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Saturday, July 02, 2011

電力使用制限令で狂うビズ

7月1日から予告どおり東電、東北電エリアでの電力制限令が施行され、自動車メーカーなどで休日の振り替えによる土日操業が始まるなど、さまざまな変化が見られますが、遡る1ヶ月前の6月1日に、節電を目的としたスーパークールビズなるものも始まっていて、アロハに半ズボンにサンダルのお父さんたちがビジネス街を闊歩する光景が見られるようになりました。

そんな中、町で見かけた奇妙な女性のファッションに違和感を覚えました。白いシャツに黒のボトムスでショルダーバッグを肩にかけながら、颯爽という感じではなくどことなくくたびれた感が漂っていました。よく見ろと脇に折りたたんだジャケットを抱えていたんですが、実は黒スーツの就活女子だったんです。そう、震災で自粛していた就活がスタートしたタイミングとスーパークールビズのタイミングがシンクロして、妙な風景が街に溢れます。

昔はそもそも女子の就職は結婚までの腰掛けで、寿退社なる用語も蔓延していたぐらいですから、就職活動では慣れないビジネススーツを着こなさなければならない男子ほどにはドレスコードが厳格ではなかったんですが、男女雇用機会均等法の施行以後、女性の社会進出は確実に進み、職場での差別も以前より減っているにも拘らず、むしろドレスコードの縛りが強くなるのですから妙な感じです。一方で若い頃ドレスコードに縛られてきた面接官のお父さん達はアロハで出勤ですから、変われば変わるものです(笑)。

戦前も、大正デモクラシーの機運の中、大正14年(1926年)に納税額の規制撤廃による男子普通選挙法が施行され、昭和3年(1928年)に初の総選挙となる一方、モダンガールと言われる職業婦人の台頭で婦人選挙権への関心も高まっており、女性の社会進出が希望的に共有されていた時代というと意外感がありますが、今とよく似た世相だったのです。当時は和装中心だった婦人ファッションですが、モダンガールの一部から洋装シフトが始まり、急速に普及していきます。近代的百貨店の台頭もこの時期の話です。

その一方で職業婦人の機能的な和装の仕事着として提案されたのがモンペですが、戦時ファッションと見なされたり、野良着のイメージが持たれたりして、戦後ブレークする事はありませんでした。一方で男子にはビジネススーツを着こなすというドレスコードが強制された中で、女子は会社支給のユニフォームを着用する事が定着したこともあり、女性用ビジネススーツはそもそも着用機会が少なく、モダンガール時代のフレームを維持してきたといえます。昨今の黒ずくめの就活スーツ自体は最近の傾向と言うことができます。

そんなドレスコードに狂いが生じている日本ですが、クールビズ自体は先進国に共通するファッションのカジュアル化と共振していて、大阪キタの陣のデパート戦争でも思わぬ結果をもたらしております。結論から言えば集客効果が現れたのはノースゲートビル東の専門店エリアのルクアと、ユニクロなどのカジュアルブランドのテナントを誘致したサウスゲートビルの大丸梅田店で、黒船襲来と言われた三越伊勢丹は、ブランドの壁を取り払った伊勢丹流の自主規格売り場が関西の消費者に理解されなかったようです。百貨店に来る客は高級ブランドを求めているのに、その気配を消してしまったのが誤算という要素もありますが、そもそも売れ筋が高級ブランドからファストファッションなどカジュアル系ブランドにシフトしており、百貨店の売り場の見せ方を変えても、そのトレンドには乗れないわけです。

百貨店の長期低落傾向は東京が先行しております。かつて総合スーパー(GMS)に追い上げられた百貨店が差別化のために多用したのが高級ブランドのショップ展開ですが、逆にそれが全国の百貨店を金太郎飴状態にし、また売り場作りをブランドに丸投げし、売上仕入れ方式で利益率も下がった結果、百貨店の競争力は低下します。その上バブル期以後、ブランド側も原宿や銀座に独自に路面店を展開するようになり、またそこに至らないブランドでも六本木ヒルズや建て替えられた丸ビル等のオフィスビルの低層のアーケード街が受け皿となって、独自に店舗を出すようになるに至り、百貨店の存在意義を揺さぶります。

そして打開策としてタカシマヤは自主仕入れに力を入れ、伊勢丹は更に進めてブランドの壁を取った自主規格売り場へと進みますが、一方でJフロントリテイリングでは、従来百貨店には馴染みのないユニクロやH&Mなどのファストファッションやセレクトショップをテナントに取り入れて、高齢化が進んだ百貨店の客層の若返りを図ったわけです。これは同時にファストファッションやセレクトショップをメインにテナントを集めてきたルミネなどのファッションビルと競合することでもあり、定価販売が前提の百貨店とショップ独自にバーゲンも行うファッションビルとの競争条件は優位とはいえないわけで、結局大阪の百貨店戦争も勝者なしとなる可能性が高いわけです。実際好調なのはオマケの位置づけの専門店ゾーンのルクアですから、大阪キタの陣は東京に続いて大阪の百貨店を衰退に追い込む事になりそうです。ちなみにやはり大増床工事中の阪急梅田店が工事の遅れからグランドオープンは来年秋ですから、三越伊勢丹が仮に持ち直したとしても、競合はますます厳しくなるわけです。

というわけで、だいぶわき道に逸れましたが、本題は節電問題です。節電ということで、クールビズ商戦が好調で、とりあえず低落傾向の百貨店も一息ついてはいるんですが、ファッションのカジュアル化という流れは百貨店を追い込んでもいるわけで、規制のない小売り業界の優勝劣敗は明白です。同様に節電で家電量販店が息を吹き返しましたが、百貨店から家電売り場が消えたのはかなり昔の話で、この分野も百貨店を衰退させた構造変化
とは無縁ではありません。

しかしま、こんな事やってていいのかという疑問は拭えません。元々企業の自家発電設備の合計は6,000万kw/hを超えており、全原発の停止をカバーできるわけで、PPSを活用すれば電力不足は起きないと早い段階から指摘しております。実際3月の計画停電実施時にも、PPS事業者は電力供給の余力を有しておりましたが、東電の計画停電要請で日本卸電力取引所(JPEX)の東電エリアの取引が停止したため、電力を届ける手段を失ったことも既に指摘しております。加えてPPS事業者にも電力使用制限令を根拠に余剰電力の東電への提供が要請された結果、新たにPPSとの契約を希望する需要家との新規契約は停止状態です。結局電力使用制限令は電力自由化阻止が最大の狙いと見るべきでしょう。

とはいえ節電のフレーズはメディアを席巻しており、相変わらず大本営発表ばかりで真実に迫らない報道姿勢で呆れます。テレビで節電を訴えるぐらいなら、午後0時から4時までの放送自粛した方がマシだぞ。国民は早起きして昼間のクーラーも我慢してるんだから、テレビ局も痛みを分かち合うべきです。とはいえ24日には間違いなくテレビ視聴世帯が1割程度減ります。え、何でかって? 地デジ化未対応世帯の視聴がなくなるからです。電力使用制限するなら、地デジ化を前倒しする手もあったよなぁ(笑)。

かく言う私も実は節電はやってまして、前年比2割程度の減ですが、東電に払う電気料金を減らしたいからです。結局罰則を伴わない小口や一般住宅での節電は、むしろ値上げされ、今後も値上げが続く電気料金を減らすためという動機が強いわけで、PPS解禁すれば東電は大きく収入を減らす事は間違いありません。結局東電を保護するための電力使用制限令というわけで、以前指摘したように東電のゾンビ化で日本経済が道連れになります。

尚、電力使用制限令自体は東電、東北電エリアのみですが、関西電力の唐突な節電要請もあり、またジャストインタイムのサプライチェーンで連動しているため、自動車メーカーの振り替え操業は全国規模となり、例えばマツダの土日操業に備えてJR西日本が広島地区で朝の列車2本の4連→8連に編成増強する一方、昼間は京阪神も含めて減車が行われるなどしております。東電の救済は高くつきます。

自動車メーカーのこの対応も疑問を禁じえないんですが、自動車に限らず外国製の機械製品を輸入すれば、生産国の電力を輸入したのと一緒で、自動車業界では既に日産がマーチをタイ生産に切り替えておりますが、この手の議論では必ず空洞化が言われます。

しかし例えばアメリカ国内で500ドルで売られるiPadが中国にある台湾企業の工場で生産されていることは知られておりますが、中国に支払われる代金は180ドルで、残り320ドルはアメリカ国内に落ちる付加価値です。これには流通マージンも含まれますが、ソフト開発も含めてアメリカ国内で雇用を生み出しているわけで、製造部門を国内に留めなければ雇用が失われるというのは正しくありません。むしろiPadでいえば180ドルの部分を死守しようとして320ドルの部分を削るようなマーケティングが平然と行われていることが問題なんです。しかもiPadではアップストアのソフトのダウンロードで生み出される有償ソフトの代金や、無償も含めてソフトから生み出される拡張現実などのリアルな経済活動は320ドルには含まれませんから、間接的な雇用創出効果は更に大きいわけです。その意味で節電要請に対して輪番操業などでピークカットするしか発想のない日本企業の限界も見えてしまったということでもあります。

というわけで暑苦しくもユウウツな夏が続きます。

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