぎないNTTドコモとの合弁により、他のキャリアへ端末を供給する際にも、ドコモの資本が入るフェリカネットワークスにロイヤリティの支払いが発生してしまうという事態となります。

また技術開発の都合上メモリーの管理レイヤーの権限をフェリカネットワークスに移してしまったため、ソニー子飼いのEdyにまでフェリカネットワークスへの手数料支払いが発生し、ただでさえ加盟店へのタッチセンサー設置などの投資負担がきついのに、決済額の3%程度しかない手数料収入の半分を掠め取られてしまう事態となり、Edyを展開するビットワレット社は楽天の出資を受け入れる形で事実上の身売りをする羽目となります。

おかげでドコモは他社キャリアとの差別化で大いに潤ったのですが、一方でフェリカチップ搭載端末は日本国内向けにほぼ限定され、i-Phoneなどのスマートフォンが普及する中、所謂ガラパゴス化を助長する結果となりました。特定キャリアの色がついた技術を世界の端末メーカーが採用しにくいのは当然で、ソニーの視点では「技術で勝ってビジネスで失敗」という上記参考図書の副題が実現してしまったわけです。ソニーにとってのミッドウエー海戦です。

というわけで、読売の記事では明記されておりませんが、交通系カードの共通化には、乗車券カードとしての共通化の他に、電子マネーとしての共通化問題も隠れております。また乗車券カードとしても、おさいふケータイ対応のモバイルSuicaやJR東海のEX-ICなどのサービスが、乗客を新幹線利用へ誘導する手段として使われるなど、電子マネー本来の汎用性とは逆の方向へ向かっており、混乱した状態にあります。

その意味でSuicaにEdyを搭載するというJR東日本の申し出をソニーが断ったのが痛いところです。実現していればEdyの普及が加速し、後発の交通系カードとの提携は純粋に乗車券部分だけの話になりますから、話はシンプルだったわけです。また電子マネー機能をEdyに依存することで、コストを抑制し事業者の参入障壁を低下させることもできたでしょう。

またフェリカが非接触ICカードとして国際規格であるISO規格を取得できなかったことも、不運ではありますが、フェリカビジネスの国際展開を阻みます。オクトパスカードでは乗車券や電子マネーなどのアプリケーション込みでの入札でしたし、WTO規制対象となるJR東日本のICカード乗車券の入札では、磁気利用のニア・フィールド・コミュニケーション(NFC)という通信規格としてISO認証を受けることでクリアするという苦肉の策となりました。だからといって国際展開がラクラク可能というわけではありません。

その意味ではオクトパスカードで香港に足場を築いたのは大きなアドバンスではあります。既に東アジア地域の交通系乗車券カードの共通化は国も模索しているようです。となると一部メディアへリークしたのは関係省庁の官僚である可能性が高いといえます。世界ではウィキリークスによる米外交公電漏出が問題視されてますが、既存メディアを利用した情報リークも実は結構頻繁に起きているのです。逆にそうやって易々と利用されてしまう既存メディアの自覚のなさの方が問題ありですね。

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Thursday, December 23, 2010

草かんむり取れて官に直る人

サイドバーのミニボードの川柳が気に入ったらしい管理人のたわごとにお付き合いください。

アキカン宰相の迷走ぶりは、予想できたこととはいえ、これほど無能とは思いもよりませんでした。無能なリーダーは罪悪であると述べましたが、ここまでひどいと論評する価値すらありません。

とはいえメディアで叩かれている尖閣問題への対応などは、むしろ評価できます。詳細は以前のエントリーをご参照いただくとして、結果的に尖閣諸島の日本の実効支配を世界にアピールできたわけですし、むしろ強攻策に出た中国に対する警戒感が高まるなど、明らかに中国の方が外交的に失敗だったといえます。「弱腰外交」はためにする議論です。

海保ビデオ流出問題も既に論評済みですが、付け加えるならば、世界はウィキリークスによる米外交公電の暴露に話題が行っているときに、尖閣ビデオで騒いでいる日本のメディアの愚かさは繰り返し述べておきます。尖閣ビデオは海保の保安官の単独犯として処理されましたが、重要なのは、匿名であっても当局の犯罪捜査で通信ログの解析が行われれば、時間の問題で実行犯に辿りつくという点です。保安官は一応自首しておりますが、逃げ切れないと判断したからこそです。

ところが、日本絡みでより深刻な警察の公安資料の流出の方は、全く犯人に辿りつけるメドは立っておりませんし、よりシステマティックに内部告発を助けているウィキリークスのようなサイトが成り立つのも不思議ですね。つまり単独犯であればバレバレだけど、第三者が介在することで、流出経路を隠すことが可能になるわけです。その意味ではウィキリークスの活動は、既存メディアが報道の自由を保証する意味で主張する情報源の秘匿と何ら変わらないわけで、いわば編集作業を担っているわけで、ネット時代の報道のあり方に一石を投じたと言えます。ただしサイトの性格上編集者がステルスであるというのは、逆に言えば責任編集体制を採れないということでもあり、それは弱点にもなり得ます。

加えてデジタルデータはコピーが容易でミラーサイトで世界中に拡散するという性質もありますから、一度ネットへ流出した情報は削除できないわけで、検閲や発売禁止、回収などの措置も取れないわけですから、為政者にとっては悪魔のメディアといえましょう。ただし海外メディアは温度差はあるものの、新しい事態に対応を始めております。

具体的にはウィキリークスで暴かれた秘密情報を追跡取材して検証する動きが出てきており、従来は推測の域を出なかった外交上の密約や政府の判断の適否などを取り上げ始めております。その意味で今回の流出公電でも実は日本関連のものが多数あります。例えば米ミサイル防衛構想の中核を担うSM3迎撃ミサイルを日米共同開発されておりますが、昨年9月に国務省から各国大使館宛に「NATOや同盟各国に大量配備のため輸出できるようにしたい。そのために日本が武器輸出三原則を見直すことを望む」といった内容のものがあります。早い話が日本への圧力なんですが、そういえば北沢防衛相は武器輸出三原則緩和に熱心で、国内防衛産業の維持を謳っておりますが、本当は米政府の意向に早々呑み込まれていたわけです。こりゃ普天間問題が頓挫するわけだ。

普天間問題も日本のメディアは「日米関係が傷ついた」という視点での報道ばかりですが、ウィキリークスで日本の対米服従ぶりは相当暴かれており、それ自体驚きはありませんが、中国やロシアの対応に変化をもたらすものではあります。

とはいえ日本のメディアが言うように日米同盟が傷ついたからではなく、むしろ在日、在韓米軍との対峙を嫌う中国やロシアにとって、日本がイコールパートナーとして振舞う日米同盟の方が望ましいわけで、具体的にはアメリカに対して拒否権を持つかどうかは見られます。加えて政権への国民の支持も見ますから、現状のように国民にそっぽを向かれた政権に対しては、足許を見て揺さぶりをかけてくるわけです。メドベージェフ大統領の国後島訪問はそう読むべきでしょう。

あと菅首相は「第三の道」を謳ったはずなのに、やっていることは小泉改革の焼き直しみたいなことばかりで、ここまで無節操だと呆れるばかりです。具体的には為替の円売りドル買い介入やTPPを巡る迷走など枚挙に暇がありませんが、法人税減税の迷走も予想通りです。結果的に5%減税で閣議決定に至ったものの、個人所得税の控除見直しで財源を捻出しており、結果的に家計から企業への所得移転を行ったわけです。内需主導の成長を目指してたんじゃないんかい(怒)。加えて富裕層狙い撃ちですから、少なくとも自民党の賛成は得られないのは確実です。

誤解がありますが、元々1984年ごろの法人税率は地方分を含むと50%を超えていて、87年以降段階的に下げられてきましたが、87年を除いて成長に寄与した証拠はありません。87年もむしろ資産価格の上昇即ちバブルの結果であって、減税効果がどれほどだったかの特定は困難です。逆にバブル期の過剰投資で過剰設備を抱えたことが、後のデフレを準備することになります。「デフレ」に関しても、本来のマクロ経済現象としてのデフレは、かつての金本位制の元で通貨発行量が制限されていた時代、不況で消費や投資が減退すると貨幣が退蔵されて流通量が減ってしまい、経済が滞る現象を指す言葉で、通貨発行量を拡大することが対策として有効だったわけです。しかし現在の「デフレ」は早い話モノ余りで価格が崩壊してるだけの話です。対策は過剰設備の償却を進めるしかないわけです。結果的に設備償却で企業は現金資産を留保できますから、その現金を次の戦略分野へ投資することで時代に対応することが望まれます。しかしその投資先は内需の縮む日本国内とは限らないのがグローバル経済の現実です。生産の海外シフトを進めるのも、日本の法人税が高いからというよりも、成長市場の攻略のためであって、税負担は無関係です。

話がそれましたが、何が言いたいかといえば、税金をまけるまでもなく、今、企業は空前の金余り状態にありますが、それでも国内投資は増えず雇用も増えないわけですから、減税で成長なんてあり得ません。むしろ過去の法人減税が税収減を加速した現実を直視すべきでしょう。減税は税率の下げに留まらず、IT機器の加速度償却や技術開発投資減税や、銀行の不良債権処理加速のための損失繰り越しを7年に拡大するなど、そもそも課税ベースをどんどん小さくしてきたこともあります。結果的にリーマンショックのようなバブル崩壊時に大規模リストラで赤字を出せば、以後数年間税金がかからないわけですから、実はリーマンショックすら焼け太りの種になっているのです。逆に世界規模の財政出動の恩恵で予想より早く収益が回復したために、損失繰り越しの原資がなくなって課税を余儀なくされる局面だったから、財界はあれだけ騒いだんです。実際減税原資として損失繰り越しの制限などが検討されたことに激しく反発しました。

というわけで散々迷走する菅政権ですが、こんなニュースで締めくくりたいと思います。

鉄建機構、剰余金1.2兆円返納 年金国庫負担の財源に  :日本経済新聞
この鉄建機構の剰余金1.5兆円ですが、春の事業仕分け独法版で指摘されていたものを、内1.2兆円を基礎年金国庫負担分に充当することで閣僚間折衝が決着しました。これは旧国鉄保有地やJR株式の売却益が積みあがったもので、本来は国庫へ返納されるべきものを、度重なる整備新幹線新規着工で枯渇した鉄道整備基金の代わりに手を付けようと留保していたものです。整備新幹線の新規着工を餌に国会議員をコントロールしようということで、民主党に族議員を育てようという野望が読み取れます。その意味で年金財源への流用に抵抗していたんですが、一応社会保障政策は政権の目玉ということで押し切られましたが、結果的に整備新幹線の野放図な新規着工に制限が課せられるという意味でグッドニュースです。

というわけで、菅政権のしょーもなさは、官僚の想定をさえ超えているわけで(笑)、無能であるが故に官僚も操縦できないダメ政権ということになります。ということで、人気が無いから解散もできず、官僚が支えても迷走し、野党には付け込まれ国会で何も決められず、予算は決まっても関連法が通らないまま新年度を迎える最悪のシナリオが現実味を帯びます。特に特例国債(赤字国債)が発行できないわけですから、新年度は予算の暫定執行とならざるを得ず、埋蔵金頼みを加速することになります。というわけで、その方がまだまだ隠れている埋蔵金が表へ出てくると考えると、菅政権が続くことは案外悪くないかもしれません(爆笑)。

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Tuesday, December 21, 2010

法と正義の福知山線

JR福知山線事故で山崎社長を起訴したものの、本日やっと神戸地裁で初公判を迎えました。

JR西・前社長が無罪主張 尼崎脱線事故で初公判  :日本経済新聞
鉄道事故で鉄道会社の経営幹部を業務上過失致死で訴追すること自体、異例なことですが、事故の社会的影響を考慮した神戸地検の執念と言えます。

とはいえその論理構成は疑問があります。基本的な論理構成は、1997年のJR東西線開業に伴う直通運転のために600Rを300Rと急カーブ化し、快速電車を増発し危険性が増したにも拘らず、ATS設置などの防護措置を講じなかったとするもので、97年時点での事故の予見可能性が争点となります。

検察はJR西日本が隠蔽しようとしたとされる函館本線のJR貨物による速度超過による脱線転覆事故を例に引き、予見可能だったとするようですが、無理があります。

大都市部での線路付け替えを伴う改良工事では、用地の制約から運転条件が厳しくなること自体はあり得ます。しかも尼崎の事故現場では300Rに対する緩和曲線長不足でカント量不足な分速度制限もタイトになり、結果120km/hから70km/hへ50km/hの速度差の急減速が必要となるわけで、条件は厳しいですから、常識的にはATSで速度制限をかけるのが望ましいわけですが、法令上は設置基準が無かった時代ですから、このこと自体で法令違反を問うことはできません。

とはいえこれだけ条件が厳しければ、現場の乗務員から改善の声が上がるはずです。尼崎での東海道線との乗り継ぎのために遅延が許されない状況で、おそらく日常的にはダイヤ維持のため速度超過が起きていた可能性もあります。

他方JR西日本は労組間の対立を抱えておりまして、経営側も御用組合の優遇の一方、対立組合潰しに奔走する風通しの悪さが以前から指摘され、自殺者まで出す始末でした。加えてJR各社に共通するのですが、民営化初期に人員削減のために新規採用を手控えたため、国鉄から移行したベテランと、経験の浅い若手の間に世代の空白があり、意思疎通しにくい組織風土を抱えていたことも指摘できます。ベテランなら技でクリアできる場面を経験不足の新人は遅れを出して日勤教育のような懲罰的処分を受ける環境で、現場の危険性を上層部へ具申することが難しかったとすれば、それはルート変更当時の鉄道事業本部長だった山崎前社長よりも、風通しの悪い組織風土を変えられず、検察審査会で強制起訴とされた井出、南谷、垣内の歴代3社長の責任と言うべきでしょう。実際山崎前社長は安全輸送をうるさく言うということで、事故当時関連会社へ出向させられていたんですから。

というわけで、法と正義に照らして問題のある裁判です。事故関連の多数のエントリーをお読みいただければわかりますが、私は一貫してJR西日本の責任を指摘しておりますが、それでも山崎前社長の訴追には違和感を覚えます。直言居士でトップの覚え悪く左遷されていたのを事故で当時の垣内社長が引責辞任して敗戦処理を押し付けられた人を叩いても、JR西日本の組織体質は改まりません。

郵便不正事件の証拠改ざんをはじめとした検察の杜撰な捜査で問題になった検察の劣化ですが、失地回復は難しそうです。陸山会事件でも西松不正献金疑惑はシロ、水谷建設元会長の5千万円ヤミ献金の証言は水谷会長自身の公判で「信用できない」と証拠採用されず、残る世田谷区の4億円の土地取得を巡る問題で検察審査会が起訴相当とした件も、2004年と2005年の期ズレ問題に過ぎないことを指摘しております。

政治資金で土地取得が望ましいかどうかは置いといて、土地取得を契約時点で見るか冬季時点で見るかで記載日時が変わることはあり得ます。通常代金決済は契約に連動するわけで、終始報告書上決済時点と土地取得時点のズレは起こりえます。企業会計であれば代金決済時点で売主に資金を一時貸し付けた形となり登記時点で債権が土地という現物資産に振り変わるわけですから矛盾は無いわけですが、政治資金収支報告書ではそこまでの精密さは問われていないわけで、これを違法とする論理構成には無理があります。

あっちもこっちも不透明な日本の法と正義です。

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Saturday, December 04, 2010

おけいはん世界へ

人口減少で長期低落が確実な日本で、特に他の大都市圏以上に衰退が見られる関西ですが、こんな動きが出てきました。

京阪電鉄、ベトナムで商業施設 現地企業と共同  :日本経済新聞
ベトナムといえば日本の原子力発電所や新幹線の売り込み先として注目されておりますが、都市鉄道の整備計画も多数持ち上がっていて、日本の私鉄の沿線開発ビジネスモデルが活用できるとの見立てで、現地不動産投資会社バン・フー・インベストとの合弁事業として商業施設などの整備と運営を行うことで合意したものです。おけいはんの東京進出に留まらず、海外へというのは驚きです。

ベトナムは現在1人当たりGDP1千ドルレベルの途上国で、世界的に消費をリードしていると言われる新興国の新中間層の登場には至らないものの、中国が経済成長で人件費が上昇する中、次の成長国としての期待がかかる国ではあります。そして政治的に安定していることも魅力ではあります。とはいえリスクを伴う先行投資を、ドメスティックな国内企業でも特に地縁的でリスク回避的な大手私鉄が手がけるというのは、大きなニュースです。それだけ本業に展望を見出せないことの裏返しなんでしょう。

脇道にそれますが、今年度GDPが日本を抜くと言われる中国が平均4千ドル程度ですから、消費意欲が強い新中間層の増殖が中国経済躍進を支えているわけです。北朝鮮は2千ドル程度と見られますが、軍事関連にリソースを取られているので、国民の満足度がベトナムより上かは微妙です。同時に経済力は戦争遂行能力を規定しますから、延坪島砲撃事件も全面戦争に至らない寸止めの挑発行為といえます。

そして韓国の軍事独裁政権が崩壊したときの1人当たりGDPは3千ドル程度ですから、実は新中間層の出現は政治の民主化の閾値でもあり、中国の天安門事件やタイの政情不安などもこの観点から見れば説明がつきます。逆に経済制裁下の北朝鮮では内発的に金正日政権が倒れる可能性は低く、内部崩壊を狙うならばむしろ経済支援した方が早道です。

しかし人口の多いアジアで都市鉄道分野はかなり魅力的なマーケットであり、世界に類例の無い日本の大手私鉄のビジネスモデルを再現できる可能性のあるエリアとして見れば、京阪の行動は頷けます。ベトナムもドイモイ政策で経済開放に舵を切ったものの、国内インフラの弱さがネックで経済成長になかなか火がつかない低迷状態から抜けられず、一方で経済成長著しい中国の圧力は増すばかりですが、その中でベトナム政府はインフラ整備を精力的に進めようとしているところです。国土が南北に長く、長い海岸線を有するなどの地理的条件もあり、日本をお手本にしようという意思が読み取れます。

また日本でも話題となったTPPへは一足先に参加交渉入りしており、同時に交渉のテーブルに着いているアメリカ市場へのアクセス権を得るとすれば、日本の高度成長を再現できる可能性も拓けます。ちなみに日本にとっては残念なニュースもあります。

TPPの情報収集、はやくも頓挫 NZ会合参加できず  :日本経済新聞
菅首相の施政方針演説で取り上げたTPP加盟ですが、加盟を検討するために情報収集をというのは、加盟交渉で角突き合わせる加盟交渉9カ国にとっては迷惑な話で、当然の話です。同時に同様の立場にあるカナダやフィリピンへの示しがつかないこともあり、尖閣問題で日本に好意的との見方も打ち砕かれ、加盟に舵を切るだけの指導力を発揮できなかった菅政権のしょーもなさばかりが目立ちます。

結局日本の外交はすべからく当事者意識が希薄な点が気になります。FTAやEPAは重要ですが、日本の場合工業製品の関税が低率な一方、農業分野の関税が非常識に高く、しかも例外扱いを求められるでは、相手国にメリットが見出しにくいので、交渉が進まないわけです。しかもWTO交渉と違って当事国だけのローカルルールとして生産国認証という面倒な手続きが付きまとい、そのコスト負担は場合によっては関税率を凌駕する状況です。

その中でお隣の韓国がFTAに前のめりとなっており、アメリカとのFTA交渉がまとまりました。

米韓FTA合意 乗用車関税、5年維持で韓国譲歩  :日本経済新聞
これで財界から「日本政府は何やっている(怒)」との声が上がるでしょうけど、逆に日本がFTAに踏み出せないからこそ、韓国はFTAに熱心なのであって、実際米韓FTAは韓国が譲歩した内容になっております。それでも産業構造が似ている日本が出遅れる限りメリットが出せるということで、逆に同じ土俵で争う限り韓国に劣後するのであれば、別の作戦を立てる方が賢明ではないでしょうか。

その意味で日本のドメスティック企業の海外展開には可能性があります。実際小売業は進出に意欲的で、特にコンビニエンスストアは海外展開を成功裏に進めております。製造業の声が拡張される財界の意見に引き摺られないことも大事です。大手私鉄である京阪電気鉄道の海外展開は新たな可能性を見せてくれるでしょうか。

外交が受動的だからポツダム宣言発効の9月2日でなく8月15日を敗戦ではなく終戦と呼び慣わす自己欺瞞に漬け込まれてソ連の参戦と北方四島の略奪を許したのですし、日米同盟で思考停止しているから、普天間問題ひとつまともに解決できないで迷走するわけです。

韓国延坪島砲撃事件のような北朝鮮の挑発行為に対し、官邸の空白の70分が国会で叩かれましたが、指揮権を国連軍代表の在韓米軍司令部に預けている韓国を標的にする限り全面戦争にはならないのであって、日本の閣僚が官邸に参集したところで、できることなど皆無です。そんなことで揉めていて、一方5兆円規模の補正予算は素通りですが、今回の補正予算で一体何をやるのか、ご存じの方は少ないでしょう。実際は新成長戦略と称する官僚の作文が並んでいて、本予算でカットされたか、概算要求を手控えたものが補正に回っているだけで、概算要求の10%一律カットと特別枠設定の関係と同じです。早い話が官僚の財布を増やしているだけで、経済効果など皆無です。

つまり10年度予算の執行段階の監視が効いて手付かずで残った予備費2兆円、低金利で国債利払い費の圧縮分1兆円、リーマン後の回復による税収増2兆円と、珍しく残ったお金を使うのが目的だったというからくりです。それならば11年度に繰り越して新年度の国債発行を抑制する方がマシだったはずです。それでいて消費税増税をというのは通らない話です。

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