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Saturday, March 19, 2011

震災の向こうで戦争が始まる

かなり不謹慎な内容を含みますが、気分を害されても読者の自己責任に帰す問題であることをお断り申し上げておきます。既存メディアのお追従報道とは異なるネットメディア、パーソナルメディアとしての存在価値を問いたいところです。

まずは注目すべきニュースから。

G7が10年半ぶり協調介入 日銀、即座に円売り実施  :日本経済新聞
協調介入の直接の原因は、震災を受けて17日のシドニー市場で一時1ドル76円台の円高をつけ、一気に4円以上の円高が進んだことに対する危機感がG7で共有された形です。

円高阻止を使命と勘違いしているフシのある野田財務相にしても、元々議題に入っていなかった為替の協調介入がこんなにスンナリ決まるとは思わなかったでしょう。とにかく9月の単独介入のときは、表立って反対こそしなかったものの、不快感を顕わにした欧米がむしろ積極的に為替の安定を望んだんですから、よくわからない状況でしょう。

種明かしは簡単で、世界は今、日本の震災と共に、リビアの政変に関心を寄せ、共に世界経済のリスク要因と見ている結果、1日で4円も相場が動いた為替市場に当局が反応したわけです。けっして円売り協調介入が震災復興に役に立つと考えているわけではありません。あえて言えば3月は日本の主要企業の決算集中月であり、円高で決算数字を悪化させれば、税収減で日本政府の復興資金拠出が困難になるということはありますが、まさか世界が日本企業の粉飾決算に手を貸すわけがありませんね(笑)。むしろこちらと併せて見るべきです。

リビア上空の飛行禁止決議を採択 安保理  :日本経済新聞
軍事行動の中心は英仏で、元々リビア産原油はロンドンの北海ブレンド市場を経て欧州各国へ供給されてきたこともあり、現状のように政府と反政府勢力との間で油田の取り合いになっている状況は、原油価格の上昇を通じて経済を直撃する恐れがあるわけです。それ故に軍事行動は英仏中心で行われ、アメリカは賛成票を投じながら日本の震災復興へのコミットを優先するため軍事行動では前面に出ない形です。

カダフィー政権と親密な中国とロシアは議決では棄権したものの反対はせず、拒否権を発動しない形で消極的に軍事行動を認めた形ですが、日本の震災で国境を越えたサプライチェーンが機能しなくなって経済に影響する中国は、リビア利権に未練も日本の震災復興支援にやや軸足。自ら産油国でもあるロシアもリビアより日本の復興により強い関心があるということが読み取れます。

つまりは、これから軍事行動を起こそうとする英仏両国にとって、為替の安定は不可欠ということで、予期せぬ為替協調介入が実現したというからくりです。というか、日本のメディアは震災報道一色で、世界で起きていることを報じない相変わらずの横並び姿勢で、為替介入を嫌ってきた国際社会の変化を好意的に見るなど、ひどいミスリードです。これから戦争が始まるんです。

翻って日本の長期停滞ですが、既にバブル崩壊から30年、リーマンショックで世界が追いついてきて、ジャパナイゼーション(日本化)という言葉まで言われながら、停滞を脱することができませんでした。この長期停滞はつまるところ資本ストックの過剰が原因です。

日本のストック過剰は主に2つの流れで形成されたもので、1つはバブル期と史上最長景気と言われたゼロ年代の民間の過剰投資による部分と、85年のプラザ合意以来の国際社会からの内需拡大要求に基づく公共事業の積み増し、特にバブル崩壊以降の景気刺激策として大盤振る舞いされた結果の過剰な公共投資に原因を求められます。

民間投資は国内需要どころか、商品によっては世界中の需要を日本企業だけで賄える水準まで積み増され、当然供給能力が需要をオーバーするわけですから、需給ギャップで価格低下に悩まされるわけです。世上デフレと言われる現象です。加えて新興国の台頭と国内の人口減少がそれに追い討ちをかけるわけですから、価格低下は止まらなくなります。こういった構造変化を見逃してライバルとして成長してきた中国などを間の敵にしても意味がないので、損切りして過剰ストックを整理する必要があります。金融機関の不良債権処理はそれが顕在化したものですが、問題は輸出企業でして、特にゼロ年代の円安に助けられて、過剰ストックの調整は進まず、むしろ生産の国内回帰などのキャッチフレーズで投資を積み増してしまった結果、世界同時不況の波をもろに被る結果となったわけです。

一方の公共投資ですが、公共事業の大盤振る舞いで、社会資本ストックの経済貢献度は低下します。いわゆる収益逓減の法則で後から作られた社会資本ストックほど経済貢献度が下がるわけです。にも拘らず大盤振る舞いは止まらず、国全体で見たときの生産性が低下することになります。

かくして官民共犯関係の中で過剰な資本ストックが積み増された一方、収益力は低下しますから、国全体の生産性は下がるわけで、賃金の相対的な低下を通じて個人消費が萎縮し、また特に民間部門では過剰ストックで生産性を高めるためには雇用を削るしか途はなく、雇用不安はますます個人消費を冷やすわけです。かくして人口減少下の雇用不安というけったいな状況となり、結局国全体がメタボ体質の生活習慣病状態にあるわけで、この袋小路を抜け出すには内臓脂肪に当たる過剰ストックを整理するしか途はないのです。

そして大変荒っぽい議論で恐縮ですが、資本ストック調整というのは、つまるところ損切りですから、誰かが損を被る必要があるわけですが、実は戦争と災害は共にストック調整の意味があるのです。1930年代の大恐慌も、結局は世界大戦でリセットされたのが、悲しいかな現実です。

その意味で戦前の日本が戦争へ突き進んだのは偶然でも何でもなく、第一次大戦特需で工業国としての地位を確立した日本が、やはり当時のレベルで過剰ストックを抱えて出口を模索した結果なんです。その意味で長期停滞が続きながら戦争という手段を選ばなかった日本は、幾らかは進歩したのかもしれません。しかし過剰ストックを抱えてメタボ体質に回帰する自堕落さは直らないようです。

あとリビアといえば核開発疑惑問題もありましたが、核拡散防止条約(NPT)の定めに従いIAEAの査察を受け入れて核開発を放棄するなど、かつての孤立主義を修正して国際協調に舵を切ったと見なされていただけに、今回の民主化ドミノは、リビアのカダフィー政権にとってのみならず、先進国にとっても予想外の出来事だったわけですが、エネルギーの安定供給の観点からも、政権の安定は不可欠となり、内戦状態にあるリビアで民主化勢力にコミットする選択を欧米はしたということです。これも欧州と中東北アフリカ地域の関係を再構築するという意味でのストック調整となるわけです。

結局世界はまだ戦争や災害などの荒っぽいストック調整を卒業できていないという悲しい現実があるわけですね。逆に戦争も災害も特需を生んでGDPを押し上げる効果はあるわけで、起きてしまったことを嘆き悲観ばかりせずに復興に思いを託すことに希望を見出すこともまた必要です。

あとNPTといえば元々日本やドイツなど旧枢軸国の核武装を阻止する目的で発足したもので、日本が核の平和利用を主張して、IAEAの査察受け入れを条件に原子力発電を始めたのですが、スリーマイル島事故でアメリカの原発新設が止まり技術の空白が生じた一方で、日本は原発に入れ込んできたのですが、今回の福島の事故で原子力政策の見直しは必至でしょう。

一つ気になるのが、今回の福島第一原発の事故で、特に3号機の損傷が激しく、また3号機建屋の残骸周辺で際立って高い放射線量を観測していることなんですが、私も把握しておりませんでしたが、3号機はプルサーマル発電で運転中だったということです。私は日経の記事で知りましたが扱いは小さく、電波メディアではほぼ完全に無視されてますが、事故に関わる重要事項だと思うのですが、東電や政府が秘密にしているのか、メディアが無知なのかはわかりませんが、国民の知る権利を満たさないのは相変わらずです。

もちろんプルサーマルだから事故が起きたと言うつもりは毛頭ありませんが、プルサーマルというのが、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランの混合燃料であるMOX燃料を通常の軽水炉で燃焼させる技術で、ウラン燃料を輸入に頼る日本にとっては燃料の節約になるという触れ込みで推奨されたのですが、多くの問題をはらみます。

プルトニウムといえば毒性の強い核物質で、ウランの燃焼によって生成されるのですが、原爆の原料となることから、NPT体制下厳格な処理を求められます。つまりNPT体制に準拠し核武装をしない確約をしている日本にとっては厄介な代物で、それゆえにプルトニウムは発電での再利用をするか固化して最終処理して封印するかしかないのですが、どちらも実現していないのです。

発電での再利用は高速増殖炉が本命で、プルトニウムを燃えないウラン238に作用させることで燃えるウラン235に変えて文字通り燃料を増殖させるという夢のような技術ですが、開発競争していたフランスが開発を断念するほど難しいもので、日本でも原型炉「もんじゅ」で91年に試験を始めたものの、95年にナトリウム洩れ火災事故を起こして頓挫したのでした。そのときにも情報開示を渋って世論に叩かれたのですが、夢の国産エネルギーの掛け声の下改修が2007年に終了し、政権交代後の2010年に運転再開となり、2012年に本格稼動し、2050年の商業炉運転開始を目指すことになりましたが、これもほとんどメディアは伝えませんが、トラブル続きでまともに動いておりません。ま、どのみち2050年の商業炉スタートでは、温暖化防止目標に貢献することはできないのですが。

高速増殖炉開発が滞る中、各地の原子炉の使用済み核燃料貯蔵プールの燃料棒は貯まる一方で、再処理待ったなしということで青森県六ヶ所村の再処理工場が建設され、現在試運転中ですが、これも失敗続きで2010年10月の竣工予定は最大2年延期されております。国産MOX燃料工場は未だ構想段階です。これも予定ではもっと早く竣工し、再処理を始めると共に高速増殖炉の開発が遅れたことを受けてプルサーマルが計画され、英BNFL社や仏コジュマ社などの欧州企業へ処理を外注する形でMOX燃料に加工してプルサーマルを始めようとしたところ、MOX燃料棒のデータ改ざんが発覚し手送れるなど失敗続きの末、九州電力玄海原発からスタートしたものですが、福島第一原発でも始まっていたんですね。

このことは原発推進派の知り合いも知らなかったのですが、どういうわけか今回の事故報道でも無視されております。仮にMOX燃料が露出している状況であれば、放射線量は増えると考えられますから、3号機の建屋の破片から異常に高い放射線量が観測されている事情と関連があるのではないかという疑念が拭えません。ひょっとするとこの期に及んで東電や政府は国民に隠し事をしている?

もちろん重元素であるプルトニウムが飛散することはあり得ませんが、仮にプルトニウムの露出が現実であれば、下手するとチェルノブイリ級の大事故となる可能性もあるということは指摘しておきます。断定は避けておきますが。

とすれば居住者の移住も現実問題となり、近くの福島第二原発も運転再開を諦めざるを得ないという最悪の結末も覚悟する必要があります。となれば常磐線北部も運命を共にすることになることは言うまでもありません。杞憂であってくれれば良いですが。

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Comments

確かに長期にわたり尾を引きそうな問題ですね。

原発問題も確かに心配は尽きないのですが、私としては「東京湾直下型地震」の現実性が帯びてきたことがさらに心配の種です。

今回は「海溝型地震」でうまく新幹線を止めることができたユレダスシステムも、東京湾「直下型」では機能せず、首都圏の通勤電車を襲い、犠牲が大きくなりそうです。
三陸沖、茨城沖、千葉、静岡と震源が南下しているという状況は看過できません。

それにしてもACのコマーシャルしか放送しない日本のマスコミは一体何なんでしょうか。最近はCNNの地震報道を見る方がわかりやすいです。

Posted by: Hybrid | Monday, March 21, 2011 at 11:15 AM

ACコマーシャル多いですね。元々東電が大量にCM打ってましたから、それが差し替えられたのですね。なるほど東電は放送局にとっては大スポンサー様ですわ(怒)。

Posted by: 走ルンです | Monday, March 21, 2011 at 02:19 PM

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