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October 2011

Sunday, October 30, 2011

ローカル線の残し方考

震災復興が遅々として進まない中、こんなニュースがあります。

都道府県:基金2兆円積み残し 緊急経済対策向け--検査院調査 - 毎日jp(毎日新聞
リーマンショックを受けて08年、09年の補正予算で都道府県に交付された基金のうち未消化分が2兆円以上にのぼるというものです。当時世界規模で財政出動が要請され、それを受けての緊急経済対策として策定された補正予算で、基金として交付することで、使途を限定せず年度をまたがる事業も行えるようにしたという触れ込みでしたが、実際は未消化のままブタ積みされていたものです。

会計検査院の検査で指摘され、国庫への返納が求められております。リーマン後、震災前まで順調に回復してきたわけですから、未消化分は震災復興にまわすべきである事は言を俟たないところですが、政府内からは復興増税の理由がなくなると危機感を募らせているとかで、どっち向いているのやら。歳出改革を伴わない増税は国民として納得できないところです。それに留まらず震災復興でも同様の手法が使われますから、せっかくの予算が有効活用されないままブタ積みされる愚を繰り返す恐れがあります。それでも増税に舵を切る政府は国賊と言うべきでしょう。

あと3次補正には円高対策も盛り込まれますが、繰り返しますが、日本円は買われる理由があるので、円高対策は無意味です。またメディアはあたかも円高をユーロ危機のせいにするような報道姿勢ですが、ユーロ危機で確かにユーロ/ドル相場はドル高方向に動いたものの、それ以上に円が上がっただけの話でして、低金利通貨によるキャリートレードの巻き戻しがドルより円に偏っていただけの話です。

むしろタイの洪水で、多数の日本企業が製造拠点をタイに移して既に大規模な集積を形成していた事実が広く知られました。今さら空洞化危機を煽って国の支援を求めようとは財界も虫が良すぎます。それよりも震災で発覚したサプライチェーン危機をタイで繰り返す愚は笑うに笑えないところ。海外進出してまで元請け下請け関係のまま日本企業だけのコロニーを作ってしまうから愚かです。これがホントの愚弄罵屡企業-_-;。

というわけで、震災復興の遅れがさまざまな奇妙な出来事を引き起こしております。一番驚くのは仙台地区の百貨店売上の好調ぶりでして、高級品が売れているということで奇妙なバブル状態が見られます。鉄道も仙台近郊の復旧が先行する形であることは前の記事で指摘しましたが、がれきの仮置き場や工事用の土採り場や、高台の地盤の良い住宅地など、地価の上昇まで見られ、仙台近郊だけ見れば復興が確実に進んでいる状況と言えます。

一方で三陸海岸は漁船が流され漁港が被災し水産加工工場が破壊され、海底の隆起や土砂やがれきで海底地形が変わったこともあり、漁業の復興は尚時間がかかる状況にあります。そんな中で北海道の道東地区が漁獲の大幅増で賑わっていますが、言うまでもなく三陸の漁港に陸揚げできない海産物が集まっている結果です。多分三陸一帯の漁業はかなり衰退せざるを得ないでしょう。ただし引いて見れば元々漁船が多過ぎて乱獲傾向にあった漁業が適正化されたとも見ることができるわけで、このあたりは復興計画でも考慮すべき問題です。

加えて福島の原発事故で大量放出された放射性物質の処理を強いられる福島の復興も遅れを余儀なくされる中、仙台の札幌化とも言うべき一極集中と過疎化と他地域とのの隔離感から、東北の北海道化を指摘することができます。そんな中でこのニュースです。

JR東日本の純利益27%減、運輸業が不振 4~9月  :日本経済新聞
9月23日に所定ダイヤに復帰した東北新幹線が、復興支援ビジネスに寄与していることは間違いないでしょうが、逆に観光客は減っていて、新青森開業で観光ルートから外れた十和田観光電鉄を廃止に追い込んだ現実も忘れてはならないでしょう。

というわけで、度々メディアにも取り上げられている三陸鉄道の復旧はやはりかなりの困難が伴う事を覚悟する必要があります。3次補正で復興資金が盛り込まれる予定ですが、ただでさえ17年間赤字決算を繰り返してきた中で、国の支援を得る以上、黒字転換して事業の継続性を図るのは容易ではありません。AMAZONのリンクで紹介した原武史氏の本では、ローカル線を無視して新幹線復活を急いだとしてJR東日本を批判し、可能なところからいち早く復旧した三陸鉄道を持ち上げておりますが、現実が見えていないとしか言いようがありません。

そういうわけで、精神論で三陸鉄道が蘇るなんてあり得ない話ですが、問題は三陸鉄道に留まらず、JRの被災各線の復旧も、地域の衰退を前提条件とせざるを得ない現状で、それでも鉄道を残すにはどうすれば良いかを考えてみたいと思います。

三陸鉄道の場合は既に指摘したとおりインフラ部である路盤の土地やトンネル、盛土、高架橋などを県が保有する公設民営形の上下分離が既に行われており、インフラの復旧はある意味道路の復旧と同様の考え方も可能でしょうけど、よく考えると、公的に保有されたインフラを三陸鉄道という事業者が占有する形態ですから、公的負担で復活させることの是非は単純ではありません。少し現実を離れて、例えば同じインフラを使って三陸鉄道よりも低コストで良いサービスを実現できるという事業者が現れたとすれば、三陸鉄道の復活に拘る必要はないわけです。ま、現実的に引き受ける事業者は現れないでしょうけど。

しかし鉄道事業は規模の経済が働く事業でもあるわけで、例えば運賃も含めて三鉄と同じ条件でJR東日本が運行を請け負うといったことが可能ならば、より事業の継続性は高まるわけですが、現状ではJR東日本は全業黒字で認可運賃の水準も抑えられていることもあり、規模の経済を働かせる事ができません。

ならば逆転の発想で、JRの被災ローカル線を公的に復旧し三鉄に運行委託する形の上下分離形態は可能でしょうか。三鉄は労せずして事業規模を拡大できて、JR本体より高い認可運賃で営業でき、自社路線とのシナジーも働かせることができるとすれば、規模の経済を働かせる可能性があるわけですね。もちろんJRとして復旧する場合に比べ運賃水準は上がりますが、自治体出資の三鉄に対してならば、定期券購入補助などの対応も採り易くなるわけです。同様の手法を使えば、十鉄と青い森鉄道を一体化するなどの知恵もあり得たかもしれません。

これは結局EUの鉄道政策の中心にあるオープンアクセスの日本版という説明も可能です。鉄道事業法の改正は必要ですが、例えば鉄道会社が保有する線路を利用し、車両はリースで調達し、乗務員は鉄道事業者からの派遣を受けるとかしながら、地域の実情に合った鉄道輸送サービスを地域のバス事業者その他の第三者が提案し実行できる仕組みを導入する事が考えられます。英国鉄道のフランチャイズ制のイメージです。

別の視点ですが、大手私鉄で既にこのような手法を実行したところがあります。いわずと知れた近鉄による養老鉄道と伊賀鉄道の分離です。実は疑惑含みの処理でして、バブル後の不動産減損処理のための課税特例で棚卸資産となる販売用不動産限定で含み益と含み損の相殺処理が認められ、東武鉄道と在阪5社が実行しましたが、元々取得価格が低い鉄道用地の含み益が用いられた可能性があり、当然違反ですが、通常はバレないところ、鉄道資産の一部切り出しを迫られた中で、線路を近鉄が保有したままの子会社分離という苦肉の策がとられた可能性を指摘いたしました。つまり資産切り離しができない事情があった可能性があるということです。逆に言えば鉄道資産そのものの合法な減損処理が可能ならば、こんなまどろっこしい事は不要だったかもしれません。

実はJRに対しては整備新幹線の並行在来線切り離しという形で、事実上の減損処理を認めている形ですが、それは結果的に地方の負担で減損処理されることでもあり、理屈としては欲しがってた新幹線ができるんだから応分の負担をせよということなんでしょう。それやこれやを踏まえて、鉄道資産の減損処理を前提としたオープンアクセスの導入というのは、実現可能性はそれなりにあると思います。そもそも赤字路線は時価評価すれば値がつかないはずで、破綻企業の一時国有化による株式の減資を考えれば、それほど突飛な話でもないと思います。

実は北海道新幹線絡みで並行在来線となる江差線五稜郭―木古内間にバス化の話が浮上しているという状況があります。予想されたことではありますが、並行在来線三セクの経営環境があまりにも厳しく、事業計画が立てられない状況にあるわけです。下手すれば北海道経済の生命線でもある鉄道貨物輸送を分断しかねない問題ですが、背に腹は代えられないという状況です。

貨物がらみではJR貨物の石北本線からの撤退もアナウンスされてます。理由は機関車(DD51)の老朽化ということで、軸重制限でDF200が入線できず、さりとて軌道強化してまで存続させるのも不可能な中での話です。これは震災による燃料不足解消で磐越西線に臨時貨物を走らせるような臨機応変な対応が今後できなくなる事を意味します。例えば小単位貨物輸送で動力分散タイプのリージョナルレールカーゴ車の開発といったことは、JR貨物単独では難しいでしょうけど、旅客会社やトラック事業者と共同でなら可能性が拓けるかもしれません。こうして新しい発想のプレーヤーの参入を促す形で、地方のローカル線や鉄道貨物が活性化されるという形を考えないと、末端の鉄道の壊死は続くということになりかねません。

あと特筆すべきは広島の可部線一部復活の話題ですが、これも鉄道資産の減損処理が可能だったならば、一旦廃止したものを復活させるような面倒を省く事ができた可能性があります。廃止路線の復活は椿事ですが、面白いのは過去に遡ると廃止路線の復活に面白い事例があります。1912年銚子―犬吠間を開業した銚子遊覧鉄道が、赤字で1917年に廃止、会社解散の憂き目に遭いますが、その後紆余曲折を経て鉄道用地などの資産を流用して銚子鉄道が開業、後に電化されて銚子電気鉄道となり現在に至ります。銚電はその後も何度も危機的状況を迎えながら生き延び、現在に至っております。ある意味銚電はバス会社や工務店の傘下に入ったり、NHK朝ドラでブームになったり、濡れ煎餅のネット販売で保守費用を調達したりと、鉄道会社らしからぬところがありますね。

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Saturday, October 15, 2011

えー下界に捧ぐ

最近ニュースにもならない群馬県の八ッ場ダム問題ですが、野田内閣の国交相に元河川局出身の前田武志議員の就任で、事実上再開の道筋が作られました。無駄な公共事業の象徴として、政権交代後「コンクリートから人へ」のスローガンの下、中止とされたはずですが、ここでもまた国民は裏切られます。

総事業費4,600億円の大事業とはいえ、ダム本体は808億円に過ぎず、用地費・補償費の1,236億円が費目tとしては最大な上、既に一部地権者は移転に同意して補償を受けており、また道路や鉄道の付け替えの補償工事費1,230億円は付帯工事として粛々と執行されており、既に既成事実が積み上げられてしまっています。本当に中止するなら、中止に伴う原状回復費などの交渉を自治体と進めるべきだったはずですが、そちらは手付かずで、むしろ「民主党政権でダム中止ならば補償金がもらえなくなる」という理屈から、補償交渉で態度を決めていなかった対象世帯の地権者もなだれを打って補償を受ける始末です。

補償対象は水没世帯340に、道路付け替え等に絡む移転世帯を含めると470世帯ですから、1世帯3億円の補償という破格ぶりで、その補償長者ぶりから、水没を免れた地権者からはうらやむ声まで出る始末。それが国民が払った税金から出ているわけです。こういったデタラメな税の使い道を見直すはずの民主党政権で工事再開が行われ、税収が足りないと増税まで決められるのですから、庶民派宰相が聞いて呆れます。

しかも移転代替地の造成がまたべらぼうに高いわけです。これは元々水没しない中腹の傾斜地を造成する必要から、ある程度はやむをえないのですが、不思議なのはそうして造成された代替地の分譲価格が、住宅で前橋市の一等地クラスだったり、農地では平野部の優良圃場並だったりするわけです。何のことはありません。国が用意した代替地へ移転すれば、多額の補償金も毟り取られるわけです。そのお金は結局造成に係わった土建業者を経由して、政治家に上納されるわけで、実際複数の群馬県議や地元選出国会議員の政治資金収支報告書に政治献金として記載されております。単なる期ズレ問題に過ぎない陸山会事件よりも、より直接的に公金を掠め取ったと言える案件ですがお咎めなしです。そう、群馬県選出のあの人この人たちです。

あまりに高い代替地ゆえに、移転世帯の多くは域外に移転しており、結果的にダムが地域社会を破壊しているのですが、この構図は何かに似ている気がしませんか。はっきり言えば3.11の津波被災地の現状が重なって見えてしまうのは私だけでしょうか。

津波被害を繰り返さないために高台移転が言われ、防災復興に期待がかかるのですが、それ以前に仙台近郊を除く被災地の多くは過疎地で、今後人口減少で集落を維持できなくなると見られていた地域です。そういった場所ですから、単純な震災前への復旧は問題解決にはならないのですが、さりとて高台移転となれば造成費用などはかなり高額になる事は避けられないわけで、そのあたりの思惑から、復興プランを練る前に財源確保が必要だったと見れば、不気味なほど八ッ場ダムと構図が似てきます。

三陸のリアス式海岸の津々浦々に八ッ場ダムができると考えれば、そりゃ財源はいくらあっても足りないわけです。しかも産業基盤の乏しい地域だけに、補償金を手にした被災者の少なからぬ数が、他地域へ移転する事は間違いないわけで、立派に復興成って地域社会は破壊されるという悲観的な展望が見えてきます。やはり復興増税は断じて認めるべきではありません。むしろ産業復興を起点に考えるべきでしょう。

例えば漁業ですが、三陸は沿岸、近海、遠洋の3種類の漁業が混在する地域で、それぞれ課題を抱えているのですが、遠洋に関しては今後国際社会での資源管理が必須と考えられますので、分けて考えるとして、沿岸と近海の漁業に関しては、問題はズバリ資源の枯渇が喫緊の課題です。これは日本のように漁業権が漁協に属し、組合員の多くが小型船で操業する形態ですから、漁獲枠を嵌めても早い者勝ちで値段の付かない雑魚ばかり採ってしまい、次世代魚の繁殖機会を減らしている結果です。

ノルウェーをはじめ現在の世界標準は漁船に漁業権を与え、漁獲枠を嵌める形態です。こうすることで、高値で売れる成魚の漁獲にシフトでき、資源の保全と漁業者の収入保証を両立できます。加えて漁業権付き漁船を転売可能とすることで、参入退出を自由化し、零細な個人漁業者でも複数で漁船を共同購入して漁獲枠をシェアするなどの新しい形態の漁業に展望が拓けます。高台に住んで漁港へ通勤するといった地域復興のイメージにも合致します。誤解を恐れず言えば、津波で多数の漁船が流された今だからこそ、このような改革が現実的に可能ということです。経過措置として資源復活に5年程度の禁漁期間を設け、漁業者には期間中の所得保障を行うといったことが考えられます。文字通り「コンクリートから人へ」です。

世界に目を転じれば、リアス式海岸と多数の島から成る地中海の東のエーゲ海を望むギリシャがえらいことになっております。財政赤字圧縮のために緊縮財政を続けるも、観光以外にこれといった産業のないギリシャで、EUっ加盟と共通通貨ユーロ導入はかなり高いハードルだったのですが、ギリシャはユーロ参加時に、財政赤字の過少申告で乗り切りました。

その結果ユーロ圏各国からの投資資金が大量流入し経済を支えたのですが、投資資金は主に遅れていた社会資本インフラの整備に回り、2004年のアテネオリンピックの競技場建設などが行われたのですが、オリンピック終了後は閑古鳥となり、社会資本投資の収益率を押し下げる事になります。何か日本の長野オリンピックを思い出させる経過ですが、所詮スポーツ施設は活用されなければ維持費だけがかかり何の付加価値も生まないわけで、財政再建の足を引っ張る事になります。

長野の場合は主権国家ではありませんし、地方財政は総務省のコントロール下にあり、日本全体でカバーできるわけですし、いざとなれば夕張のように財政健全化の早期是正措置を発動する手もありますが、ギリシャの財政赤字は、ギリシャ以外のユーロ圏16カ国でカバーするしかないわけで、中には欧州金融安定化基金(EFSF)拡充策を議会が否決したスロバキアのように、GDPでギリシャの1/3しかない国もあり、政治的に機動的な対策が打てない恨みがあります。ユーロ圏17カ国を見れば、ドイツ、北欧、ベネルクス3国いずれも経常黒字国で、ギリシャ危機によるユーロ安で成長率も下駄を履いた状態ですから、ほとんど痛みを伴わず財政健全化が可能ですが、丁度円安に助けられたゼロ年代の日本と同じ状況です。逆に過半数の経常赤字国は日本の地方の過疎地の状況に似るわけです。

日本の場合は日本全体が経常黒字国で、財政赤字はほぼ国内でファイナンスされてますから、直ちにギリシャのようになるわけではありませんが、地方の現実を見れば、国の予算を分捕って公共投資に奔走する構図はギリシャとさほど変わりません。逆に財政危機を身近に感じない分、より深みに嵌まり、且つ日本全体を道連れにするという困った状況にあるわけで、破綻しない危機という意味では、状況はより深刻なのかもしれません。

はっきりしているのは、これ以上地方で公共投資を積み増しても、投資収益率は下がる一方で、いわゆるケインズの乗数効果は得られないということです。今必要なのは、上述の漁業の例のような、有効なサプライサイド対策です。規制緩和で地方の足腰を強くして、身の丈に合った自律分散型の産業構造を積み上げていく事です。間違っても復興にかこつけて津々浦々の八ッ場ダムを作らない事です。

そんな中で鉄道の復旧のニュースです。

JR常磐線、仙石線の復旧ルート案が合意、一部内陸側に移設|日経BP社 ケンプラッツ
まだ案が出た段階で、自治体の復興計画が出揃う12月末頃まで待って正式決定となる予定ですが、500億円程度と言われる線路移設を伴う復旧費用は、現行法では全業黒字のJR東日本には適用されないので、特例での適用を国に求めていくことになります。ま、八ッ場ダムで水没する長野原線の移転費用はダムの事業費で丸抱えですから、一部なりでも国が負担しなければ、逆にバランスを失します。

とはいえいずれも仙台近郊で乗車密度の高い区間でもあり、三陸海岸を縦断する八戸線、山田線、大船渡線、気仙沼線、石巻線に関しては現時点でも白紙状態です。逆に仙石線は計画より遅れながらですが、無線交信式保安装置のATACSが今月11日から運用開始されており、新時代を印象付けます。

というわけで、いずれ本体工事が始まる八ッ場ダムですが、完成した湖面2号橋から水没地を見下ろす景観は期間限定ですがさぞかし東京スカイツリーの比ではない絶景でしょう。しかも現地へ出かければタダで楽しめます。最後はヤケクソっぽいなぁ^_^;。

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Sunday, October 09, 2011

都営DVにめげずに世界を目指す東京メトロ

東京メトロを巡るニュースがいくつかありました。1つは銀座線1000系のプレス公開です。

銀座線1000系車両 2012年春デビュー|東京メトロ
技術の目玉は永久磁石同期電動機(PMSM)と操舵台車ですが、メディア報道ではこの部分は省かれて、レトロルックのハイテク省エネ電車という紹介に留まります。早い話が技術がわかる記者がいないわけで、原発事故報道と同じ構図ですが、深入りは避けましょう。

PMSMの評価は難しいのですが、直流電動機や三相交流誘導電動機(IM)より高性能で高効率と言われ、自動車の世界ではHVやEVは例外なくPMSMを使用している一方、鉄道車両での採用は、JR東日本E331系で直接駆動(DDM)用として用いられた以外は、東京メトロで丸の内線02系更新車と千代田線16000系での採用に留まります。鉄道車両用としては課題を抱えているからですが、初物好きの東京メトロらしいといえばらしいところです。

PMSMは回転子に永久磁石を用いますから、直流電動機で必要な整流子やブラシが不要になり、回転子が磁性体ですから回転子に誘導電流が発生せず、発熱がないので、密閉型が可能になり、塵が侵入しないのでメンテナンスフリーになりますし、ネオジムなどのレアアースを添加した強力なマグネットを用いる事で小型化も可能ですが、回転子の回転で固定子コイルに誘導電流が発生するため、楕行運転でも回生電力が発生し回転子に逆トルクが発生したり、架線電圧との相対関係で制御回路が損傷する可能性もあるため、主回路を遮断したり、車軸単位で異なる負荷条件に対応するために1C1Mの個別制御が必要になるなど、概して制御回路の構成が複雑になり、1C8Mも可能なIM使用のVVVF制御より高価になります。当然レアアース添加の永久磁石も、アルミなど導電体なら何でも良いIMの回転子より高価です。

一方で熱を出さないから密閉型が可能なので、ランニングコストは安くなると考えられますが、IMでも小田急4000系で密閉型が採用されるなど技術革新は進んでおり、他の事業者が追随するかどうかはトータルなコスト比較の評価に左右されます。

営団時代から電磁直通ブレーキで米ウエスチングハウスタイプのSMEEを採用したら、国鉄は自主開発のSEL、私鉄は国産メーカーNABCOのHSCが主流となるし、世界初の電気子チョッパ制御は、公営地下鉄を除けば阪神と国鉄で採用された以外は普及せず、直流複巻モーターの界磁分流制御をチョッパ化した界磁チョッパ制御が主流となり、大阪市交が開発に熱心だったIM式VVVP制御とあえて異なる直流分巻モーターを使用した4象限チョッパ制御を開発したものの追随者は現れず、コスト面から業界標準のIM式VVVFへ合流するなど、ひとりガラパゴスの傾向があるメトロだけに(笑)、今回のPMSM採用が同じ轍を踏まないとも限らないという意味で注目されます。

ちなみに千代田線ではメトロとJR東日本と小田急で、共通車両の構想も話し合われていて、小田急4000系はあえてメーカーを変えて対応しましたし、JR東日本E233系2000番台ではドア位置を私鉄標準寸法に合わせるなど協調姿勢を見せていた中で、16000系を送り出した東京メトロに対して、小田急とJRの担当者は内心「裏切り者!」と叫んだとか否とか(笑)。

1000系のもう1つの技術エポックである操舵台車ですが、やはりメトロらしい凝り性なものです。確かに銀座線は戦前の開業で急カーブも多く、曲線走行をスムーズにする必要はありますが、同時に他社との相互直通が行われていないという意味で、このような技術を試すのに適した路線とは言えます。JR東日本が革新的な無線伝送の保安装置であるATACSを独立性の強い仙台の仙石線で初導入するのとある意味似ていますが、上記プレスリリースで図解されているように、ボルスタ(揺れマクラ)とリンクで結んで連動するというメトロ的凝り性(笑)の産物である点が注目です。

そもそもボルスタ台車は今やメトロの他は阪急で採用されているぐらいの日本ではマイナーとなった技術ですが、現在の主流であるボルスタレス台車はそもそも営団時代に半蔵門線用8000系で採用され、業界に広がったものだったんですが、副都心線用10000系でボルスタ台車に先祖がえりしたものです。その間にJR西日本の福知山線事故があり、一部から危険性を指摘する声もあったボルスタレス台車ですが、福知山線の事故原因が明らかになる中で、ボルスタレス台車原因説はしぼみます。

もちろんボルスタレス台車ではボルスタを省略する代わりにやや複雑なボギー回転装置を組み込むわけですから、吊リンクを用いた大掛かりな古典的ボルスタ台車と違って車体直結空気バネとボルスタアンカーでボルスタを拘束し台車枠上面としゅう動させる現在のボルスタ台車との優劣は単純ではありませんが、業界標準とあえて違う道を歩むひとりガラパゴスな性格はある意味メトロらしいといえます。

この操舵台車ですが、メトロでは曲線走行をスムーズにする目的での採用ですが、南アではケープゲージ(3ft6in=1,067mm)での200km/h走行のための技術として開発されており、台車の前後車輪の左前と右後、右前と左後を固定して曲線に追随する方式ですが、同じゲージを採用する日本のJR在来線などでの高速化技術としてもっと取り組むことを考えて欲しいところです。

鉄道の高速化イコール新幹線整備という固定観念に囚われた日本では、在来線の高速化はあまり議論されません。しかし整備費用が嵩む新幹線整備に偏った対応には問題があります。例えば日立がイギリスへの売込みに成功したClass395ですが、ユーロスターも走る高速新線(STRL)を走り最高速225km/hですが、あくまでも近郊列車で、ドーバー地区とロンドンを結ぶ通勤輸送の一翼を担う存在です。イギリスのSTRLに限らず欧州各国の高速新線は日本の新幹線のような都市間高速列車専用のシングルファンクションではなく、貨物列車や通勤列車も走行可能なマルチファンクションなインフラです。

だからこそ日本に比べると人口密度の低い欧州各地で建設が可能ですし、そもそも昨今の欧州では200km/hクラスのスピードは近郊列車に波及しており、それ以前から160km/hクラスのスピードは当たり前だったわけで、欧州は日本と比べると都市規模の割りに都市圏が広域に及ぶ例が多い事と関係がありそうです。高齢化が進捗し人口減少が進む日本でも、今後地方の活性化を図ろうとすれば、相対的に小規模な都市に拠点性を持たせる必要は高いわけで、シングルファンクションの新幹線を作り続ける事は考え直すべき局面です。日本でも成田スカイアクセスでスカイライナーの160km/h運転が実現したように、160km/hレベルならば条件が整えば可能なんで、特に地方圏の都市近郊輸送の160km/h化を見据えた対応を考える必要はあります。

というわけで、東京メトロを中心に日本のガラパゴスぶりを縷々述べてまいりましたが、それと逆の動きもあります。

海外鉄道コンサルティング会社の設立について(PDF)
関連各社からも発表されており、出資比率で明らかなようにJR東日本が主体ですが、話の流れからリンクは東京メトロにしました。

日本(にっぽん)コンサルティング株式会社(JIC)を立ち上げ、世界へ打って出ようというわけです。もちろん高速鉄道も扱われると思いますが、数が多い都市交通分野でのインフラ輸出がボリュームゾーンとなると思います。その意味で東京メトロの参加は意味のあることですし、私鉄から東急と京阪が参加しており、ハードとしての鉄道の売り込みに留まらず、沿線開発などソフト面で日本の経験を生かしたソリューションを提供できる期待があります。人口減少で国内市場が収縮する中、海外に収益機会を求めると共に、海外での新たな経験を国内にフィードバックして、収縮する国内市場でのサービス改善という難題にもチャレンジして欲しいと切に望みます。

最後に東京メトロ株売却問題ですが、安住財務相のこの発言をどう見るか。

東京メトロ株売却額、いくらになるかわからない=財務相 | ビジネスニュース | Reuters
暗に東京メトロ株売却の難しさを示唆した内容です。前の記事で指摘したとおりのことが起きているわけです。関連法で株式保有を制限するとしても、衆参ねじれで法案が通らない可能性があり、特に野党自民党の石原幹事長に対して「あんたの親父は困った人だね」といったある種皮肉を込めた物言いに見えます。東京メトロを力で支配したいだけの東京都の対応は、ガラパゴスどころかイースター島のモアイ像のような意味不明の尊大さ以上の意味は見出せません。

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Saturday, October 01, 2011

増税前提の復興財源論、またの名をメトロ濃霧

まずは明るいニュースです。

仙台空港線、200日ぶり全線運行再開  :日本経済新聞
記事中にもあるように、津波で被災した仙台空港駅と地下トンネル部については棒材、安全対策を強化した上での復活となり、復興は部分的には着実に進んでいることを実感します。

一方でJRの沿岸部各線と三陸鉄道の復興は手付かず状態のままで、被災地の復興もまだら模様です。被災エリアが広大で、場所場所で状況が異なるのでやむをえないところですが、こうして日常が戻ったエリアに陽が当たる一方で、取り残され風化に任せる地域も少なからず存在することは忘れてはならないところです。

その一方で震災で被災したわけでもないのに、十鉄のように存亡の危機に直面する鉄道もあり、元々過疎化が進行中だった地域での災害なので、なかなか思うように復興がはかどらない恨みはあります。震災がなくても人口が減り続けている地域だけに、阪神大震災のときのような復興イメージにはならないわけで、そんな中での地域の産業の再構築という重い課題を抱えての復興である以上、むしろ拙速な復興は避けるべきではあります。

そんな中で復興増税問題が政府与党で議論されているんですが、与党内で政府保有株等の売却で増税幅を圧縮する議論が進行しております。そもそも復興財源は建設国債の60年償還ルールを用いるなり、あるいは1,000年に1度の災害ならば、もっと長期の償還でも構いませんし、復興の利益は将来世代にも及ぶわけですから、現役世代だけで負担する事に合理性はありません。「将来世代にツケを回さない」という美名の下、増税を強行すること自体が問題なんですが、現在の政府与党の議論では、こういった基本的なフレームを間違っております。

それを糊塗する意図からか、埋蔵金の活用、とりわけ政府保有株の売却が注目されてますが、あくまでも増税が前提で増税幅を縮小するために汗をかいているというシナリオでことが進んでいる事に注意が必要です。これで増税幅を1兆円2兆円削って政治的得点にしようとするあざとさに騙されちゃいけません。

以前指摘したとおりJT株とメトロ株が有力ということですが、JT株に関しては、JT自身が事業展開の自由度が増すとして歓迎する意向のようですし、タバコの販売不振で葉タバコ農家自身が作付けを縮小しているため、国産葉タバコの全量買い取り義務もネックにならないで済みそうです。

メトロ株に関しては、地下鉄一元化の議論の中で、とりあえずメトロ株の上場が凍結されているというのが現状なんですが、東京都は石原知事や猪瀬副知事が国の保有株放出に対して、都が買い増してメトロの経営権を握るとしてけん制しております。これが現実的でないのは度々指摘してきました。自民党政権当時でもインフラ企業として支配的株主を作らないために、20%を超える議決権保有を制限する事が検討されており、当然東京都が株式保有を継続しても例外扱いはされないと考えるべきです。つまり都がどれだけ吼えても、関連法で縛りつければ済む事です。

そうでなくてもJR東日本と東海、大手金融、大手不動産など、メトロ株を狙っていると目される企業は多数あり、上場に当たって支配的株主をつくらないことは重要です。逆に言えばこれだけ保有希望が多いのですから、上場すれば高値が付くこともまた間違いないところであり、支配的株主が出現すればむしろ資産価値は下がると考えてよいでしょう。このあたりを政府与党がうまく差配できるかどうかは何とも言えませんが、野田官邸と前原政調のせめぎ合いと考えると、あまり期待できそうにないですね。

最後に、今週は日中双方で重大事故が起きました。1つは上海地下鉄の追突事故で、相変わらず情報が入ってこないので、実態は不明ですが、大まかなストーリーとしては、電源トラブルで保安装置が動かなくなり、手動運転に切り替えて事故が起きたということで、温州の高速鉄道事故でも信号トラブルで手動運転中だったとされますので、またしても同じような事故ということになります。手動運転の中身がわからないので何とも言えませんが、日本でも信号トラブルで無閉そく運転をして起きた事故は多数あり、有名なのは信楽高原鉄道事故ですが、信楽でも無閉そく運転の手続き上の重大な瑕疵があったことは間違いないものの、それだけではなく、システム自体にも予期せぬ穴があったこと、またその他の偶然が重なった事が事故をもたらしたのは間違いだらけの事故報道のエントリーで指摘したとおりで、中国だから事故を起こしたと言わんばかりの報道姿勢には違和感を禁じ得ません。

それ以上に驚くべきトラブルは全日空機の急降下背面飛行トラブルです。乗員の一部に軽症者を出しただけで済みましたが、まかり間違えば他の高度を飛行中の飛行機との空中衝突の可能性も、急降下による速度超過で空中分解もあり得た大事故です。仮にそうなっていれば、中国の悪口を言うどころじゃなかったはずです。自動姿勢制御や自動航行など高度なシステムを装備した旅客機でも、人為ミスで重大事故は起こりうるし、事故に至らないヒヤリハッとは結構日常的に起こります。それを早期に発見し重大事故にしないためのさまざまな防護策が講じられることで、結果として事故のリスクは減らせるのであって、技術の優劣の問題ではないということは、改めて指摘しておきます。

というわけで、結論をもI上げればメトロ株売却は五里霧中。先が見えないまま時を刻むリズムだけは進行します。まるでメトロノームの如くに-_-;。

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