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Monday, March 21, 2011

震災でわかったJR貨物の実力

モノ不足と計画停電で首都圏も大きな影響を受けておりますが、いろいろ考えさせられるところもあります。燃料不足で物流が滞っていることが根本にあるんですが、震災以来休止していたJX根岸製油所が、点検整備を終えて稼動開始したというニュースが流れました。国内最大の製油所の復旧で、おそらく連休明けには事態は改善に向かうと考えられます。

とはいえ首都圏の道路の状況は、燃料不足が幸いして不要不急のマイカーなどの利用が減った結果、渋滞がなくなってなかなか快適な状況でした。私自身も仕事で車を使うために、ガソリンスタンドで並んで給油を受けましたが、大事なガソリンを節約するために、普段以上に省エネ運転を心がけましたが、皆さん同様だったようで、普段ならばやんちゃ走りで遅い車を煽りまくるアホも居ず、ストレスフリーで快適な運転環境でした。それでいて交通量が減って渋滞がないので、目的地には早く着くのですから、これが日常化してくれる方がありがたいぐらいです。

とはいえ物流が滞るのは、日常生活に影響が大きいですし、まして被災地の支援物資の不足は早く解消されるべきですから、このままで良いと言うつもりはありません。また影響は思わぬところに出ていて、例えば牛乳が手に入らないのは困りました。昨日近所のスーパーでやっと低脂肪乳をゲットできましたが、元々乳脂肪のまったり感が好きで濃ゆいのが好みなんで、飲んでみて粉っぽさに閉口しております。これしか手に入らない以上仕方ないんですが、二度と買うかい!

あと紙不足で一部雑誌の発売日延期などが出ております。印刷用紙を運ぶトラックの燃料不足が原因です。大田区の印刷会社に4t車で乗り付けたドライバーさんが、車が大きくて印刷所前に付けられず嘆いておりました。何でも富士宮から来たそうで、15日の地震の震源地だったところで、あちらも混乱していて臨時に大田区に紙の配送に来たそうですが、路地の多い道路事情を知る由もなく、近くのやや広めの道路に停めてフォークリフトで往復して荷おろしするなど苦労しておりました。それでも「会社が休業せず仕事があるだけまし」ということで、15日の地震でも被災して休業している会社もあるようです。

そういえばこんなニュースも。

東海道新幹線、旅客27%減 11~17日  :日本経済新聞
考えてみれば当たり前ですが、首都圏の機能低下は東海道新幹線も影響を受けるわけで、震災の影響が如何に広範囲に波及しているかを思い知らされます。また東海道新幹線に電力を供給している中部電力は、浜岡原発1,2号機の代替炉として計画中の6号機の新設を見直し、また津波対策として防潮堤の強化を打ち出しております。福島の教訓が共有された結果ですね。

燃料に関しては、被災地への鉄道輸送が開始されたというのが明るいニュースです。ルートは上越線から日本海縦貫線で青森へ、更に青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道、JR東北本線を経て盛岡までのルートが確保されたことで、1日1本の貨物列車で燃料輸送が始まりました。1,000t列車1本でも大型タンクローリー40台分ですからかなりの威力です。浮いたタンクローリーは被災地配送用に回せますから、こちらも事態の改善には効果的でしょう。鉄道貨物の実力は絶大です。

ならば他の物資も同ルートで運べば良いと考えられますが、ここに問題があります。単線区間が多い日本海縦貫線の線路容量がネックとなります。全線複線で新幹線並行区間なので旅客列車の支障も少ない東北本線ルートでは、20本以上の貨物列車が設定されております。燃料輸送は緊急性からどうにか1本設定できたものの、食糧、日用品、医薬品類などまではカバーし切れないのです。

やはり東北本線の復旧が急がれるのですが、厄介なことに、震災で女川原発が停止した東北電力の電力事情の悪化が立ちはだかります。しかも電力問題は、東北新幹線の復旧とも競合する問題でして、優先順位をつけるのが難しい問題です。

ということで、鉄ちゃん的には人気イマイチの鉄道貨物の復興が課題となるわけですが、難しい問題が山盛りです。そもそもJR貨物は地域分割された鉄道会社6社の線路容量の余力の範囲内での存続という前提で、旅客会社に線路使用量を支払って列車を運行するという形で存続したために、自社の都合での輸送力増強ができない仕組みです。

その結果国鉄時代から旅客と貨物のダイヤの競合が激しかった名古屋都市圏の輸送改善が進まず、またEF200による1,600t牽引実現を目論んでJR東海から変電所容量不足を理由に拒否されたりする事態をもたらしたわけですが、JR東日本はJR東海よりは貨物との関係は良好なものの、自らも地震で被災している現状で貨物のために設備増強を行う環境にはないわけですから、国が何とかする必要があります。

というわけでこれを期にJR貨物の再国有化を検討すべきではないかと思います。震災復興で大義名分はありますし、今後例えば日本海縦貫線の完全複線化で代替ルートを強化する場合などに財政支援や政策金融の動員などで機能強化がやりやすくなります。

もちろん野放図な運用は新たなバラマキの温床ともなりかねませんので、注意が必要ですが、旧国鉄の継承資産をだましだまし利用している旅客会社にとっては、貨物輸送への協力の見返りとして老朽施設の近代化で合理化を進められるインセンティブもあります。JR東海が名古屋南方貨物線の完成した路盤の一部を振り替えてちゃっかり利用しているようなことを貨物輸送インフラ整備のために公正にルール化するわけです。

理想を言えば、この際線路国有化して完全公設民営タイプの上下分離を行い、併せてオープンアクセスを導入するという過激な案もありますが、それだと例えば首都圏輸送など確実に収益が見込める分野に参入希望が集中する一方、地方のローカル輸送は見向きもされないなどの弊害も考えられ、日本で直ちに導入することは難しいでしょう。

それと整備新幹線の問題も見直す必要があります。今回のように震災で電力不足となったときに新幹線と在来線のどちらを優先するかというような問題が発生することを考えると、やはり新幹線と在来線の二重投資問題というのは、合理的な出口を考えておく必要があります。

貨物の問題がなければ答えはシンプルなんですが、現在のように新幹線の整備と引き換えに並行在来線のJRからの分離という考え方の延長線上で、並行在来線は廃止し、地域交通は道路交通に依存するとすればシンプルですが、鉄道貨物を温存しようとすれば、この手は使えません。

貨物との共存を前提とするならば、新幹線ではなく在来線の強化で対応するほかないということになると思います。とはいえほくほく線や成田スカイアクセスで実現しているように、在来線とはいえ条件さえ整えば最高速160km/h程度の営業運転は問題なく可能ですから、旅客列車の高速化と貨物列車の本数確保の投資が同時に実現する支援の枠組みを工夫することで可能性は開けます。例えばフル規格ならば論外な北海道新幹線の長万部―札幌間の先行着手ですが、スーパー特急方式で貨物と共存し、ローカル輸送からは撤退とすることならば検討の余地ありということになります。その場合当然ながら東京までのフル規格一気通貫は諦めることになりますが。

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Comments

今回ほど貨物などの大量輸送手段に感謝したこともありません。

盛岡では本日(3/16)時点でガソリンがまだ市内にほとんど出回ってないようですが、仙台市では物流の最低限の回復とともに今週に入ってようやく生ねぎ一本の食事から米のご飯が食えるところまで回復してきました。
今後、ガソリンの流通によって一気に自家用車が動くでしょうから交通渋滞の発生はほぼ予測されえるもので定時制を持つ貨物の重要性は数ヶ月は揺るがないと思われます。

震災は悲劇でありましたが走るんですさんのおっしゃるとおり、長らく放置されてきたインフラ見直しの絶好の機会でもあり、これを気に物流の再検証がされ、今後の礎となるなら海に流されてしまった知人たちも多少は報われるかもしれません。

Posted by: 幻月 | Monday, March 21, 2011 at 02:41 PM

鉄道貨物の能力は絶大ですね。見直しの機運が出てくることを期待したいところです。

報道では現地の品不足など悲惨さを強調する報道が目立ちますが、それが却って買占め行動を呼び起こすなど、しており、鉄道貨物の機能が失われたことの影響などの冷静な視点が欠けている気がします。

惑わされることなく冷静に居たいと思うところです。

Posted by: 走ルンです | Monday, March 21, 2011 at 06:42 PM

はじめまして。

たしかに長距離の幹線輸送を鉄道でおこない、自動車は被災地での輸送など、細かいところに専念するというのは威力を発揮しそうですね。おっしゃるとおり、鉄道貨物の見直しの機運が高まることを切に願いたいです。

しかし、現時点ではなかなかそうならなそうなのが悲しいところです。
下手をすると東北本線が輸送が途絶えたことで肝心な時に役に立たないとすら判断されてしまう恐れさえ感じてしまいます。
そのためにも迂回路の確保が大事で、うまくやれば通常時は輸送力アップにもなって一石二鳥になりそうですが、これも膨大な費用がかかり結局鉄道貨物が重要視されない限りは…。

そのような限られたなかで、日本海縦貫線だけでなく磐越西線による石油輸送列車を実現させてしまった関係者の尽力には関心させられます。

しかし、その燃料輸送のニュースも注目していないとわからないほどの量の報道ですし、
新聞に掲載されている交通に関する地図などは新幹線や高速道路、主要道路などが載っているのに対し、在来線は全然(しかも在来線とほとんど変わらないのに山形・秋田新幹線は載っている)という有様。情報を詰め込むと見にくくなるので、利用者数から考えると仕方ないことなのでしょうけれども。

Posted by: takehope2 | Saturday, March 26, 2011 at 05:47 PM

投稿してからあまりに悲観的なことばかり書いてしまったことに気付きました。すみません。
冷静になって考えてみると一気に解決しようとするばかりについそうなってしまったようです。

今回の石油輸送のような地道な活動を続けることによって少しずつ理解を広める、これが唯一の方法ですね。

Posted by: takehope2 | Saturday, March 26, 2011 at 06:14 PM

takehope2さん、初めまして。HNはハイセイコーのライバルでしょうか。

燃料輸送で磐越西線ルートを実現するなど、関係者の努力は続いてますね。物流の復興は時間がかかるでしょうけど、地道に続けるしかないですね。

あと今回の被災は地震そのものよりも、津波被害の方が大きいわけで、人口立地や産業立地を見直さないと危険な場所に工場や集落を復活させるだけに終わる恐れがあります。その意味で日本海縦貫線の強化はぜひ実現して欲しいですね。

また東北全体で考えたときに、日本海側の例えば庄内地区に港湾を整備して、アジアを睨んだ対応をすることが、産業復興の助けとなる可能性もあります。

実際東北本線の復興は時間がかかりそうですし、日本海縦貫線に頼る必要性は強いと言えます。

Posted by: 走ルンです | Saturday, March 26, 2011 at 09:09 PM

返信ありがとうございます。
HNはそのとおりです。ただその世代ではなく2代目みたいなものです。いろいろと解釈できる名前です。

どの場所で復興させるのかは本当に問題ですね。単に山の上に建てるのでは他のいろいろな問題が出てくるでしょうし…。
「アジアを睨んだ対応」までお考えとは流石ですね。
ただそうなると、今回の磐越西線の件もありますし、太平洋側と結ぶルートも重要になるように思います。

Posted by: takehope2 | Sunday, March 27, 2011 at 06:24 PM

本日の日経で燃料輸送列車のことが取り上げられていましたが、JR貨物が独自にアイデアを実現したものだそうです。

磐越西線ルートも、非電化で勾配区間ということで、定期貨物列車の設定はないんですが、20連の1,000t列車を10連2列車に分割して郡山へ送り込むなどの工夫が見られるということで、将に窮すれば通ずを地でいくような話です。

今後も復興過程でさまざまなアイデアを期待したいですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, March 27, 2011 at 10:08 PM

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