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Saturday, July 09, 2011

いたみを伴う大阪副首都構想の迷走

九州電力玄海原発の運転再開を巡って迷走してますが、1つは九電のやらせメール事件の発覚、もう1つは唐突な全原発のストレステスト実施の2つです。詳述は避けますが、そもそも原発推進を国是としてきた中で、福島の事故が起きたことから続く迷走劇で、国のエネルギー戦略が揺さぶられているのですが、そもそも戦略と言えるような戦略があったのかどうか疑問です。政府の場当たり的な対応は、ある意味その結果ともいえます。そして情報が小出しにされる中、国民自身もあまり深く考えてこなかったということでもあります。

そんな中で注目したニュースはこちらです。

関空・伊丹運営権で国交政務官「民間売却は困難」 橋下知事は不満 - MSN産経ニュース
ちょっと解説が必要ですが、そもそもは行政刷新会議による事業仕分けで、関西国際空港への国からの多額の補助金拠出が問題視され,それを受けて国交省が成長戦略会議で提案した関空と伊丹の経営統合を軸とする一体運用を提案し、5月17日に国会で法案が成立したことを受けて、国交省市村浩一政務官が橋下大阪府知事を訪問し会談したというニュースです。

事業仕分け自体は、折角問題点を明らかにしながら、その後事業の復活が相次ぎ、例えばこの間演算速度で世界一となったスパコン"京"も、そうして復活したものです。やや脱線しますが、そもそも軍事利用の可能性が皆無である日本で、スパコンで世界一を取る意味はほとんどありません。"京"にしても、民間利用で投資を回収できるメドは立っておらず、遠からず無駄を指摘される可能性が高く、やはり戦略性の欠如が指摘できますが、この話はここまでにしておきます。

そんな事業仕分けで動いた珍しい案件として(笑)関空の経営問題があるのですが、そこで市村政務官が現状での運営権の民間売却(コンセッション)が難しいとの見解を示したのですが、それに橋下知事が不満を顕わにしたというニュースです。伊丹廃港論を唱える橋下知事としては面白くないということですね。とはいえ伊丹廃港論自体も兵庫県や地元経済界などから反対論がある中で、廃港するにしてもコンセンサスを得るのは容易ではないのですが、橋下知事がコンセッションで期待したのは、伊丹の廃港と跡地再開発にあると思われますので、元々同床異夢であったとも言えます。今回それが明らかになっただけと言えばそれまでですが。

とはいえ経営統合の対象ではない神戸空港まで持ち出して検討するというのは、コンセッションの意味付けとしてどうなのかということもあり、この点は橋下知事の言い分にも一理あるんですが、議論の前提が違いすぎて話がかみ合わないわけです。

伊丹と関空の事業統合については、大雑把に言えば伊丹の黒字で関空の赤字を内部補助するスキームと整理する事ができますが、それを可能とするのは、伊丹の利便性と、裏腹な時間制限と便数制限その他の制限の関係によるものです。加えて過去に騒音訴訟で被害者救済のための多額の補償金が地元に配られていることもありますが、現在でも30-50億円規模の対策費が国によって計上されております。これが新会社発足後は新会社の負担となるわけで、伊丹の収支がどうなるかは、必ずしも楽観できないという見方も根強くあります。

加えて2045年にはリニアが大阪まで開業するから、伊丹の高収益は終わるという議論もあり、このあたりは前原氏が国交相時代に言及していたり、橋下知事も伊丹廃港の根拠として述べるなどしておりますが、民間単独事業である中央リニアが果たして大阪に到達できるのかは現時点で未知数です。

という具合に話はまとまりそうにないんですが、一点共通しているのは、関西に副首都機能を持たせようという議論です。これが曲者なんですが、当事者たちは大真面目です。一応首都直下地震でも機能を失わないためのバックアップという位置づけで、過去の首都機能移転とはやや趣を異にしますが、基本的には大規模公共事業の口実と断言できます。

そもそも首都機能移転の議論は、東京の異常な地価上昇を抑えられないことから、東京一極集中を見直すために首都機能の一部を地方に移管しようということで、国会決議までされて候補地も明らかにされながら、バブル崩壊で首都圏の地価が下落したことで沙汰止みになりました。その後90年代半ばに生産年齢人口が減少に転じ、2005年には総人口も減少に転じるいわゆるデフレ現象により、首都機能移転の必要性も霧散しました。ここで言うデフレはマクロ経済現象としてのデフレーションのことではなく、生産年齢人口の減少による国民所得の減少の意味ですので念のため。

それとは別個に、近畿地区選出の国会議員などによる副首都構想というのがありまして、2004年、現民主党副代表の石井一議員(兵庫県選出:衆議院)が伊丹空港を廃港して跡地の国有地を利用して防災都市を建設し、国会、首相官邸、皇居などの分室を設置するというものです。95年の阪神大震災を契機に、同様の直下型地震が首都圏で発生したときの備えの必要性を痛感した石井議員が、廃港跡の国有地に世界の投資ファンドから資金調達して事業化するという構想を明らかにしたものです。

当時は小泉政権時代で、郵政民営化のほか都市再生を掲げて条件付きで容積率や建築基準の規制緩和を行った結果、首都圏では地価下落に伴い値ごろ感が出てきたタイミングとも重なり、再開発ブームが起きた一方、首都圏以外の地域は取り残された感がありました。そうした中で出てきた発想ということが言えます。

とはいえ首都圏の再開発ブームはいろいろ問題含みで進み、例えば耐震偽装事件は建築基準法の改正で強度検査が民間開放に併せて簡素化された結果起きた事件ですし、また国内製造業の製造拠点の統合、閉鎖による用地の供給増もあり、結果的に東京都心に多数の高層マンションが林立し、人口の都心回帰が起きる状況で、首都圏でも都心から離れたエリアや利便性に劣るエリアでは人口減が始まるなどして、例えば沿線人口の減少に歯止めのかからない相模鉄道のJR、東急と結んだ都心直通構想に踏み出すなどにつながります。

また耐震強度審査の厳格化によるビルの新規着工の滞留と相前後して再開発ミニバブルもはじけ、期待された地方都市への波及は結局幻に終わりました。これはリーマンショック以前に起きたことで、とりあえず再開発が一巡し生まれ変わった東京に対して、関西の再開発は燻り続けてきたという流れがこれまででした。

再開発を模索する動きとして京阪中之島線の開業と朝日新聞大阪本社やフェスティバルホールなどの建て替え構想と、梅田北ヤード跡地開発がありますが、前者は完全に失敗と評価できますし、後者も鳴り物入りで開業したJR三越伊勢丹の不調が影を落とします。つまりぶっちゃけ大阪の再開発は頓挫しそうな局面にあるということで、だからこそ中之島線で痛い思いをした京阪は、オフィス賃貸やホテル業で首都圏進出したり、果ては現地の投資ファンドと組んでベトナムへ進出したりして、ある意味大阪を諦める選択をしております。

その一方で東日本大震災で首都機能のバックアップの必要性にリアリティが出てきたとするのが、最近の議論ですが、結局大阪の再開発が進まないことに対する危機感の裏返しとも言えます。結局震災にかこつけたバブル待望論の域を出ません。しかし普段は使い道のないバックアップ施設の建設は、経済効果はほぼゼロ。むしろ維持費分マイナスと見るべきです。というか実際機能していない政府の機能をバックアップしても無駄だと思うが(笑)。

というわけで、この議論の大筋は、リニア開業で伊丹廃港→跡地に防災都市を建設し首都機能バックアップ→関空へ航空需要を集約しハブ機能強化、という流れです。この流れで関空と伊丹の経営統合を評価すれば、伊丹の廃港と再開発までコンセッションの視野に入れているということですが、やはり兵庫県選出の市村政務官は、神戸空港を含む関西3空港の役割分担で関西地区の航空需要を最大化することが、コンセッションの条件という現実的な見解を示したわけで、橋下知事の不満の原因というわけです。とはいえ副首都構想そのものは否定せず、むしろそのためにも航空需要を取り込んで関西地区の浮揚に繋げたいと考えていたわけです。

この辺が副首都構想派の政治家が一枚岩になれない部分ですが、例えば既に民間企業の多くが、関西に本社機能のバックアップ体制を構築していますし、国家機関でも日銀なら大阪支店がありますし、皇室は京都御所その他宮内庁関連の資産は元々関西に多いわけですから、改めて新しいハコモノは不要という考え方もあるわけです。現存する資産の活用策として首都機能のバックアップを行うということであれば、見えてくる景色はかなり違います。

あと重要な指摘としては、直下型地震のリスクは首都圏に限りませんし、内海で津波被害の心配がない東京湾沿岸の方が防災上優位にあるともいえます。大阪は津波が来ればほぼ逃げ場がありません。というわけで、震災を食い物にする議論はホントいい加減にして欲しいと思います。というわけで伊丹を伴う副首都構想でした^_^;。

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Comments

関西疎開、あてが外れた オフィス移転、海外に軸足
www.sankeibiz.jp/macro/news/110709/mca1107090502003-n1.htm

この記事を見る限りだと、関西のバックアップ需要は一時的なようですね。
首都圏への一極集中を緩和するためにも大阪や名古屋にある程度求心力を維持してもらいたいところですが、第二の東京を目指してもだめだと思います。

関空は世界的には比較的評価が高いようですし、ハブ空港に向いていると思います。羽田のように国内線で発着枠が埋まることもなく、成田のように厳しい規制もありません。それを活かせば物流の中継地としての発展の余地がありそうな気がします。

リニアが品川〜新大阪間に留まらず関空に乗り入れれば東海道新幹線の活用と合わせて、鉄道と航空、東京と大阪の共存共栄もできそうな気がしますが、このままだと永遠の夢の超特急で終わりそうですね。

Posted by: yamanotesen | Sunday, July 10, 2011 at 08:55 PM

副首都という発想自体が、東京の風下に立つということですから、それじゃダメですよね。

そもそも日本は人口減少局面にあるんですから、国内に留まれば市場の縮小で徐々に弱ってくるのは自明です。この点はリニアができても変わりませんし、コストアップ分を時間を買う感覚で負担してくれるビジネス客が減ることもまた確実です。

むしろLCCの普及に期待がかかる航空需要の新規開拓の方が、関西にとっては重要ですが、その意味で関西3空港の位置関係は、物理的には羽田と成田よりも近いわけで、活かし方を考える余地はあります。

関空は特に24時間空港ですから、エアラインが拠点にしやすい利点もあり、全日空系のLCCピーチ・アビエーションも拠点に選びました。ただし着陸料が高いのが問題で、ピーチも新規参入事業者の1年目の着陸料免除を当てにしているわけで、2年目に着陸料を請求すれば、小規模な新規参入社は簡単に出て行ってしまうわけで、当面伊丹の利益で内部補助を行うビジネスモデルを採用するしかないのが現実ですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, July 10, 2011 at 11:26 PM

着陸料ってオークション方式にできないんですかね?
関西3空港と羽田・成田の経営を統合して民営化。JR東海にもその株式をある程度保有させて経営に加える。羽田の国際線発着規制は残した上で、それ以外は原則として競争原理で決める。得た利益は内部補助に回すことで、最適化できるような気がします。まあ、妄想というか「ぼくのかんがえたこうくうせいさく」ですけどね。

Posted by: yamanotesen | Monday, July 11, 2011 at 11:52 AM

オークションとは違いますが、オープンスカイ政策がそれに近いと言えます。

空港ごとに条件の違いがあるわけで、伊丹のように都心アクセスの良い空港は、利便性は高いけど離発着時間や便数、機材の大きさやエンジン数、騒音レベルなどで制約を受けます。当然1便あたりの着陸料は高くなります。

一方都心から離れた空港はその逆なんですが、人工島造成による洋上空港で、建設費用が嵩んだために、着陸料が高くなってしまったんです。公共事業の入札業者の利益保護という世界に例を見ないルールがあるために、日本の公共事業は当初予算の何倍もかかるのが当たり前という異常さです。入札価格自体も談合で高止まりしてますし。

やや脱線しましたが、同じ母都市の複数空港間の役割分担を市場原理で配分しようというのがオープンスカイ政策という風に整理できます。諸外国ではその結果、アクセスの悪いサブ空港の着陸料の安さがLCCを後押ししたわけです。

一方日本では、伊丹は騒音対策を国に頼って割安な着陸料なのに対し、関空は建設費高騰で割高と逆になっているので、両者間の内部補助のような特殊な制度設計が必要になるわけです。同様のことは、内陸空港で時間帯や便数に制限のある成田が割高で、利便性が高い上、第4滑走路完成で24時間化された羽田が割安と逆転している状況です。

いやはや日本の常識は世界の非常識ですな(笑)。

Posted by: 走ルンです | Monday, July 11, 2011 at 09:56 PM

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