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Sunday, January 09, 2011

これからの「年金」の話をしよう

年が明けて更新が滞っておりますが、新年にふさわしいお目出度い話題が見つからず、今に至りました。というわけで、一応明るい話題のつもりですが、読後の感想には責任を負いかねます^_^;。

政権の迷走は予見できたことですが、アキカンでダメだからといっても、代わる人がいない。これは民主党に留まらず野党の自民党なども同じで、解散へ追い込むという主戦論で勇ましいですが、政権構想は何一つ示せていない状況です。こうなると官僚の出番とばかりに、さまざまなことが進んでおりますが、要注意です。

例えばこんなニュースです。

省エネ家電に新割引、買い替え時CO2削減分を : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
エコポイントで家電販売が下支えされてきたものの、3月で期限切れとなり、販売の落ち込み、価格の下落は確実な情勢ですが、無理筋の制度です。

例えばエコポイントで買い替えが進んだTVですが、ブラウン管TVから液晶などの薄型TVへの買い替えで、TV単体の消費電力は、視聴時間が同じならば下がる道理ですが、売れたのは大画面のものが多く、また付与されるエコポイントが多いこともあり、これって省エネ?という疑問が付きまといます。

加えて2台目の購入や、録画用ハードディスクドライブやブルーレイドライブなどの周辺機器が増殖したりしてますし、冷蔵庫でも大容量のものへの買い替えが進みましたので、言われるほどの省エネ効果は出ていないと推定されます。つまりCO2排出削減分の還元策は制度として成り立たない可能性があります。一応買い替え世帯をモニターして実測値をはじくようですが、「標準値」を設定するというところがミソです。つまり実数値ではない架空の数値を設定するのです。

エコカー減税で主にEUからクレームがつけられた車重別の標準燃費からの改善効果を評価するという制度設計であるために、重量の嵩むオプションを付けて重量区分を上方シフトして燃費改善効果を高く見せるインチキが横行したことは既に指摘したとおりです。EUとのFTA交渉はタフなものになりそうです。

エコポイント制度であまり指摘されませんが、制度終了後の在庫処分で付与されたはずのエコポイント分以上の値引きが行われるとすれば、慌てて買いに走る意味は無いんで、柳の下のドジョウを狙っても、いずれ消費者に見透かされること確実でしょう。今のところ経産省で検討中の段階ですが、支持率が低迷する政権が飛びつく可能性が高いだけに頭痛いですQ-o-フゥ。

そんな中で社会保障の充実に意欲を見せるアキカン宰相の意向もあり、鉄建機構の埋蔵金1.5兆円の内1.2兆円を取り崩して基礎年金の国庫負担分に充てることを決めたことは取り上げました。それに先立って基礎年金の国庫負担を50%とする財源が見つからないということで、財務省から待ったがかかり、11年度予算では国庫負担を36.5%として不足分を年金積立金の取り崩しで充てる案が出され、財務省と厚労省が対立しておりました。そこへ出てきた埋蔵金活用で、メデタシメデタシと感じたとすれば、騙されてますのでご注意を。

総額140兆円と言われ、厚生年金と国民年金の積立金を厚労相が年金積立金管理運用独立行政法人に寄託し、民間金融機関(信託銀行等)へ運用委託し、一部は自主運用とされておあります。JAL再建問題で指摘した企業年金制度が積み立て方式ですので、公的年金制度とは違うのですが、就労ができない年齢まで生き延びるリスクに備える保険という点で基本的な仕組みは同じです。

この辺は公的年季制度の歴史過程で戦費調達という裏の目的があったために、元々の制度設計が積み立て保険の形態でありながら、法令上は明記されず、故に積み立て不足が放置され、運用で賦課方式へ移行させた歴史が絡む問題です。積み立て不足自体は積立金の運用目標を高く設定していることに由来するもので、運用利回りが高ければ納付する保険料を安く、給付を高く設定できる仕組みですが、当然運用実績を上げるためには株や海外債券などのリスク資産を組み込んだ運用を強いられ、バブル崩壊で元本が毀損したわけで、日本の公的年金では積み立て不足は数百兆円に達するという試算があり、財政資金の臨時拠出も非現実的です。

完全な賦課方式ならば積立金は要らないか、若しくは制度の持続性を保証するレベルの資金があれば十分なんで、大まかに言って1年分の支給額相当の積立金があれば、万が一大災害等で国の経済活動が完全停止しても給付を続けられるわけですがその水準は現時点で20数兆円規模。団塊ジュニア世代が受給年齢となる2040年ごろには倍増が予想されますが、それでも50兆円強といったところでしょう。そしてその水準が10年程度続いてから暫減すると見込まれます。つまり現状で90兆円程度は取り崩しても問題は無いわけで、むしろ制度の持続性を担保し、給付水準を維持するために計画的に取り崩すことが望ましいといえます。この辺は以前にも指摘しました。

加えてスウェーデン方式と言われる見なし積み立て方式への移行が、特に年金未加入者が多いと言われる若年層の制度参加のインセンティブとなることを指摘しておきます。見なし積み立て方式はリアルに積立金を積むわけではなく、納付された保険料は賦課方式に準じて現在の受給者への給付へ回されますが、制度へ参加した証しとして個人別に年1回積立額が明示され、受給額も推計できる仕組みです。制度の骨格は賦課方式ながら、保険料の納付が受給権とリンクしている点で積み立て方式と同等の効果を期待するものです。当然見なしとはいえ積み立て不足は財政による穴埋めが前提となり、制度の安定性は増すわけです。しかも現行制度からの移行も比較的容易です。ただし運用は安全性重視で国債運用に限定し、運用目標を置かないなど、積み立て不足が生じない仕組みにする必要はあります。

この辺は以前にも論じたところでして、賦課方式は人口動態の影響を受けますが、経済状況を柔軟に反映させられるという意味で、公的年金としては望ましい仕組みです。

とまあこんな話をなぜ蒸し返すかと言えば、財務省の動きに懸念があるからです。参院選前に消費税10%をぶち上げて惨敗した菅首相ですが、ここまでの「年金」の話でお気づきの方はいらっしゃるでしょうが、年金制度単体で見れば消費税を上げずに制度改革は可能です。医療、介護、保育などの現物給付では、サービス給付という性格上費用のコントロールが難しく、将来の財政負担が増える可能性を否定するのは難しいのですが、年金だけに限れば、現金給付という性格上、財源がクリアすれば良いわけで、やる気があればすぐにでも可能ですが、予算折衝で財務省が国庫負担の財源不足で年金積立金の取り崩しに敢えて言及したところに、年金問題を消費税増税に繋げる裏の意図が見えてしまいます。こんなことも見抜けない間抜けな政権で政治主導とはちゃんちゃらおかしいですな。

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Comments

「見なし積み立て方式」というのがあるんですね。初めて知りました。積立方式にはインフレのリスク、賦課方式には人口変動のリスクがありますが、その辺りはどうなるのですか?

一連の年金記録問題を見る限り、日本年金機構(旧社保庁)には国民の資産を長期間管理する能力がないと思います。変に積立まがいの仕組みを取り入れるよりも、完全賦課方式にした方がシンプルで良いような気がします。

Posted by: yamanotesen | Saturday, January 15, 2011 at 12:44 AM

仰るように、積立方式はインフレリスク、賦課方式は人口変動の影響から避けられないという問題がありますが、見なし積立方式では金利の調整で対応することになります。

保険の基本として保険料を積み立てて運用することで、将来受け取る受給額は納付した保険料を上回ることになる理屈ですが、この運用利回りが高ければ高いほど小額の納付で高額の給付が受けられるのですが、だからといって闇雲に高い金利を想定すれば、JALの企業年金のような積み立て不足が生じてしまいます。

問題は明示的な積立方式である企業年金の場合、積み立て不足は補填が義務付けられているわけで、それがJALの経営を圧迫したことは以前指摘したとおりです。

公的年金の場合、制度の設計は積立方式に準拠しながら、賦課方式で運用されているために、実現性の乏しい高い運用利回りの想定で元本が毀損しても、国は補填する義務を負わないので、結果的に積み立て不足が放置されたわけです。

加えて選挙目当てでで給付の物価スライドなどの大盤振る舞いをしてきたわけですから、高齢化に伴いシステムが破綻するのは当然です。

一方完全積立方式では、例えば90年代の就職氷河期世代など、現役時代に経済的な逆風を受けた世代は、保険料の納付額も少なくなりますから、受給年齢で受け取る年金額も少なくなるわけで、経済的に惨めな中で生涯を終えることになり、助け合いという公的年金として意味を為さないものになります。

これらの問題を全て金利の調整で対応するというのが見なし積立方式のキモです。インフレリスクに対しては、インフレ期待があれば市場金利は上昇しますから、リスクヘッジは可能ですし、90兆円もの超過積立を原資にすることで、当面の人口変動は吸収可能です。

当然積立金の取り崩しは無限に可能ではありませんから、ある時点で不足額の財政負担が生じる可能性はありますが、それは何十年が後のことですので、少なくとも今議論する必要はないですし、そのときの経済情勢や財政事情も特定できませんから、議論しても無意味です。

重要なのは年金問題を増税の口実に使わせないことです。既に菅海造内閣は財政再建論者を重用する布陣となり、逆方向へ走り出しておりますが、次の選挙で厳しく対応するしかありません。

Posted by: 走ルンです | Saturday, January 15, 2011 at 10:35 AM

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