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June 2011

Sunday, June 26, 2011

「国産」だから最高速ダウンの中国高速鉄道

7月1日に中国京滬高速鉄道(北京―上海)が開業し、いよいよ中国も本格的な高速鉄道時代を迎えます。それに関連して最高速の350km/h(目標は380km/h)から300km/hへの見直しが行われましたが、その内幕を不正発覚で退職した鉄道省元幹部が暴露しました。

asahi.com(朝日新聞社):中国高速鉄道「独自技術でない」 元幹部、中国紙に暴露 - 国際
ある意味中国らしい話ですが、鉄道省幹部の不正による更迭が事業計画の大幅見直しとなったという意味で、アジア地域に共通の政治状況も垣間見えます。同時に中国のような大国で政府の情報統制だけでは統治が難しくなってきているということでもあります。

北京―上海間は延長1,300kmに及び、対航空輸送を考えれば最高速380km/hで4時間というところが戦略目標となることは確かですが、技術的裏づけがないまま突貫工事で完成させたこともあり、安全性に関する疑念は中国国内でも囁かれております。結果的に最高速300km/hで5時間というのは妥当なところですが、それでも東海道山陽新幹線の東京―博多間よりやや長い距離を同等の時間でつなぐわけですから、後発プロジェクトの優位は働いているわけです。

この論点を敢えて申し上げるのは、九州新幹線との彼我の差を実感できるからです。100kmh弱の区間に中間駅を5駅も設置し、設備の制約もあって最高速260km/h止まりの九州新幹線は、スペック面ではロケーションの似ている台湾高速鉄道のそれにも劣るわけで、後発プロジェクトの優位性が見られません。それを国と地方の財政資金を投入して整備するわけですから、国民レベルでの説得性も乏しく、当ブログで一貫して整備新幹線に疑念を表明する大きな理由でもあります。

話を戻しますが、国産子弾頭の記事でも触れたようにJR東日本のE2系1000番台相当のCRH2cで350km/h運転を始めたことに対し、技術供与した川崎重工がクレームをつけて「安全を保障できない」との念書を取ったのですが、その意趣返しのように「国産」を謳ったわけですが、同時に「国産」と謳うことで事故の責任も負わなければならない事に対する慎重論が中国政府内部にも台頭したわけです。これは380km/hの営業運転を目標とするCRH380aでも、明らかにベース車はE2系ですが、ドイツICE3などの技術も取り入れた良いとこ取りをした結果、ドイツのシーメンスからも同様のクレームを受ける事になり、中国鉄道省にとっては言わば逃げ場がなくなったわけです。

この問題に関しては、中国の技術盗用を大げさに捉える向きもありますが、結局川崎重工がビジネスの作法で一筆取った結果、中国側が自縄自縛に追い込まれたわけで、そもそも政治問題化するような話ではありません。また日本自身が官民共同で独シーメンスのLRVコンビーノのコピーを国産化しちゃうような国だってことも石勝線事故の記事のコメント欄で触れられてますが、これが21世紀初頭のゼロ年代の話ですから頭痛いです。

もちろん国内的には国民意識の高揚は意味のあることですが、それが世界からどう見られるかという視点はほとんど省みられないという意味で、中国ってホント分かり易い国です。いろいろ言われますが、尖閣沖の漁船衝突事件にしても、世界は日本の実効支配を追認する見方が主流で、中国にとっては失点となりました。

同様に南シナ海の南沙諸島の領有権問題でも、アメリカが関心を示す事で意図とは逆の展開が見られ、更には航行中のロシア海軍艦船に中国の艦載ヘリが挑発してロシアにも目をつけられる始末です。もちろんロシア自身も西側諸国と利害が一致しているわけではなく、中国と協調行動を取る機会が多いのは周知の事実ですが、例えば尖閣沖問題と北方領土問題がリンクしているという日本の一部の見方は的外れです。

むしろロシアは普天間問題に反応したと見る方が自然です。というのは、北方四島問題に関するロシアのスタンスは、ソビエト時代から一貫して「北の沖縄」との認識が強いということです。元々極東の小さな島で、統治が行き届かない上に外交問題も抱えるわけですが、日米安保体制下で日本に返還すれば、沖縄同様基地の島になるという認識を持っているわけですから、普天間問題で辺野古移転の日米合意を日本が押し戻せるかどうかに関心を持っていたと見てよいでしょう。アメリカに押し切られた結果を見て領土交渉は無理と見られたとしても、ロシアを責められません。日本の外交姿勢の問題なんですから。

もう少し中国を巡る問題を指摘しておきますと、端的なのがTPPの問題です。元々小国同士の関税同盟に過ぎなかったTPPがアメリカも加盟で政治問題化するわけです。アメリカの狙いは明らかで、世界の成長センターたるアジア太平洋地域でのプレゼンス拡大と、台頭する中国のけん制です。同時に軍事同盟中心の日米関係をより経済に軸足を移し、対中国で共同歩調を取るために、日本にTPP加盟を打診したところ、普天間問題でアメリカを怒らせたと怯える政権が飛びついたというのが実態と見てよいでしょう。

ですから、TPP対策は泥縄そのもので、以前指摘したように減反をそのままに、一旦廃止した農業基盤整備事業を補正予算で復活させるような愚を平気でやります。こんな政府の姿勢だから、TPP加盟に国民の理解が得られず、反対論が声高に叫ばれるのです。結局それが補助金の無心になるわけですから。

一方で捕鯨問題のように意味もなく強硬姿勢をとって世界から見放される事はお構いなしですから、そもそもTPP加盟は日本政府にとってはかなりハードルが高い話です。それでいてTPPの中身はかなり誤解されていて、議論の流れは単なる関税同盟から、通商を巡る諸規制の統一基準作りなどに発展しており、その中にはTPP推進の立場の財界から反発されそうなものも多数あります。

一方、元々工業製品の関税率が低い日本は相手国にとっては、TPPを含むFTAやEPAはメリットが少ない上に、生産国認証という余計な手続きにコストがかかるため、結局日本側も関税撤廃によるメリットが相殺されてしまう恨みもあります。それが世界的なFTAブームに日本が乗り遅れている理由なんですが、経産省を中心に推進が声高に叫ばれるのは、結局官庁の縦割りの弊害そのまんまということでもあり、それを乗り越えられない政権では話をまとめる事はできないと断言できます。

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Sunday, June 19, 2011

辞められない止まらないやっぱアキカン

この人のしぶとさは何なんでしょうか。既に民主党執行部からも早期退陣論が聞こえる中、それでも辞めないアキカン宰相は、再生可能エネルギーの全量買い取り制度成立に意欲を燃やします。

時事ドットコム:「顔見たくないなら法案通して」=菅首相、自然エネルギー普及に意欲
ソフトバンクの損正義社長に土俵際の粘り腰を褒められましたが、犬のお父さんでお馴染みの白戸家に加わる狙いか(笑)。この法案は既に閣議決定して国会へ提出されているものの、委員会審議にすらかけられておらず、会期中の成立はほぼ不可能ですが、ある意味菅首相自身が示した「花道」ということですが、問題があります。

そもそも現在でも一般住宅向けの太陽光発電で余剰電力の買い取りは行われていて、kw当たり48円で買い取られているんですが、電気料金との逆ザヤがありますので、その分は太陽光促進付加金の名目で電気料金二上乗せされており、戸建て住宅で太陽光を購入できる富裕世帯に、集合住宅や賃貸住宅に住み太陽光発電を導入できない世帯からの所得移転となるわけで、逆進的な制度で問題があります。

原子力発電でも電源三法で電気料金に課された税を交付金としてばら撒いているから同じことという声も聞こえますし、メガソーラーの普及で技術革新が進めばコストダウンで逆ザヤは解消するという論もありますが、コストダウンは競争的な市場の存在を抜きには起こりません。むしろソーラー利権として固定化される可能性もあり、結局電気料金が上がるだけで終わる可能性もあります。

ソフトバンクのメガソーラー事業参入も、脱原発のためと説明されておりますが、上場企業の経営者である孫氏がキレイゴトで投資をするわけがありません。もちろん話題性もありますが、それだけで赤字覚悟で事業参入すれば、株主から突き上げられるわけですから、十分なリターンがあることを示さなければならないわけで、全量買い取り制度が成立すれば、電気料金と同様に総括原価方式で買い取り価格が決まるわけで、損しない仕組みになるわけです。しかしこういった補助金頼みはベンチャー精神とは相容れないものです。

むしろ今やるべきことは、既に存在する日本卸電力取引所(JPEX)の機能強化によるPPS事業の推進で、電力事業に競争原理を導入する事です。繰り返し述べている通り、国内54基の原発が全停止したとしても、企業の自家発電設備の出力総量が6,000万kw/hもあるわけですから、融通する仕組みさえあれば電力不足は起こらないんです。それを後押しするためには、現在の契約電力50kw/h以上に限られる特定電力販売事業(PPS)の規制撤廃で原則自由化することの方が重要です。

その結果小口や一般住宅などの契約者でも購入先を選択できるようになります。そうすればPPS事業者によっては安さを訴求するところもあるでしょうし、割高でも再生可能エネルギー電力を調達する事を売りにする事業者も現れるなど、多様な選択肢ができてきます。その中で契約者獲得のために。現在は割高な再生可能エネルギー発電も、技術革新によるコストダウンが促されるわけです。丁度環境意識の高い人にプリウスなど高価なハイブリッド車が売れることで、コストダウンが進んだようなことが、電力の世界でも起こるわけです。競争が技術革新を後押しするわけですね。

現在大口契約者に限定されているPPSの電気料金ですが、1kw/h当たり約4.5円の宅送料を電力会社に支払うという不利な条件にも拘らず、概して電力会社よりも安い料金となっております。もちろんその裏にはコストダウンの努力がありますが、独占で無競争なのにTVCMを大量に流し、取引先に言い値で調達する電力会社のコスト意識の希薄さに助けられている部分もあります。

つまり電力会社の高コスト体質にもメスが入るわけで、社会全体にメリットがあるわけです。こうなると高コストの送電網を保有する事が既存電力会社にとってはハンデとなりますから、電力会社自身から発送電分離を求めるようになりますし、万が一の事故の際には原子力賠償法によって無限無過失の賠償責任を負うハイリスクな原発事業は競争上保有が難しくなりますから、脱原発が自然に進むことにもなります。

その意味では菅首相が掲げる全量買い取りは、電力会社の高コスト体質を温存することにもなり、脱原発にはむしろ役に立たないわけです。実際海江田経産相が原発立地自治体に、定期点検が終了した原発の再稼動を要請しており、現在ある原発は今後も稼動させる姿勢を見せております。この点は菅首相も同様で、あまつさえ浜岡以外は安全と根拠のない事を言っておりますが、信用する人がいるでしょうか。

その一方でこんな時期に税と社会保障の一体改革と称して消費税率を2015年までに10%にする方針を決めるなど、でたらめにも程があります。しかも社会保障制度をどう変えるかといえば現状維持で、つまり現行制度を維持するために消費税を10%にすると言っているわけで、どこが一体改革なんでしょうか。現行制度に問題がなければそれでも構わないのですが、高齢化、晩婚化、少子化、雇用減少、単身世帯の増加などの構造変化に対応できないまま増税を決めるのですから、開いた口が塞がりません。選挙前に消費税アップに言及して大惨敗した昨年の参院選のことを忘れたのでしょうか。国民が認めない増税はまず不可能です。

震災のドサクサでさまざまなものが決まっておりますが、公的年金の国庫負担増分2.5兆円の1次補正予算への付け替えもその一つです。このうち1.2兆円は鉄建機構が保有する剰余金からの拠出ということで、使途を定めた関連法の改正も行われたんですが、その中で1.5兆円あった内鉄道整備用に回された3,000億円の使途として整備新幹線の財源として検討するという付帯決議が付けられ、先送りされている整備新幹線の未着工3区間の早期着工を促しております。

決議に北陸新幹線金沢―敦賀明記 剰余金活用法案参院委で可決 政治・行政 福井のニュース :福井新聞
付帯決議は自民党が求めていたもので、民主党政権で5条件を盾に度々先送りされてきたことに対して成果を自慢しております。一方大畠国交相は5条件に加えて災害に備えたルートの多重化に言及しておりますが、はっきり言って北陸新幹線が敦賀まで延びても、多重化の意味はほとんどありませんし、仮に大阪までの整備が実現したとしても、最高速260km/hで4時間はかかる北陸ルートに多重化のメリットはないと断言できます。

ふと思ったんですが、福井県が県内の原発の再稼動に反対しておりますが、まさか整備新幹線の新規着工と引き換えということはないでしょうか。東北新幹線延伸部のフル規格化も六ヶ所村の核廃棄物再処理工場やむつ市の中間貯蔵施設の受け入れと時期的に符合しますし、そういった画が描かれているとすれば、これも広い意味での火事場泥棒といえそうです。

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Saturday, June 11, 2011

狡猾っと関西節電要請

震災から3ヶ月。被災者にいつまでも「がんばって」と言い続けるのも限界です。本来は「もうがんばらないで」と言わなければならないのに、とても言えない現実に暗澹たる思いです。それもこれもアキカン宰相による天災バカボン政権が働かないからですが、国民も被災者もそっちのけで「後継は野田財務相」と言って現体制を維持しようというのですから呆れます。将に

天災バカボンこれでいい野田-_-;
ねじれ国会が言われますが、参議院は今でも民主党・新緑風会が最大会派です。野党との修正協議を柔軟に行えば良いわけで、要は現政権が与党内の意見集約ができていないから、野党に足許を見られて迷走するのであって、それ以上でも以下でもありません。バカボン一家で政権をたらい回ししても事態は打開されません。

迷走のあげくやっと自民、公明と修正合意した復興基本法で復興債の発行と償還を通常の国際から分別することが盛り込まれておりますが、マクロ的には無意味な区分経理です。復興債発行額を最大30兆円として通常の国際と同様60年償還とした場合の毎年度の元利金等負担額は、金利上昇を加味しても1兆円に満たないもので、政府のリストラで十分カバーできるもので、むしろ復興需要によるGDP押し上げ効果でそれぐらいの税収増が見込めないようならば、復興そのものが失敗と評価することすらできます。こんな与野党談合しかできないんですから、政権の能力不足は明らかです。

わき道に逸れますが、復興が進まない中で財源の議論ばかり先行するのは、完全に財務省に操られているからですが、百歩譲っても国債増発か増税かという二択で議論されているのが変ですが、あまり指摘されないので申し上げますが、少なくともあと3つ有力な選択肢があります。

1つはいわゆる埋蔵金です。例えば外為特会で80兆円ですが、貿易決済の円滑化が目的ならば輸入決済額の半年分もあれば十分ですが、半分の40兆円でもまだ余裕がありますし、国債整理基金の剰余金10兆円の取り崩しは全く問題ありません。そのほかにもありますが、兆円単位の剰余金を抱えている基金からの取り崩しで相当な資金が手当できます。

2つ目は既に成立している予算の組み替えで、一部法改正が必要なものがありますが、基本的に政権による執行段階でのチェックで差し止めることは可能です。以前に指摘した公共事業費など以外にも、5,000億円規模の農地基盤整備事業費を被災地の農業復興へ回すなどはやる気があれば直ぐに可能ですし、法改正を伴う案件も表立って反対しにくい状況にすらあります。

3つ目は民間資金活用ですが、1つはPFI法の見直しで、政権の迷走で忘れ去られておりますが、復興事業への民間からの提案を幅広く受け入れる素地となるだけに急ぐべきです。もう1つは規制緩和ですが、復興特区としてさまざまな提案はされているものの、できれば被災地限定の特区ではなく、国全体の制度として考えるべきです。実際既に指摘しているように震災後の企業倒産件数の9割が被災地以外ということもあり、サプライチェーンの復興を視野に入れれば必然的にそうなります。

加えて二重ローン問題ですが、これは逆に国がしっかり関与すべき問題ですが、結局ローン物件の買い取りなどは行われず、金融機関のリスケジュールに国が信用保証するという線に落ち着きそうです。阪神大震災でも耐震偽装問題でも行われなかったから今回だけの特例はやりにくいということのようですが、実際は被災地企業の倒産が少ない理由に、手形決済の猶予が影響している現実があります。つまり震災や津波で事業の継続性は損なわれても容赦なく来る手形決済日に、受け取った側が敢えて決済を行わないことで不渡りが起きていないだけですが、当然それはいつ不渡りになってもおかしくない時限爆弾ですから、そういった企業が事業再開しようとして銀行に融資を申し込んでも実行されるわけはありませんから、結局復興の目を摘んでいるわけです。同様にローンの支払いが事実上猶予された個人が新規にローンを申し込んでも審査ではねられるのは自明ですから、結局住宅の再建にもつながらず、また被災地の土地のいくばくかを国が一時保有すれば復興事業も進めやすくなるわけですがそれも叶わず、いつまでも復興需要は起きてこないことになります。債務の切り離しは喫緊の課題です。

それなのに政府は仮設住宅を8月までに完成させると意気込むのですが、その仮設住宅が3万棟完成したにもかかわらず、入居は4割という状況です。理由は仮設住宅に移ると食糧支援などが受けられなくなることと、仮設住宅自体が用地確保に苦戦していて、完成しても遠くて不便ということもあり不人気です。こうなると仮設住宅の整備に拘らず、民間アパートの空室借り上げや使える公共施設の開放や他地域への移住も含めた被災者のニーズに寄り添った対応が必要なのに、それができないのですから、いっそ国なんかない方が良いという話にすらなりかねません。

本題に戻しますが、そのアキカン宰相の置き土産となりそうなのが、浜岡の運転停止に端を発する原発停止ドミノです。政治家の人気取りとしては軽率極まりない話ですが、予想通り原発立地自治体が一斉に定期点検中の原発運転再開に同意しない事態が広がっております。一様に原発の安全性に関して国が規準を明らかにせよと言っているのですが、例によって「問題ない」を連発するばかりで自治体に判断を丸投げしていて、国自らの責任をあいまいにしようとしています。これでは事態は膠着するばかりで、結局定期点検で運転停止した原発は廃炉されるわけでもなくそのまま放置されるだけとなってしまいそうです。これは反原発派から見ても問題のある対応です。

こんな状況に関西電力が声を上げました。福井県が11基ある関電の原発の運転再開に不同意を表明しており、原発運転再開ができなければ東電エリアへの電力融通もできないし、関電エリアでも節電をお願いしたいというものですが、唐突な話にあの名物知事が早速ツッコミです。

橋下大阪府知事、関電の節電要請「協力しない」  :日本経済新聞
関西広域連合に参加する福井県知事の立場も代弁し、知事が原発に関して「話し合いたい」と言っても「国策だから」と相手にしないことをチクリ。関電の頭の高さは相当なもののようです。関西広域連合でも5-10%の節電対策をまとめたばかりで、15%の節電要請は間が悪いということもありますが、既に多くの企業で工場、オフィス、データセンターなどを東日本から西日本へ移す検討がされ、実行段階だっただけに、民間活動へのインパクトは大きく、混乱が予想されます。また規模や業種による割当もなく一律ですから、戸惑いは拡がります。

鉄道関連では大阪市が節電のための一部減便の検討を発表したところ、ラッシュの混雑を心配する声が寄せられ、ラッシュ時の減便はしないと発表したのですが、関電の節電要請でまた流動的です。近鉄では10%を超える節電ならば列車減便は避けられないとして検討を始め、阪急電鉄では編成減車で減便なしとするなど、少なからず混乱が見られます。

あと大阪キタの陣で話題にした小売業でも、節電の影響は避けられません。東日本ではファッションビルのルミネで夏のバーゲンを前倒しして6月16日スタートとしました。7月にバーゲンで来店客が増えると空調の稼働率が上がって節電枠を突破する恐れがあるための苦肉の策ですが、巨大ドームにミスト空調を仕込んだ大阪ステーションシティで集客が好調な中で、売上減を覚悟した自粛ができるでしょうか。

同記事で指摘したように、そもそも企業等の自家発電設備の出力合計は6,000万kw/hにのぼり、更に増強中ですから、仮に全国の全原発が停止しても。余剰電力を融通できる仕組みさえあれば問題ないんですが、電力自由化で発足した日本卸電力取引所(JPEX)の規模が小さく、6月に東電、東北電エリアで復活した取引でスポット価格が上昇しております。規模が小さいだけに値上がりしやすいんですが、おそらく関電エリアをはじめ全国で同様の値動きとなるでしょうから、自由化すれば電気料金が上がるというプロパガンダに利用する腹でしょう。政府からも発送電分離発言が出る状況ですから、その対策と見ると構図が透けて見えます。

とはいえ政府高官が発送電分離に言及しながら、実際の検討は落ち着いてからとか暢気な事言っているから舐められてるんです。電力不足で復興の足を引っ張ろうが日本経済の足を引っ張ろうがお構いなしの電力会社の姿勢に対しては、政治がきちんと対応すべきです。だから今、電力自由化をやるべきなんですが、そんな構想力を持たないリーダーじゃ役に立ちません。というわけで菅首相に心からのお願いです。

これ以上無意味に「がんばらないで」(笑)

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Saturday, June 04, 2011

石勝線スーパーおおぞら事故で視界不良のガラパゴスディーゼル特急

石勝線でまさかの事故が起きたのが先月29日(日)でした。北海道で起きた事故ということで、首都圏ではメディアの露出が少ないのですが、重大な意味を持つと考えますので取り上げます。

事故自体は推進軸の脱落により、脱線と燃料パイプ破損による車両火災ですが、発生地点がトンネル手前でトンネル内で緊急停止した上に火災で煙が充満する中、乗務員は乗客に車内待機を求める中、乗客の自主避難で全員無事というのがあらましですが、この中に幾つもの論点があります。順に見ていきます。

まず推進軸の脱落ですが、めったに起きないとはいえ、皆無ではなく、過去にも同様の事故は起きております。JR北海道でも室蘭本線を走行中の特急スーパー北斗で床下の減速機を固定する吊りピンの脱落で推進軸が外れて脱落し外れる事故が起きております。この部分はディーゼル車の保守上の弱点ということは言えます。

となると保守点検が万全であったかが問われますが、特定は容易ではありません。一番考えられるのは、直近の検査時点で分解後組立段階でのボルトの締め付け不足や一部部品の欠落などですが、仮にそうであったとしても、毎日の仕業点検で発見できなかったかが問われます。

また部品の品質に問題はなかったか、あるいは金属疲労等の経年劣化がなかったかなども問われます。この場合、納入部品メーカーの品質管理の問題と、JR北海道の納品検収及び在庫管理の問題に跨りますし、そもそも交換周期が適切であったかなども係わってきますので、事故原因の特定は困難を伴います。

あとトンネル内火災では、北陸トンネル事故の教訓から、トンネル内で停止せずに出口まで走り抜けてから停止し避難誘導する決まりですが、今回おそらく先に脱線が確認され、緊急停止した後に火災による煙の充満という時系列だったと見られますから、マニュアルどおりにトンネルを抜けることが叶わなかったことや、避難誘導を躊躇って車内待機を指示した乗務員の対応も一概に責められないところです。このあたりは専門家による再発防止対策協議会でも「非常時に乗務員が対応すべきことが多すぎる」という指摘もされており、議論の行方は興味深いですが、ここでは踏み込まないことにします。

余談ですが事故現場の第1ニニワトンネルは全長685mと短く、それ故に乗客避難も短時間で可能でしたが、西隣の新登川トンネルは青函を除いて道内最長の5,825mで、同トンネル内での火災であれば犠牲者が出た可能性もあり、将に不幸中の幸いでした。

そもそも日本のディーゼル車では主流となっている液体式駆動装置ですが、世界で見れば少数派で、ほぼ日本とドイツが中心です。仕組みはトルクコンバーターとクラッチすから、を組み合わせた自動車のトルコンATと同じですが、鉄道車両ではカーブ走行に備えて台車が首を振るボギー台車方式であり、床下架装のエンジンと、動力を伝える駆動軸との相対偏移が大きく、自在継手を組み込んだ推進軸に負荷がかかりやすい構造です。

加えて自動車用よりも強力なトルクを受け止めるわけですから、強度も問われるわけですが、これを実現するのは容易ではありません。実際日本とドイツを例外とし世界の鉄道用ディーゼル動力車の駆動方式は電気式が主流です。電気式ならばディーゼルエンジンで発電機を回し、台車架装のモーターを回すことができますので、ハイパワーを必要とする都市間列車や機関車ではほぼ例外なく電気式が採用されております。ドイツにおいても液体式は主にローカル輸送用のレールバスなどの軽気動車が中心です。

一方の日本では、国鉄が戦後ほぼ一貫して液体式を採用し続けたことで、世界にも例のない液体式大国となりました。当然推進軸をはじめ駆動装置の保守は手間がかかりますが、国鉄時代には液体式が日本とドイツで多いことを捉えて「使いこなす技術力の証し」という説明をしていたんですが、実際は戦前の設計のDMH17系のローパワーディーゼルエンジンで欧州基準ではローカル用レールバス水準の動力車を使っていたというのが正確なところです。特急・急行や勾配線区向けには世界的に例のない2エンジン車を用いることでパワーを補っていたわけですが、重量物のエンジンを2基も搭載しますし、特急など優等列車用にサービス電源として発電用ディーゼルエンジンも搭載するなどして、パワーウエイトレシオは悪く、電化の進捗と共に電車列車との性能差が目立つようになりました。

そういった中でDMF15/DML30系列の高出力エンジンが開発され、キハ181系、キハ65、キハ66・67、キハ40系、キハ183系などが開発されましたが、DMH17系よりはマシとはいえ、パワーウエイトレシオの劇的な改善には至らず、例えば181系では冬の奥羽本線板谷トンネル内でのスリップで排ガスが車内に充満して立ち往生し、冬季はEF71型電機を補機として連結しカバーするなどの対策を必要とするなど、ことディーゼル動力車に関しては、情けないぐらいしょぼい状況でした。

その状況に一石を投じたのが、国鉄の特定地方交通線対策で第三セクター鉄道として切り離されたローカル鉄道向けに富士重工が開発したLEカーと新潟鉄工のNDC及びこれらの後継車でした。エンジンや駆動装置、初期のものは車体に至るまで汎用品であるバス用部品を用い、高性能且つ低価格を実現したわけです。またその流れで国鉄末期に登場したキハ32,54,183などでは、直噴ディーゼルやエンジン直結クーラーなどバスでは当たり前の技術を取り入れることでパワーウエイトレシオを改善しましたが、液体式の駆動装置自体は継承されてきました。元々自動車のトルコンATと同等ですから、汎用の自動車技術を取り入れる流れの中でもある意味自然なことではありました。言い方を変えれば日本のディーゼル車はローカル線用軽気動車の域を出ることはなかったと言えます。

もちろん国鉄にも言い分はあります。元々ケープゲージ(3ft6in=1,067mm)と呼ばれる国際基準では軽便規格で且つ平野が少なく曲線の多い線路規格では、重量面で不利な電気式の採用は難しかったということは言えます。実際戦前には3連1編成のみですが、電気式のキハ43000とキサハ43500のDTD編成が製作され、武豊線で運用されたものの戦争激化で燃料不足であえなく休車。その後キサハだけは電車化されて飯田線で運用されるなど数奇な運命を辿りました。エンジン出力240psの高性能機関を搭載しており、電気式で戦後登場のキハ44000系の160psよりも高性能でした。

とはいえキハ44000も日本初のカルダンドライブが採用されており、電気式ゆえに軽量化が強く求められた結果ですが、後にそれが電車の軽量化、高性能化に寄与するのですから面白いところです。技術革新は必要が生み出すもので、且つ非線形的に発展し、しかも異種混合が飛躍のきっかけになるという意味では示唆に富みます。

そういう意味では80年代の欧州でも同様の技術革新が起こったんですが、意外なことに三相かご型誘導モーターを用いたVVVF制御の実用化がそれに当たります。しかし日本では大阪市営地下鉄が技術革新をリードしたように都市交通機関での採用が中心ですが、実は欧州ではディーゼル電気機関車の性能改善に用いられたのですから面白いところです。

元々三相かご型誘導モーターは、小型軽量且つ高性能で、特に直流直巻モーターのようにブラシなどの接点を持たずメンテナンスフリーですが、制御のためには三相交流電流の周波数制御が必要で、半導体技術が発展するまでは、同一周波数での定回転特性を活かしてケーブルカーの巻き上げ機など、鉄道の世界では限られた用途にしか使われておりませんでした。80年代にはパワー半導体の技術革新が進んだものの、鉄道車両用として単独で出力制御ができるレベルにはなかなか達しなかったんですが、ディーゼルエンジン側でも出力調整ができるディーゼル電気機関車ならば技術導入のハードルは相対的に低く、また軽量化にも寄与するという意味で好都合だったわけです。その後電気動力車へと展開されていくあたりは、キハ44000系のカルダンドライブとよく似ています。

一方、国鉄民営化でJR各社はいわゆる国鉄型と言われる多数の車両を継承したのですが、国鉄末期に登場した新世代車は少数に留まり、多数の老朽車両を抱えつつ地域密着サービスに励む結果となりました。そのため当初は国鉄末期型車両の増備から自社設計のオリジナル車にシフトしていくわけですが、ディーゼル車に関しては、ローカル輸送用ということもあり、LE-DCやNDCと同タイプの軽快気動車が中心でした。

その中でJR四国が脆弱な線路インフラでの高速化にチャレンジし、ディーゼル車ながら制御つき自然振り子システムを導入した2000系を登場させ、スピードアップを実現しました。非電化幹線でのスピードアップという課題への挑戦でしたが、それ故にさまざまな工夫がされましたが、ディーゼル車で自然振り子を作用させるためには、エンジンから発生する強大なトルクによる回転応力が振り子作用を打ち消してしまう問題を解決する必要があります。そのために2エンジンを点対称に搭載し、回転応力を打ち消すことで対策されました。そのため1機関2軸駆動とする方が駆動装置が集約されて保守上有利なところを敢えて2機関各1軸駆動という国鉄時代のスタイルがむしろ定着することになり、このレイアウトはJR北海道やJR西日本、三セク鉄道の智頭急でも踏襲されました。スーパーおおぞらで事故を起こした283系もこのタイプです。また2機関点対称で回転応力が打ち消されることで、車体のねじれ剛性の水準も下げられますから、結果的に車体の軽量化にも寄与します。

となると、床下架装のエンジンと台車の駆動軸との相対的な位置関係は、通常の非振り子車以上に大きな偏移が生じるわけで、大出力エンジンと共に推進軸がより大きな弱点となることでもあります。更にJR北海道では制御つき自然振り子+車体傾斜装置で更にスピードアップを狙っており、こうなると重心上の振り子と重心下の車体傾斜装置と2つの回転中心に対応する必要があり、より複雑なエンジンと駆動軸の相対位置関係となります。JR北海道はこれに更にモータ・アシスト式ハイブリッドシステムと増粘着研磨子の利用で最高速140km/hで函館―札幌間2時間40分程度で結ぶ計画ですが、JR北海道のモータ・アシスト式ハイブリッドシステムがトルコンの機能をモーターとインバータに置き換えるシステムですから、推進軸はそのままというわけで、折角の新幹線も青函トンネルの在来線併用区間では当面最高速140km/hに制限されるだけに、今回の事故の再発防止はJR北海道の将来を左右しかねない問題でもあります。

というわけで、今回の事故には、世界標準からかけ離れた日本のディーゼル車のガラパゴス化問題が絡んできます。同じ液体式でも大出力エンジン1機関2軸駆動を標準とするJR東日本はやや赴きを異にしますが、リゾートトレインにシリーズハイブリッド車を投入したり、非電化路線用にバッテリートレインの開発を進めるなどして、ディーゼル車のメンテナンスの弱点克服を意識した対応をしております。バッテリートレインに関してはJR西日本も開発を表明しており、今後の電力事情を勘案すれば、案外鉄道車両技術のメインストリームになる可能性すらあり得ます。

一方で重くて低出力のキハ40系気動車ですが、長寿命設計の堅牢ボディが幸いして、大出力エンジンに換装して活用する流れも根強くあります。ハイブリッド車に置き換えられつつあるJR東日本のリゾートトレインやJR九州の観光列車の多くが、40系の改造というのは偶然ではありません。特にJR九州では、はやとの風や指宿のたまて箱など、特急料金を徴収する肝っ玉ぶりです。

というわけで、やや気になる日本の鉄道技術のガラパゴス化ですが、ディーゼル車に留まらず、自慢の新幹線システムも世界標準から乖離した独自規格であることは度々指摘してきました。世界が300-350km/hレベルの営業運転を実現し400km/hすら射程に入れている一方、整備新幹線は事業費圧縮のために規格を落として整備され、新幹線整備法を根拠に最高速260km/hに制限され、沿線自治体の要望に応えて駅を多く作り過ぎる傾向があります。またリニアマグレブの開発にリソースが割かれている状況もあり、そうした政治的駆け引きにかまけて高速化の努力が停滞する傾向は否めません。原発事故でインフラ輸出のエースと目される高速鉄道プロジェクトですが、残念ながら現状では苦戦を免れないところです。

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