ムーンライトセレナーデ
計画停電で久々の暗闇を経験し、同時に月夜の明るさも再認識できました。ありがとう東電、ありがとう政府----なんちゃって<^o^;>。
電力削減目標、一律15%に緩和を正式表明 経産相 :日本経済新聞夏の節電という課題を抱える東日本地域ですが、東電エリアに関しては、かなり状況が改善されそうです。しかし問題山積の節電要請です。
条件が緩和された理由は、被災した火力発電所の復旧などとしておりますが、実は嘘テンコ盛りです。電力の調達面でいえば、最大1,050万kw/hある揚水発電をカウントしていなかったんですが、指摘を受けて渋々400万kw/hだけ盛り込み、それでも最大需要と見込まれる5,500万kw/hには足りないとして、節電要請を正当化する数字を出してきたというのが実際のところです。
ま、東電にも言い分はあります。元々揚水発電は、原発が出力調整ができないために夜間の低需要時間帯に余剰電力が発生することを防ぐための施設であって、現状のように原発がほとんど動いていない状況で使う想定はしていなかったのです。とにかく投入電力の30%のロスが出るわけですから、1,050万kw/hを発電するのに1,500万kw/hの火力発電を稼動させなければならないわけですから。通常3,000万kw/h程度の深夜帯の電力需要から考えれば、大いなる無駄となるわけで、それだけ東電の利益を圧迫します。それでも余剰の夜間電力でピークカットが可能なため、重用されてきた経緯があります。
加えて廃止火力発電の復活運転などで、古い設備を稼動させるわけですから、メンテナンスも大変ですし、燃費も悪く、実際夜間も含めた長時間稼動は、機器の故障などによる停止が大停電のトリガーになる可能性もあり、東電としてはやりたくないでしょう。また揚水発電所自体も自治体保有だったりしますから、稼動させれば支払いが発生します。
とはいえ原発事故の一義的責任が東電にあるんですから、東電の都合を需要家に押し付けるのは筋が違います。そもそも計画停電する前に、電気事業法27条による総量規制を発動すべきでした。そもそも鉄道会社などへの供給電力は総需要の数%程度で、止めてもあまり意味がないですし、同様に病院や交通信号を止めて節電できる量はしれてます。
また大口需要家向け電力メーターでは30分単位で電力消費量を把握できる仕組みですから、ピーク電力を節約できるように操業時間をずらしたり、西日本の代替工場に仕事を振ったりして凌ぐことが可能ですが、病院や信号は即座に人命に係わる問題を生じます。
元々大口需要家に対しては電力料金の大幅な値引きが行われているわけで、これは元々電力不足の際には送電をカットすることを前提とした割引なんですが、実際は大口需要家の求めるままに発電出力を増強してきたわけです。そのため大口需要家だけに高機能な電力メーターが設置され、小口需要家や一般住宅向けには安上がりな積算計の設置に留まり、今回のような需要調整が必要な局面で打つ手なしの状況になるわけです。
見方を変えれば、自家発電設備を保有する大手製造業に割安な電力を供給することは、自家発電のコストを下回る料金で繋ぎ止める意味がありますから、そのために1基で100万kw/h以上を出力し、手厚い国の補助金もあり、核廃棄物の処分費用も算入されていない原子力発電所は、電力会社にとっては頼みの綱だったわけです。その一方で夜間電力の余剰問題を引き起こし、揚水発電のような非効率な仕組みを生み出すことになったわけです。つまり原発中心のビジネスモデルが破綻の局面にあり、火力依存によるコストアップを回避しようと悪足掻きしているということです。国が国民に負担を押し付けてまで救済しようとしている東電は、実はゾンビ化の瀬戸際にあります。
こういう状況でしたから、社会的に混乱を招く計画停電に躊躇はなかったのでしょう。むしろ総量規制で大口需要家に省電力の割り当てを行えば、自家発電にシフトされる可能性もあり、東電はそれを恐れたのでしょう。その9結果国民に多大な迷惑をかけたのですが、許し難いのは、東電の言い分を鵜呑みにして計画停電を許可した政府です。どっち向いてるんだか。
さすがに政権の内外から批判され、需給の見直しで計画停電を封印したものの、揚水発電への依存はできるだけ避けたいため、需要予測の5,500万kw/hに少し足りない5,200万kw/hという数字を提示して、省電力への協力を呼びかけているわけですね。
とはいえ大口需要家以外は需要調整の手段がないのが現状で、努力目標を掲げたところで、実効性には疑問があります。さりとて大口需要家が自家発電に走るのも困るというわけで、小口需要家と一般住宅の協力を取り付けるポーズは必要になります。
というわけで、おそらく原油価格上昇を受けて電気料金は値上げされると予想されますので、結局それが一番の省電力効果をもたらすことになると考えられます。つまり省エネのための電力節約ではなく、電力料金の価格弾力性が増して、値上げ即需要減というデフレ状況が出現する結果、夏の大停電は起こらないという予想が立ちます。かくして地域独占に胡坐をかいてきた電力各社は、需要減で業績を低下させることになり、東日本エリアへの卸電力供給を模索し、結果的にデフレ状況になることが予想されます。そうなると東電をゾンビ化して温存することは、政府の意図に反してデフレを助長することになりそうです。
とはいえ沖縄を除く他の電力会社も、原発依存は変わらないわけで、早速中部電力浜岡原発の3号機運転再開問題で川勝静岡県知事が釘を刺しました。もちろん休止中の既存の原発の運転再開に自治体の同意は法的には不要ですが、福島第一原発事故で安全基準の見直し必至なだけに、すんなりとは進みそうにありません。また現在運転中の原発も、年に1度の法定点検で1年以内に停止しますから、やはり運転再開にひと悶着は避けられないでしょう。となると、来年以降は東電以外の電力会社も原発運転の停止を余儀なくされ、需給逼迫となる可能性が高いわけです。余談ですが浜岡原発は既に1,2号機が廃炉となり、同出力の6号機の新設も難しいということで、鉄軌道式新幹線の3倍と言われる電力食いの中央リニアの計画にも暗雲です。
東西間の電力融通に関しては、周波数の違いがネックと言われますが、実は同じ周波数のエリアでも、極性転換のタイミングの違い、いわゆる位相のズレが存在してまして、単純には繋げないのです。JRの交流電化区間にも交―交デッドセクションが一部に存在します。
というわけで、電力会社間の電力の融通には直流を介在させる手が現実的です。実際津軽海峡や紀淡海峡は直流海底ケーブルで結ばれております。現状は容量が少なくあまり役に立たないのですが、例えば日本沿岸に直流海底ケーブルを巡らせて九州から関東へ送電できるようにすることは可能です。もちろん費用の問題もありますが、原発の停止が続くことを考えると、電力各社が余剰電力を融通しあえるインフラには公共性があるということで、公的支援で実現すべき問題です。いわば電力スーパーハイウエイというわけです。
一般住宅向け電力の削減には手がないことはないです。ズバリ夏の高校野球選手権大会を夜行うことです。夏の需要逼迫は空調需要によるもので、特に気温の上がる13-16時の時間帯にピークを迎えるわけですが、夏休みで各世帯で部屋を閉め切って冷房し、甲子園のTV中継観戦で需要が跳ね上がるわけですから、試合時間をピークから外すのが一番です。具体的には21時から翌7時までで試合を行い、電力ピークを外すわけです。球児たちには過酷かもしれませんが、海外遠征だと思ってもらいましょう(笑)。
そうでなければせめてTVによる実況中継を中止し、劇場配信による有料観戦とすることも考えられます。要はピークタイムに出かけるように仕向けることがミソです。
というわけでJRも夏の臨時列車の設定がやりにくいでしょうけど、夜行中心に設定することで、需要の分散を図る手があります。この夏は東京から各地へ臨時快速ムーンライト××を走らせて、圧倒的な輸送力でツアーバスを返り討ちするという手が考えられます。貧乏旅行で構わないから過度な自粛は控え、身の丈に合った消費を行うことは重要です。今年は久々に青春18鉄するかな。
| Permalink | 0
| Comments (3)
| TrackBack (0)
Recent Comments