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Sunday, September 25, 2011

とうてつ廃止のカウントダウン

時間の問題だったと言えばそれまでですが、また一つローカル線廃止が確定的な情勢です。

十和田観光電鉄:存続の危機 来月上旬までに 3市町、財政支援に結論 - 毎日jp(毎日新聞)
十和田観光電鉄といえば東北のローカル私鉄でも老舗です。1920年に2ft6in(762mm)ゲージの十和田鉄道として開業し、当時勃興してきたバス事業者を買収しながら成長。戦後1951年には3ft6in(1,067mm)に改軌、電化して自社発注の電車で運行し、同年暮には十和田観光電鉄と社名変更し、以来鉄道を核としながら、広域にバス事業を展開する地方交通事業者として歩んできました。

1968年の十勝沖地震で被災し、多額の復興資金を得るべくバス大手の国際興業の傘下に入り、グループ力を生かして馬門温泉の観光開発などに尽力し、地域開発を進めてきましたし、鉄道線も自社発注車の老朽化対策で東急の中古車を導入したり、ATSを設置したり、三沢や十和田市にターミナルビルを建設しスーパーを兼営したりと、兼業部門を強化して経営安定を図るなど、一通りできる努力は続けてきたものの、地域の過疎化には抗いがたく、2007年には国際興業の支援の下、新会社に事業譲渡して旧会社を清算するという再建策も講じました。

それでも東北新幹線の新青森開業で在来線が三セクの青い森鉄道に分離されてJRとの連絡運輸が消滅し、全国区の観光ルートからも事実上消えた形となり、震災による東北全体の観光客減少の影響も受けており、今後も過疎化と少子化で、最大の顧客と言える通学生も減少傾向ということで、将来を見通せる材料はほぼ皆無という状況です。新幹線の開業がマイナスになったという意味では皮肉です。

皮肉なことにリストラで手放した十和田市のターミナルビルが所有者の意向で取り壊されることになり、仮駅舎新設が迫られる他、老朽化した七百変電所の設備更新も迫られ、総額7億2千万円の内国と県の補助金を除いた5億2千万円を沿線3市町に負担を求めたところ、いずれの自治体も財政難と議会の反対で動けず、十和田市のターミナルビル退去の期限となる来年3月末から逆算して、今月末には結論を出す必要に迫られているというのが現状です。ほぼ逆転存続の見込みなしといえます。

ここ10年でも乗客数は3割減で、通学生の減少で通学輸送もジリ貧で、既に公共性を云々するレベルではなくなってきているということも言えます。3市町の財政負担拒否を責めるわけにもいきません。通学生にはスクールバス運行で対応する事になるでしょうし、高齢化でマイカーが使えなくなる日に備えて鉄道を残すという考え方も、実際は介護タクシーの充実の方が当の高齢者にとっても使い勝手が良い可能性もあり、この辺は支援を拒否した3市町に課題として残される問題です。地域が判断した以上、外野からああだこうだと言うべき問題ではありません。

1つの可能性として、LRT化という手もあったのかもしれませんが、駅を作り変え車両を入れ替えと,、単なる存続の場合とは桁の違う多額の投資を要求されます。軽量車両で動力費や線路保存費などランニングコストの削減は可能ですが、3市町の人口合計117,625人(2010年国勢調査速報値)で、それだけの投資に耐えられるかは疑問です。

LRTでちょっと気になる動きがあります。津波で被災したJR気仙沼線のLRT化が検討されているということです。東北新幹線は徐行解除で23日から所定ダイヤに復旧したものの、在来線、特に津波被害に遭った沿岸部の各線は、復旧の見通しが立たない状況にあります。災害復旧なので国と地方が1/2と1/4負担しますが、防災復興で集落の高地移転や漁港の集約化が検討されている中で、単純復旧しても需要に合わない路線になる可能性もあるわけです。また潜在的には過疎化は今後も進むと予想されるだけに、集落移転に合わせて路線の見直しを行うとすれば、新線建設に匹敵する投資となるわけで、災害復旧の域を超える問題です。

その意味では集落移転に柔軟に対応したルート変更を考えるときに、国鉄規格より条件を下げ、場合によっては道路併設の併用軌道を用いるなどが可能なLRTは、確かに可能性を感じますし、富山ライトレールの先例もあり、JRがローカル線として復旧するより、JRも線路などの現物供出した上で、自治体やバス会社や金融機関その他の地元資本を集めた新規事業として国の補助金を入れるという方法はあり得ない話ではありません。

とはいえ人口40万人規模の県庁所在都市である富山と比べると、最大の気仙沼市でも7万人規模ですから、やはり投資に見合う効果があるのかどうかは厳しいところです。富山の場合、JR時代は毎時1本の過疎路線でしたが、LRT化で15分ヘッドの都市型交通機関に変身したわけですが、気仙沼線では望めない話です。復興事業として初期投資に国の補助金を入れるとしても、集落移転とセットで駅周辺に人口を集める事をセットで考える必要があります。当然事業総額も大きくなりますので、復興事業として国庫補助率を高めたとしても、地元負担は決して軽くないことは指摘しておきます。

というわけで、とうてつの廃止はおそらく避けられない情勢ですが、震災復興に絡んで新たな鉄道が誕生する可能性はあります。とはいえ実現しても将来の厳しい現実が待ち受けていることは間違いないところです。

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Comments

福島交通飯坂線も、少し前にこのままでは維持が困難との見解を出しておりました。

東北に限らないでしょうが田舎であればあるだけ生活に必要な買い物や各種施設群は車でいくことが前提になってしまっていることもあり、JR以外の小さな鉄道達は経営を成立させる算段すら立っていないのが現状です。

東北単独で見た場合に多きいファクターとしては全国に先駆けて(全国平均値よりも早く)少子高齢化が進行していることではないでしょうか。

今時点で東北に点在する鉄道会社たちの意見をざっと見てみると上下分離を唱える会社が多いようですが…厳しいところですね。
仙台空港鉄道は上下分離することが決まりました。ただ、政令指定都市中心に比較的近い鉄道ですしアクセス鉄道ですから半ば例外に近い扱いを受けている感じです。
ただでさえ自治体、鉄道会社ともに余裕がなかったところに、今回の震災で財務が痛みすぎました。

Posted by: 幻月 | Monday, September 26, 2011 at 10:58 PM

福島交通は投資ファンドのみちのくホールディングス傘下で経営再建中でしたね。同ファンドは岩手県北自動車の再建も手がけており、震災で被災したバスの過不足を融通したりして、思わぬ効果もあったようですが、それだけ東北地域全体が苦しいことの裏返しでもあります。

苦しいのは並行在来線三セクのIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道も同様で、旅客輸送だけを見れば地方交通線レベルで、JR貨物の線路使用量支払いに国庫補助がされていてやっと経営が成り立つレベルで、ローカル私鉄に救いの手を差し伸べる余裕はありません。

同時にその貨物問題ゆえに複線電化の高規格な線路施設を維持しなければならず、固定費が高くなるのですから、東北新幹線の盛岡以北延伸が青森県にもたらしたものを正味で見てプラスだったと評価できるのかという疑問も沸きますね。

上下分離も地元自治体が受け皿として資金を出す必要があるわけですから、有望株の仙台空港鉄道はやはり例外ということですね。株式の減資のようなゼロ円査定のような形で公的保有ができる制度が必要かもしれません。元々収益を生んでいないインフラなんですから。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, September 27, 2011 at 12:17 AM

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