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Sunday, August 07, 2011

いいだといちだの一字違いで揉めたリニア

久々のリニアネタですが、コストダウン最優先のJR東海の姿勢だけははっきりしています。

asahi.com:リニア駅、飯田駅併設不採用/座光寺~高森-マイタウン長野
長野県以外の中間駅候補地が発表されたのが6月7日で、いずれも市町村名の公表で、具体的な位置には言及がありませんでしたが、同時に発表される予定だった長野県だけが発表を見送られた理由は、長野県自身の混乱があります。

元々伊那谷ルートでの建設を求めていた長野県ですが、飯田市を中心とした南信地域は、JR飯田線飯田駅併設を前提に、むしろ直進ルートに積極的だったのですが、6月の発表直前にJR東海の内部資料がすっぱ抜かれ、高森町の田園地帯が候補になっているという事で大騒ぎとなり、発表を見合わせざるを得なくなったものです。

已む無くJR東海は地元からのヒアリングを実施した上で、長野県の駅候補地を発表するに至ったのですが、飯田駅併設を求めてきた地元自治体は反発。県は前向きな姿勢ですが、飯田線下市田か元善光寺の徒歩圏内を示唆するも併設駅にはならないとか、想定ルートが飯田市の水源域にかかっているなど、新たな火種も明らかになるなど、すんなり進みそうにはありません。

逆に神奈川、山梨、岐阜の各県の駅候補地も、市街地を避けたルートとなったり、在来線との併設でなかったりする可能性もあるわけで、長野の協議の結果如何では、他県にも飛び火の可能性があります。例えば神奈川県では橋本ではなく相模線南橋本付近とか、山梨県も東花輪かどうかは不明ということで、そもそもJR東海にとっては、中間駅での集客は眼中になく、希望するなら事業費の増加分を負担せよというスタンスなんですね。強いて言えば南橋本に関しては、JR東海がリニア開業後に計画する湘南新駅が相模線倉見駅付近が候補となっている事から、相模線を介した連携は頭の片隅にはあるかもしれないけれど、沿線開発は勝手にやってよというスタンスのようですね。EX-ICで都区内区間をバッサリ切ったように、そもそもJR東日本との駅併設はやりたくないでしょうし^_^;。

というわけで、笑っちゃうぐらいの孤立主義を貫こうというのですから、これから前途多難でしょう。というか、飯田市の水源問題など、元々南アルプスルートにはこの手の未知の問題が多数存在しているわけで、今後環境アセスメントである程度は明らかになるでしょうけど、実際のところは着工してみなければわからないのが現実です。そういえば元々東名間5.1兆円としていた事業費は5.3兆円に膨らみ、2025年としていた開業年は2027年と2年帯びています。開業延期の理由は明白で、東海道新幹線の2009年度の利用が減少し、資金計画の変更を余儀なくされたためです。今後もこのような未知の問題で見直しを余儀なくされると見て間違いないでしょう。

以前にも指摘したように、東名阪の三大都市圏をつなぐビジネスラインの価値は、生産年齢人口減少の結果としてのデフレに現れており、時間を買うビジネス客の減少は避けられないところです。つまり多額の事業費を償還するために、現行の東海道新幹線に対して1.4倍程度を上限とする運賃料金の水準を考えているわけですが、これが成り立つためには、出張費会社持ちで時間を買う感覚のビジネス客が多数存在する事が前提ですが、その現役世代が減少している上に輪をかけて雇用の減少で就職難で、費用会社持ちの出張族が今後増える可能性は低いわけです。つまり速さが付加価値にならなくなる時代に向かうわけですから、かなり無謀な投資計画という他ありません。

加えて航空分野でのLCCの台頭は避けられないところで、関空拠点で香港投資ファンドと合弁でピーチ・アビエーションを発足させたANAが、マレーシアのエアアジアと合弁でエアアジアジャパンを設立し、成田発着の低採算路線の発着枠を活用する計画を明らかにし、経営再建中のJALも豪ジェットスターとの合弁によるLCC参入を検討中ということで、時間制約が少なく価格に敏感な非ビジネス客がそちらに流れるとすれば、リニアの集客はそう簡単ではないと考えられます。

ま、JR東海もその辺はある程度考えているようで、突然リニアを輸出すると言い出したのは、開発費を海外で稼ごうという事に外なりません。とはいえ日本ですら実用化されていないリニアを売り込むハンデキャップ戦は流石にきついところで、神奈川―山梨間の部分開業の意図もその辺にあるわけです。山梨リニアは結構大真面目な話ということですね。
少なくともフジヤマ大好きな外国人観光客は集められます^_^;。

とはいえ地下駅となる相模原市の新駅の建設費が2,200億円で、神奈川県も相模原市も負担できないとしており、また仮に負担するにしても東京都多摩地区にも恩恵があるということで負担を求めるとしていたり、また市街化された橋本駅への乗り入れではなく、小平市へ移転した職業訓練大学校跡地(橋本台)へ橋本駅ごと移転という話もあったりして、部分開業するにしてもハードルは高く、開業を急ぐなら山梨県上野原市牧野の実験線東端に仮駅を設置してバス連絡という中途半端な形になる可能性もあります。

あと整備新幹線のように国が財政支援する可能性ですが、政治決着を重ねて決めた整備新幹線の着工順位を変えれば、順番待ちをしている地域からクレームが来る事間違いなしで、特に原発再稼動問題を抱える福井県が新規着工お預け状態ですから、脱原発の議論とリンクして更にややこしい議論を呼び込むことになり、この国の政府の問題解決能力を超えてしまいます。多分自民公明政権に戻っても状況は変わらないでしょう。

原発がらみではもう一つ厄介な問題がありまして、新青森開業で当初の目標を達成した青森県ですが、震災で観光客が激減し、目論みが狂っております。そこへ脱原発の議論ですが、厄介なのは六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場とむつ市の核廃棄物中間貯蔵施設、それにJパワーの大間原発という核燃料サイクル三点セットの扱いです。

ご存じの通り六ヶ所村の核燃料再処理工場は試験稼動でトラブル続きで、度々竣工を遅らせているのですが、仮に竣工しても日本の原発から発生する使用済み核燃料の全量を処理する能力はなく、第二再処理工場を作るか中間貯蔵して時間稼ぎをするかしかないわけで、むつ市に中間貯蔵施設が建設中ですが、青森県はこれらの施設の建設受け入れの条件として、最終処分場を別の県に作る事、つまり再処理が動かずに事実上の核のゴミ捨て場にならない事を要求しております。原子力のバックエンドを引き受けるリスクからすれば当然の要求です。

とはいえ最終処分場は決まらず、また仮に再処理工場が稼動しても、プルサーマル用のMOX燃料を作る事はできないので、英仏の企業に委託しているわけですが、危険な洋上輸送をしなければならない上に、英BNFL社製のMOX燃料はデータ改ざん問題を引き起こしてますし、その後頻繁に組織改廃されたあげく、福島第一原発の事故を受けて、MOX燃料の生産受託を破棄しております。となるとプルサーマル専用で計画されている大間原発も動かせないということで、結果的に青森県は実態として核のゴミ捨て場になっているわけです。

このままの状態が続けば、いつかの時点で青森県は全国の原発に引き受けた使用済み核燃料を「お引取り願う」ことも視野に入りますが、そうなるとおおむね1週間で全国の原発が停止に追い込まれることになります。核燃料サイクルをしないで核燃料を使い捨てにすることを「ワンス・スルー」と呼びますが、青森のワンス・スルー・トラップがいつ発動されるかは予断を許しません。というわけで、原発は推進も廃止も一筋縄ではいきません。

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Comments

JR東海としてはリニアの途中駅は新富士や下手したら安中榛名クラスで充分だと考えているんですかね。外国人観光客もトンネルだらけのリニアではあまり期待できないと思います。

羽田も成田も需要が逼迫しているので、国内輸送はなるべく鉄道にシフトさせて遠近分離を図ったほうが良いと思うのですが、コスト面では航空の方が有利ですよね。交通機関の枠を超えて一体的に経営できるとバランスが保たれて良いんですけどね。

Posted by: yamanotesen | Sunday, August 07, 2011 at 02:47 PM

羽田も成田も滑走路の整備と管制システムの更新で発着枠自体は増えています。今後機材の中小型化で更に増えるので、当面の需要はカバーできると考えられます。逆にだからこそLCCが急速に具体化してるんですね。

鉄道と航空の役割分担ですが、遠近分離より輸送力の違いから需要の濃淡で考える方が合理的です。前のエントリーで分析したように、日本のいわゆる空洞化はかなり進んでおり、東名阪のビジネスラインとしての需要には期待できないと考えます。本文でも述べたように、速さが付加価値にならない時代に向かっているわけです。

Posted by: 走ルンです | Sunday, August 07, 2011 at 09:04 PM

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