節電でテレビを消して電車で涼
関西電力堺港火力発電所の故障で関電エリアの電力需給が逼迫しております。原発止めれば電力が不安定になるという電力会社の主張が現実になったかのごとき状況ですが、当然からくりがあります。
そもそも13ヶ月毎に定期点検を義務付けられている原発には、休止期間中のバックアップ電力が必要なんですが、稼働率が低いという理由で、老朽火力を除却、解体せずに残すことで対応してきたのですが、それが裏目となったわけです。減価償却済みで保有コストが低いから低稼働でも経営上の重荷にはならないのですが、老朽化した石炭火力で燃費も悪く、長時間稼動で不具合が出る可能性が高く、今回それが表面化したわけです。つまり原発依存を前提にそれ以外の投資を極限まで絞ってきた結果でもあるわけです。原発依存が投資に歪みをもたらしたわけです。
その一方でJR東日本は川崎火力発電所に、ガスタービン・コンバインドサイクル発電機を設置し、自前電力を強化しております。都市ガスを燃料にガスタービンを回して発電し、さらに排気熱で蒸気タービンを回してそちらでも発電するもので、熱効率が高く従来の2倍以上の燃費の良さを誇ります。加えて出力調整も容易で、起動して1時間後には最大出力に達しますし、燃料のガス供給を止めれば直ちに停止しますから、原発のように暴走する心配もないわけで、仮に脱原発を目指すならば、当面の主力となる発電システムです。既に電力以外の企業は動き始めているのです。
元々日本の火力発電は老朽化が進んでおり、非効率だったんですが、原子力依存ゆえに設備投資が止まってしまっていたわけで、これで電力の安定供給とは片腹痛い話です。元々日本のエネルギ消費に占める電力の割合(電化率)は25%程度で、先進国標準の20%を上回りますが、その7割は産業用電力であり、住宅用は3割に満たないので、国民に節電を求めてもあまり意味はないのです。
加えて電力を作り出すためのエネルギー投入量で見ると45%に達します。早い話が発電段階でのエネルギーロスが莫大なんで、ここをせめて半分に圧縮できれば、エネルギー消費量を1割程度削減できますし、比例してCO2排出量も減らせますから、国際ルールとして認められている途上国の省エネ投資や国内外の森林整備による排出量クレジット取得と組み合わせれば、日本が国際公約したCO2排出25%削減も不可能な目標ではないわけです。
また再生エネルギーの活用を図る意味でも、出力制御が容易な火力発電に一定に依存する必要はあるんですが、その際上記のガスタービン・コンバインドサイクル発電はキラーテクノロジーとなり得るものですが、ガス燃料を拡大すると電力会社の独占を脅かすと考えたのか、徹底的に背を向けてきました。かくして原子力依存を高めてCO2削減というフィクションが語られたんですが、チェックするはずのメディアの無知でスルーされ続けました。そもそも出力制御が難しく、制御電力に3割も自家消費してしまう原子力発電は非効率なんですが。
あと先月の新潟、福島の豪雨による水力発電所の被災で、東北電力も需給が逼迫しておりますが、水害の多い日本では、ダムによる大規模水力発電への依存は既に限界に達しており、また当然ながら水力発電はダムに水が貯まらないと発電できないわけですから、需給調整は火力に頼る必要があります。
というわけで、日本全国節電ムードで、ピーク電力と無関係の夜間照明が落とされて引ったくり犯罪が増加したり、冷房の自粛で熱中症で死者が出たりと物騒な話になっているのですが、電力会社に責任の自覚がないばかりか、電気使用量予想を流して節電をアピールするテレビ局も問題です。午後のピークタイムはどうせ再放送ドラマか韓流ドラマか低予算バラエティかゴールデンの番宣という具合に、そもそもスポンサー集めにも苦労している体たらくなんだから、地上波放送だけでも止めれば良いと思うのは私だけでしょうか。少なくとも冷房止めるならテレビ止めましょう。命が惜しければ-_-;。
そんな中で、タイトルのような提案をしたいと思います。幸い首都圏では、JRの東京近郊区間が大幅に拡大された事もあり、大回り乗車で八高線、両毛線、水戸線、内房線、外房線なども巡る事が可能となりました。ただし終電までに戻らなきゃいけませんし、途中出場はできませんから、食事も用足しも全てラッチ内で済ませる必要があります。これが案外難しい^_^;。
それからSuicaは4時間ルールで出場時エラーとなる可能性があるので、あらかじめ隣駅までの磁気券に引き換えておき、時間制限エラー回避のために、出場時は有人レーンで「大回り乗車」である事を告げるなどの対策が必要ですが、それさえ守れば、乗車中は冷房の効いた車内で過ごせ、乗り鉄三昧を楽しめます。エリア内のJR各線はほぼ毎時2本以上の運行頻度がありますから、案外乗り継ぎもスムーズで、結構いろいろ回れます。あとあくまでも大回りは便宜的措置ですから、復乗は認められず、一筆書きルートに限られます。
こんな事ができるのは、JRの路線網の充実ぶりと同時に、運賃計算ルールの最短経路特例によるわけですが、そもそも自動改札とストアードフェアカード導入で乗客個々のチェックイン、チェックアウトが厳格に管理できるようになった結果、車内改札を省略できるという意味でJRにもメリットがあるわけですが、それが結果的に乗客の利便を向上させるわけです、こういう現象を「ネットワークの外部性」と呼びます。
JRの最短経路特例は、山陽本線岩国ー櫛ヶ浜間(岩徳線経由適用)など幹線ルートでも見られますが、路線網が輻輳する東京近郊区間、大阪近郊区間、福岡近郊区間では国鉄時代もから行われていて、JR化後は区間の拡大もあって現在に至ります。また2004年11月27日から新潟近郊区間も設定されております。ただし新幹線に関しては、原則は対象外ですが、国鉄時代には在来線との同一扱いルールもあり、JR化後の改廃もあって複雑ですが、当然ながら大回り乗車の対象にはなりませんね。
という意味で結構ずくめの運賃の最短経路特例ですが、JRと並行路線を持つ私鉄にとっては痛し痒しのところもあり、評価が難しいところがあります。例えば群馬県の上毛電気鉄道ですが、かつては両毛線が非電化で本数も少なかったし、運賃水準も同等だった事もあり、前橋―桐生間の都市間輸送ので国鉄より優位だったものが、1968年に電化と小駅4駅の廃止でスピードアップされたことと、上電の運賃値上げで運賃差が生じたことで逆転し、さらにマイカーの普及もあり、ご存じの通り群馬県は一時マイカー普及率で都道府県トップだったこともあって大幅に利用が減ったわけですが、その一方で両毛線はJR化後も本数が増加し、不完全ながら昼間20分ヘッドダイヤで利便性も高まり、Suica導入と東京近郊区間組み入れで、マイカー王国の群馬県で存在感を高めておりますが上電は立つ瀬がなくなります。
上電に関しては、中央前橋―前橋間を併用軌道で延伸してLRT化とか、上越線新前橋―群馬総社間の前橋公園付近に新駅を設置して上電を延伸する構想などが検討されておりますが、いずれにしても公的な支援なしには実現できないでしょうし、上電の運賃の高さがネックとなる可能性もあります。東京の地下鉄一元化や高運賃の北総線問題など、地域の交通問題は根が深いです。
一方で、JR東海、四国、北海道の各社はネットワーク志向は希薄です。元々過疎地帯の路線立地で路線密度が低い四国や北海道はともかく、東海道新幹線に収益の8割を依存するJR東海の微妙な対応は理解不能です。例えばこだましか停車しない三島や掛川での新在連絡というのがあり、沼津から三島乗換えで静岡までの企画券を売り出したりしてますが、ニーズがあるとは思えません。静岡都市圏では快速運転の代わりに乗車率の低い新幹線こだまに誘導したいということなんでしょう。
一方で名古屋都市圏では、名鉄や近鉄など並行私鉄に果敢に競争を仕掛け、乗客を増やしております。見える敵から客を奪う戦略はJR西日本のアーバンネットワークと同様ですが、大回り乗車ができるような路線網にはなっていないのが大きな違いです。例えば民営化で国鉄から継承した未成線として引き継いだ瀬戸線(勝川―枇杷島)を系列の東海交通事業に丸投げして、しかも当初は尾張星の宮―枇杷島間を欠き孤立した非電化路線としたように、まるで「利用するな」と言わんばかりです。
その一方で西名古屋港貨物線の旅客化事業として名古屋臨海高速鉄道あおなみ線へ路線を譲渡しましたが、本来名古屋市都市計画高速鉄道東部線として金城埠頭―笹島―丸田町ー星ヶ丘―岩崎というルートが計画されていたものの、事業化に至らず、あおなみ線はやはり孤立路線として利用が伸びず、昨年7月に債務超過から事業再生ADRで名古屋市に追加支援を求めるなど不振が続きます。これは出資する名古屋市の中途半端な対応にも問題があり、市営交通との乗り継ぎ割り引きなどは事業再生ADR後にやっとですが、JR東海の名古屋都市圏輸送に対する冷淡な姿勢を示しているとも言えるでしょう。JR西日本では財政支援を得ながらですが、JR東西線やおおさか東線などネットワーク強化のための新線整備を行っているのとは対照的です。
この辺は中央リニアの長野県内駅を飯田線と共同使用駅としない姿勢と通底するのかもしれません。事実として新幹線の収益が大きく、名古屋都市圏も含めて在来線の旅客収入は取るに足らないと感じているのでしょう。名古屋都市圏の私鉄競合路線のやる気(笑)は、私鉄側の度重なる運賃値上げで逆転現象が起きたことが追い風となったという見方も可能で、単に勝てる勝負を仕掛けただけとも取れます。逆に名松線では無人走行事故を2度も引き起こすなど、モチベーションが感じられません。
攻め込まれるライバルの名鉄は、JRとの競合がない犬山線や常滑線でが稼ぎ頭という状況ですが、元々前身の名古屋電気鉄道の名古屋市内電車が名古屋市に買収されて市電となり、企業存続のために郊外線を建設して初代名古屋鉄道となった歴史もあり、地域交通ネットワークとしての意識が強いのが特徴です。面白いのは、市電を元祖とする名古屋市交通局の地下鉄線との関係ですが、鶴舞線や上飯田連絡線の相互直通運転や名鉄―市交―名鉄の通過連絡運輸(名鉄部分の運賃通算)など一体感が見られる点も特徴です。同様の制度は孤立線の瀬戸線にも存在し、瀬戸線栄町と本線新名古屋(現名鉄名古屋)又は金山との乗り継ぎの場合の運賃通算の規定がありましたが、こちらは市交の乗車券とセットではなく、現在は取り扱いが廃止されています。
とはいえ市交桜通線では名鉄本線の市内区間を侵食するなどして、岐阜の600v区間をはじめとする末端のローカル区間を持ちきれずに廃止しているわけで、私有私営原則の日本の鉄道事業の中に、営利目的でない地方公営交通が混在する矛盾があります。東京の地下鉄統合の議論で抜け落ちている論点です。
ちなみにJR東海と名鉄の連絡運輸は豊橋駅を介した東海道線浜松―名鉄鳴海間の範囲内のみで、広範に連絡運輸が行われている首都圏の状況から見るとちょっとびっくりします。
というわけで、大回り乗車で涼を楽しめる首都圏エリアはありがたいところですが、昨日の雨で急に涼しくなってしまいました^_^;。グダグダ書いているうちにいろいろなことがあって、ややタイムリーさに欠ける結果となったかもしれません。
その間に天竜船下りの事故のニュースも流れました。事業者は天竜浜名湖鉄道で、国鉄二俣線を引き受けた三セクローカル私鉄で、経営が苦しい中での集客と収益機会の拡大のために事業参入したものの、安全管理に難があったようです。鉄道事業者の関連事業としては残念なところです。ただし救命具の着用に関しては、法令の不備もあり、また特に子どもの着用に関しては、暑さで嫌がると、親も同調してしまうなどで、現場で不徹底となる要素は元々あると思います。いわゆるモンスターペアレント問題ですが、社会的に必要なルールの遵守は、子どもに社会性をもたらす躾けでもあるわけで、今回の事故自体は不幸なことですが、レジャーもルールの中で楽しむべきものであるのは言うまでもありません。というわけで、首都圏の大回り乗車も、ルールの範囲内で3大いに楽しみましょう。うまくまとまったかな^_^;。
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Comments
大回り乗車はJRならできますけど、私鉄ではキセルですよね?
それに節電で駅構内や場合によっては電車内も暑かったりします。
公共施設(とくに通勤電車のロングシート)では家のようにくつろぐことはできませんし、喫茶店に行ってもたいていは節電で涼しくないか、混んでいてザワザワうるさいかのどちらかです。
結局昼間は家でエアコンをガンガン効かせて、夜のうちに充電しておいたノートパソコンで鉄路的部落でも読むのが一番良いかもしれません(笑)。
Posted by: yamanotesen | Saturday, August 20, 2011 11:05 PM
貴重なバッテリー電源でのご愛読ありがとうございます(笑)。
JR以外でも、東急や東京メトロ、都営地下鉄、大阪市営地下鉄でも最短経路特例はありますので、途中下車しない限り可能です。ただし路線規模からとても1日潰せませんけど^_^;。
ロングシートでも郊外路線では空いているので、結構くつろげますし、普段見慣れない車窓風景を楽しむだけでも気分転換になります。何より乗り鉄が楽しめるのがGoodです。
外出して公共空間に身を置くことで、家の空調を止められますから、社会全体では節電になります。というわけで、さあ、出かけましょう(笑)。
Posted by: 走ルンです | Sunday, August 21, 2011 10:44 AM