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Sunday, July 24, 2011

百年復興で財源手当不要

先日、都内某所で行われた集まりで、興味深い話題が出ました。震災で被災地にボランティアとして入った人の報告などの話の後で、グループに分かれてのワークショップで、サラリーマンとして、会社勤めしながら被災地を支援する方法として、個人で休暇を潰してボランティアで汗をかくのもいいけれど、勤めている会社を動かしてそのリソースを被災地支援などの活動に振り向ける事ができれば、より大きな成果となるのではないかという事が話題になり盛り上がりました。

もちろん営利目的の企業が儲け抜きに動くのは普通は考えにくいんですが、例えば建設会社で保有する重機でがれき撤去などの作業を行えれば、かなりの力になる事は間違いありません。元々国の公共事業が減って動かしていない重機ならば尚更です。実際に行われた例として、被災地の宅配便の営業所で、交通網の寸断で日常業務が消滅した一方、全国から届く救援物資の配給が自治体のマンパワー不足で滞っていたときに、無償で代行したなんてこともありました。そうして被災者の生活再建を手伝う事で、宅配便事業者自身の業務の復興にもつながるわけで、営利の追求は日常を取り戻した後に行えばよいと考えれば、あながち夢物語でもない話です。被災地の生活支援は結果的に将来の企業の営利活動に結びつくと考えれば、ある意味企業の社会的責任(CSR)の本来の意味に近づくことでもあるといえるわけで、CSR=広報という思い込みに支配された日本企業のあり方に風穴を開けられるかもしれないと気づかされました。

復興が進まないということで、連日メディアを賑わしておりますが、がれきの撤去を全額国の負担とした1次補正予算で3,500億円が計上されておりますが、執行が208億円に留まっているということが国会審議で明らかになっているなど、復興の遅れが指摘されてますが、自治体が国に提出する申請書類の作成がネックになっているようです。折角予算措置しても、手続きがネックになるというのは、いかにも硬直的な対応です。民間の柔軟な対応と比べるべくもありません。

とはいえがれき撤去を全額国庫負担とすることに異論はありませんし、国直轄とせずに自治体が地元企業を使って作業を行うことで、被災地や被災者への生活支援とする意図もわかりますので、阪神大震災のときのように迅速に作業が進まないのも仕方ないところではあります。逆に国が差配して大手ゼネコンに丸投げすれば、迅速ながれき処理は進むかもしれませんが、被災地は阪神のときのような大都市部ではないので、がれきを撤去して更地にしたからといって、それで復興が動き出す環境にないなど、制約条件も大きいこともまた考慮する必要があります。更地にすれば放っといても土地利用が進む大都市とは条件が異なり、産業の再構築という重い課題も抱えているのが被災地の現実です。その意味で企業による被災地支援は、地元の細かなニーズを把握するのにも役立ちそうです。

一方で震災復興を口実とする増税議論ばかりが目立ちますが、この大災害も増税の口実にされる現実に眩暈がします。もちろん日本の財政状況が厳しい事は確かですが、それでも1994年までは財政赤字の累積額の対GDP比は8割程度で欧米諸国と同じような状況でした。それが95年以降、年を追って累積額が膨らみGDPの1.8倍の水準にまでなりました。その間何があったかといえば、阪神大震災で復興予算の大盤振る舞いがあったことを指摘しておきます。通常ならばケインズ効果で経済が成長し、税収増でカバーされるところですが、この頃から始まった生産年齢人口の減少、すなわち国全体の総所得の低下によるデフレの進行によって税収は低迷し、赤字が拡大していったのです。ちなみにマクロ経済現象のデフレーションとは別物ですので、念のため。

こんなどうしようもない日本の財政ですが、ここへきて欧米の財政問題も雲行きが怪しくなって着てます。1つはギリシャ問題で揺れるユーロ圏諸国です。ギリシャ問題はEUとIMFの財政支援で対応したものの、条件とされたギリシャの財政緊縮策が逆にギリシャの経済成長を阻害して税収が増えず、逆に利払いが増加することで、2次支援が必要となったのですが、今回は高金利に釣られてギリシャ国債を保有する民間金融機関にも一定の責任を問う形で、いわば部分デフォルトとも言うべきところまで踏み込んだのですが、これで危機が去るとは見られておらず、時間稼ぎ以上ではありません。それでも独仏など支援国側は(怠け者の)ギリシャ国民を助けるのになぜ税金を使うのかという国民感情もあり、22日の緊急首脳会合でギリギリの調整でやっと決まったものです。結局通貨ユーロの信認を守るための政治決着となりました。

この問題ですが、特に経常黒字国であるドイツなどでは、ユーロ安による輸出好調という副産物があり、問題をややこしくしてるところがあります。丁度2003-2004年の大介入による円安誘導で輸出主導で経済成長を実現したリーマンショックまでの日本と同じ構図です。震災の影響もあり日本でもドイツ車は売れまくりました。つまり支援国側にとっては心地よいユーロ危機ということで、政治的に解決困難となっているのです。ギリシャの例はどちらかといえば財政再建しないとギリシャのようになるという文脈で語られる事が多いですが、無理して財政再建すれば経済を痛め税収減と金利上昇でむしろ財政再建が困難になるという側面も見逃せません。

もう1つはアメリカの財政悪化ですが、リーマンショック対策としてオバマ政権が行った財政出動の結果、財政法に定められた赤字上限に近づいており、上限を超えれば一部デフォルトとなって投資家が傷を追うということで史上初めての米国債格下げなどで市場が反応しております。特に野党共和党が多数派の下院での調整が進まず、このまま時間切れの可能性が出てきました。まるで参院の与野党ねじれで特例国債発行法案が人質に取られた菅首相のようです^_^;。という具合に日米欧共に政治が機能しなくなっているのですが、日本にとっては慰めにもなりませんね。

というわけで、世界が日本に追いついてきた感がありますが、5月末にPFI法の改正が行われたのは朗報です。特に毀損した公共インフラの修復は、財政で手当てする必要があり、企業など民間の支援は本来は当てにできないのですが、今回の改正で公共部門の所有のまま運営権を民間に売却できるコンセッションと呼ばれる手法で、運営権を取得した民間企業の責任でリスクを取って投資を行い収益を得て回収するということが可能となり、仙台空港の復興などで用いられることが予想されます。ちなみに橋下大阪府知事が伊丹と関空の一体運用で伊丹空港の廃港を期待したのは制度の趣旨からいえば的外れです。

もう1つの改正点は民間側からの提案が幅広く可能になったことです。従来も民間提案は決して不可能ではなかったんですが、手続きが煩雑でしかもほとんど門前払いされてきた実態があり、今回のように被災地域が広域に亘り状況がそれぞれ異なる中で、民間の知恵が試される機会が広がったのは望ましい話です。あとはこれを実際に活用する事例が出るかどうかですが、冒頭の企業による被災地支援が具体的な事例につながる可能性は指摘できます。つまり冒頭で取り上げた企業による支援活動が実は将来の事業のリサーチプロセスとなる可能性が出てくるわけです。

しかし実際はゼネコン各社は、復興事業を当て込んでセメントや鋼材などの資材の調達は進めるものの、いつまでも彼らがイメージする復興が始まらず焦れているといいます。つまり仕入れ先行でバランスシートを悪化させているんですが、それならば尚の事被災地支援を通じて事業機会を模索する事が必要ではないかと思います。政府を当てにしていても仕事は来ないんですから。

そういう意味でメディアや野党が言うように阪神の時より遅いという言い方は、公共事業漬けの旧い日本から見た見方とも言えるわけで、このあたりは割り引いてみる必要があります。もちろん政府の対応のまずさはいたるところに見られますが、その辺を突いても大きな議論にはならないと感じます。

鉄道の復興も、茨城県のひたちなか海浜鉄道の全線復旧で、私鉄では三陸鉄道と仙台空港鉄道を除いて復旧は進みました。残る2社の復旧はかなり厳しい状況ですが、仙台空港鉄道は空港の復興と連動するとして、三陸鉄道は全く見通しが立ちません。JRでも津波被害を受けた7路線の復旧は白紙の状態ですが、JR東日本は集落の高台移転や国道45号線の復旧など地元の復興計画と連動させるとしております。このあたりは規模の大きいJR東日本だから可能なことでしょうけど、三陸鉄道はそうはいきません。

ただ、三陸鉄道は路盤や高架橋やトンネルなどのインフラ部分を県が保有する上下分離を行っており、これを公共インフラと見なすことができるならば、上記PFI法によるコンセッションの対象とする事はひょっとしたら可能かもしれません。とはいえ元々第三セクターである三陸鉄道自体は対象にはなりませんから、結局三陸鉄道に対する資本増強は必要になります。それを誰が引き受けるのかという重い課題は残るわけです。

バブル時代ならば西武あたりがタニマチ的に係わるなどの可能性はあったでしょうけど、その西武自身が経営再建途上では無理ですし、そもそも人口減少で本業の先行きが不透明な私鉄各社に過疎地のローカル線を救う余力はありますまい。あと残るはJR東日本ですが、自身も被災している状況で果たして引き受けるかどうか。上場企業として引き受けるメリットを株主に説明できる必要がありハードルは高いといえます。

鉄道の復旧では、被災地以外にもJR東海名松線の全面復旧が自治体の治山治水事業と森林整備事業を条件に動き出す事は取り上げました。

災害復旧ではないんですが、廃止されたJR西日本可部線の非電化区間のうち、可部―河戸間の1駅間が電化路線として復活することが発表されました。現在協議が続いていますが、元々広島市安佐北区の行政機関が集中し、住宅団地も造成されて市街化されていたところだけに、廃止以前から電化延長の要望があり、廃止後も復活の住民運動が行われていたものが実った形ですが、JR西日本でも路盤を敢えて残して話し合いの余地を残したわけで、冒頭の企業の役割として、消極的ながら営利に囚われずに路盤を残したことは評価できます。

電化路線としてグレードアップされた形での復活は、国の補助も助けとなりました。こういうニュースを聞くと、確実に時代は変わってきていることを実感します。ネックは踏切の扱いだそうで、新線となるので既存街路に新たに踏切を設置する事が問題になるとか。この辺の処理がJR7線や三陸鉄道の復旧で、線路移転や道路の復旧で話題になっている盛土化などに道を拓く可能性があり、目が離せません。

また広島の事例は、時間をかければ懸案の解決に道を拓く可能性を示唆します。その意味で被災地の性急な復興を煽るメディアの姿勢は大事な問題を見落としていると考えます。

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Comments

日頃楽しく読ませていただいております。
仙台空港アクセス線が23日に一部復活しました。

不通期間中、所要にて美田園までいったんですが、バスでは本当に不便だったので復活してくれて良かったと思っています。
復興の遅れは実のところ内陸部にいるとぱっと実には分からないところで以前少しお話しましたように、沿岸被災地と内陸被災地の差が時間を置くたびに開いているような実感があります。
とはいえ、書かれてらっしゃるとおりゼネコンに任せれば、それでいいかというとそういう問題ではないと私も考えます。
特に凄惨な被害を受けた沿岸部はそもそも二次産業、三次産業の比重が低かったこともあり、また最近でのメディアの放射能への反応も手伝って今、急速に建物だけを急ごしらえしても生活再建には厳しいものがあるのではないでしょうか。

ところで三陸鉄道についてですが、とても精力的に復興系イベントなどをこなしてるようです。
ああやって生きて貢献してくれるインフラ企業って言うのは見ていて元気をもらえますね。
あそこについては今後、どのように路線の復興をしていくのかとても楽しみです。

Posted by: 幻月 | Sunday, July 24, 2011 at 09:56 PM

三陸鉄道の復旧は本当に道筋が見えません。被災地ツアーなどの積極的な取り組みには頭が下がりますが、本文で記したように、復旧費用の国の補助率をアップするぐらいでは済まないのがつらいところです。

仙台空港鉄道も地下駅の空港駅部分は結局空港ターミナルの復旧に合わせるしかないために遅れているという事かと思いますが、こちらはそれでも時間の問題でしょう。

伝え聞くところでは、元々沿岸部では廃屋や未使用の老朽倉庫や工場などがあり、撤去費用が土地価格を上回るために放置されていたのが、津波で流されて、更にがれきの撤去費用が全額国庫負担と決まった事で、地価が値上がりした事例まであるそうですが、復興を進める上では障害になる可能性があり悩ましいところです。

Posted by: 走ルンです | Sunday, July 24, 2011 at 11:29 PM

返答ありがとうございます。
確認遅れましてすみません。
瓦礫撤去に伴う地価上昇は私の見てる仙台近郊範囲ではちょっとまだ分からないですね。
ただ、実際東北では撤去費用のほうが高いという理由で放置している土地というものが多々あって、長年問題になっていたりしていましたので撤去に伴う土地価格上昇は複数箇所で発生すると確信できます。

ところで、せっかく仙台空港線のめどが立ったとおもった矢先でしたが、今度は大雨で只見線がダウンしてしまいました。
しかも被災三県の中でも福島は今現在予算面で原子力対応と東北大震災対応の両面を迫られている側面があり、既存災害に対する対応に多くは望みにくい状態です。
かといってJRにしても直すにしても公共の強い補助が見込めなければというところがあるでしょうし厳しいですね。
岩泉線のようにバス転換を促していく形になってしまうことも覚悟してます。
こういった地方ローカル線の自然災害でのダウンについては以前から走ルンですさんが書かれているように、公共部門が下施設を持つといった処方箋を本気で考えるべき時期なのかもしれません。

Posted by: 幻月 | Sunday, July 31, 2011 at 12:00 AM

以前から被災者の生活再建支援を兼ねて津波で被災した土地を国が買い取るべきと述べていますが、実際に地価上昇地点が確認されたことで尚更思いが強まります。

GDPを押し上げる復興事業への期待が一部で見られるなどしており、政府は復興をネタにバブルを起こすつもりかと憤っております。そんなお金があるなら被災者支援が先だろうと思います。

只見線の豪雨被害は悲惨ですね。豪雪地帯で並行道路が冬場度々寸断される地域だけに、只見線の復旧がおくれれば孤立集落が出てしまう点が頭の痛いところです。もはやJRや自治体だけの問題ではないですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, July 31, 2011 at 10:05 AM

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