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February 2011

Sunday, February 27, 2011

さくら咲くみずほの国の筑後スキップ

都道府県別人口と2005年増減比
人口(千人)増減率(%)
全国128,0560.2
北海道5,507▲2.1
青森県1,373▲4.4
岩手県1,331▲3.9
宮城県2,348▲0.5
秋田県1,086▲5.2
山形県1,169▲3.9
福島県2,029▲3.0
茨城県2,969▲0.2
栃木県2,007▲0.5
群馬県2,008▲0.8
埼玉県7,1952.0
千葉県6,2172.7
東京都13,1624.7
神奈川県9,0502.9
新潟県2,375▲2.3
富山県1,093▲1.7
石川県1,170▲0.3
福井県806▲1.8
山梨県863▲2.5
長野県2,153▲2.0
岐阜県2,081▲1.2
静岡県3,765▲0.7
愛知県7,4082.1
三重県1,855▲0.7
滋賀県1,4102.2
京都府2,637▲0.4
大阪府8,8630.5
兵庫県5,589▲0.0
奈良県1,400▲1.5
和歌山県1,001▲3.4
鳥取県588▲3.1
島根県716▲3.5
岡山県1,945▲0.6
広島県2,861▲0.6
山口県1,451▲2.8
徳島県786▲3.0
香川県996▲1.6
愛媛県1,431▲2.5
高知県765▲4.0
福岡県5,0730.5
佐賀県850▲1.9
長崎県1,427▲3.5
熊本県1,817▲1.3
大分県1,196▲1.1
宮崎県1,135▲1.6
鹿児島県1,706▲2.7
沖縄県1,3932.3


25日の閣議で2010年国勢調査の速報値が報告されました。それによると右の通り、38道府県で人口減少、増加は9都府県のみという結果です。全国では0.2%の増加となっておりますが、外国人居住者の増加が寄与したものと見られ、少子化傾向は変わりませんし、また当然ですが高齢化が止まったわけではありません。見えてくるのは地方の疲弊ぶりですが、その中で沖縄県の人口増は特筆ものです。

言うまでもなく東京都の人口増は、外国を含め他の地域から人を引っ張ってきた結果であって、出生率は47位のワーストですから、むしろ高齢化は進んでいるのですが、逆に出生率全国トップの沖縄県は、地方のご他聞に漏れず人口流出が多いはずにも拘らず、出生率の高さで増加しているわけですから、若年人口の厚い年齢構成というわけで、実は高齢化の進捗と共に賃金が上昇している中国よりも工場の移転先としては有望なはずです。それを阻んでいるのが「基地の中に島がある」と言われる米軍基地の存在です。

だから鳩山前首相が普天間の海兵隊の県外、国外移設を試したのは見識でした。実際は事務方に取り込まれた閣僚の裏切りによって辺野古移設が既成事実化し、理由付けに「抑止力」を持ち出して、いわゆる方便発言としてメディアに集中砲火を浴びておりますが、むしろ国のリーダーの言うことを聞かない事務方の問題や、それに取り込まれた閣僚の問題の方が、公権力の行使の正当性という観点からは問題があるにも拘らず、そういった報道は見られず、この国のメディアは中国や中東の独裁国家の政府系メディアと変わりません。大本営発表しか報じられない嘘つきメディアは国民を不幸にします。

あと都道府県単位の数値では見えにくいですが、例えば神奈川県では、西部の市町村で減少となり、傾向的に大都市圏への人口集中が見られます。県としては減少傾向にある宮城県の減少率が東北の他県に比べて低いことも読み取れます。近畿圏では大阪府と滋賀県のみが増加してますが、滋賀県は京阪神の人口の一部が移動したものと見られますが、一方で大都市を抱える京都府と兵庫県が減少となっており、広域で一体感のある実態が見えます。

そして本題ですが、数少ない人口増加県の一つである福岡県でも、筑後地方の人口減は悩みの種であるわけです。そんな中で九州新幹線鹿児島ルートの開業を迎えるのですが、そこに見えてくるさまざまな矛盾は、おそらく地域を更に疲弊させることになりそうです。

来月12日に開業を控え、既に時刻表にも掲載されております。速達形のみずほ、選択停車のさくら、九州新幹線内の各駅停車つばめの3種類の列車で運行されますが、特に目に付くのが、さくらの停車駅パターンが20種類もあることです。これは広範囲な選択停車の結果であり、停車駅を巡る各地域の綱引きが熾烈だった結果です。この停車駅を巡る綱引きが、速達タイプのみずほを生む結果となったことも指摘しておきます。

整備新幹線は国と地方が2:1の割合で事業費を負担する仕組みですが、そのために地方のさまざまな要望を聞かざるを得ないために、高速鉄道としては駅が多過ぎる嫌いがあります。特に新鳥栖と久留米の駅間は実キロで5.7kmしかなく、双方へ停車すればかなりの時間ロスとなるということで、区間運転さくらの一部を除いて新鳥栖と久留米は選択停車となっております。対航空で劣後する山陽新幹線を抱えるJR西日本にとっては捨て置けない問題で、結果的に筑後の玄関となる久留米は停車列車が減ってしまうわけです。

そもそも当初計画では新鳥栖駅の設置計画は無く、後から追加されたんですが、そのために新鳥栖を名乗ってはいますが、鳥栖市街から離れた市境近くで、利便性に疑問符がつきます。それでも追加された理由は、この駅が佐賀県に立地することにあります。つまり佐賀県と鳥栖市にも地方負担を求めた結果、このような不自然な駅配置となったわけですね。福岡県側から見れば建設費の地方負担を軽減するためですが、結果的に完成後の利便性を損なうんですから世話ないです。

ここからはキナ臭い政治問題になるんですが、新鳥栖駅は一応長崎ルートの分岐駅という位置づけになっております。つまり佐賀県に負担を求める手前、長崎ルートの着工と将来の完全フル規格化はセットで考えられていたフシがあります。でなければ県境近くを掠めるだけの鹿児島ルートに佐賀県が負担を呑む理由はないわけです。

加えて筑紫トンネル問題と博多南線問題も指摘しておきます。博多南線問題はリンクをご参照いただくとして、筑紫トンネル問題について解説します。実は半世紀近い新幹線の歴史の中で、筑紫トンネルは唯一の山岳トンネルであるという指摘をしておきます。

妙な指摘に見えると思いますが、山岳トンネルについての説明です。トンネルに漏出する地下水を排出するために、在来線のトンネルのほとんどは、トンネル内にサミットを置いて両口に向かって下り勾配を形成する銃断面設計となっております。それに対して新幹線のトンネルは、基本的に入り口と出口の間を直線で結ぶ設計として高速走行をサポートしているのですが、それが災いして上越新幹線中山トンネルでは大湧水で工事が中断し、不自然なカーブで地下水源を回避せざるを得なくなりました。また大清水トンネルでも湧水に悩まされ、有効活用策として大清水ブランドの飲料の製造販売事業が立ち上がったのは有名な話です。

で、筑後トンネルが立地する脊振山地なんですが、豊富な地下水脈を抱える福岡の水がめで、ここを直線ルートでトンネルを穿つことができないために、筑紫トンネルは標高の高い位置を通さざるを得ず、またトンネル排水に留意する設計となったのです。しかも標高差を稼ぐために前後に35パーミルの規格外の急勾配を置かざるを得ず、それがつばめ用の800系の設計に際して3M1T基本の700系からT車を抜いたハイパワー仕様が採られることになりました。逆に言えば山陽新幹線仕様の700系以前の車両は博多以南には入線できないわけです。

これは国鉄時代に策定された基本計画ルートをなぞった結果ですが、基本計画段階はあくまでもラフですから、調査して整備計画に格上げする段階や、より具体化して工事実施計画を策定する段階でこのような設計が確定したわけで、手続き上はこれらの段階でルート変更を行うことも可能だったはずですが、高速運転に不向きな規格外の勾配を容認する方向へ向かったのは、本当に地域の将来をまじめに考えたのかどうか、疑問が残ります。

というのは、博多南線問題とも連動しますが、九州新幹線は博多総合車両所が工事起点となる分、事業費が圧縮されることが作用します。仮に背振山地を避けたルートとする場合、在来線併設が考えられますが、市街化が進んだ地域を通過する分、事業費の膨張は避けられません。それでも、例えば佐賀県に駅を設置するにしても、駅間バランスを考えて基山に在来線とホームtoホームの乗り換え駅を設置すれば、結果的に佐賀県の利便性は増しますし、近すぎる新鳥栖と久留米の選択停車で結果的に不満が残る運行ダイヤも改善できた可能性があり、博多南線問題も解消しますから、本当に地域のために十分な検討がされたと言えるでしょうか。

新鳥栖問題は、やはり国鉄時代の基本計画ルートをなぞった結果、地域の事情が無視された東北新幹線新青森問題と似ています。しかも根拠とされた北海道新幹線へのつなぎ問題でも、青函トンネルの貨物共用区間の安全性から最高速140km/hに制限されるのですから、何のためのフル規格だったのかが問われます。

そして実は筑後スキップ問題のディープさはこれに留まりません。筑後地区には久留米、筑後船小屋、新大牟田の3駅が設置されますが、新鳥栖のとばっちりで停車列車が半減する久留米のみならず、使い勝手の悪い駅が並びます。

まず筑後船小屋ですが、筑後市の中心市街地は羽犬塚駅周辺で、九州道八女インターにも近く、道路交通との結節点として可能性を秘めております。またより深刻なのが柳川市でして、瀬高に駅ができれば目と鼻の先だったのですが、船小屋では使い勝手が悪く、また八女ならば久留米からのアクセスも悪くないですが、柳川は九州新幹線との接点が皆無となり、文字通りさくらも咲かずみずほもなびかずのジリ貧状態となります。北原白秋が愛した風情ある街はどうなるでしょうか。

新大牟田に至っては論評する価値すらありません。大牟田の名を冠して入るけれど、市街地とは遠く、JRとも西鉄とも連絡不可とあっては、一体誰が利用するのでしょうか。そして筑後スキップ問題は更にディープです。

元々大牟田まではJRと西鉄の路線が並行し、ライバル関係にあることは知られておりますが、三池炭鉱の閉山で低落傾向の大牟田を抱え、西鉄では甘木線とセットで2連ワンマンの普通列車を走らせるローカル区間となっておりますが、一方で九州新幹線開業後もJR九州に残る並行在来線との旅客の取り合いは続いており、しかも西鉄天神大牟田線は新幹線との接点を持たない分、劣勢の状況に置かれるわけです。

JR九州にとっては、新幹線開業後も福岡都市圏輸送は重要分野であるわけで、あえて手元に残した並行在来線ですが、久留米以南は明らかな供給過剰状態で西鉄と叩き合うことに如何なる意味があるのでしょうか。もちろん熊本都市圏の輸送がありますから、そこを残せば西鉄との並行区間だけを分離する意味はあまりありませんし、貨物問題も抱えるだけに、受け皿三セク鉄道の資本費負担は莫大で、とても受け入れられないでしょうから、JR九州の地場企業としての判断だったのでしょう。しかしそれがやはり地場の有力企業である西鉄を苦しめる構図はやり切れません。丁度名古屋でJRと市営地下鉄に挟撃される名鉄のようです。

またJR九州のこの判断は、整備新幹線のスキームを知る人には自明なんですが、結果的に新幹線本体工事への公的負担を増加させます。並行在来線切り離しによる受益分が新幹線リース料算定根拠に含まれるわけですから、結局地元は多重の負担を負って使い勝手の悪い新幹線を手に入れたわけですね。その先にあるのは泥沼の継続的負担です。

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Saturday, February 19, 2011

池のクジラのTPP

意味不明なタイトルですいません。現実のニュースの方がいろいろあって、キャッチーなタイトルを工夫しないと埋没しそうなんで^_^;。

以前アキカンじゃダメと申し上げましたが、ここまで迷走するとは予想外。3月末までに予算関連法案が成立しなければ、仮に予算が通っても執行出来ないという憲政史上初の椿事となります。ま、暫定執行を余儀なくされるわけですが、半年程度は国庫金の資金繰りは可能ですし、資金繰りに詰まって官僚が焦って埋蔵金を表に出してくるとすれば、怪我の功名となる可能性はありますが、子ども手当がなくなって児童手当へ逆戻りするなど、混乱も予想されます。

だから10年度補正予算なんか組まずに5兆円を繰り越していれば、まだしも資金繰りが楽だったのですが、後の祭りです。結局補正予算は各省庁に予算請求の機会を増やすだけで、財源があるからと補正を組むというのは、結局余った国庫金を食われる意味しかありません。実際10年度本予算でいわゆる小沢裁定で半減された農業基盤整備事業の予算は補正で復活しております。TPPに備えて農業支援のためという理屈がついてきます。

減反で耕作地を縮小させているときに、一方で農地整備を進めて農業土木利権を太らせたという意味で、削減は正しい判断だったといえます。思い起こせば元自民党の野中弘務氏が小沢幹事長室に陳情するという珍風景の中で切られた予算をわざわざ復活させただけで、当然日本の成長には何も寄与しません。政権のTPP議論のいかがわしさが窺えます。

民主党代表選でも話題になった概算要求基準の1割削減と見返りの特別枠設定が、例えば防衛省の米軍駐留経費いわゆる思いやり予算を概算要求に含めず、特別枠で通すというような形で、分けて予算要求されるだけで、結果的に予算総額をお押し上げております。予算は分けても減らせないのです。

というわけで、こんなニュースに注目しました。

調査捕鯨、今季打ち切り シー・シェパード妨害で  :日本経済新聞
調査捕鯨の断念ということで、表向きシーシェパードの妨害行為で断念という形になっておりますが、これもTPP案件と見ることが可能です。というのも、以前の記事で指摘したところですが、捕鯨問題で日本とオーストラリアの対立が続くことを懸念した米オバマ政権が、IWC総会に変化球を投げて妥協を探ったのですが、日豪の隔たりは大きく、結局不調に終わりました。

今、日豪で経済連携協定(EPA)交渉が行われており、日本のTPP参加の前哨戦と見られている状況があります。その中でオーストラリアは日本に農業の市場開放を迫っており、捕鯨問題を巡る対立は、喉に刺さった小骨のような問題として交渉を難しくします。つまりシーシェパードのせいにして、日本は南極の調査捕鯨から名誉ある撤退を模索し始めたという見方が可能です。農水相が表明したのはそんな意味ではないでしょうか。

加えて調査穂減発生品の鯨肉が売れていないという現実もあります。冷凍保存が必要で、IWCルールで廃棄が禁じられている調査捕鯨鯨肉の在庫拡大を調整したい本音があるというのは、穿ちすぎた見方でしょうか。いずれにしても(独法)日本鯨類研究所(以下鯨研と記す)が主体となり、鯨肉販売代金で活動を続けるモデルの持続性に疑義が生じている状況を政府も認識し始めているのではないかと思います。少なくともTPP参加のためには、調査捕鯨は障害になることはあっても助けにはならないということですね。

また世界的なクロマグロ漁規制の潮流に対して、オーストラリアは数少ない規制反対の立場の国であり、クジラで譲ってマグロで連携を探っている可能性もあります。元々固有の食文化を捕鯨の理由としてきた日本ですが、食文化としての浸透度はクジラとマグロでは比べるまでも無い話です。

本来、食文化維持ならば、沿岸捕鯨こそ維持されるべきですし、文化性のある生業的捕鯨はIWCも認めており、米イヌイットのホッキョククジラ漁などが該当するわけです。その意味で先のIWC総会で南氷洋調査捕鯨の縮小を伴う議長提案は、食文化維持ならば日本は受け入れ可能だったはずですが、個体数の多い南氷洋の捕鯨だからこそ商業捕鯨が可能という現実を踏まえた本音を否定されるから抵抗し、和解のチャンスを失いました。

というわけで、池のクジラを飼うのは止めようという話です。TPP参加となれば、国の関与を強める郵政改革法案は見直しを余儀なくされるでしょうし、前の記事で指摘したようにJR東海のアメリカ高速鉄道への参入にも影響します。こんなニュースもあります。

フロリダ州知事の高速鉄道拒否、米運輸長官「落胆」  :日本経済新聞
というわけで、中止となりました。記事中にもあるように、収支見通しの甘さは以前から指摘されたところです。JR東海はテキサス州の事業に切り替えて売り込みを狙いますが、テキサス州の計画は構想段階で動き出すにはいくつもハードルがあります。当然具体化段階でRAMS規格準拠などの形で日本の新幹線が除外される可能性は高く、日本の鉄道技術の国際化は一筋縄には行きそうもありません。

このように、日本という狭い池で巨大なクジラを飼い殺しにしているのが現状です。新幹線の技術的な優秀さは、日本では当然とされておりますが、衝突安全を考慮しないから限界的に軽量化が可能なんで、その結果保安装置を重装備にせざるを得ず、運行管理もマンパワーを裂くか巨大システムを構築するかで高コストを余儀なくされる日本の新幹線技術は、元々人口密度の低いところでは不利なんですが、鉄道界のトヨタを気取るつもりか、JR東海の意図するところはわかりません。

仮に米高速鉄道参入が実現したとして、不具合が生じたときに受けるバッシングはトヨタの比ではないわけですが、国際規格に準拠していれば、その部分で免責されるわけで、契約社会たるアメリカへ本気で進出するならば、その辺の感性は持ち合わせないとうまくいかないでしょう。

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Saturday, February 12, 2011

トヨタリコール問題終息に見るお寒いグローバルガバナンス

ムバラク大統領が辞任し、軍による執権体制移行となったエジプトですが、民主化ドミノが遂に中東アラブ諸国へ波及したものとして歴史を刻みます。

「エジプトは自由だ」 デモ参加者歓喜、広場に花火  :日本経済新聞
論点はいろいろありますが、今回はSNSのフェースブックが大きな役割を果たしたようで、新しいメディアが存在感を増す現実を見せ付けました。フランスのサルコジ大統領は早くからムバラク大統領に辞任を迫り、アメリカのオバマ大統領も、平和裏の政権移行を強く示唆するなど、外交的な動きを強めた中で、我がアキカン宰相は去年秋のロシアのメドベージェフ大統領の国後訪問を今さら「許しがたい暴挙」と述べてロシア外交筋の態度を硬化させるなど、相変わらずトンチンカンな対応ばかり。メディアも民主化の産油国への飛び火を「心配」する論調が目立つなど、どこ見てるんだかという感じです。

今回の問題は基本的に中東の天安門事件です。背景には経済問題が隠れております。観光立国のエジプトですが、9.11以降の観光客減少で窮地に会った中で、外資導入による産業化を進めたものの、経済成長が人口増加をもたらして若年層の雇用問題を引き起こし、また自らの経済成長に伴う資源需要の増加は、資源価格を押し上げますから、国内経済の成熟度が低い途上国では悪性インフレを引き起こすわけです。

その結果、チュニジアで起きた若者の焼身自殺をきっかけとする騒乱が独裁政権を追い込み、その熱狂がエジプトにも波及したわけで、一連の民主化ドミノはまだまだ続きそうです。またこうした多くの国で国民が国内政治への意識を高めることは、結果的に逃げ場の無い恨みから出るテロの芽を摘むことでもあり、歓迎すべきことです。

古くはフランス革命がアメリカの独立運動を刺激しましたし、もっと面白いのはハイチ革命でして、フランスの統治下プランテーションで強制労働を強いられていた黒人奴隷たちが、本国の革命の報に接して、その熱狂を引き継ぐように起きた独立運動だったのですが、テルミドールの反乱で政権を掌握したナポレオンは、奴隷の暴動を鎮めるために軍隊を派遣します。そして反乱奴隷たちと対峙したナポレオン軍は、奴隷たちが歌を口ずさむのを聞いたんですが、それがラ・マルセイエーズだったということで戦意喪失し、ハイチの独立は果たされました。

しかし元々貧しいイ農業国だったハイチはその後世界から忘れ去られ、政権を掌握した有力者とのコネクションが支配する閉鎖的なヒエラルキー社会となり、賄賂の横行で違法建築が放置された中で大地震が起き、壊滅的被害で政権が崩壊しました。民主化が構造改革に結びつかず、停滞に至る例として歴史のフラクタルは続きます。政権交代した日本も「民主国家だから安心」なんて言ってられるのか?

てな中で、気になったニュースがこれです。

トヨタたたき、収束へ 米当局「電子制御欠陥なし」  :日本経済新聞
トヨタの電子制御システムの不具合に関する調査結果が公表され、欠陥は無かったとする発表がされました。日経の報道にもあるように、米中間選挙を控え、経営再建中のGMへの援護射撃で票獲得という政治的意図があった可能性は否定できないんですが、忘れちゃいけないのがトヨタが虎の尾を踏んだことです。

カムリなど欧米で販売される左ハンドル車のアクセルが戻らなくなる現象を、リコールを届けなかったことで、トヨタの隠蔽体質を印象付けたのですが、それに留まらず左ハンドル者に採用された米メーカーの部品採用を「政治的配慮」とする不用意発言が、米国民には「アメリカ製部品を使ったから不具合がおきた」というニュアンスで取られたこともあり、クレーマーを呼び込んだということが言えます。アメリカより先に欧州でアクセル部品の不具合が報告されていた時点でリコールが届けられていれば、ベタ記事扱いで終わった話なんです。

ゼロ年代のトヨタは特に海外生産拠点の整備に注力し、円高による為替リスクの軽減に努めたのですが、その一方で2003-2004年の為替大介入による円安で、国内工場で生産しても十分な利益を得られる状況が続いたこともあり、なし崩しで生産規模を拡大してきました。しかしそれは世界一を目指す明確な意思なり戦略なりがあってのことではなく、なりゆきで進んだ拡大路線だったのです。だから進出先は欧米中心で、新興国はあまり視野に入っていませんでした。所得レベルの高い欧米中心で利益率も高いわけですから、投資に対するリスク許容度が下がっていたことは間違いないでしょう。

それがリーマンショックで暗転するわけですが、もろに波を被ったGMが経営不振で販売を減らし、いわば敵失によって世界一の地位が転がり込んだことで、トヨタはむしろ迷走します。年間1,700万台をピークに1,000万台まで縮んだアメリカ市場で、減少分はGMなどビッグ3による部分が中心となり、トヨタをはじめとするアジア系企業はリセッションの影響は軽微でした。当時メディアはトヨタの世界一を誇らしげに伝えておりましたが、それがリコール問題で水を差されたわけですから、お得意の陰謀説や、迷走する普天間問題の意趣返しなど、アホらしい珍説がメディアを席巻するに至りました。

おそらくミッドウエー海戦の大本営発表はかくありきだったのでしょう。元を糺せばトヨタのリコール隠しが引き起こした問題ですが、その部分は意図的に伏せて、アメリカの政治的レトリックとするのは、結局本質を捻じ曲げます。むしろグローバルに事業展開するトヨタが、主力市場のアメリカの規制に関して無知であったということです。言い換えれば三河の町工場のメンタリティのまま、深く考えずに規模拡大にまい進した結果の当然の帰結でもあります。

付け加えますと、昨年のVWとスズキの提携で、トヨタは世界一の座をアッサリ明け渡しましたが、トヨタ問題でトヨタがGMを抜いて世界一になったことを取り上げても、このことを指摘するメディアは皆無です。VWもスズキも新興国向けに廉価な小型車を供給して数を伸ばしてきたのですが、世界一を目指すなら新興国を視野に入れるのは当然です。トヨタとの戦略性の差は歴然です。

現在日本政府が参加を検討するTPP問題も、関税撤廃ばかりが話題に上りますが、むしろ各国でバラバラな規制の統一が大きなテーマです。そうなると世界標準とかけ離れた国内基準が多い日本の参加はかなり難しいといえます。エコカー減税や補助金でも、日本でしか通用せず、実質燃費と乖離していると指摘される10・15モード燃費を基準としたことで、制度開始当初輸入車が軒並み除外されたようなことは、当然許されなくなります。そうなるとTPP参加を求める財界の態度も変わる可能性があり、政府がそれを押し切ってまで進められるのかは疑問です。

米中間選挙でオバマ政権の目玉政策の一つである高速鉄道計画も、JR東海が受注を目指すフロリダ州知事が共和党の保守派となったことで、計画に黄信号が灯ります。元々JR東海が熱心な理由が、既に高速道路の中央分離帯に線路用地が確保されていて、既存の貨物鉄道との接続計画もなく、日本の新幹線方式を移植できると期待したものです。

台湾高速鉄道でRAMS規格無視発言で顰蹙を買ったJR東海は、アメリカで同じ目に逢いたくないとフロリダのプロジェクトに名乗りを上げたわけですが、TPPが発効すればおそらくRAMS規格に準じた規格が必須条件となる可能性が高いですから、保守派知事の任期中にプロジェクトが中断すれば、受注の可能性は小さくなります。

一方カリフォルニアのプロジェクトに名乗りを上げたJR東日本は、新在直通用のE6系で衝突安全基準のクリアを画策しており、Suicaの国際競争入札で国際標準に対する経験値を高めた経験値の差を見せております。

そのJR東日本もブラジルの高速鉄道計画には消極的ですが、建設、運営、譲渡(BOT)プロジェクトで事業主体としてリスク負担を強いられることに対して慎重姿勢なのです。BOTに関しては、三菱商事、三菱重工、大林組、鹿島、トルコ鉄道プラントメーカーによるドバイメトロの失敗があり、慎重姿勢は無理からぬところです。またシーメンスやアルストムも入札参加を見合わせ、結果的に韓国鉄道庁のみの入札参加となって入札そのものが延期されましたが、条件面の見直しは行われておりません。

おそらく発効すればEUに匹敵する巨大経済圏となるTPPですが、日本の参加のハードルはとてつもなく高いですし、トヨタ問題の対応を見ても、問われているのは企業自身が変われるかどうかであって、政府にTPP参加を促すだけではどうにもならないということは申し上げておきます。

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Saturday, February 05, 2011

北近畿改めこうのとりはラテンダンスを踊らない

先にネタバラししておいきます。タイトルのラテンダンスはタンゴのことです。となれば京都府北部のあの鉄道のことかと察していただけるかと思いますが^_^;。

まずはこのニュースからです。

北近畿タンゴ鉄道を一部廃線 京都府、兵庫県に打診  :日本経済新聞
近畿の地域経済版ニュースで私も知りませんでしたが、北近畿タンゴ鉄道(KTR)が今、重大な岐路にあるようです。高速道ETC割引や舞鶴若狭自動車道の高速道路無料化社会実験の影響で、観光客がマイカーへ流れたことで、自治体出資三セクとして沿線自治体の負担増が懸念されることから、京都府が兵庫県へ異例の申し入れをしたということです。

具体的には、宮津線末端の久美浜―豊岡間(営業キロ11.6km)が兵庫県域にあり、宮福線を含む全線の営業キロが114.0kmですから1割程度です。宮津線の中でもとりわけ利用が少ない区間でもあり、相対的に兵庫県サイドの資金負担が軽いとして、経営が苦しいKTRに兵庫県の関与を強める狙いがあると見られます。

と思いきやこんな続報です。

北近畿タンゴ鉄道、一部廃線や上下分離を検討 京都知事  :日本経済
より踏み込んだ発言ですが、兵庫県や豊岡市からの資金拠出を求める条件闘争ではなく、存廃を含む抜本的見直しを示唆しております。記事中にあるように、2009年度、ローカル私鉄中最大の赤字を計上し、支えきれないというのが本音のようで、本気度が窺えます。

北近畿タンゴ鉄道はローカル三セク鉄道でありながら、路線規模が大きい野が特徴で、100km超の営業キロは新幹線の並行在来線切り離し三セクを除けば断トツの規模といえます。それでいて現役車両は全て自社発注の新製車ですから、そもそもローカル鉄道としては資産規模が大き過ぎるということは言えます。それゆえ京都府知事が言及した公設民営形上下分離には一定の合理性はありますが、そもそも過疎地であり、且つ昨今人口減少が進んでいるエリアであることもあり、より厳しい条件にあると言えます。

京阪神から見た丹後半島は、首都圏でいえば伊豆半島と同等の距離感ですが、母都市の規模から見ても、半島外周(宮津線)プラス大都市からのショートカット線(宮福線)を擁するのは設備過剰と見ることもでき、維持が容易でないことは窺えます。加えて在籍車両が全て自社発注の新製車ですから、開業当初の減価償却費負担が大きかったことも経営の足を引っ張りました。

加えてJR線直通特急用車両まで自前で用意したわけで、当然車両価格も高く減価償却費負担が重く、それでいて自社線内よりも乗り入れ先のJR線内を走る機会が多く、直接運賃収入につながらないわけです。更に宮福線と宮津線宮津―天橋立間の電化、高速化で鉄道整備基金活用など、過大投資が重なりました。地域の足の確保に重点を置くならば、別の道もあったでしょう。

その意味で舞鶴若狭道の無料化実験がKTRを追い込んだというのは当たらず、むしろ身の丈に合わない過大投資に苦しめられ、結果高速道路無料化に最後の一押しをされたという方が正しい見方です。また会社も沿線自治体も可能な限りの観光客誘致策、沿線活性化策に取り組んでおり、これ以上を望むのは無理といえます。高速道路無料化に関係なく、早晩行き詰ることは確実でした。

そういった中で、JR西日本が福知山支社管内の特急列車に新車を導入し行うこの3月改正で、KTRを含む列車体系が大きく見直されます。

春のダイヤ改正について(福知山支社)-PDF
現在はまかぜを含む9種類の列車を5種類に集約し、KTR車両で運行していたタンゴエクスプローラー、タンゴディスカバリーは線内特急となるというものです。はまかぜにはキハ189系が導入された他、3月12日改正では北近畿改めこうのとり、きのさき、はしだてなどに287系電車が登場する一方でKTR車両のJR線乗り入れ打ち止めは、経年劣化が進む虎の子の特急車の温存が狙いです。

というわけで、タンゴを踊らないこうのとりは、丹後半島に福を運ぶことができるのでしょうか。

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