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Friday, August 12, 2011

ソーラーバブルとは梅雨識らず

間違いだらけの経済報道の記事をアップしたその日に、政府は円買いドル売りの単独介入を実施しましたが、それから1週間、案の定効果なく円高が進みます。毎月1兆円も国内にお金が流れ込む国の通貨が高くなるのは避けられないんだってば。

逆にそんな国が8日朝のG7財務相電話会談で欧米諸国に理解を求める厚顔ぶりには呆れますが、共同声明では協調行動の文言はあったものの、為替の協調介入には言及なし。もちろん1985年のプラザ合意のような可能性は皆無ではなかったでしょうけど、あの時はレーガノミクスで高いドル政策の裏で進んだ双子の赤字解消のためのドル売り協調介入だったわけで、今回も仮にあるとすればギリシャショックで割安となったユーロとの調整だったはずです。

アメリカにしても中国人民元の為替水準に関しては改善を求めているものの、G7メンバーではなく、変動相場制に移行していない相手と協調は無理なんで、そもそもG7では解決策を見出せないわけです。更に言えば、そもそもギリシャショックもアメリカ国債デフォルト問題も、3年前のリーマンショックの後始末で、各国が協調して財政出動した結果でもあるわけで、巨大投資銀行の損失を財政で肩代わりしただけの話で、特に経済力の弱い国に信用不安が集中した負のレバレッジの結果です。丁度日本の金融危機でも、山一、拓銀、りそなと弱いところを物色して攻められたような金融カニバリズムと言い換えることも可能です。そんな中で「毎月1兆円もお金が入ってくるから大変だ!」と騒いでも相手にされませんね。空気読めない日本政府は円を売って顰蹙を買ったということです。しょーもなー-_-;。

とまぁしょーもない財務大臣の野田氏ですが、やっと今月中に辞任を明言した菅首相の後任選びとなる民主党代表選出馬の意向を示しました。ただし党内の8割が反対と言われる復興増税や消費税率アップを引っさげてどれだけ支持を集めるのでしょうか。民主党執行部が代表選を8月中に行うのは、9月には陸山会事件で3秘書の無罪判決が出そうなので、代表選を急がないと党員資格停止中の小沢氏が復活してしまうということのようです。この期に及んで国民無視のコップの中の嵐とは呆れます。

一応菅首相辞任の3条件と言われる内、2次補正は成立したものの、難題だった特例国債法案が成立の見通しとなりました。米国債ショックもあって、これ以上ゴネて政治空転を起こせば野党に逆風と気づいたのでしょう。歩み寄りの機運が出てきました。そうなると残るは再生エネルギー法案ですが、こちらは元々さして対立していたわけではないので、時間の問題のようですが、問題のある制度であることは以前にも指摘しました。

既に現行の余剰買い取り制度でも、山梨県北杜市で中国製パネルを敷き詰めた大規模ソーラー発電所がありますが、敷地の一部にひまわりを植えて、地目は農地としています。つまり発電所とするよりも固定資産税が安い上に、ハウスなど電力を消費する設備もないので、事実上発電量全量が余剰電力として買い取り対象です。しかも余剰買い取りの現行制度ではキロワット45円の高値ですが、全量買い取りではもっと下げられる予定です。

というわけで、農地転用の新トレンドとなる可能性があります。例えばコメ農家で減反に協力し休耕田にソーラーパネルを設置すれば、農家の個別所得保障を得ながらソーラー発電の売電でも収入が得られるわけです。ただし普及が進めば買い取り価格は下げられる事が予想されますので、事業としては早く大規模に立ち上げて先行者利益を得る必要があるわけですが、初期投資が済めばソーラーパネル自体はメンテナンスフリーで経年劣化も起きにくいわけで、参入のタイミングの早さが書部を分ける事になります。ソフトバンクの孫社長が入れ込むわけです。

つまり自治体を巻き込んで休耕田や耕作放棄地を大規模に確保できれば、ソーラーパネルを大量調達して事業化できるわけで、地代負担を抑え短期間でソーラーパネル設置の投資回収を行うビジネスモデルが想定されていると考えられます。逆に言えば農地を利用することで、農業の競争力向上が狙いだったはずの個別所得保障制度は、その趣旨を大きく変える可能性があります。極論すれば荒地が金のなる木に変じるわけで、下手すれば原発以上に税金漬けのバブル予備軍となる可能性があります。やはり問題のある制度です。

それでもエコだからいいじゃないかという見方も可能ですが、ソーラー発電は原理的に発電効率が低いのに投資が活発になるということは、非効率の拡大再生産となるわけで、カネ余りの日本では投資の歪みとなって国民生活を苦しめる事になります。とにかく毎月1兆円の資金がもたらされる国ですから、無駄がわかっていても止まらなくなる可能性が高いわけです。特に年間輻射量が最大化する夏至前後の時期が日本では雨季に当たるわけで、ソーラー発電所は原理的に公称出力を発揮できない存在でもあるわけです。ソーラー原理主義者たちは雨の日のことを語りたがりません。

基本中の基本ですが、化石燃料は過去の生物活動の結果として地層に蓄えられた低エントロピーのエネルギーで、運搬保管も含めて低コストで利用できますが、利用可能な資源量は有限で、温暖化の原因物質といわれるCO2を排出するなどの問題がありますが、太陽光はその逆で、日々太陽から地上に到達するから無尽蔵だけど高エントロピーで、電力として見ても出力が不安定で、需要とのマッチングが難しいと言われます。蓄電池で蓄えるにしても、電力ロスはありますし、また直流出力なので、商用周波数の系統電力網への接続には交直変換が必要ですが、そこでもロスが発生します。

発電効率の低さは、事業としてのメガソーラーを想定すると相当広大な土地が必要ですが、需要地である都市部への送電にもロスがあるわけです。送電ロスや電力変換ロスを防ぐ方法として直流送電を用いる事は検討に値しますし、特に東日本と西日本で周波数の異なる日本の場合、地域間の電力融通を進めるための基幹送電線に直流送電を用いるのは魅力的です。特に日本のように南北に細長い国土の国では送電距離も長くなり、送電ロスも馬鹿にならないわけで、原理的に送電ロスの少ない直流送電は魅力的です。

今回の東北の水力発電の豪雨による被災で電力不足が生じたときに、節電で電力が余り気味の東電が助けられないという妙なニュースが流れました。同じ50Hzでなぜ?と思われた方も多いでしょうけど、位相のズレがあれば電力変換は必要なんで、そのための設備が整っていないからこういうおかしなことが起きるのは、以前にも指摘したとおりです。東北に関しては、基幹直流送電線を沿岸部の海底に敷設することで、津波被災地の跡地利用としてのソーラーやバイオマスなどの小規模発電事業を後押しすることにもなりますし、居住エリアの高台移転の促進にもなり、防災復興にもプラスです。

実は日本の場合、JRの直流電化区間に注目すれば、三大都市圏をカバーする広大な直流送電網があることに気づかされます。しかも50Hzと60Hzの境界をカバーする形で存在しており、使わない手はありません。具体的にはき電線の容量アップとバッテリーの装備で、自身の需要ピークをカットしながら、余剰能力を電力託送に振り向けることで、例えば遠隔地のPPSの電力を需要家に届ける別ルートを形成するようなことができれば面白いですし、非電化ローカル線も電化する事で送電網に組み込めるとなれば、原発マネーで電化されたJR西日本の小浜線じゃないですが、電力自由化がローカル線の電化を後押しするなんてこともありえます。というわけで、怪しげな再生可能エネルギー法なんか置いといて、電力自由化に舵を切る方が重要です。

加えて問題を電力だけに留めずに、エネルギー政策tとして見る場合、化石燃料でも炭素含有量が少なく、欧米のシェールガスブームで価格低下が進む天然ガス利用は拡大されるべきですが、日本では従来中東の天然ガスをLNG化して輸入するというコストのかかる方法で調達してきました。天然ガスでも中東依存は調達先多様化に逆行しますし、価格も原油価格連動の相対取引で決めるため、シェールガスブームで値下がりした北米市場の天然ガス価格の3倍にもなる高値掴みとなっております。

解決策としてはロシアのサハリンの天然ガス利用が魅力的です。サハリンから東京まで2,000kmのガスパイプラインを敷設すれば、天然ガスの調達価格は下げられますし、また国土の5%しかない都市ガスエリアを拡大できれば、熱源としての電力利用を抑制できる上、水素含有量が多い天然ガスならば、家庭用燃料電池にも利用できて更に電力負担を軽減できます。東北の復興支援にもなりますし、原子力依存も下げられますし、極東ロシアの共同開発は北方領土問題解決の糸口にもなり得るなど効果は絶大ですが、議論すら行われません。

その一方で脱原発や核燃料サイクル見直しは、日本が合法的にプルトニウムを保有する根拠を失い、その気になれば核武装が可能な核保有準備国として抑止力を発揮できるという議論がありますが、いかにも役人が机上で考えた浅知恵ですし、平和ボケ保守好みの論点です。核武装の意思がないから福島の事故でも的確な対応ができなかったわけで、まだ国土への核攻撃を想定してスパイ衛星を飛ばしたりインターネットを開発したり、大気中の核物質検出を精緻に行うアメリカのような意志力も発揮できずに、幼稚な火遊びとなるわけです。

この弊害は例えば、IAEA加盟国の権利として原子力の平和利用を進めるとして核開発を既成事実化しているイランに絶好の口実を与えています。イランに言わせれば核開発は親米国家だけの特権なのかということです。北朝鮮の核開発も同様のコンテクストですが、既に2回の核実験を行ったことで、実は北朝鮮の核開発の現状はほぼ丸裸になりました。1回目は大気中に放出された核物質は検出されたものの、大量破壊兵器と言えるだけの威力は出せなかったのですが、2回目では威力は確認できたものの、逆に核物質の放出が確認できず、大量のTNT火薬を用いた偽装核実験の疑惑が持たれています。その後6カ国協議が止まったのは偶然ではなく、核の脅威は後退したと見られているわけです。

あとソーラーでは普及が進めば料金への転嫁を抑えるために買い取り価格が下げられますから、恩恵を受けるはずのパネルメーカーには価格競争が待ち受けるわけで、気がつけば中韓企業に市場を席巻されるという、薄型テレビの悲劇が再現され、国内雇用は冷えてデフレを助長するわけです。実際買い取り制度で先行するドイツでは、日本メーカーを尻目に世界シェアトップを獲得したQセルズ社が、中国のパネルメーカーに駆逐されてしまいました。

ま、元々パネルメーカーは自動制御の製造装置を導入する事で世界中どこでも生産が可能ですし、元々自動化プラントで雇用創出効果は低いわけですが、それすら国内に留めることはできないわけです。むしろパネル設置工事などの分野での雇用創出効果の方が大きいですが、買い取り制度から想定されるバブル状態では、継続的な雇用創出にはなりそうにもありません。かくして団塊リーダーの浅知恵で若年雇用が失われ、日本もギリシャやイギリスのように怒れる若者の国となるのでしょうか。

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Comments

エネルギの話で、出ては消えるを繰り返しているのが、メタンハイドレードです。
日本近海に無尽蔵にあるエネルギ源の話なんですが、
米国の石油利権の圧力がかかっているとか、
深海探査ロボットの技術を開発する能力が、原発と同じで、実は日本にはないということなのでしょうか。
東京にいると分かりにくいのですが、千葉をはじめとして、地方では地表に噴出するメタンを小規模ですが利用しているようです。
東京中心の情報ではこのような話は出てきませんね。
不思議です。

Posted by: Hybrid | Monday, August 15, 2011 at 11:02 PM

メタンハイドレードですが、地層の深いところにあるため、資源化は困難を伴います。

何しろ5,000m超の深海底を掘るわけですし、地表へ運ぶには氷塊部分からガスを分離する必要がありますが、深海底で効率よく可能かどうかは未知数です。

とはいえ欧米でブームのシェールガスにしても、頁岩と呼ばれる堆積岩を破砕してガスを分離する技術が開発されたように、未来永劫不可能というわけでもないでしょうけど、問題はコストです。ただでさえシェールガスブームで天然ガス価格は低下傾向ですから、技術開発にコストがかけられない現状では、即在に資源化は難しいと考えられます。

当面は米欧アジアそれぞれで相場形成されている天然ガスの市場を統合して、日本が安値で買えるようにするだけでもメリットがあります。というか市場価格をヘッジしてこなかった電力会社の大甘な資源調達方法を見直すだけでも違います。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, August 16, 2011 at 09:08 PM

メタンハイドレードやシェールガスは、温室効果ガスを排出するからと、これまでは一刀両断でした。

原発の議論でも、これだけ次世代に「使用済み核廃棄物」のつけを回すことになるとの議論は、あまり前面に出て来ません。

エネルギを一時的に蓄積するだけの「蓄電池」が持てはやされるなど、エネルギ問題の議論が変質していると思います。

この問題では、将来のコスト増要素も加味し現在に割り戻したコスト議論が必要ですよね。

Posted by: Hybrid | Thursday, August 18, 2011 at 08:07 PM

使用済み核燃料の無害化には10万年かかると言われております。とりあえず地層処分が考えられてますが、未来永劫管理し続けるのは非現実的ですから、実際は今後の技術開発に期待するというところです。結局太陽光やメタンハイドレードなどと同様に曖昧な話になってしまいます。

実はエネルギー問題はこの手の話が多く、正確な情報はなかなか出てきません。蓄電池の問題も、エネルギー問題というよりも、正確には電力の需給調整を巡るテクニカルな問題に過ぎないのはご指摘の通りです。

とはいえ結局将来のコストは予想しかできませんから、それをうまく反映させる方法論があるとすれば、競争的な市場環境を醸成して技術革新を動機付けるぐらいしかないでしょう。わからないものを決め打ちしてもリスクが高いわけで、多様性の中から有効な複数解を見出せるようにするしかないでしょう。

Posted by: 走ルンです | Thursday, August 18, 2011 at 10:34 PM

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