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Wednesday, May 04, 2011

尼崎脱線事故で遺族とJR西日本が共同で検証

JR福知山線尼崎脱線事故から6年経ち、遺族とJR西日本による合同検討会の報告書が出されました。異例の加害企業と被害者遺族との認識の共有の試みですが、問題は尚残ります。

神戸新聞|社会|脱線事故、日勤教育やダイヤ原因 遺族とJRが検証
リンク先の記事のチャート図(拡大可)がわかりやすいですが、問題ははっきりしております。とりあえずJR西日本も懲罰的処分や余裕のないダイヤで運転士にストレスを与えていたことは認めたものの、問題は予見可能性についてです。

現在山崎前社長が業務上過失致死傷で公判中ですが、危険を予知しながらATS未設置による不作為という公判事由に無理があることは指摘しております。案の定国鉄やJRのOBから「ATSは誤入線を防ぐもの」で「速度制限のために設置するものではない」という証言が相次ぎ迷走中。もちろん国鉄時代のATSとATS-Pは別物で、公判での取り上げ方が問題です。中には「検事に調書の内容の訂正を求めたが、聞き入れられなかった」という証言まで出る始末。郵便不正事件や陸山会事件でも似たような話があったような^_^;。検察は検察で問題のある対応です。

そういうわけで合同検討会でも事故の予見可能性は最後まで認めず、民営化による利益至上主義の弊害という指摘も認めなかったわけで、遺族側には消化不良のある内容ですが、加害企業と遺族で意識を共有する試み自体は画期的なものではあります。

とはいえJR西日本側も認めるように、未知のリスクの洗い出しが組織的に実現できなかったことは重大です。いわゆるヒヤりハッとと言われるincident情報が現場からもたらされ、改善策が講じられることで、重大事故を未然に防ぐことが重要です。やや挑発的な物言いをすれば、JR西日本ほどの大企業ならば、107人の死亡事故でも賠償能力があるため、痛みはいずれ忘れ去られる可能性があります。

incidentとはaccident(事故)には至らないけど大事に至る可能性のある小事ということで、わかりやすくいえば福島第一原発事故で問われた津波対策の不備や冷却電源喪失の可能性など、中越沖地震で停止した柏崎刈羽原発でも指摘されたようなことです。このように単独では賠償能力を超えるような事故に発展する可能性すらるわけで、未知の事故に備えることの重要性は改めて問われるところです。仮にリスク対応がコスト面で難しいならば、JR西日本が行ったスピードダウンのダイヤ改正のような撤退も視野に入れるべきことがらです。

というわけで、JR西日本の責任を問うという意味では中途半端な状況は続くわけで、法人企業の刑事訴追を制度化することは避けて通れないところです。そうなれば当然東電も原発事故の責任を刑事司法に問われることになると思います。

改めて6年前の尼崎脱線事故を振り返ると、福島第一原発事故によく似た構図が見えます。例えば1号機は経年40年の老朽炉で、法廷使用年数を迎え、直近の定期点検時に10年の期間延長が認められた矢先の事故ですし、3号機はMOX燃料を用いたプルサーマル運転が行われていたのですが、核燃料はリサイクルできるという核燃料サイクルの虚妄は伏せられたままの見切り発車でしたし、それで定期点検で休止中の4号機の使用済み核燃料プールに大量の燃料棒を抱え込み、冷却用電源の喪失で水素爆発を起こすなど、負の連鎖が続くわけです。

中部電力浜岡原発では、代替炉の6号機新設と引き換えに1号機2号機の廃炉を決めました。出力の小さい老朽炉を無理に延命させるリスクを考慮したものと思われますが、是非はともかく同じように老朽原発を保有しながら、異なった判断をしたわけです。ま、福島の事故で6号機新設は難しくなりましたが。

というわけで、東電の事故も事後の検証をきちんとやる必要がありますが、現状では上記のようにそれが難しいわけで不安です。せめて経営責任と株主責任と投資家の自己責任と債権者の貸し手責任はきっちり取ってほしいのですが、それもウヤムヤになりそうです。

もちろん原発推進や核燃料サイクルは国策として進められてきたわけですから、国の責任も問われます。また事故対応でもさまざまなミスをしております。例えば同心円で設定した避難区域と屋内退避区域ですが、初期段階で大きめの円で避難指示を出し、事後的にモニタリングして基準を下回る地域から避難解除するのではなく、事態の悪化が明らかになってから見直されるというのはおかしなことです。結果IAEAに20km圏外の飯館村が避難基準相当の土壌汚染を指摘される始末で渋々追加の避難指示という不始末です。

加えて先日内閣参与の小佐古氏の涙の辞任会見で問題視された居住エリアの被曝量を20ミリシーベルトへの緩和措置ですが、一応国際放射線防護委員会の基準に準拠しているとはいえ、元々は原子力事故などの非常時に、被曝量の制約から作業員が作業時間を確保できないことに対応した基準であって、長時間被曝が続く居住エリアの基準に当てはめるのは間違いなんですが、議事録も公開されないまま決めてしまいました。政府の責任を問うのは、法人企業よりも難しいのですが、騙されないようにしなきゃいけませんね。

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