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Sunday, October 30, 2011

ローカル線の残し方考

震災復興が遅々として進まない中、こんなニュースがあります。

都道府県:基金2兆円積み残し 緊急経済対策向け--検査院調査 - 毎日jp(毎日新聞
リーマンショックを受けて08年、09年の補正予算で都道府県に交付された基金のうち未消化分が2兆円以上にのぼるというものです。当時世界規模で財政出動が要請され、それを受けての緊急経済対策として策定された補正予算で、基金として交付することで、使途を限定せず年度をまたがる事業も行えるようにしたという触れ込みでしたが、実際は未消化のままブタ積みされていたものです。

会計検査院の検査で指摘され、国庫への返納が求められております。リーマン後、震災前まで順調に回復してきたわけですから、未消化分は震災復興にまわすべきである事は言を俟たないところですが、政府内からは復興増税の理由がなくなると危機感を募らせているとかで、どっち向いているのやら。歳出改革を伴わない増税は国民として納得できないところです。それに留まらず震災復興でも同様の手法が使われますから、せっかくの予算が有効活用されないままブタ積みされる愚を繰り返す恐れがあります。それでも増税に舵を切る政府は国賊と言うべきでしょう。

あと3次補正には円高対策も盛り込まれますが、繰り返しますが、日本円は買われる理由があるので、円高対策は無意味です。またメディアはあたかも円高をユーロ危機のせいにするような報道姿勢ですが、ユーロ危機で確かにユーロ/ドル相場はドル高方向に動いたものの、それ以上に円が上がっただけの話でして、低金利通貨によるキャリートレードの巻き戻しがドルより円に偏っていただけの話です。

むしろタイの洪水で、多数の日本企業が製造拠点をタイに移して既に大規模な集積を形成していた事実が広く知られました。今さら空洞化危機を煽って国の支援を求めようとは財界も虫が良すぎます。それよりも震災で発覚したサプライチェーン危機をタイで繰り返す愚は笑うに笑えないところ。海外進出してまで元請け下請け関係のまま日本企業だけのコロニーを作ってしまうから愚かです。これがホントの愚弄罵屡企業-_-;。

というわけで、震災復興の遅れがさまざまな奇妙な出来事を引き起こしております。一番驚くのは仙台地区の百貨店売上の好調ぶりでして、高級品が売れているということで奇妙なバブル状態が見られます。鉄道も仙台近郊の復旧が先行する形であることは前の記事で指摘しましたが、がれきの仮置き場や工事用の土採り場や、高台の地盤の良い住宅地など、地価の上昇まで見られ、仙台近郊だけ見れば復興が確実に進んでいる状況と言えます。

一方で三陸海岸は漁船が流され漁港が被災し水産加工工場が破壊され、海底の隆起や土砂やがれきで海底地形が変わったこともあり、漁業の復興は尚時間がかかる状況にあります。そんな中で北海道の道東地区が漁獲の大幅増で賑わっていますが、言うまでもなく三陸の漁港に陸揚げできない海産物が集まっている結果です。多分三陸一帯の漁業はかなり衰退せざるを得ないでしょう。ただし引いて見れば元々漁船が多過ぎて乱獲傾向にあった漁業が適正化されたとも見ることができるわけで、このあたりは復興計画でも考慮すべき問題です。

加えて福島の原発事故で大量放出された放射性物質の処理を強いられる福島の復興も遅れを余儀なくされる中、仙台の札幌化とも言うべき一極集中と過疎化と他地域とのの隔離感から、東北の北海道化を指摘することができます。そんな中でこのニュースです。

JR東日本の純利益27%減、運輸業が不振 4~9月  :日本経済新聞
9月23日に所定ダイヤに復帰した東北新幹線が、復興支援ビジネスに寄与していることは間違いないでしょうが、逆に観光客は減っていて、新青森開業で観光ルートから外れた十和田観光電鉄を廃止に追い込んだ現実も忘れてはならないでしょう。

というわけで、度々メディアにも取り上げられている三陸鉄道の復旧はやはりかなりの困難が伴う事を覚悟する必要があります。3次補正で復興資金が盛り込まれる予定ですが、ただでさえ17年間赤字決算を繰り返してきた中で、国の支援を得る以上、黒字転換して事業の継続性を図るのは容易ではありません。AMAZONのリンクで紹介した原武史氏の本では、ローカル線を無視して新幹線復活を急いだとしてJR東日本を批判し、可能なところからいち早く復旧した三陸鉄道を持ち上げておりますが、現実が見えていないとしか言いようがありません。

そういうわけで、精神論で三陸鉄道が蘇るなんてあり得ない話ですが、問題は三陸鉄道に留まらず、JRの被災各線の復旧も、地域の衰退を前提条件とせざるを得ない現状で、それでも鉄道を残すにはどうすれば良いかを考えてみたいと思います。

三陸鉄道の場合は既に指摘したとおりインフラ部である路盤の土地やトンネル、盛土、高架橋などを県が保有する公設民営形の上下分離が既に行われており、インフラの復旧はある意味道路の復旧と同様の考え方も可能でしょうけど、よく考えると、公的に保有されたインフラを三陸鉄道という事業者が占有する形態ですから、公的負担で復活させることの是非は単純ではありません。少し現実を離れて、例えば同じインフラを使って三陸鉄道よりも低コストで良いサービスを実現できるという事業者が現れたとすれば、三陸鉄道の復活に拘る必要はないわけです。ま、現実的に引き受ける事業者は現れないでしょうけど。

しかし鉄道事業は規模の経済が働く事業でもあるわけで、例えば運賃も含めて三鉄と同じ条件でJR東日本が運行を請け負うといったことが可能ならば、より事業の継続性は高まるわけですが、現状ではJR東日本は全業黒字で認可運賃の水準も抑えられていることもあり、規模の経済を働かせる事ができません。

ならば逆転の発想で、JRの被災ローカル線を公的に復旧し三鉄に運行委託する形の上下分離形態は可能でしょうか。三鉄は労せずして事業規模を拡大できて、JR本体より高い認可運賃で営業でき、自社路線とのシナジーも働かせることができるとすれば、規模の経済を働かせる可能性があるわけですね。もちろんJRとして復旧する場合に比べ運賃水準は上がりますが、自治体出資の三鉄に対してならば、定期券購入補助などの対応も採り易くなるわけです。同様の手法を使えば、十鉄と青い森鉄道を一体化するなどの知恵もあり得たかもしれません。

これは結局EUの鉄道政策の中心にあるオープンアクセスの日本版という説明も可能です。鉄道事業法の改正は必要ですが、例えば鉄道会社が保有する線路を利用し、車両はリースで調達し、乗務員は鉄道事業者からの派遣を受けるとかしながら、地域の実情に合った鉄道輸送サービスを地域のバス事業者その他の第三者が提案し実行できる仕組みを導入する事が考えられます。英国鉄道のフランチャイズ制のイメージです。

別の視点ですが、大手私鉄で既にこのような手法を実行したところがあります。いわずと知れた近鉄による養老鉄道と伊賀鉄道の分離です。実は疑惑含みの処理でして、バブル後の不動産減損処理のための課税特例で棚卸資産となる販売用不動産限定で含み益と含み損の相殺処理が認められ、東武鉄道と在阪5社が実行しましたが、元々取得価格が低い鉄道用地の含み益が用いられた可能性があり、当然違反ですが、通常はバレないところ、鉄道資産の一部切り出しを迫られた中で、線路を近鉄が保有したままの子会社分離という苦肉の策がとられた可能性を指摘いたしました。つまり資産切り離しができない事情があった可能性があるということです。逆に言えば鉄道資産そのものの合法な減損処理が可能ならば、こんなまどろっこしい事は不要だったかもしれません。

実はJRに対しては整備新幹線の並行在来線切り離しという形で、事実上の減損処理を認めている形ですが、それは結果的に地方の負担で減損処理されることでもあり、理屈としては欲しがってた新幹線ができるんだから応分の負担をせよということなんでしょう。それやこれやを踏まえて、鉄道資産の減損処理を前提としたオープンアクセスの導入というのは、実現可能性はそれなりにあると思います。そもそも赤字路線は時価評価すれば値がつかないはずで、破綻企業の一時国有化による株式の減資を考えれば、それほど突飛な話でもないと思います。

実は北海道新幹線絡みで並行在来線となる江差線五稜郭―木古内間にバス化の話が浮上しているという状況があります。予想されたことではありますが、並行在来線三セクの経営環境があまりにも厳しく、事業計画が立てられない状況にあるわけです。下手すれば北海道経済の生命線でもある鉄道貨物輸送を分断しかねない問題ですが、背に腹は代えられないという状況です。

貨物がらみではJR貨物の石北本線からの撤退もアナウンスされてます。理由は機関車(DD51)の老朽化ということで、軸重制限でDF200が入線できず、さりとて軌道強化してまで存続させるのも不可能な中での話です。これは震災による燃料不足解消で磐越西線に臨時貨物を走らせるような臨機応変な対応が今後できなくなる事を意味します。例えば小単位貨物輸送で動力分散タイプのリージョナルレールカーゴ車の開発といったことは、JR貨物単独では難しいでしょうけど、旅客会社やトラック事業者と共同でなら可能性が拓けるかもしれません。こうして新しい発想のプレーヤーの参入を促す形で、地方のローカル線や鉄道貨物が活性化されるという形を考えないと、末端の鉄道の壊死は続くということになりかねません。

あと特筆すべきは広島の可部線一部復活の話題ですが、これも鉄道資産の減損処理が可能だったならば、一旦廃止したものを復活させるような面倒を省く事ができた可能性があります。廃止路線の復活は椿事ですが、面白いのは過去に遡ると廃止路線の復活に面白い事例があります。1912年銚子―犬吠間を開業した銚子遊覧鉄道が、赤字で1917年に廃止、会社解散の憂き目に遭いますが、その後紆余曲折を経て鉄道用地などの資産を流用して銚子鉄道が開業、後に電化されて銚子電気鉄道となり現在に至ります。銚電はその後も何度も危機的状況を迎えながら生き延び、現在に至っております。ある意味銚電はバス会社や工務店の傘下に入ったり、NHK朝ドラでブームになったり、濡れ煎餅のネット販売で保守費用を調達したりと、鉄道会社らしからぬところがありますね。

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Comments

銚子電鉄はいろんな意味で奇跡と努力の積み重ねで生きてる鉄道ですから参考にするには難物なきもしますが(笑)
ちなみに当方、周期的に濡れせんべいを取り寄せてる愛好者だったりします。たまに食べたくなるんですよ、あの味が。
百貨店の高級品についてはバブルを覚えてらっしゃるご年配の方々が起こした瞬間的な売上げのようです。
(あくまで周辺を確認する限りですが)年少者は保険などによる収入も軒並み貯蓄に回してしまってるようです、失業率も需給アンマッチも手伝ってなかなかな改善しませんし仕方ないところですね。
鉄道資産の減損処理を前提としたオープンアクセス、もしできるのであれば魅力的ですね。

Posted by: 幻月 | Monday, October 31, 2011 at 10:59 PM

銚子を持ち出したのは、開業僅か3年で廃止された路線の復活であるという部分の参考という意味です。既存事業者では維持できない路線でも、居抜きで別の事業者が運営する事で復活する可能性はそれなりにありそうかなというところです。

仙台バブルは一時的現象かもしれませんが、復興関連事業が仙台を足場に進みそうな気配があります。丁度北海道向けの官民の投資が札幌を足場に進んだ結果、札幌の集中度が高まり、その他の地域の過疎化が進んだ構図と同じです。東北全体としては衰退を余儀なくされる可能性が高いです。復興の名を借りた公共事業を進めればこうなるというわけですね。政府の無能が恨めしいところです。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 01, 2011 at 08:14 PM

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