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Thursday, December 23, 2010

草かんむり取れて官に直る人

サイドバーのミニボードの川柳が気に入ったらしい管理人のたわごとにお付き合いください。

アキカン宰相の迷走ぶりは、予想できたこととはいえ、これほど無能とは思いもよりませんでした。無能なリーダーは罪悪であると述べましたが、ここまでひどいと論評する価値すらありません。

とはいえメディアで叩かれている尖閣問題への対応などは、むしろ評価できます。詳細は以前のエントリーをご参照いただくとして、結果的に尖閣諸島の日本の実効支配を世界にアピールできたわけですし、むしろ強攻策に出た中国に対する警戒感が高まるなど、明らかに中国の方が外交的に失敗だったといえます。「弱腰外交」はためにする議論です。

海保ビデオ流出問題も既に論評済みですが、付け加えるならば、世界はウィキリークスによる米外交公電の暴露に話題が行っているときに、尖閣ビデオで騒いでいる日本のメディアの愚かさは繰り返し述べておきます。尖閣ビデオは海保の保安官の単独犯として処理されましたが、重要なのは、匿名であっても当局の犯罪捜査で通信ログの解析が行われれば、時間の問題で実行犯に辿りつくという点です。保安官は一応自首しておりますが、逃げ切れないと判断したからこそです。

ところが、日本絡みでより深刻な警察の公安資料の流出の方は、全く犯人に辿りつけるメドは立っておりませんし、よりシステマティックに内部告発を助けているウィキリークスのようなサイトが成り立つのも不思議ですね。つまり単独犯であればバレバレだけど、第三者が介在することで、流出経路を隠すことが可能になるわけです。その意味ではウィキリークスの活動は、既存メディアが報道の自由を保証する意味で主張する情報源の秘匿と何ら変わらないわけで、いわば編集作業を担っているわけで、ネット時代の報道のあり方に一石を投じたと言えます。ただしサイトの性格上編集者がステルスであるというのは、逆に言えば責任編集体制を採れないということでもあり、それは弱点にもなり得ます。

加えてデジタルデータはコピーが容易でミラーサイトで世界中に拡散するという性質もありますから、一度ネットへ流出した情報は削除できないわけで、検閲や発売禁止、回収などの措置も取れないわけですから、為政者にとっては悪魔のメディアといえましょう。ただし海外メディアは温度差はあるものの、新しい事態に対応を始めております。

具体的にはウィキリークスで暴かれた秘密情報を追跡取材して検証する動きが出てきており、従来は推測の域を出なかった外交上の密約や政府の判断の適否などを取り上げ始めております。その意味で今回の流出公電でも実は日本関連のものが多数あります。例えば米ミサイル防衛構想の中核を担うSM3迎撃ミサイルを日米共同開発されておりますが、昨年9月に国務省から各国大使館宛に「NATOや同盟各国に大量配備のため輸出できるようにしたい。そのために日本が武器輸出三原則を見直すことを望む」といった内容のものがあります。早い話が日本への圧力なんですが、そういえば北沢防衛相は武器輸出三原則緩和に熱心で、国内防衛産業の維持を謳っておりますが、本当は米政府の意向に早々呑み込まれていたわけです。こりゃ普天間問題が頓挫するわけだ。

普天間問題も日本のメディアは「日米関係が傷ついた」という視点での報道ばかりですが、ウィキリークスで日本の対米服従ぶりは相当暴かれており、それ自体驚きはありませんが、中国やロシアの対応に変化をもたらすものではあります。

とはいえ日本のメディアが言うように日米同盟が傷ついたからではなく、むしろ在日、在韓米軍との対峙を嫌う中国やロシアにとって、日本がイコールパートナーとして振舞う日米同盟の方が望ましいわけで、具体的にはアメリカに対して拒否権を持つかどうかは見られます。加えて政権への国民の支持も見ますから、現状のように国民にそっぽを向かれた政権に対しては、足許を見て揺さぶりをかけてくるわけです。メドベージェフ大統領の国後島訪問はそう読むべきでしょう。

あと菅首相は「第三の道」を謳ったはずなのに、やっていることは小泉改革の焼き直しみたいなことばかりで、ここまで無節操だと呆れるばかりです。具体的には為替の円売りドル買い介入やTPPを巡る迷走など枚挙に暇がありませんが、法人税減税の迷走も予想通りです。結果的に5%減税で閣議決定に至ったものの、個人所得税の控除見直しで財源を捻出しており、結果的に家計から企業への所得移転を行ったわけです。内需主導の成長を目指してたんじゃないんかい(怒)。加えて富裕層狙い撃ちですから、少なくとも自民党の賛成は得られないのは確実です。

誤解がありますが、元々1984年ごろの法人税率は地方分を含むと50%を超えていて、87年以降段階的に下げられてきましたが、87年を除いて成長に寄与した証拠はありません。87年もむしろ資産価格の上昇即ちバブルの結果であって、減税効果がどれほどだったかの特定は困難です。逆にバブル期の過剰投資で過剰設備を抱えたことが、後のデフレを準備することになります。「デフレ」に関しても、本来のマクロ経済現象としてのデフレは、かつての金本位制の元で通貨発行量が制限されていた時代、不況で消費や投資が減退すると貨幣が退蔵されて流通量が減ってしまい、経済が滞る現象を指す言葉で、通貨発行量を拡大することが対策として有効だったわけです。しかし現在の「デフレ」は早い話モノ余りで価格が崩壊してるだけの話です。対策は過剰設備の償却を進めるしかないわけです。結果的に設備償却で企業は現金資産を留保できますから、その現金を次の戦略分野へ投資することで時代に対応することが望まれます。しかしその投資先は内需の縮む日本国内とは限らないのがグローバル経済の現実です。生産の海外シフトを進めるのも、日本の法人税が高いからというよりも、成長市場の攻略のためであって、税負担は無関係です。

話がそれましたが、何が言いたいかといえば、税金をまけるまでもなく、今、企業は空前の金余り状態にありますが、それでも国内投資は増えず雇用も増えないわけですから、減税で成長なんてあり得ません。むしろ過去の法人減税が税収減を加速した現実を直視すべきでしょう。減税は税率の下げに留まらず、IT機器の加速度償却や技術開発投資減税や、銀行の不良債権処理加速のための損失繰り越しを7年に拡大するなど、そもそも課税ベースをどんどん小さくしてきたこともあります。結果的にリーマンショックのようなバブル崩壊時に大規模リストラで赤字を出せば、以後数年間税金がかからないわけですから、実はリーマンショックすら焼け太りの種になっているのです。逆に世界規模の財政出動の恩恵で予想より早く収益が回復したために、損失繰り越しの原資がなくなって課税を余儀なくされる局面だったから、財界はあれだけ騒いだんです。実際減税原資として損失繰り越しの制限などが検討されたことに激しく反発しました。

というわけで散々迷走する菅政権ですが、こんなニュースで締めくくりたいと思います。

鉄建機構、剰余金1.2兆円返納 年金国庫負担の財源に  :日本経済新聞
この鉄建機構の剰余金1.5兆円ですが、春の事業仕分け独法版で指摘されていたものを、内1.2兆円を基礎年金国庫負担分に充当することで閣僚間折衝が決着しました。これは旧国鉄保有地やJR株式の売却益が積みあがったもので、本来は国庫へ返納されるべきものを、度重なる整備新幹線新規着工で枯渇した鉄道整備基金の代わりに手を付けようと留保していたものです。整備新幹線の新規着工を餌に国会議員をコントロールしようということで、民主党に族議員を育てようという野望が読み取れます。その意味で年金財源への流用に抵抗していたんですが、一応社会保障政策は政権の目玉ということで押し切られましたが、結果的に整備新幹線の野放図な新規着工に制限が課せられるという意味でグッドニュースです。

というわけで、菅政権のしょーもなさは、官僚の想定をさえ超えているわけで(笑)、無能であるが故に官僚も操縦できないダメ政権ということになります。ということで、人気が無いから解散もできず、官僚が支えても迷走し、野党には付け込まれ国会で何も決められず、予算は決まっても関連法が通らないまま新年度を迎える最悪のシナリオが現実味を帯びます。特に特例国債(赤字国債)が発行できないわけですから、新年度は予算の暫定執行とならざるを得ず、埋蔵金頼みを加速することになります。というわけで、その方がまだまだ隠れている埋蔵金が表へ出てくると考えると、菅政権が続くことは案外悪くないかもしれません(爆笑)。

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Comments

いつもエントリを興味深く拝読しておりますが、誤表記(特にPiBOARDでの多さには閉口します。)が目立つように感じられます。

自主して→自首して
北沢防衛賞→北沢防衛相
視点で野報道→視点での報道
50%をj超えていて→50%を超えていて
雇うには付け込まれ→野党には付け込まれ
まだdまだ隠れている→まだまだ隠れている

法と正義の福知山線
冬季時点で見るか→登記時点で見るか
終始報告書上決済時点→収支報告書上決済時点

あえてそのような表記をとられているのでしたら当方の認識誤りですが、毎度楽しみに拝読しておりますのでエントリに際しては少し校正をしていただきたく、失礼を顧みず申し上げた次第です。

Posted by: amatake | Friday, December 24, 2010 10:58 PM

ご指摘ありがとうございます。誤入力、誤変換がこれだけ多いと読みにくいですね。以後気をつけます。

Posted by: 走ルンです | Friday, December 24, 2010 11:25 PM

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