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September 2011

Sunday, September 25, 2011

とうてつ廃止のカウントダウン

時間の問題だったと言えばそれまでですが、また一つローカル線廃止が確定的な情勢です。

十和田観光電鉄:存続の危機 来月上旬までに 3市町、財政支援に結論 - 毎日jp(毎日新聞)
十和田観光電鉄といえば東北のローカル私鉄でも老舗です。1920年に2ft6in(762mm)ゲージの十和田鉄道として開業し、当時勃興してきたバス事業者を買収しながら成長。戦後1951年には3ft6in(1,067mm)に改軌、電化して自社発注の電車で運行し、同年暮には十和田観光電鉄と社名変更し、以来鉄道を核としながら、広域にバス事業を展開する地方交通事業者として歩んできました。

1968年の十勝沖地震で被災し、多額の復興資金を得るべくバス大手の国際興業の傘下に入り、グループ力を生かして馬門温泉の観光開発などに尽力し、地域開発を進めてきましたし、鉄道線も自社発注車の老朽化対策で東急の中古車を導入したり、ATSを設置したり、三沢や十和田市にターミナルビルを建設しスーパーを兼営したりと、兼業部門を強化して経営安定を図るなど、一通りできる努力は続けてきたものの、地域の過疎化には抗いがたく、2007年には国際興業の支援の下、新会社に事業譲渡して旧会社を清算するという再建策も講じました。

それでも東北新幹線の新青森開業で在来線が三セクの青い森鉄道に分離されてJRとの連絡運輸が消滅し、全国区の観光ルートからも事実上消えた形となり、震災による東北全体の観光客減少の影響も受けており、今後も過疎化と少子化で、最大の顧客と言える通学生も減少傾向ということで、将来を見通せる材料はほぼ皆無という状況です。新幹線の開業がマイナスになったという意味では皮肉です。

皮肉なことにリストラで手放した十和田市のターミナルビルが所有者の意向で取り壊されることになり、仮駅舎新設が迫られる他、老朽化した七百変電所の設備更新も迫られ、総額7億2千万円の内国と県の補助金を除いた5億2千万円を沿線3市町に負担を求めたところ、いずれの自治体も財政難と議会の反対で動けず、十和田市のターミナルビル退去の期限となる来年3月末から逆算して、今月末には結論を出す必要に迫られているというのが現状です。ほぼ逆転存続の見込みなしといえます。

ここ10年でも乗客数は3割減で、通学生の減少で通学輸送もジリ貧で、既に公共性を云々するレベルではなくなってきているということも言えます。3市町の財政負担拒否を責めるわけにもいきません。通学生にはスクールバス運行で対応する事になるでしょうし、高齢化でマイカーが使えなくなる日に備えて鉄道を残すという考え方も、実際は介護タクシーの充実の方が当の高齢者にとっても使い勝手が良い可能性もあり、この辺は支援を拒否した3市町に課題として残される問題です。地域が判断した以上、外野からああだこうだと言うべき問題ではありません。

1つの可能性として、LRT化という手もあったのかもしれませんが、駅を作り変え車両を入れ替えと,、単なる存続の場合とは桁の違う多額の投資を要求されます。軽量車両で動力費や線路保存費などランニングコストの削減は可能ですが、3市町の人口合計117,625人(2010年国勢調査速報値)で、それだけの投資に耐えられるかは疑問です。

LRTでちょっと気になる動きがあります。津波で被災したJR気仙沼線のLRT化が検討されているということです。東北新幹線は徐行解除で23日から所定ダイヤに復旧したものの、在来線、特に津波被害に遭った沿岸部の各線は、復旧の見通しが立たない状況にあります。災害復旧なので国と地方が1/2と1/4負担しますが、防災復興で集落の高地移転や漁港の集約化が検討されている中で、単純復旧しても需要に合わない路線になる可能性もあるわけです。また潜在的には過疎化は今後も進むと予想されるだけに、集落移転に合わせて路線の見直しを行うとすれば、新線建設に匹敵する投資となるわけで、災害復旧の域を超える問題です。

その意味では集落移転に柔軟に対応したルート変更を考えるときに、国鉄規格より条件を下げ、場合によっては道路併設の併用軌道を用いるなどが可能なLRTは、確かに可能性を感じますし、富山ライトレールの先例もあり、JRがローカル線として復旧するより、JRも線路などの現物供出した上で、自治体やバス会社や金融機関その他の地元資本を集めた新規事業として国の補助金を入れるという方法はあり得ない話ではありません。

とはいえ人口40万人規模の県庁所在都市である富山と比べると、最大の気仙沼市でも7万人規模ですから、やはり投資に見合う効果があるのかどうかは厳しいところです。富山の場合、JR時代は毎時1本の過疎路線でしたが、LRT化で15分ヘッドの都市型交通機関に変身したわけですが、気仙沼線では望めない話です。復興事業として初期投資に国の補助金を入れるとしても、集落移転とセットで駅周辺に人口を集める事をセットで考える必要があります。当然事業総額も大きくなりますので、復興事業として国庫補助率を高めたとしても、地元負担は決して軽くないことは指摘しておきます。

というわけで、とうてつの廃止はおそらく避けられない情勢ですが、震災復興に絡んで新たな鉄道が誕生する可能性はあります。とはいえ実現しても将来の厳しい現実が待ち受けていることは間違いないところです。

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Monday, September 19, 2011

責任は誰が取るの?

JR北海道の中島社長の失踪事件が報じられ、スーパーおおぞら事故を受けた再発防止策は社長不在の状態で国交省へ提出されるという異例の事態となりました。当ブログではJR北海道の将来構想に重大な影響が出る事を危惧しましたが、中島社長の遺書のようなものが発見されるなど、後味の悪い展開です。

あと一部報道では、2015年開業予定の北海道新幹線新青森―新函館間の開業に向けて、函館―新函館間の在来線をJRから切り離すとした方針に地元が猛反発しており、その心労が重なったという見方もあります。地元にしてみれば、青函トンネル区間のJR貨物との共用区間では安全性から最高速140km/hに制限される上に、函館へのアクセス路線が、江差線共々切り離しとなるわけで、話が違うということがあるようですが、既に着工された路線でこんな問題で揉めているとすれば、事前調整がいい加減だったわけで、着工を迫った政治家や認可した国交省の責任も問われるところです。また事実ならば整備新幹線問題で遂に自殺者を出すという異常事態でもあります。

中島氏の人物評はとにかく寡黙で真面目ということで、典型的な鬱になりやすい人のようです。JR北海道幹部もこのところ疲れていたようだと証言しておりますが、弱音を口にできないトップの孤独は過酷です。元々分割民営化以来営業損益ベースで毎年度赤字で、経営安定基金の運用益で辛うじてカバーしてきたものの、景況の波で年度によっては最終赤字の年もあり、経営が楽ではなかったJR北海道です。

運輸省によるシミュレーションではJR東海以外は営業赤字必至と見られていただけに、それでも上出来と言える水準ですが、中島氏は経営を預かる立場から、北海道新幹線を経営安定から黒字転換への起爆剤としたい意向が強かったようです。今年九州新幹線の全線開業に沸き、株式上場まで一気に進めたいとするJR九州と同じ考え方ですが、九州新幹線が九州内の利用が見込め、実際に利用されているのに対し、対東京で航空と対峙しなければならない北海道新幹線はそれだけ条件が悪いですし、JR九州は鉄道事業こそ赤字基調ながら、活発な関連事業の展開で2004-2008年の全社営業利益の黒字化に成功しており、経営面では大差が付けられております。そのJR九州ですら、本業が赤字で上場基準を満たせるか、また経営安定基金の返上を求められる可能性もあり、順風満帆とはいかないだけに、JR北海道の経営を預かる立場の過酷さは半端ではありません。

函館―新函館間の在来線切り離しにしても、自治体出資の第三セクターにとっては、新幹線から地域の中核都市へのアクセスを独占できるわけで、ある意味三セクの支援にもなることですが、青函トンネル区間の140km/h制限は誤算だったといえます。札幌へ伸びる前提で渡島大野駅付近に予定される新函館駅設置を受け入れたら、在来線並みのスピードしか出せず、函館から見れば乗り換え駅が新青森から新函館に変わるだけで、特急料金とおそらく打ち切り合算となる三セク運賃の負担は増すけど、速さは実感できないというわけです。

加えて東北新幹線盛岡以北の整備新幹線区間でも260km/hの制限がかかりますから、FASTEC360の開発目標の360km/h運転が実現しても盛岡以北では恩恵が無いわけで、推進派が言う東京から札幌まで4時間切りは夢のまた夢ということです。航空からのシフトはせいぜい仙台あたりまででしょう。となるとそもそも需要のボリュームも少ないですし、航空需要のシフトで羽田の発着枠が空くという説明も成り立ちませんし、そもそも第4滑走路の供用開始と管制システムの見直しで羽田の発着枠は当面余裕が出ています。陸と空の長期計画のチグハグぶりで、仏TGVのように空港へ直接乗り入れるなどの発想も無く、航空との役割分担は元々考えられていない計画だったと評せざるを得ません。そんな中で経営の指揮を執るのに疲れたとすれば、実に痛ましいところです。

それでもトップの責任感の強さは、劣化の目立つ昨今の日本企業の中では褒められるべきかもしれません。むしろトップをそこまで追い込んだ有象無象にこそ問題があるわけです。事故問題にしても、JR北海道は結構軽微なミスで事故を起こしており、その改善は急務だったとしても、大都市圏で調味綱路線ネットワークを持つJR東日本や西日本、東海道新幹線に収益の8割を依存するJR東海とは条件が違いすぎるわけで、JR北海道に限らず三島会社の経営問題は早晩行き詰ると見られていました。上場3社の好調で国鉄改革は成功したような気分にさされられてはいたものの、末端を預かる三島会社のあり方はあまり真面目に考えられてこなかった嫌いがあります。

九州新幹線の好調と関連事業の伸びが特筆されるJR九州の場合、都市部の人口集積がはっきりしている地域特性に助けられているわけで、関連事業の中心は不動産賃貸と物販という都市型鉄道のモデルですが、同じことを北海道や四国でできるわけがないわけで、以前にも指摘したように、例えばJR四国ならば大鳴門橋の併用橋構造を利用した紀淡海峡ルートでの大阪進出など、地域特性を加味した経営資源の強化を真面目に考える必要があり、そのために現在の経営安定基金を地方版鉄建・運輸機構のような組織にして上下分離でインフラ強化を図るなどしたいところです。現状では相鉄都心プロジェクトのような収益性に勝る大都市鉄道でしか上下分離が利用できないということになりかねず、地域間格差を拡大する恐れがあります。

大都市圏を抱えるJR九州でも、例えば筑豊本線末端部の通称若松線と称する若松―折尾間は福北ゆたか線電化で取り残された大都市のローカル線ですが、これを洞海湾海底トンネルで戸畑地区と直結する構想が地元では検討されているものの、財源問題で動きません。これを自治体レベルで利用できる鉄建・運輸機構のような仕組みがあれば、具体化する可能性が高まります。JR九州の上場のネックになるのであれば、経営安定基金を地方に委ねて仕組み作りをする事に活用できればと思います。

とはいえ制度設計には難しさも付きまといます。例えば旧国鉄同様の特殊法人だった帝都高速度交通営団は、民営化の第1ステップとして特殊会社の東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)となりましたが、営団時代の旧国鉄と東京都の出資分を株式で割りあてて国が53%、都が47%の持ち分としたことで、国が株式売却をしたくても、都が同意しなければ前へ進まないという困った状況になっており、今回の震災復興で増税幅圧縮の切り札として売却が検討されているものの、実現可能性は限りなく0に近いといえます。この辺はメディアの報道でもバラつきがありますが、要するにニュースソースの違いで、政府、与党、国交省、東京都がめいめいの立場で語った内容を無批判に垂れ流す結果です。現時点で東京メトロ株の売却は、東京都の同意が得られていないので凍結されており、国交省は監督官庁として都が支配的株主となる事を避けたいけれど、都が言う事を聞いてくれないから触りたくないのですが、国民に増税回避をアピールしたい政府与党の政治家の思惑が一人歩きしている状況です。

とはいえ東京メトロは設置法を根拠とする国出資の特殊会社ですから、設置法を改正して、例えば東京都に額面で同額の優先株を交付して議決権を封じるなどの手はありますが、野党が足を引っ張る事間違いなしの状況ですから、実現可能性は低いといえます。とはいえメトロ株を高く売るためには、都の経営関与を抑える必要があり、その点は政府内であまりズレはなさそうです。ちなみに猪瀬副知事が事ある毎に言及する九段下の"バカの壁"ですが、これを作ったのが東京都だということには一切触れませんが、当ブログの大江戸怨念物語のエントリーのコメント欄で記したとおりです。

あと最後ですが、福島第一原発問題を少々。当ブログでは早い段階からチェルノブイリ級の大事故の可能性を指摘してきましたが、国会に提出された事故時マニュアルが黒く塗り潰されていたことが報じられており、まだ隠し事をしているのに呆れます。その一方で現時点でも環境中への放射性物質の漏出は止まらず、特に7,8月に都内などで放射性ヨウ素が検出されたことで、再臨界が起きた可能性まで出てきました。9ヵ月後に冷温停止どころか、将に今そこにある危機が続いている状況で、しかも現場作業員の確保もままならず、被ばく線量の上限を250ミリシーベルトまで上げても、作業員がいなくなることが危惧されています。そうなればもはや逃げ出すしかなくなるわけで、鉢呂前径産相が指摘した「死の街」が拡大します。そんな中で東電の経営・財務調査委員会が監視役として活動しております。

東電リストラ、5人の審判 危機回避に半歩  :日本経済新聞
申し訳ないけど、JR東海の葛西会長は東電の勝俣氏と旧知の仲で、自社の社員を新幹線に飛び込ませたり無人ディーゼル車を暴走させたりしていて、こんな人を監視役に据えれば、東電社員にとっての恐怖政治になりかねません。なにしろ今、東電のリストラは簡単です。社員の肩を叩いて「福島行く?」と囁けばいいんですから。それもこれも経営者の経営責任も株主責任も金融機関の貸し手責任も問わずに東電救済を決めた原子力賠償法の下ではこうなるわけで、本来責任を負うべき人に責任を負わせないと、とんでもないことになるわけです。本当に責任を負うべきは誰なのか? 考えさせられます。

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Sunday, September 11, 2011

支持率6割任期1年の首相職

野田政権発足で報道各社の世論調査では、6割前後とまずまずのスタートのようですが、鉢呂経産相の不適切発言で辞任ということで、早速痛手です。

しかしその内容が「放射能うつした」とかいう言った言わないレベルの話で、本人と記者クラブ記者だけの談話の中での話ということで、客観的にどういうやり取りがあったかという事実報道は皆無です。記者クラブの大政翼賛体質そのままの不気味なニュースです。え、「死の町」発言? 本当の事じゃないですか。

不気味ついでに言えば、昨年6月の菅政権発足当時の世論調査で支持率はやはり6割前後ですから、野田政権も余命1年で確定でしょう。所詮メディアの政局報道で捏造された政権は、メディアの身勝手で簡単に逆風にさらされます。鉢呂氏の発言に関する客観的事実関係は全く明らかにされない中で、本人が辞表を書くという流れは、何度も見てきた風景です。

元々野田首相自身、耐震偽装事件で追い込まれていた安倍政権当時の民主党国会対策委員長で、永田議員の偽メール事件問題でミソをつけた人でもあります。元々首相の器じゃないのに、ドジョウ宰相などとはやし立てて人気を演出しても、閣僚の発言の揚げ足取りはするわけで、どうしようもないこの国のメディアの病状を憂います。

鉢呂氏の発言は元々TPPに懐疑的だったり、原発再開に慎重だったりで、野田政権の中では目立っていたというのもありますし、親小沢派と見られていたなど、メディアに狙われる要素はいろいろあったわけです。閣内不一致はメディアや野党のツッコミどころになるわけで、そうやって煽れば新聞も売れるしスポンサーフィーも入るわけで、悪質な錬金術です。

先日の民主党代表選でも、馬渕澄夫氏が決選投票で野田氏へ投票の意向という誤報を流し、明らかに決選投票の結果に影響しましたが、法令上任意団体に過ぎない政党の代表選は公職選挙法の対象外ということで、違反には問われないのです。とはいえ実質上首相選びとなる与党代表選の結果を左右する可能性のある報道は、政局に手を突っ込んだと見られても仕方ありません。小沢代表時代の大連立工作問題のときは読売新聞主筆の暗躍が言われましたが、当時大連立に反対した面々が大連立に熱心という変な逆転現象も起きてます。政治の混乱はメディアの仕事を生み出すわけです。

というわけで、野田政権とメディアの蜜月は長くないと見られます。それでいて政治の混乱で震災復興が遅れるとこぼし、円高で大変だと騒いでみたり、デタラメにもほどがあります。なお、G7財務相中銀総裁会議でマルセイユにいた安住財務相は、円高の窮状を米ガイトナー財務長官に訴えて笑われています。以前指摘したとおりの展開です。

そんな中で復興増税の議論は進んでいて、おおむね13兆円規模で15-20年で償還して負担を減らすとしておりますが、通常の建設国債などで用いられる60年償還ルールを用いれば、単年度の負担は1兆円を切りますし、復興バブルを抑制する意味でも不要不急の公共事業は執行停止が望ましいわけで、これぐらいの財源は増税なしで出せなければおかしいということは、度々指摘してまいりました。

とはいえさすがに増税一辺倒では党内もまとまらないし、国民にも不人気というわけで、政府保有株の売却が議論されてます。JT株の政府保有分50.1%を1/3相当に圧縮して6,000億円、郵政見直し法に基づく政府保有株の2/3相当で6兆円超、東京メトロ株の政府保有分売却で2,000億円などで、NTT株は対象になっていませんが、総務省が政府保有株を根拠に他社の新規参入を促す政策を採ってきたこともあり、売却は現実的でないということのようです。

郵政見直し法に関しては、自民党は猛反対してますが、公明党は増税に慎重な分、適切な修正協議を条件に賛成に回る可能性があります。ただしその場合、連立パートナーの国民新党との関係が微妙になる可能性もあり、すんなり行くかどうかはわかりませんが、規模が大きく、復興財源のほぼ半分を賄える規模です。

東京メトロ株の売却は、都営地下鉄との経営統合が半ばということで、早速東京都が「約束が違う」とツッコミを入れております。以前週刊東洋経済で東京メトロ株の時価総額を6,000億円と見積もりましたが、この半分とすれば3,000億円となるはずですが、東京都が保有株を手放さなければ、この程度にしか評価されないという意味なのか、都の株式保有継続を前提に国の保有分を残すという意味なのかは不明ですが、公営交通が民間事業者と覇権争いをするのは本末転倒です。例えば共通運賃制の導入など自治体として民間事業者の力を引き出す方向で努力して欲しいですし、国も交通基本法の制定を打ち出しながら実現できていないなど、地域交通のあり方をきちんと整理できていない現状を改める必要があります。この論点は津波被害を受けたJRや三陸鉄道などの復旧でも言えることで、復興で予算を使うことよりも、構造的な阻害要因を取り除く事こそが政治の仕事です。

という中で、メディアに使い捨てられる新政権にそれが可能とはとても思えず、ユーツな思いばかりがこみ上げます。

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Saturday, September 03, 2011

アキカンの後始末

やっと終わったアキカン政権ですが、昨年6月に発足した当時から、問題点を指摘してきた当ブログです。参院選前の段階でこんなエントリーをアップしておりますが、悲しいかな当時の見解が見事に的中している事に驚愕します。

エントリーで取り上げた項目に沿って見ていきます。

>環境・エネルギー
1日付日本経済新聞のトップ記事で、仙台市にエコタウンを作る構想が取り上げられました。仙台市と企業20社の共同事業として、津波で被災した農地にソーラーパネルを設置し、その電力で野菜工場を運営しようというもので、結構な構想なんですが、震災復興特区制度の活用や、3次補正予算の獲得を睨んだもので、ややキナ臭さのある計画です。逆に言えば震災復興をネタにしないとできないというところに、産業構造の硬直化した日本の現状が透けて見えます。再生エネルギー法の問題点は既に指摘しておりますので繰り返しませんが、この構想では特区申請して農地を保全する意図も含まれますので、大規模ソーラー発電を農地のまま実現して、固定資産税負担を抑制することになると考えられます。震災が新たな利権を生み出す構図という意味で、全面的にウェルカムとは言い難いところです。

>健康大国
結局何も進展していません。

>アジア経済
3.11の福島の原発事故と中国の高速鉄道特許申請中国高速鉄道の事故で冷や水を浴びせられました。「インフラ海外展開」も、製品輸出の延長線上で考えていては失敗します。と述べたとおりです。また後にTPP加盟問題が持ち上がりましたが、結局政府内をまとめられず、協議に参加する事はできておりません。官僚が操縦する政権では実現不可能です。

>観光・地域活性化
PFI見直しは実現し、震災復興のために被災地自治体への行政手続き面の支援など、現実的に動き始めておりますが、成果が現れるまでは時間がかかりそうです。国も自治体も財政が逼迫する中、民間資金活用(PFI)が今後重要になるだけに、震災復興事業を梃子に、制度の活用が進むならば良いですし、地方土建業による観光業や福祉施設運営への参入など、地域の産業構造に変革をもたらすには時間が必要です。

>雇用・人材
何も有効な対策を9打ち出せておりません。寄付金税制も進展なしです。いかがわしい議論は進めようがないんですね。

>金融
中小企業モラトリアム法も、結局支援の期限切れと共に倒産にIたるケースがほとんどで、無意味な延命だったことになります。大手メーカーの下請けならば、必要に応じて親企業に支援させれば良いですし、適度な整理淘汰がなければ、生き残り企業の残存者利益すら奪うことになり、産業構造の転換は進みません。

そして野田新首相の公約?は増税ですが、一方で安住新財務相は、成長戦略としてインセンティブ重視として法人減税にも意欲を見せますが、法人減税の議論は破綻しております。よく引き合いに出されるスウェーデンの法人減税は、あくまでも政策減税の廃止による課税ベースの拡大で実現したもので、政策減税の恩恵を受けてきた古参の大手企業の特権を剥奪して、新興企業や外資系企業の参入を容易にしたものです。その結果課税を逃れていたゾンビ企業が淘汰されて産業構造が転換し、高い経済成長を実現したもので、法人減税そのものが成長に寄与したものではありません。スウェーデンではリーマンショックによるGMの再建で切り捨てられたサーブ自動車を救わず、結果的にドイツのオペル共々イタリアのフィアットに買い取られましたが、市場に淘汰された企業は救済しないというスタンスを徹底させております。

元々法人税は利益に課税されるもので、法人税を減税しても企業の内部留保を増やす意味しかない事は、上記エントリーでも指摘しました。法人税率を下げるだけでは成長には寄与しないわけで、スウェーデンのように既得権益を引き剥がすから構造改革になるわけです。しかし実際はたった5%の減税財源の一部を欠損繰り越しの制限など政策減税の見直しで生み出したことさえ、実質減税でないとして財界から反対の大合唱が起き、無知なメディアはそれを後押ししました。この辺も悲しいかな予想通りの展開でした。

というわけで、消費税を上げて法人税を下げる議論は成り立たないわけです。日本と同様に法人減税を求められているアメリカですが、ブッシュ政権時代に論点整理が行われて、その中で法人付加価値税という注目される概念を明らかにしました。これは人件費を含む企業の生み出した付加価値に課税するもので、課税ベースを最大にすることで税率を下げる効果が大きいと同時に、欧州型付加価値税のように、仕入先企業に課税された分はインボイスで控除される仕組みとなり、透明性も高まります。加えて所得税や消費税も付加価値型課税とすることで、課税構造がシンプルになり、課税コストが削減され他国との租税協定も組み易くなるなど多くのメリットがあります。後を引き継いだオバマ政権で法人減税についてどのような検討がされているかはわかりませんが、TPP交渉でも租税問題は取り上げられているはずですから、それと整合的な内容になると考えられます。

一方で消費税で曲がりなりにも付加価値課税もどきの制度を持つ日本ですが、零細企業の手続き簡素化という意味不明のロジックでインボイス方式は採用されず、いわゆる益税問題を抱える似て非なる付加価値課税となっております。インボイスは税務署に届け出た課税事業者しか発行できませんから、インボイスが控除の証拠として一種金券的な働きをすることで、非課税事業者が取引から排除され課税逃れが防げることで、透明性が確立し課税コストが下がるのであって、日本の制度では非課税事業者が排除されないばかりか、見なし課税という制度で取引の連鎖の中に非課税事業者がいても課税仕入れと見なして仕入額の5/105を控除できます。これを悪用して課税事業者に非課税事業者並みの仕入れ価格を強要することもできますから、サプライチェーンの頂点にいる大手製造業にとってはかなり大きな節約となります。それでいて輸出戻し税制度により、輸出時点で消費税分は輸出企業に戻されますから、大手メーカーは仕入先にディスカウントさせた果実を国から戻し税の形で二重に受け取っているのです。零細事業者の免除どころじゃない益税問題ですが、財界が殊のほか消費税率アップに熱心な理由もわかります。元々域内で面倒な操作が不要な欧州型付加価値税ならば、同様の制度を持つ国同士では輸出戻し税は不要となり、制度が簡素化されます。ということは、仮に日本がTPP加盟を希望したとしても、租税問題がネックとなる可能性があるという笑えない状況もありうるわけです(笑)。

もう1つの論点として、歳出の見直しはどうなっているのかという点もあります。既に2012年度予算の概算要求基準がメディアに取り上げられておりますが、菅政権末期のメディア露出は明らかに財務官僚のリークによるものです。それによると社会保障を除く一般財源は一律10%削減の一方、震災復興関連予算は別枠で上限を設けないというのです。これで何が起きるかといえば、2010年度本予算でカットされた農業基盤整備事業がTPP対策で補正予算で復活したように、無駄な歳出が増えるだけです。財務省は既に増税シフトの歳出増を織り込んでいるわけです。つまり震災復興の理屈付けさえできれば何でもありということです。

そのせいか震災で寸断されたJRと三陸鉄道の三陸沿岸部の鉄道の復興と、復興事業に名を借りた直轄事業としての三陸道建設が既成事実化しておりますが、高台移転や漁港集約などの復興の青写真次第で流動的なはずですし、特に鉄道に関しては、地元バス事業者にとっては鉄道の空白で空前の好業績となっております。特に福島交通と共に経営破たんしてみちのくホールディングス傘下にある岩手県北自動車にとっては、思わぬ巡り合わせですが、2014年に予定される三陸鉄道の運行再開後はまた零細な過疎バス事業者に逆戻りすることになりますが、それで良いのかについて地元でコンセンサスはあるのかは疑問です。特に集落移転を伴う場合、線路や駅も移転となるでしょうけど、ただでさえ複雑な地形の現地で、整合的な復興計画が実行されるのか、疑問を拭えません。

例えばJR北海道が開発を進めるDMVの利用ということも考える価値があります。DMVならば細切れに復旧した線路を道路でつないで輸送ルートを確保できますし、その中でバス事業者との連携の可能性が開ければ、最終的に普通鉄道としての完全復旧に至るとしても、地域の交通網は使い勝手の良いものになると考えられます。このあたりは感傷に囚われずに冷静な意思決定をしてほしいところです。

交通インフラに関しては、2009年に神戸電鉄粟生線の対策協議会を発足させ、2011年度中に存廃を判断するとしており、人口減少の影響で大都市圏ですら末端は厳しい状況です。まして過疎地のローカル線を何も考えずに復興しても、数年後に存廃問題が起こるだけというのが現実です。ところが復興予算をつけても役人は誰も責任を取りません。増税ありきの議論ではこうなります。

神鉄粟生線の場合、JR加古川線の電化で利便性を高めたことと、元々神姫バスの西脇急行線が第二神明―阪神高速経由で三宮に直結していて、更に阪神高速経由で座席定員製の恵比寿快速線の開設で乗客シフトが起きるなどしており、廃止已む無しの状況にあります。仮に廃止されれば、既に三木鉄道が廃止された三木市は鉄道不在となる可能性もありますが、山陽道と中国道も通っており、同じ阪急阪神HD傘下の神姫バスに地域交通を一元化する可能性は否定できないところですが、だからといって神鉄粟生線を補助金で延命する事は無意味です。それこそ高速道路を無料化してくれた方がマシということにもなります。

というわけで、増税の議論がどうなるか、国民として注視していきたい所です。

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