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Monday, July 18, 2011

京滬トッキョキョキャキョキュ^_^;

つうわけで、7月1日に走り出した中国京滬高速鉄道ですが、日本のメディアを賑わせております。1つは開業後の初期トラブルに関してですが、初期故障そのものはつきものなんで、日本の東海道新幹線もそうでしたが、フィードバックを十分行って完成度を高めることが重要です。

もう1つは特許問題ですが、やや政治色の強い取り上げ方がされているのが気にかかります。中国に高速鉄道の技術供与を行うに当たって、川崎重工もJR東日本も特許申請をしていなかったようですが、国鉄時代からの国鉄とメーカーの関係から申請が難しかったなど、日本固有の問題がそこに潜んでいます。

分かりやすく言えば、そもそも日本の新幹線技術の知的財産権の帰属が曖昧だったということです。元々は国鉄単独のプロジェクトだった東海道新幹線は、いわば国鉄とメーカーの共同開発だったわけで、しかも国鉄分割民営化で国鉄が解体されたこともあり、権利関係が確定しないまま放置されていました。民営化後のJR各社も特に権利化はせず、国鉄時代に倣ってメーカーとの共同開発が続いており、JR各社の色はあったものの、欧米のようにメーカーが権利化するには至りませんでした。

とはいえ川崎重工は例えば米ニューヨーク地下鉄車両に関しては、米国内で必要な特許を取得しており、他社から市場を奪われないように対応しておりましたが、新幹線に関しては、開発主体が国鉄だったこともあり、また従来は国内向けにしか出荷されない前提だったこともあり、権利化されないままの中国への売り込みとなったわけです。今回はそこを突かれた形です。

一方、同様に中国に技術供与した独シーメンスは、最初から海外への売り込みを模索していましたし、特に中国への売り込みに当たっては、技術が模倣される事はある程度織り込み済みとして、主要国で特許を取得して対応しており、中国でも権利確定のために特許を取得していて、少なくとも輸出先で中国がライバルにならないように先手を打っているわけです。そのためライバルのボンバルディアとの共同受注のようなことも可能なわけで、新規開業を控えた車両の大量受注も柔軟にこなせるなど、国際ビジネスに慣れたところを見せております。

このあたりはBig3の一角と言われる仏アルストムも、韓国にKTXを売り込んだらライバルになったという風に同じようなミスをしており、お膝元のユーロスターの次期車両でも入札で独シーメンスに敗れるなどしていて、SNCF(仏国鉄)頼みの甘さが垣間見えます。とはいえ隙を突かれた日本にとっては慰めにもなりませんが^_^;。

あと一応中国側の言い分としては、中国が改革開放政策に舵を切って以来、一貫して技術移転を求めてきたわけで、その過程で中国は多額のライセンス料を支払ってきた事もまた確かです。その意味で技術移転に伴う技術の権利化は国策として重要なわけで、一概には責められないところです。むしろ私のような年代の人間から見れば、日本自身も欧米から猿まねと揶揄されてきましたし、実際知的財産権の意識は希薄で、1982年には米IBMの汎用機技術に関して、日立などから派遣された日本人社員がFBIの囮捜査で逮捕されるなどのニュースもありました。その後83年に司法取引で訴追は免れ、IBMとの民事訴訟も和解しましたが、当時やはり日本のメディアはアメリカによる日本たたきの一環として的外れな報道姿勢に終始しましたが、ホント進歩ないなぁ-_-;。

というわけで、日本のメディアの取り上げ方はかなり偏っております。また多くの技術情報が既に公開されている中で、どの程度権利化できるかといえば、かなり狭い範囲になるだろうと考えられますので、脅威を煽るのもいかがなものかと思います。申請時点から1年半後の公開を待つしかないのが現状ですし、公開されれば具体的な対抗策も見えてくる問題です。逆に公開されれば当事者の川崎重工から特許侵害を突きつける可能性もあり、現時点で騒いでも無意味です。

そもそも特許制度はグローバル化の時代にも拘らず国ごとに異なった制度になっており、統一の動きも緩慢です。ゆえにグローバルに活動する企業にとっては、主要国で特急を取得するのは半ば常識ですが、同時に手続きのコストも馬鹿にならず、コスト負担力のある大企業以外は事実上排除されてしまうなど、アイデアを保護するという特許制度の趣旨は活かされておりません。

それどころか特に日本企業にありがちなんですが、海外のライバルの基本特許の権利化の範囲を調べて権利の穴を見つけ、そこを狙い撃ちして特許申請して権利化し、製品化の段階でクロスライセンス契約を結んで特許を事実上無効化するような事も行われております。そのために研究開発費が費やされ、その割りに利益に貢献しないなど、問題点を抱えている状況です。だから研究開発費は決して少なくない日本企業から、高収益をもたらす画期的なアイデアが生まれない悪循環に嵌まっているとも言えるわけです。

ここで指摘したいのは、国ごとに異なる規制やルールが、グローバル化という現実を前に意味を変えているという現実です。良い悪いではなく、そのような現実に直面しているという現実認識の重要性です。永く国内市場に安住し、国内でしか通用しない慣習に慣れきったために、ルールは妄信的に守るものではなく創るものという認識に欠けるところが日本にはあります。

例えば国際会計基準(IFRS)に関して、日本は既に選択適用が可能な状況にあり、2015年にも強制適用が言われておりましたが、ここへ来てアメリカがIFRSに慎重な姿勢を見せると、一転日本の大手企業の中から慎重論が出てきて、政府は方針を見直しました。元々欧州が主体となって進められてきたIFRSに対して、アメリカの会計基準をすり合わせる作業は難航していたんですが、日本とは実務者レベルでかなりすり合わせが進んでいただけに、今回の政府方針は残念なところです。反対する日本企業の言い分としては、アメリカの会計基準で決算をしているのに、IFRSへの対応は困難ということですが、日本よりオープン化の度合いが高いアメリカの会計基準であっても、今やドメスティックな基準の1つに過ぎないのが現実であって、完全にグローバル化を履き違えております。会計基準に関しては、企業の財務状況を世界中の投資家に正しく伝えられるかが最重要の問題です。

またリーマンショックを受けてのバーゼル銀行監督委員会の大手銀行に対する追加の資本増強策が決まりました。いわゆる大き過ぎて潰せない(too big too fail)銀行に、平時に自己資本を摘み増しさせ、金融危機時に取り崩せる備えをさせようという規制で、サーチャージとも呼ばれますが、保有資産のリスク度合いに応じて銀行をランク付けして上乗せ率を決めることになり、邦銀では三菱東京UFJ銀の+1.5%が最大で、リスク資産の度合いが大きい欧米の投資銀行より緩和され、邦銀関係者から「快挙」の声が聞かれますが、銀行規制に関する歴史を紐解けば、決して喜べるものではありません。

1988年、バーゼルの国際決済銀行(BIS)規制、いわゆるバーゼル1が決まり、国際業務を行う銀行の自己資本比率8%以上が、92年実施(日本では93年3月期末)から適用され、バブル期に融資残高を膨張させてきた邦銀に自己資本増強を迫りました。

この規制によって過小資本とされた邦銀が一斉に資本増強に動いた結果、融資残高の収縮が起きていわゆるマネー敗戦となったという見方がされますが、実際は既にバブル崩壊による信用収縮期に入っていただけであり、80年代に貯蓄貸付組合(S&L)の連鎖破綻に直面したアメリカや、日本と同時期にバブル崩壊で銀行危機に直面したスウェーデンなど、金融自由化の現実が国内規制だけでは不十分との共通認識に立つもので、マネー敗戦論が言うように邦銀をターゲットにした規制ではありませんでした。むしろ保有株式の含み益の45%を自己資本に繰り入れるルールを押し込む事に成功し、邦銀の自己資本嵩上げに貢献しましたが、これがバブル後の不良債権処理を遅らせ、後に株安を契機とする金融危機を招く要因となったんですから皮肉です。

続いて2004年に公表され、2006年末から適用されたバーゼル2では、銀行のリスクアセットのリスク評価法が変わり、資産のリスク度合いに応じたリスクプレミアムの掛け目が0%から200%まで5段階に評価されるようになりましたが、ここでも邦銀が大量保有する国債の掛け目を0%とすることが認められ、邦銀に有利なルールとなりました。その結果邦銀の国債保有は促進されたばかりか、リーマンショック後の各国でも同様の動きが起こり、特にユーロ圏では表面上の信用度の高さに対して利回りの良いギリシャなどの南欧諸国の国債が好んで保有され、ギリシャショックをもたらすんですから皮肉です。

同様にオバマ政権下で財政出動を拡大したアメリカも、ゼロ金利やQE2で超金融緩和を続けながら国債消化を進めた結果、ドルの信認が揺らぐ結果となり、消去法で円が買われる状況となっております。例によって野田財務相が「重大な関心」を示しましたが、為替介入は直ぐには行われないと見てよいでしょう。何となれば政府の為替介入は昨年9月にしろ今年3月にしろ輸出企業の決算がらみのタイミングで行われた事を指摘しておきます。輸出で稼いだドルを円に換える機会を失った輸出企業に対する実質的な粉飾決算幇助であるということです。

オマケの話ですが、震災によるサプライチェーン寸断で4月5月と2月連続で日本は貿易赤字となりました。赤字自体は成り行き上の問題ですが、製品輸出が止まって原発事故で原油などの輸入が増えるタイミングと為替の円安誘導が重なったため、日本の国富が必要以上に流出した事は指摘できます。

そしてこれらの危機を踏まえて、大き過ぎて潰せない大手銀行が過剰なリスクテイクをしないよう、自己資本の質を高める規制がバーゼル3ですが、特にバーゼル2では信用リスクを示す格付け会社の格付けの評価ウエートが高かったこともあり、普通株など中核的自己資本(コアtier1)を重視するということで、バーゼル1では認められていた優先株や劣後ローン、株式含み益や税効果資産など実態の乏しい資本を除外した部分で4%以上を求められました。これもなかなかまとまらず難航したんですが、日本の大手メガバンクは辛うじてクリアできる水準でもありました。

そして今回のサーチャージはそのコアtier1の上乗せ分という位置づけですが、ザックリ見てきたように、必要に迫られて行われた国際ルールの協議で、日本は邦銀の都合ばかりを優先して間違ってばかりという状況です。むしろ日本の国際的プレゼンスをグローバル経済に資する形で普遍化する努力が為されないことが問題です。これで本当にグローバル経済を生き抜けるんだろうか。

そして地球温暖化防止問題でも、日本は岐路に立たされております。鳩山前首相が国連演説で表明した2020年のCO2の90年比25%削減の国際公約ですが、原発事故を受けて政府は撤回に動こうとしておりますが、一旦行った国際公約の撤回は困難です。むしろ原発事故の収束が見えない現状に世界は苛立っている中で、原発政策の継続と新興国への売り込みにも言及し、あまつさえ新興国の原発プロジェクトではCO2排出クレジットの取得をさえ主張し顰蹙を買いました。

その菅首相が今は脱原発を公言し、エネルギー政策を見直し再生可能エネルギーにシフトすると言うんですから笑っちゃいます。こう節操なく言う事をコロコロ変えるリーダーが信用されないのは当然のことです。地震の退陣の条件とした再生エネルギー買い取り法案にしても、本来は脱原発が目的ではなく、温暖化防止だったわけで、しかも非効率な太陽光発電を極端に優遇する内容ですから、実効性は乏しいどころか、原発推進を前提としたものと見るべきでしょう。実際閣議決定されたのは3月11日朝ですし-_-;。というわけでCO2削減目標の撤回は無節操なご都合主義といえます。

幸いというか、円高と電力不足を理由に製造業の海外移転の機運が高まっており、労せずして25%削減は実現できるでしょう。電力需要全体の1割にも満たない一般住宅の節電は、需給関係だけを見れば無意味であり、日本は今後大口需要化の減少で電力余剰時代を迎えることになります。わざわざ国際公約を撤回する必要はありません。

加えて税制の見直しが工場の海外移転を加速しそうだという点も指摘しておきます。具体的には今年度の税制改正大綱に盛られた日本企業の海外現地法人からの利益配当の課税免除がそれです。趣旨としては海外拠点で稼いだ富が海外投資に向かう傾向を国内投資に向かわせようという政策意図ですが、これによっていわゆる空洞化は促進されます。

からくりはやや複雑ですが、元々日本企業が海外で稼いだ富は、海外事業所や海外現地法人で所在国の当局への納税が発生するわけですから、そのまま日本の本社へ送金すれば日本でも課税され二重課税となるわけですが、日本の税制ではこの場合税額控除で対応していたので、実質国内との差はなかったわけです。それが海外現法の利益配当の送金分限定ですが、現地で課税されたものについては国内で課税を免除する事になりました。

これの意味するところは、これまで税制面では製造部門を国内に置こうが海外に置こうが、結果的に日本に本社を置く限り企業の税負担は変わらなかったわけで、とかく日本の法人税は高いと言われ、空洞化加速すると言われ、法人税減税の必要性の根拠とされてきました。実態はむしろ新制度の方が積極的に海外現法を利用して国外に出す方が有利になるということになります。国内ルールでも安易に弄るとろくなことにならない典型です。これだけ役に立たない政府だと、脱原発より脱政府と言いたくなってしまいますね。

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Comments

海外現地法人からの利益配当の課税免除(外国子会社配当益金不算入制度)は、すでに改正済です(平成21年4月1日~)。

この改正は政権交代前に行われていれたものですが、国際展開する法人に対して、実質的に法人税率を下げたという、実は大きな改正だったと思います。

Posted by: ほたる | Tuesday, July 19, 2011 at 10:54 AM

政権交代前でしたか。フォローありがとうございます*^_^*。

仰るように結構大きな改正ですが、逆に言えば海外展開していても、本社が日本にある限りは税率は変わらなかったので、「法人減税しないと国内が空洞化する」というのは、この制度に関する限り逆に作用するわけです。

ま、だから製造部門を海外に出して、管理部門だけの本社を日本に置くのであれば、法人税減税はあまり意味がないということにもなります。制度の意図と現実が不整合なので、この辺の議論は注意が必要です。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, July 19, 2011 at 09:35 PM

穿った見方ですが、この制度が導入されようとした背景に、このころから顕著になった円高があるように思います。進む円高に対し、海外法人に滞留した利益の目減りを抑えつつ、国内に還流させたい法人が多かったのかな?と思います。

法人税率下げについては、上記の利益配当の課税免除制度で想定されていない「国内黒字・海外赤字」法人とのバランスをとる意味があるのかも。ますます財務省が消費税増税に傾いていくわけだ。

Posted by: ほたる | Wednesday, July 20, 2011 at 12:35 AM

企業の円高対策という側面はありそうですね。政府の企業優遇策ということでしょう。

もう1つの要因としては、海外現法との連結納税制度が始まってから、企業と国税庁の見解の相違による係争が増えたこともあるのではないでしょうか。企業と当局の揉め事に対する当局側の譲歩という意味ですが、そのためには「海外現法の利益を国内投資に回すため」というもっともらしい政策目標を掲げる必要があったのではないでしょうか。

逆に海外赤字法人ならば連結納税で利益を圧縮できますので、敢えて優遇する意味はないと思います。むしろ海外展開しないドメスティック企業に対する公平性というロジックなのかなと思います。片方を優遇したから他もというのは、もう滅茶苦茶ですね。増税は消費税でやれば良いということか(怒)。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, July 20, 2011 at 08:58 PM

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