Yahoo知恵袋で菅忍愚ゥ
京大の携帯カンニング事件は仙台在住の予備校生の単独犯ということで決着しましたが、いろいろな意味で考えさせられます。
まずカンニングそのものを取り締まる法律がないことですが、よく考えてみれば、実社会では他人の知恵を借りる場面は多数あるわけで、それを取り締まることはできないのも道理です。むしろ問題を1人で抱えて破局したり精神を病んだりする方が、よほど問題ですね。問題は大学入試の筆記試験という特殊なゲームのルールによるものと言えます。
大学が優秀な学生を選別するために、筆記試験を行うわけですが、筆記試験は出題者が意図する模範答案にどれだけ近い答案を試験時間内に作成できるかという、かなり特殊な能力を問うものであり、当てずっぽうで答えても、結果的に模範答案に近ければ採点されるわけです。出題を工夫して受験者の理解度を炙り出すことは、ある程度は可能ですが、受験者が多いと採点者の負担が大きくなるので、現実的にはそこまで問うことは難しいことになります。
一方で一部のブランド大学の人気集中という事情もあります。所謂就活で実績を上げているのは、必ずしも有名大学とは限らないんですが、公務員の選考は相変わらず筆記試験中心で、結局高偏差値の有名大学の学生が有利ということもあり、受験生サイドから見れば、ブランド大学へ入学できるかどうかが人生をすら左右すると考えられている結果、目を盗んでカンニングしようとする動機付けが存在します。丁度大相撲の十両と幕下の待遇差から、星の貸し借りが行われるような構造が存在するわけです。
ゆえに大学は入試で不正行為を見逃さないように試験官を置いて監視するわけですが、そのようなアナログな筆記試験でも、昨今のデジタル革命で環境が激変します。携帯電話、電子辞書、デジタルカメラ、小型スキャナーなど、小型化が進むデジタル機器の扱いに慣れた若い受験生をアナログ世代のおっさんが監視するんですから、死角が生じる可能性は元々あります。その意味で筆記試験という特殊なルールで選考する以上、大学側に注意義務が生じると考えることができます。つまり大学にも重大な落ち度があったと見るべきでしょう。
その意味で警察に捜査を依頼した今回の京大の対応に、教育機関としていかがなものかと当然ながら批判が出てきました。カンニングそのものでは処罰できませんが、放置すれば入試試験の正当性に瑕がつくわけですから、何らかの決着を求めたわけですね。それで警察は偽計業務妨害という罪状で捜査し、件の予備校生に辿りついたわけです。
とはいえ偽計業務妨害というのは、例えば嫌がらせで飲食店に嘘の出前注文をするなどの場合に適用されるものですが、今回はカンニングの発覚によって、大学側が答案を精査したり合否の判断をやり直したりと、カンニング行為がなければ不必要な余分な業務を強いられたという論理構成ですが、かなり無理があります。上にも書いたように、筆記試験による選考というルールを採る以上、注意義務は大学側にあると考えられますし、件の予備校生も大学への嫌がらせを意図したものではないわけですから、犯罪の構成要件としては弱いと思うんですが。大相撲でも、賭博行為など別の罪状が絡まない限り、八百長単独では立件できないとされたのです。
むしろ今回はYahoo知恵袋という公開の質問サイトへの書き込みという、ある意味バレバレな方法が採られたことが、このような取り扱いを招いたのでしょう。ネットの通信記録は通信の秘密保持原則があり通常は公開されませんが、犯罪捜査など正当な公権力の行使によって可能になります。つまり今回のカンニング事件は、犯罪捜査の体裁を採らなければ通信ログを調べられないわけで、とってつけたような偽計業務妨害という罪状を用いなければ解明できなかったということです。しかしこれはある意味公権力の恣意的な行使の既成事実化という厄介な問題を想起させます。
また大相撲の八百長疑惑でも、たまたま野球賭博事件という別件で押収された携帯電話の通信記録から、八百長を示唆する内容が明らかになったもので、同様に携帯メールのやり取りで、試験時間中に外部者に問題文をメールして回答を得るというやり方は考えられます。その場合、関係者が別件で逮捕され携帯が押収されるような事態にでもならない限り、発覚することはあり得ないわけですから、実は隠れた成功者がキャンパスを闊歩している可能性は否定できません。筆記試験でやる限り、入試試験時の携帯電話等の扱いは厳格化せざるを得ないでしょう。本質的にはこういった実社会で役に立たない技能を問う選考方法を改めるべきなんですけどね。
最近この手の公権力の恣意的な運用は目に付きます。最たるものは郵便不正事件での大阪地検特捜部のFD改ざん事件に尽きますが、同じ前田検事が自白を強要したとして、陸山会事件の大久保被告の調書は公判で証拠採用が見送られてますし、石川議員も「検察に騙された」と公判で供述しております。冤罪の可能性は日々高まっている印象です。
この問題は同時に民主党の内部抗争の様相も呈しておりますが、反小沢の急先鋒で鳴らした前原外相にまさかの政治とカネ問題が浮上しました。知人の飲食店経営者から5万円を4回、計20万円の献金を受け取っていて、その知人に日本国籍がなかったということで、政治資金規正法違反ということなんですが、金額も少なく、どう見ても悪質性はありません。とはいえ小沢元代表の政治とカネ問題を追求してきた前原氏としては、けじめをつけざるを得ないわけで、自縄自縛となったわけです。
しかし冷静に考えれば、このまま泥舟状態の菅政権の閣僚として留まって、運命を共にするよりも、閣外に出た方が安全とも言えるわけで、ある意味絶好の口実ができたとも言えます。いよいよ政権の中から見限られ始めたのかもしれません。その意味で前原氏はクレバーです。余談ですが、この問題、在日外国人が国籍を詐称して政治家に献金し、情報をメディアにリークすればその政治家の政治生命を絶つツールにもなり得ますので、野党が騒いで知恵をつければ、某国工作員を喜ばせますね。
あとは主婦の年金救済問題で集中砲火を浴びる細川厚労相ですが、そもそもこの問題、前任の長妻厚労相時代の省内改革の一環として行われた職員アンケートで多数指摘され、1年前には把握されていた問題です。原因は旧社会保険庁の周知徹底不足と、窓口対応の杜撰さに起因するということで、長妻厚労相の指示で法改正せず通達による柔軟対応の方針が出されたのですが、9月の内閣改造で後任の細川厚労相に引き継がれず、年末に課長通達で1月から実行され、総務省の年金改革会議から公平性の問題を指摘されて慌てて凍結されたとい紆余曲折があります。
民主党の政権運営の稚拙さが出た形です。同様に高速道路の料金割引問題でも、高速道路債務の一部を国庫金に振り替えて財源を捻出したものを、埋蔵金と勘違いして高速道路整備や恒久割引の財源として使いきろうとして迷走して、結果問題だらけの土休日ETC1,000円割引が継続し、混乱を長引かせるばかりか、本来の無料化からは遠ざかってしまいました。このETC割引の財源ですが、一部ORSEの資金拠出はあるようですが、あくまでも単純な債務の国庫への付け替えに過ぎず、お金が積んであるわけではありません。割引を継続すれば毎年度の予算編成を縛るものとなり、ますますマニフェスト実現のための財源を減らすことになります。いい加減目を覚ませ(怒)。
そんな中で注目したニュースはこれです。
鉄道や水道、民間が経営 PFI改革案 :日本経済新聞Private Finance Initiative(民間資金を活用した社会資本整備、以下PFIと略す)ですが、本来は公共サービスの民間調達を指す用語なんですが、日本のPFI法ではハコモノ整備に限定されており、中部国際空港などで使われましたが、むしろ新規の社会資本整備よりも、既存の社会資本ストックの運営のローコスト化や老朽設備更新などの方がニーズがあるわけです。
特に赤字の公営地下鉄やバスの効率運営や、老朽化が言われる公営水道事業などは、自治体の体力では支えきれなくなりつつあります。水道事業に関しては、水道事業を民営化して複数の自治体の事業を引き受ければ、効率化の余地が生まれますし、自治体直営では難しい海外インフラ輸出への進出などにも途が拓けます。そういう意味で望ましい改革ですが、土建政治が幅を利かせる中、見直しは進みません。そういう意味ではぜひ実現させて欲しいところです。
鉄道分野で言えば、例えば東京都営地下鉄の運営を民間に委託するなどですが、仮にメトロが受託すれば事実上の地下鉄一元化が可能ですから、サイドバーで酷評した猪瀬某の「メトロを上場したら東京の地下鉄一元化は永久に不可能」の論は否定されます。また中央区が構想する銀座LRT構想で利用が想定されている模様です。
とはいえ政局は流動化する一方で、法案成立のメドは立っておりません。政権構想も明らかにせず解散を迫る野党も問題ですが、国会運営にノープランの政権側には呆れます。いっそYahoo知恵袋で相談してみる?>菅さん(爆笑)。
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