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Saturday, December 04, 2010

おけいはん世界へ

人口減少で長期低落が確実な日本で、特に他の大都市圏以上に衰退が見られる関西ですが、こんな動きが出てきました。

京阪電鉄、ベトナムで商業施設 現地企業と共同  :日本経済新聞
ベトナムといえば日本の原子力発電所や新幹線の売り込み先として注目されておりますが、都市鉄道の整備計画も多数持ち上がっていて、日本の私鉄の沿線開発ビジネスモデルが活用できるとの見立てで、現地不動産投資会社バン・フー・インベストとの合弁事業として商業施設などの整備と運営を行うことで合意したものです。おけいはんの東京進出に留まらず、海外へというのは驚きです。

ベトナムは現在1人当たりGDP1千ドルレベルの途上国で、世界的に消費をリードしていると言われる新興国の新中間層の登場には至らないものの、中国が経済成長で人件費が上昇する中、次の成長国としての期待がかかる国ではあります。そして政治的に安定していることも魅力ではあります。とはいえリスクを伴う先行投資を、ドメスティックな国内企業でも特に地縁的でリスク回避的な大手私鉄が手がけるというのは、大きなニュースです。それだけ本業に展望を見出せないことの裏返しなんでしょう。

脇道にそれますが、今年度GDPが日本を抜くと言われる中国が平均4千ドル程度ですから、消費意欲が強い新中間層の増殖が中国経済躍進を支えているわけです。北朝鮮は2千ドル程度と見られますが、軍事関連にリソースを取られているので、国民の満足度がベトナムより上かは微妙です。同時に経済力は戦争遂行能力を規定しますから、延坪島砲撃事件も全面戦争に至らない寸止めの挑発行為といえます。

そして韓国の軍事独裁政権が崩壊したときの1人当たりGDPは3千ドル程度ですから、実は新中間層の出現は政治の民主化の閾値でもあり、中国の天安門事件やタイの政情不安などもこの観点から見れば説明がつきます。逆に経済制裁下の北朝鮮では内発的に金正日政権が倒れる可能性は低く、内部崩壊を狙うならばむしろ経済支援した方が早道です。

しかし人口の多いアジアで都市鉄道分野はかなり魅力的なマーケットであり、世界に類例の無い日本の大手私鉄のビジネスモデルを再現できる可能性のあるエリアとして見れば、京阪の行動は頷けます。ベトナムもドイモイ政策で経済開放に舵を切ったものの、国内インフラの弱さがネックで経済成長になかなか火がつかない低迷状態から抜けられず、一方で経済成長著しい中国の圧力は増すばかりですが、その中でベトナム政府はインフラ整備を精力的に進めようとしているところです。国土が南北に長く、長い海岸線を有するなどの地理的条件もあり、日本をお手本にしようという意思が読み取れます。

また日本でも話題となったTPPへは一足先に参加交渉入りしており、同時に交渉のテーブルに着いているアメリカ市場へのアクセス権を得るとすれば、日本の高度成長を再現できる可能性も拓けます。ちなみに日本にとっては残念なニュースもあります。

TPPの情報収集、はやくも頓挫 NZ会合参加できず  :日本経済新聞
菅首相の施政方針演説で取り上げたTPP加盟ですが、加盟を検討するために情報収集をというのは、加盟交渉で角突き合わせる加盟交渉9カ国にとっては迷惑な話で、当然の話です。同時に同様の立場にあるカナダやフィリピンへの示しがつかないこともあり、尖閣問題で日本に好意的との見方も打ち砕かれ、加盟に舵を切るだけの指導力を発揮できなかった菅政権のしょーもなさばかりが目立ちます。

結局日本の外交はすべからく当事者意識が希薄な点が気になります。FTAやEPAは重要ですが、日本の場合工業製品の関税が低率な一方、農業分野の関税が非常識に高く、しかも例外扱いを求められるでは、相手国にメリットが見出しにくいので、交渉が進まないわけです。しかもWTO交渉と違って当事国だけのローカルルールとして生産国認証という面倒な手続きが付きまとい、そのコスト負担は場合によっては関税率を凌駕する状況です。

その中でお隣の韓国がFTAに前のめりとなっており、アメリカとのFTA交渉がまとまりました。

米韓FTA合意 乗用車関税、5年維持で韓国譲歩  :日本経済新聞
これで財界から「日本政府は何やっている(怒)」との声が上がるでしょうけど、逆に日本がFTAに踏み出せないからこそ、韓国はFTAに熱心なのであって、実際米韓FTAは韓国が譲歩した内容になっております。それでも産業構造が似ている日本が出遅れる限りメリットが出せるということで、逆に同じ土俵で争う限り韓国に劣後するのであれば、別の作戦を立てる方が賢明ではないでしょうか。

その意味で日本のドメスティック企業の海外展開には可能性があります。実際小売業は進出に意欲的で、特にコンビニエンスストアは海外展開を成功裏に進めております。製造業の声が拡張される財界の意見に引き摺られないことも大事です。大手私鉄である京阪電気鉄道の海外展開は新たな可能性を見せてくれるでしょうか。

外交が受動的だからポツダム宣言発効の9月2日でなく8月15日を敗戦ではなく終戦と呼び慣わす自己欺瞞に漬け込まれてソ連の参戦と北方四島の略奪を許したのですし、日米同盟で思考停止しているから、普天間問題ひとつまともに解決できないで迷走するわけです。

韓国延坪島砲撃事件のような北朝鮮の挑発行為に対し、官邸の空白の70分が国会で叩かれましたが、指揮権を国連軍代表の在韓米軍司令部に預けている韓国を標的にする限り全面戦争にはならないのであって、日本の閣僚が官邸に参集したところで、できることなど皆無です。そんなことで揉めていて、一方5兆円規模の補正予算は素通りですが、今回の補正予算で一体何をやるのか、ご存じの方は少ないでしょう。実際は新成長戦略と称する官僚の作文が並んでいて、本予算でカットされたか、概算要求を手控えたものが補正に回っているだけで、概算要求の10%一律カットと特別枠設定の関係と同じです。早い話が官僚の財布を増やしているだけで、経済効果など皆無です。

つまり10年度予算の執行段階の監視が効いて手付かずで残った予備費2兆円、低金利で国債利払い費の圧縮分1兆円、リーマン後の回復による税収増2兆円と、珍しく残ったお金を使うのが目的だったというからくりです。それならば11年度に繰り越して新年度の国債発行を抑制する方がマシだったはずです。それでいて消費税増税をというのは通らない話です。

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Comments

TPP亀井ですか(笑)
国民新党はTPPには一応反対の立場ですよね?
まあ、民主党内でも賛否両論あるみたいですけど。

京阪が海外進出というのは驚きです。
新幹線の輸出と違って、単独で乗り出して現地企業と協力して事業を進めるというスタイルなんですね。JRや車両メーカーの場合は街づくりのノウハウがほとんどないので、こういう芸当はできませんよね。

Posted by: yamanotesen | Sunday, December 05, 2010 at 04:01 PM

最近誤変換が多いけど、IMEがおかしい。断じて管理人の老眼が進んだんじゃムニャムニャ^_^;。

将にこれから豊かになろうとするアジア諸国には、日本の大手私鉄の街づくりのノウハウが活かせる可能性があります。企業として成長を目指すならば、政治に注文つける前に、自らビジネスチャンスを見出すべきですね。

既に輸出企業と見なされている大手製造業でも、海外現地法人の利益配当の方が貿易による利益を上回っているので、日本の貿易立国の実態は既に変容しております。ドメスティック企業も海外に成長機会を得ることが必要ですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 05, 2010 at 08:41 PM

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