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Sunday, February 27, 2011

さくら咲くみずほの国の筑後スキップ

都道府県別人口と2005年増減比
人口(千人)増減率(%)
全国128,0560.2
北海道5,507▲2.1
青森県1,373▲4.4
岩手県1,331▲3.9
宮城県2,348▲0.5
秋田県1,086▲5.2
山形県1,169▲3.9
福島県2,029▲3.0
茨城県2,969▲0.2
栃木県2,007▲0.5
群馬県2,008▲0.8
埼玉県7,1952.0
千葉県6,2172.7
東京都13,1624.7
神奈川県9,0502.9
新潟県2,375▲2.3
富山県1,093▲1.7
石川県1,170▲0.3
福井県806▲1.8
山梨県863▲2.5
長野県2,153▲2.0
岐阜県2,081▲1.2
静岡県3,765▲0.7
愛知県7,4082.1
三重県1,855▲0.7
滋賀県1,4102.2
京都府2,637▲0.4
大阪府8,8630.5
兵庫県5,589▲0.0
奈良県1,400▲1.5
和歌山県1,001▲3.4
鳥取県588▲3.1
島根県716▲3.5
岡山県1,945▲0.6
広島県2,861▲0.6
山口県1,451▲2.8
徳島県786▲3.0
香川県996▲1.6
愛媛県1,431▲2.5
高知県765▲4.0
福岡県5,0730.5
佐賀県850▲1.9
長崎県1,427▲3.5
熊本県1,817▲1.3
大分県1,196▲1.1
宮崎県1,135▲1.6
鹿児島県1,706▲2.7
沖縄県1,3932.3


25日の閣議で2010年国勢調査の速報値が報告されました。それによると右の通り、38道府県で人口減少、増加は9都府県のみという結果です。全国では0.2%の増加となっておりますが、外国人居住者の増加が寄与したものと見られ、少子化傾向は変わりませんし、また当然ですが高齢化が止まったわけではありません。見えてくるのは地方の疲弊ぶりですが、その中で沖縄県の人口増は特筆ものです。

言うまでもなく東京都の人口増は、外国を含め他の地域から人を引っ張ってきた結果であって、出生率は47位のワーストですから、むしろ高齢化は進んでいるのですが、逆に出生率全国トップの沖縄県は、地方のご他聞に漏れず人口流出が多いはずにも拘らず、出生率の高さで増加しているわけですから、若年人口の厚い年齢構成というわけで、実は高齢化の進捗と共に賃金が上昇している中国よりも工場の移転先としては有望なはずです。それを阻んでいるのが「基地の中に島がある」と言われる米軍基地の存在です。

だから鳩山前首相が普天間の海兵隊の県外、国外移設を試したのは見識でした。実際は事務方に取り込まれた閣僚の裏切りによって辺野古移設が既成事実化し、理由付けに「抑止力」を持ち出して、いわゆる方便発言としてメディアに集中砲火を浴びておりますが、むしろ国のリーダーの言うことを聞かない事務方の問題や、それに取り込まれた閣僚の問題の方が、公権力の行使の正当性という観点からは問題があるにも拘らず、そういった報道は見られず、この国のメディアは中国や中東の独裁国家の政府系メディアと変わりません。大本営発表しか報じられない嘘つきメディアは国民を不幸にします。

あと都道府県単位の数値では見えにくいですが、例えば神奈川県では、西部の市町村で減少となり、傾向的に大都市圏への人口集中が見られます。県としては減少傾向にある宮城県の減少率が東北の他県に比べて低いことも読み取れます。近畿圏では大阪府と滋賀県のみが増加してますが、滋賀県は京阪神の人口の一部が移動したものと見られますが、一方で大都市を抱える京都府と兵庫県が減少となっており、広域で一体感のある実態が見えます。

そして本題ですが、数少ない人口増加県の一つである福岡県でも、筑後地方の人口減は悩みの種であるわけです。そんな中で九州新幹線鹿児島ルートの開業を迎えるのですが、そこに見えてくるさまざまな矛盾は、おそらく地域を更に疲弊させることになりそうです。

来月12日に開業を控え、既に時刻表にも掲載されております。速達形のみずほ、選択停車のさくら、九州新幹線内の各駅停車つばめの3種類の列車で運行されますが、特に目に付くのが、さくらの停車駅パターンが20種類もあることです。これは広範囲な選択停車の結果であり、停車駅を巡る各地域の綱引きが熾烈だった結果です。この停車駅を巡る綱引きが、速達タイプのみずほを生む結果となったことも指摘しておきます。

整備新幹線は国と地方が2:1の割合で事業費を負担する仕組みですが、そのために地方のさまざまな要望を聞かざるを得ないために、高速鉄道としては駅が多過ぎる嫌いがあります。特に新鳥栖と久留米の駅間は実キロで5.7kmしかなく、双方へ停車すればかなりの時間ロスとなるということで、区間運転さくらの一部を除いて新鳥栖と久留米は選択停車となっております。対航空で劣後する山陽新幹線を抱えるJR西日本にとっては捨て置けない問題で、結果的に筑後の玄関となる久留米は停車列車が減ってしまうわけです。

そもそも当初計画では新鳥栖駅の設置計画は無く、後から追加されたんですが、そのために新鳥栖を名乗ってはいますが、鳥栖市街から離れた市境近くで、利便性に疑問符がつきます。それでも追加された理由は、この駅が佐賀県に立地することにあります。つまり佐賀県と鳥栖市にも地方負担を求めた結果、このような不自然な駅配置となったわけですね。福岡県側から見れば建設費の地方負担を軽減するためですが、結果的に完成後の利便性を損なうんですから世話ないです。

ここからはキナ臭い政治問題になるんですが、新鳥栖駅は一応長崎ルートの分岐駅という位置づけになっております。つまり佐賀県に負担を求める手前、長崎ルートの着工と将来の完全フル規格化はセットで考えられていたフシがあります。でなければ県境近くを掠めるだけの鹿児島ルートに佐賀県が負担を呑む理由はないわけです。

加えて筑紫トンネル問題と博多南線問題も指摘しておきます。博多南線問題はリンクをご参照いただくとして、筑紫トンネル問題について解説します。実は半世紀近い新幹線の歴史の中で、筑紫トンネルは唯一の山岳トンネルであるという指摘をしておきます。

妙な指摘に見えると思いますが、山岳トンネルについての説明です。トンネルに漏出する地下水を排出するために、在来線のトンネルのほとんどは、トンネル内にサミットを置いて両口に向かって下り勾配を形成する銃断面設計となっております。それに対して新幹線のトンネルは、基本的に入り口と出口の間を直線で結ぶ設計として高速走行をサポートしているのですが、それが災いして上越新幹線中山トンネルでは大湧水で工事が中断し、不自然なカーブで地下水源を回避せざるを得なくなりました。また大清水トンネルでも湧水に悩まされ、有効活用策として大清水ブランドの飲料の製造販売事業が立ち上がったのは有名な話です。

で、筑後トンネルが立地する脊振山地なんですが、豊富な地下水脈を抱える福岡の水がめで、ここを直線ルートでトンネルを穿つことができないために、筑紫トンネルは標高の高い位置を通さざるを得ず、またトンネル排水に留意する設計となったのです。しかも標高差を稼ぐために前後に35パーミルの規格外の急勾配を置かざるを得ず、それがつばめ用の800系の設計に際して3M1T基本の700系からT車を抜いたハイパワー仕様が採られることになりました。逆に言えば山陽新幹線仕様の700系以前の車両は博多以南には入線できないわけです。

これは国鉄時代に策定された基本計画ルートをなぞった結果ですが、基本計画段階はあくまでもラフですから、調査して整備計画に格上げする段階や、より具体化して工事実施計画を策定する段階でこのような設計が確定したわけで、手続き上はこれらの段階でルート変更を行うことも可能だったはずですが、高速運転に不向きな規格外の勾配を容認する方向へ向かったのは、本当に地域の将来をまじめに考えたのかどうか、疑問が残ります。

というのは、博多南線問題とも連動しますが、九州新幹線は博多総合車両所が工事起点となる分、事業費が圧縮されることが作用します。仮に背振山地を避けたルートとする場合、在来線併設が考えられますが、市街化が進んだ地域を通過する分、事業費の膨張は避けられません。それでも、例えば佐賀県に駅を設置するにしても、駅間バランスを考えて基山に在来線とホームtoホームの乗り換え駅を設置すれば、結果的に佐賀県の利便性は増しますし、近すぎる新鳥栖と久留米の選択停車で結果的に不満が残る運行ダイヤも改善できた可能性があり、博多南線問題も解消しますから、本当に地域のために十分な検討がされたと言えるでしょうか。

新鳥栖問題は、やはり国鉄時代の基本計画ルートをなぞった結果、地域の事情が無視された東北新幹線新青森問題と似ています。しかも根拠とされた北海道新幹線へのつなぎ問題でも、青函トンネルの貨物共用区間の安全性から最高速140km/hに制限されるのですから、何のためのフル規格だったのかが問われます。

そして実は筑後スキップ問題のディープさはこれに留まりません。筑後地区には久留米、筑後船小屋、新大牟田の3駅が設置されますが、新鳥栖のとばっちりで停車列車が半減する久留米のみならず、使い勝手の悪い駅が並びます。

まず筑後船小屋ですが、筑後市の中心市街地は羽犬塚駅周辺で、九州道八女インターにも近く、道路交通との結節点として可能性を秘めております。またより深刻なのが柳川市でして、瀬高に駅ができれば目と鼻の先だったのですが、船小屋では使い勝手が悪く、また八女ならば久留米からのアクセスも悪くないですが、柳川は九州新幹線との接点が皆無となり、文字通りさくらも咲かずみずほもなびかずのジリ貧状態となります。北原白秋が愛した風情ある街はどうなるでしょうか。

新大牟田に至っては論評する価値すらありません。大牟田の名を冠して入るけれど、市街地とは遠く、JRとも西鉄とも連絡不可とあっては、一体誰が利用するのでしょうか。そして筑後スキップ問題は更にディープです。

元々大牟田まではJRと西鉄の路線が並行し、ライバル関係にあることは知られておりますが、三池炭鉱の閉山で低落傾向の大牟田を抱え、西鉄では甘木線とセットで2連ワンマンの普通列車を走らせるローカル区間となっておりますが、一方で九州新幹線開業後もJR九州に残る並行在来線との旅客の取り合いは続いており、しかも西鉄天神大牟田線は新幹線との接点を持たない分、劣勢の状況に置かれるわけです。

JR九州にとっては、新幹線開業後も福岡都市圏輸送は重要分野であるわけで、あえて手元に残した並行在来線ですが、久留米以南は明らかな供給過剰状態で西鉄と叩き合うことに如何なる意味があるのでしょうか。もちろん熊本都市圏の輸送がありますから、そこを残せば西鉄との並行区間だけを分離する意味はあまりありませんし、貨物問題も抱えるだけに、受け皿三セク鉄道の資本費負担は莫大で、とても受け入れられないでしょうから、JR九州の地場企業としての判断だったのでしょう。しかしそれがやはり地場の有力企業である西鉄を苦しめる構図はやり切れません。丁度名古屋でJRと市営地下鉄に挟撃される名鉄のようです。

またJR九州のこの判断は、整備新幹線のスキームを知る人には自明なんですが、結果的に新幹線本体工事への公的負担を増加させます。並行在来線切り離しによる受益分が新幹線リース料算定根拠に含まれるわけですから、結局地元は多重の負担を負って使い勝手の悪い新幹線を手に入れたわけですね。その先にあるのは泥沼の継続的負担です。

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Comments

久留米以南について福岡都市圏輸送の一端を担っていないと仰りたいのですか。
久留米以南が供給過剰状態にあるとは考えません。
度重なる特急退避・鳥栖駅での時間調整など新幹線全通前の快速は確かに利用率が芳しくない状況でした。
しかし、新幹線全通後は快速の増便・特急退避の解消により率は明らかに増加しています。
西鉄線の終端は大牟田・新栄町合わせて1日に1万3千人もいます。
東名阪を別とすればこの地域を超える輸送ボリュームを持っている地域が果たしてどれだけあるのでしょうか。

普通列車は確かに2両ワンマン運転ですが、需要の大半を占める福岡へ直通列車を無視した目線で「過剰気味」とのレッテルを貼られるのはいかがなものかと考えました。

>もちろん熊本都市圏の輸送がありますから、そこを残せば西鉄との並行区間だけを分離する意味はあまりありませんし
熊本都市圏輸送は筑後地区の需要より明らかに小さいです。大牟田を境に以北と以南の輸送状況の格差は顕著にあるものと考えます。


駄文失礼しました。

Posted by: 一福岡県民 | Thursday, May 05, 2011 at 02:41 PM

えーと、どう読めば供給過剰を述べていることになるんでしょうか。

ここで申し上げたいのは、整備新幹線スキームの矛盾によって、使い勝手の悪い新幹線駅が出来上がるという事実の指摘です。実際各駅の利用状況は芳しくないようですし。

広域流動を担う新幹線に中間駅は少ないほど機能します。無駄に駅を作りすぎていませんかということです。ですから、新幹線以前のJRと西鉄は、ターミナルもルートも異なり、役割分担の均衡状態にはあったでしょう。

ご指摘のように特急街道ゆえに退避が多く名ばかり快速だったものが使い勝手が良くなったのならば、それはそれで結構なことですが、逆に筑後船小屋や新大牟田の利用低迷と裏表の関係ということでもありましょう。

また並行在来線の切り離しルールは、切り離しによる受益が新幹線リース料に反映される仕組みですから、事実上切り離しをしなければ地元負担が増える仕組みであることを指摘いたしました。特急街道だった在来線の収益性が低下したことは間違いないわけですから、その分JR九州の負担は減免されるわけです。もちろんJR九州としては新在通算のプラスマイナスで評価すれば良い立場ですが、それが即地元にもプラスかどうかはまた別の話です。

Posted by: 走ルンです | Thursday, May 05, 2011 at 09:51 PM

>えーと、どう読めば供給過剰を述べていることになるんでしょうか。

以下の一文を拝見し、地域輸送を担うJR在来線と西鉄2路線がこの地域に並行・共存することが過剰だと認識されているものと解釈いたしましたが、私の読解力が足りなかったのでしょうか?

>新幹線開業後も福岡都市圏輸送は重要分野であるわけで、あえて手元に残した並行在来線ですが、久留米以南は明らかな供給過剰状態で西鉄と叩き合うことに如何なる意味があるのでしょうか。

ところで需要予測との誤差についてなのですが、当初はJR九州自体も在来線特急の延長としてダイヤや利用者数を見込んでいたのでないかと考えます。(実は筑後船小屋や新大牟田は自治体でなくJRの試算が地元の議事録に用いられていたりします)
JR九州社内には多停車型推す声もある中で、停車駅の厳選を強く主張するJR西日本の意向が反映された形との報道もあります。
長距離好調(特に熊本以南で予想を大きく上回る数値には驚かされます)、近中距離低迷の内情はこれで説明がつくのでないでしょうか。

Posted by: 一福岡県民 | Sunday, May 08, 2011 at 05:42 PM

えーと、すいません。JR在来線と西鉄天神大牟田線は元々存在していて、それ自体を供給過剰と述べているわけではありません。

わざわざ新幹線を建設し、しかも多すぎる中間駅で在来線まで抱え込んで、結果的に供給過剰状態となり、実際は新幹線の利用低迷という形になったわけですね。

これがJR九州の意思で行われたとすれば、かなり間抜けです。中間駅を多く作ったことが政治的理由でないとすれば、そもそもJR九州には新幹線建設の意義を誤解していたとしか思えません。

当エントリーは開業前に書きましたので、現状を完全に予想していたわけではありませんが、結果に意外性はないということは申し上げられます。

Posted by: 走ルンです | Sunday, May 08, 2011 at 08:03 PM

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