池のクジラのTPP
意味不明なタイトルですいません。現実のニュースの方がいろいろあって、キャッチーなタイトルを工夫しないと埋没しそうなんで^_^;。
以前アキカンじゃダメと申し上げましたが、ここまで迷走するとは予想外。3月末までに予算関連法案が成立しなければ、仮に予算が通っても執行出来ないという憲政史上初の椿事となります。ま、暫定執行を余儀なくされるわけですが、半年程度は国庫金の資金繰りは可能ですし、資金繰りに詰まって官僚が焦って埋蔵金を表に出してくるとすれば、怪我の功名となる可能性はありますが、子ども手当がなくなって児童手当へ逆戻りするなど、混乱も予想されます。
だから10年度補正予算なんか組まずに5兆円を繰り越していれば、まだしも資金繰りが楽だったのですが、後の祭りです。結局補正予算は各省庁に予算請求の機会を増やすだけで、財源があるからと補正を組むというのは、結局余った国庫金を食われる意味しかありません。実際10年度本予算でいわゆる小沢裁定で半減された農業基盤整備事業の予算は補正で復活しております。TPPに備えて農業支援のためという理屈がついてきます。
減反で耕作地を縮小させているときに、一方で農地整備を進めて農業土木利権を太らせたという意味で、削減は正しい判断だったといえます。思い起こせば元自民党の野中弘務氏が小沢幹事長室に陳情するという珍風景の中で切られた予算をわざわざ復活させただけで、当然日本の成長には何も寄与しません。政権のTPP議論のいかがわしさが窺えます。
民主党代表選でも話題になった概算要求基準の1割削減と見返りの特別枠設定が、例えば防衛省の米軍駐留経費いわゆる思いやり予算を概算要求に含めず、特別枠で通すというような形で、分けて予算要求されるだけで、結果的に予算総額をお押し上げております。予算は分けても減らせないのです。
というわけで、こんなニュースに注目しました。
調査捕鯨、今季打ち切り シー・シェパード妨害で :日本経済新聞調査捕鯨の断念ということで、表向きシーシェパードの妨害行為で断念という形になっておりますが、これもTPP案件と見ることが可能です。というのも、以前の記事で指摘したところですが、捕鯨問題で日本とオーストラリアの対立が続くことを懸念した米オバマ政権が、IWC総会に変化球を投げて妥協を探ったのですが、日豪の隔たりは大きく、結局不調に終わりました。
今、日豪で経済連携協定(EPA)交渉が行われており、日本のTPP参加の前哨戦と見られている状況があります。その中でオーストラリアは日本に農業の市場開放を迫っており、捕鯨問題を巡る対立は、喉に刺さった小骨のような問題として交渉を難しくします。つまりシーシェパードのせいにして、日本は南極の調査捕鯨から名誉ある撤退を模索し始めたという見方が可能です。農水相が表明したのはそんな意味ではないでしょうか。
加えて調査穂減発生品の鯨肉が売れていないという現実もあります。冷凍保存が必要で、IWCルールで廃棄が禁じられている調査捕鯨鯨肉の在庫拡大を調整したい本音があるというのは、穿ちすぎた見方でしょうか。いずれにしても(独法)日本鯨類研究所(以下鯨研と記す)が主体となり、鯨肉販売代金で活動を続けるモデルの持続性に疑義が生じている状況を政府も認識し始めているのではないかと思います。少なくともTPP参加のためには、調査捕鯨は障害になることはあっても助けにはならないということですね。
また世界的なクロマグロ漁規制の潮流に対して、オーストラリアは数少ない規制反対の立場の国であり、クジラで譲ってマグロで連携を探っている可能性もあります。元々固有の食文化を捕鯨の理由としてきた日本ですが、食文化としての浸透度はクジラとマグロでは比べるまでも無い話です。
本来、食文化維持ならば、沿岸捕鯨こそ維持されるべきですし、文化性のある生業的捕鯨はIWCも認めており、米イヌイットのホッキョククジラ漁などが該当するわけです。その意味で先のIWC総会で南氷洋調査捕鯨の縮小を伴う議長提案は、食文化維持ならば日本は受け入れ可能だったはずですが、個体数の多い南氷洋の捕鯨だからこそ商業捕鯨が可能という現実を踏まえた本音を否定されるから抵抗し、和解のチャンスを失いました。
というわけで、池のクジラを飼うのは止めようという話です。TPP参加となれば、国の関与を強める郵政改革法案は見直しを余儀なくされるでしょうし、前の記事で指摘したようにJR東海のアメリカ高速鉄道への参入にも影響します。こんなニュースもあります。
フロリダ州知事の高速鉄道拒否、米運輸長官「落胆」 :日本経済新聞というわけで、中止となりました。記事中にもあるように、収支見通しの甘さは以前から指摘されたところです。JR東海はテキサス州の事業に切り替えて売り込みを狙いますが、テキサス州の計画は構想段階で動き出すにはいくつもハードルがあります。当然具体化段階でRAMS規格準拠などの形で日本の新幹線が除外される可能性は高く、日本の鉄道技術の国際化は一筋縄には行きそうもありません。
このように、日本という狭い池で巨大なクジラを飼い殺しにしているのが現状です。新幹線の技術的な優秀さは、日本では当然とされておりますが、衝突安全を考慮しないから限界的に軽量化が可能なんで、その結果保安装置を重装備にせざるを得ず、運行管理もマンパワーを裂くか巨大システムを構築するかで高コストを余儀なくされる日本の新幹線技術は、元々人口密度の低いところでは不利なんですが、鉄道界のトヨタを気取るつもりか、JR東海の意図するところはわかりません。
仮に米高速鉄道参入が実現したとして、不具合が生じたときに受けるバッシングはトヨタの比ではないわけですが、国際規格に準拠していれば、その部分で免責されるわけで、契約社会たるアメリカへ本気で進出するならば、その辺の感性は持ち合わせないとうまくいかないでしょう。
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