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November 2011

Tuesday, November 22, 2011

遠い新世紀に辿り着けない近くのJR

読売巨人軍の清武の乱は、単なる読売グループの内紛だったにも係わらず、日本シリーズに水を差しました。ホントはた迷惑な話ですが、同時にメディア企業としての読売グループの異常なガバナンスを露呈しました。球団の親会社の社主ではあっても、球団の一取締役に過ぎない人物が現場のコーチ人事にまで口を出すのは、明らかに越権行為であり企業のガバナンス上問題です。ギャンブル狂いの大王製紙の御曹司や、バブル時代の財テクの損失隠しに奔走したオリンパス経営陣など、企業統治のお粗末さは日本企業のお家芸のようです。日本ではプロの経営者は育たないのかもしれません。

という中で、JR東海にこんなニュースです。

リニア中間駅 JR東海、一転5900億円全額負担へ  :日本経済新聞
従来、中間駅は地元負担でとしていた方針を全面転換したもので、該当する神奈川、山梨、長野、岐阜、三重、奈良の各県知事は一様に評価してますが、そう簡単な話でもなさそうです。

思い出していただきたいのはいいだといちだの一字違い問題です。飯田線飯田駅に併設されると信じていた南信地域の自治体が、飯田市北部か高森町の田園地帯という駅立地をJR東海の内部資料スッパ抜きで知ることになり混乱したわけですが、同時にJR東海の本音が見事に表れているわけです。自社路線である飯田線とさえ共同使用駅の設置を行わず、既成市街地を避けて建設するのは、建設費圧縮が目的であるのは言うまでもありませんが、こうなると名古屋を除く中間駅では、他線と一切連絡無しでも構わないというわけです。ま、元々東名阪速達列車中心のダイヤ構成となることは間違いないですから、中間駅はのぞみが停まらない静岡県の悲哀を味わう事は間違いありません。

つまり中間駅は元々オマケみたいなもので、事業を進めるための地元懐柔策以上の意味はないわけです。その割に中間駅の全額地元負担とする強気の方針を打ち出したのは、鉄建・保有機構の鉄道整備基金を用いた整備新幹線支援スキームを使わず、在来線切り離しや地元負担もないから、条件を呑ませることができると判断したのでしょうけど、地元協議が進捗せず、2014年着工に間に合わせるにはギリギリのタイミングということでしょう。結果的に東名間で3,300億円、全線で5,900億円の追加負担が生じることになりました。

そうでなくても自前整備のためにコスト圧縮を求められる状況ですから、地元に負担を求めないとなれば、駅立地に関してはJR東海の言い値で進めようということになりそうです。例えば相模原市内ですが、常識的には交通の結節点である橋本となるところですが、大深度地下で地上権設定が不要となる駅間と違って通路や換気口を設置しなければならない中間駅では地上権設定が必要ですが、JR東日本の鉄道用地への地上権設定を嫌う可能性があり、例えば橋本駅の西1kmほどのところの職業訓練大学校跡地などが候補になる可能性があります。その場合既存の鉄道網とは連絡しないわけですが、政令指定都市になったものの、有効な都市計画策定ができていない相模原市の統治能力からいえば、押し切られる可能性が高いと言えます。

元々東海道新幹線の輸送力逼迫を理由としていたリニア中央新幹線ですが、バブル崩壊後の利用客は横ばいで、のぞみによるスピードアップや品川新駅開業などでも傾向は変わらない中で、いつしか東海地震に備えた多重化とか、70年の耐用年数を迎える2034年以降の東海道新幹線の大修繕のための長期運休の代替輸送などに理由が変化しています。つまり本来の輸送力増強の目的を引っ込めたわけで、それでも建設に向かうJR東海の無謀な判断に後付けで理由をひねり出しているだけです。つまりリニア建設という大方針を立てたのはいいけれど、引っ込みがつかなくなってしまったわけです。

リニア建設について財務面から見ると、東名間の5,1兆円とされた事業費は、2017年度完済予定の長期債務と同額で、リニアの着工が2014年予定なので若干被りますが、長期債務の負担軽減によるフリーキャッシュフローを当てにしていると見てよいでしょう。つまりやや背伸びすれば東名間は現在の東海道新幹線の収益の範囲で整備可能という算段です。

ところが注意が必要なのが、上記のように2034年以降、東海道新幹線の大修繕が始まるということで、この費用の一部は新幹線のぞみ料金の一部を無税積み立てして充当する仕組みで、丁度大都市圏の通勤鉄道の特特法と同じですが、それだけで足りるものではなく、別途借入金などを手当しなければなりません。つまり東海道新幹線の大修繕の費用は基本的に純粋な持ち出しになります。このあたりちょっと変な話になります。

元々新幹線保有機構からリースされる形になっていた新幹線をJRが買い取った事情は、JR東日本の株式上場準備の過程で、主たる事業用資産が自己物件でなくリースであることで、減価償却されていないため耐用年数を過ぎた後の設備更新資金が捻出できない事が株式上場の障害になるという指摘を受けて発議されたもので、その際に資産評価を簿価ではなく再取得価格という再評価価格で評価され、地価の高い東海道新幹線が相対的に高負担となったことに対してJR東海は不満を表明し、それがのぞみ料金の一部無税積み立ての容認につながったのですが、JR東海の言い分は、地価は減価償却できないので、長期債務の負担と減価償却によるフリーキャッシュフローとが釣り合わないという言い分でした。

実際は減価償却によるフリーキャッシュフローは全額ローン返済で相殺していたわけですから、本来東海道新幹線買い取りのローン返済の終了と共に、それで浮いたフリーキャッシュフローは東海道新幹線の大修繕に充当されるのが一番素直な話なんですが、それをリニアの建設費に充当するわけですから、計算が合わなくなるわけです。とりあえず名古屋までは持ち出しなしで整備できたとして、東海道新幹線の設備更新費用は別途調達する必要があるわけです。それを大阪まで自前で整備するというのは、航空からの転移や誘発効果を見込んでいなければ不可能なんですが、日本の人口減少、製造拠点の海外移転、LCCの国内線就航などの環境変化を考えれば、かなり無謀な計画と言わざるを得ません。

少なくとも10年単位の中期予想で日本のデフレと経済停滞が続くという見通しの中では、かつて国鉄時代に行ったような半日運休による長大間合い確保による設備更新で、とりあえず山陽新幹線並みに最高速300km/hを目指すような方向性を考えるべきでしょう。新幹線の場合駅間の大胆な線路移転は不可能ではありませんから、内陸部の長大トンネルによる新ルートに徐々に切り替えて、線形改良と防災の深度化を狙うという方向性ならば、大きな持ち出し無しに可能ですし、例えば関が原の雪対策強化も併せて行うなどして運行の安定性を高めるなどして、無理に航空に喧嘩を売る必要もありません。ぼちぼち何が何でもリニアという方針を見直しても良いのではないかと思います。建設を正当化するための多重化よりも、避けられない設備更新に併せて防災レベルをアップさせる方が重要です。

多重化に関しては北陸新幹線の新規着工問題でも指摘されていますが、北陸新幹線が敦賀まで延びて多重化になるというのは明らかにこじつけです。気になる動きとしては、原発立地県の福井県で原発再稼動の条件闘争で整備新幹線の新規着工を勝ち取ろうという動きがあるようですが、万が一の原発事故で影響を蒙るのは福井県だけの問題ではありませんから、当然絡めるべきではありません。

しかし北陸新幹線の新規着工は長崎新幹線と北海道新幹線の新規着工の突破口となるという期待もあって、また東北、九州の両新幹線の開業で鉄建・保有機構のリース料収入も400億円になり、それを担保にした借入も当てにできるという考え方が国交省内にも出てきているようです。そうでなくても公共事業が削られて存在感が薄くなっている国交省の巻き返しの意図がありそうです。

直接財政資金を投入するわけではありませんが、独立行政法人が抱える埋蔵金の運用は、事実上の政府保証つきと市場で評価されてしまい、当面低利で資金調達できますが、イタリア国債のように、ひょんなことから信用不安が発生し金利が上昇してしまうリスクはあるわけで、野放図な拡大は厳に慎むべきです。

それ以前に軌間可変電車(GCT)を前提とする長崎新幹線にしろ、青函トンネルの貨物共用区間で最高速140km/hに抑えられ、事実上フル規格のミニ新幹線(笑)となる北海道新幹線にしろ、大枚はたいて整備する価値はありません。更に東北新幹線が新青森まで延びた結果、陰となって廃止を余儀なくされる十鉄のような問題もあるわけで、いい加減新幹線頼みから在来線のグレードアップに重点を移すべきでしょう。そもそも折角地域分割されて地域密着のミッションを与えられたはずのJR各社です。新幹線頼みばかりでなく身の丈に合わせて地域の実情に合った輸送サービスを心がけるマインドが必要です。ま、JRの経営者も日本の経営者の限界を超えられないのかもしれませんが-_-;。

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Monday, November 14, 2011

八百万の神々のたそがれ?

震災から8ヶ月。福島第一原発では放射性キセノンが検出され、俄に再臨界が疑われましたが、その後の東電の発表で自発核分裂と発表され訂正されました。大事ではないということですが、気をつけなければならないのは、通常の運転停止でも起きる事象という説明を鵜呑みにしないことです。

何故ならば通常の運転停止では自発核分裂は全て圧力容器内での出来事で、環境中にキセノンが漏出する事はないのですが、それが漏出している事が問題なんです。つまり8ヶ月経っても事故の収束に至らず、また東電が再臨界の疑いと発表した事によって、東電自身が現場の状況を把握し切れていない事を露呈した事が問題なんですね。

それでいて十分な情報開示は行われず、最近の海外メディアの論調は、明らかに東電や政府の対応の遅さや情報開示の不十分さに苛立っています。そして複数のメディアが環境中に漏出した放射性物質の量が東電発表を上回り、チェルノブイリを越えた最悪の原発事故という見方をするようになっています。ですから再臨界はなく状況は安定しているという事を言えば言うほど不信感が増幅する結果になるばかりです。

こんな状況ですから、原発の再稼動問題はすんなり進むはずもなく、九電のやらせメール問題もあって国や電力業界に対する内外の目は厳しさを増します。その中で再臨界の発表がされた同日、九電は事故で緊急停止した限界原発4号機の運転再開をしました。とはいえ12月には定期点検で運転停止の予定ですから、僅か1ヶ月の運転のために第三者委員会の調査結果を無視して世論の逆風を浴びるのは、定期点検後の再稼動を難しくするだけで、ただただ愚かとしか言いようがありません。というわけで、福一の事故収束もままならず原発再稼動はかなり遠い話となりそうで、当面日本は節電モードが続きます。

そんな中で政府も節電の長期化を睨んで、電気事業法27条による総量規制から、ピーク抑制に重点を移す事となり、企業に一律に課している節電目標を、自家発電やタイムシフトなどでピーク抑制に取り組む企業には緩和する事が1つ目の柱。もう1つは民生用の省エネ家電や蓄電池、EVなどの開発を促進する制度の導入ということで、うまくいけば問題ないものの、まかり間違えば大停電のリスクがある大きな賭けでもあります。

とはいえ発送電分離による自由化や、ピークロードの料金上乗せなどには踏み込んでおらず、現行の発送電一体の電力会社の業態を維持するものでしかありません。特に原発依存度の高い関西電力と九州電力は厳しい状況で、それぞれ10%と5%の節電要請を需要家に求めるとしております。電力使用制限令の発動ではなくあくまでも自主的な節電を呼びかけるものだそうです。加えて世論の批判を浴びた鉄道会社や病院などへの電力供給には配慮されるということですが、冬の節電には夏とは違った事情もあります。

夏の場合ピークタイムは昼間ですから、通勤輸送でピークを迎える鉄道にとってはある意味省電力に取り組みやすい状況でした。幾つかの手法がありますが、主なものはカラ退避の解消です。つまり緩急運転を行う路線では、朝夕と比べてダイヤの空いている昼間は、ダイヤ編成上普通が優等を退避するために退避駅で長時間停車が常態化している実態があるわけですから、これを優等の運転に支障しない範囲で普通の退避駅での停車時間を切り詰め、その分普通を通常ダイヤよりわざと遅らせて走らせるものです。この方法の優れた点は、元々加減速が頻繁な普通の方が消費電力が大きいところを削減できて、しかも乗客の乗車距離も短いので相対的に乗客への迷惑を最小化できる点です。社によって節電ダイヤとしてダイヤ改正を行ったケースと、ダイヤはそのままで指令による計画的遅延の指示によって実行されたケースの2通りがあったようですが、乗客に知らせる運行時刻より早発は乗り逃しになりますが、多少の遅延ならば乗車は可能で、特に退避駅で優等へ乗り換えるケースならば実害ゼロとなるという優れものです。

ところが暖房の必要からピークが夜にずれる冬の節電は、この手では乗り切れないわけで、新たなI対応を考えなければなりませんが、考えられるのが終車の繰り下げです。つまり元々朝と比べて乗客も分散しており、朝ほど時間制約のきつくない夕刻ダイヤにあえて余裕を持たせると共に、そこでの積み残しを後ズレさせることで電力のピークカットを行うというものです。それで居酒屋が繁盛すれば少しは景気が上向くかも^_^;。

あと鉄道で電力使用量が増加する要因として、事故等によるダイヤの乱れで回復運転を行うケースですが、この場合も一部列車の運休と運用変更で回復運転を回避すれば節電、厳密に言えば電力増加の回避につながります。そのためにはそもそも事故を減らす必要があり、特にホーム転落による人身事故は、首都圏では毎日必ずどこかではおきてしまうぐらい頻度が高いということもあり、ひょっとしたら節電のためにホーム柵設置が進む可能性もあるかもしれません。それと連動して定位置停止装置(TASC)の設置が進めば、未熟練の運転士による減速後の再加速などのいわゆるノコギリ運転の防止にもなり、この面でも省電力が進む可能性があります。

あと高加速運転ですが、京王電鉄が全線のATC化を進め、その関連で従来2.5km/h/sとしていた加速度を3.3km/h/sとする高加速運転モードに切り替えました。問題は高加速を利用してスピードアップせずに余裕時間を増やす形にすれば、それだけ力行時間を短縮できて省電力になります。調布市内の連続立体化を期にスピードアップを目論んでいたと見られる京王線のスピードアップお預けは残念ですが、当面の電力事情を考えればやむをえないところです。

そして東京メトロが導入したPMSMの積極的利用も1つの解になり得ます。メトロ以外では東武鉄道が30000系6連1編成をPMSMに換装して長期テストを始めたものの、現状ではIM式VVVFに対して明確な優位があるというわけではないことは既に指摘しましたが、PMSMの弱点を消す意味で車上にバッテリーやキャパシターなどの蓄電装置を搭載し、PMSMから発生する回生電力を吸収し利用する事を考えれば、ある意味鉄道にとって大きな省電力ツールとなる可能性があります。加えて短時間の停電でも動力を失わないならば、地上側の保安装置の電力が生きているならば運転が継続できるなどの利点もありますから、この方向性でPMSMが普及する可能性はあります。

と言うわけで、電力問題に関しては悲観も楽観もしておりませんが、制約条件となることは間違いないところです。そして制約条件の中でこそ、真のイノベーションに期待が出てくるものです。正直言ってTPPで関税を撤廃して日本製品が売れるとも思えませんし、日本企業が利益を減らしながら成長を模索している図は、言い方は悪いですが滅びの美学に見えます。その過程でギャンブル狂いの御曹司のご乱行や精密機器メーカーの20年越しの損失隠し発覚など、個別事例とは言い切れない日本企業の闇が明るみに出てきました。こんな企業を国ぐるみで助けても無駄です。

円高で物が売れないというのもどうでしょうか。80年代には円高を受け入れながら世界シェアを拡大してきたわけですが、高品質ならば高くても買ってくれる先進国市場から価格見合いのバリューが重視される新興国市場への重心移動に日本企業が対応できていないだけの話です。

そんな中でのTPP論争のアホらしさは、結局参加のための事前協議の開始としてはぐらかされましたが、実態は何1つ動いていないのに、推進派は評価し反対派も納得して矛を収めて、結果的に議論は置き去りです。TPPの議論で私が思うのは、EUに至る欧州の統合の歴史も、決して平坦ではなく行きつ戻りつしながら試行錯誤されていて、日本で考えられている以上に複雑ということです。ここでは立ち入りませんが、以下にキーワードを並べておきます。

ECSC+EEC+EANC→EC/EU
EFTA*EC/EU→EEA
この辺の解説がスラスラできる人はおそらく日本にはほとんどいないでしょう。ただただ欧州の多様性に脱帽です。

そしてそれよりメディアの扱いが大きかったのが読売の清武の乱ですが、日本シリーズを逃した読売のシリーズ潰しかとも取れるタイミングで、しかも両者の言い合いが余りにアホらしくて笑えます。思えば日本の原子力開発道筋をつけたのが読売の正力松太郎ですが、福一と同様にメルトダウンしてしまったのか(笑)。日本の統治構造が崩壊し始めたかもしれません。

ま、先日のG20もギリシャの突然の迷走で実質何も成果を残せず、そればかりか信用不安がイタリア国債にまで飛び火し、本当に世界恐慌の可能税さえ出てきました。とはいえなぜイタリアに飛び火したかは必ずしも明確ではありません。イタリアの財政赤字は単年度でGDP比4%でフランスより上、プライマリーバランスはユーロ圏諸国で赤字オンパレードの中2%の黒字と、これだけ見れば悪くないのですが、債務残高がGDP比120%の1.9兆ユーロで金額はギリシャの5倍以上で、且つ欧米の多くの銀行が保有しているということで、金融危機の恐れがあるわけです。

こうやって数字を見ていくと日本はそれぞれ単年度GDP比9%の赤字、累積で200%、金額では1,000兆円に届く水準でイタリアの5倍、ギリシャの25倍超という状況ですが、現時点で日本国債は安泰です。それと同時に小泉改革で目標とされたプライマリーバランスの黒字化が如何に無意味かということでもあります。国債危機は金利上昇の形で突然起きるということに成ります。イタリア国債で問題視された金利7%という水準ですが、以前ご紹介した複利計算の7の法則で簡単に説明できます。つまり10年で元本2倍の水準ですから、プライマリーバランスの黒字化では追いつかないで財政赤字は発散し続けるわけです。イタリアではプライマリーバランスが2%の黒字ですから正味5%と見ることも可能ですが、それでも10年が15年に変わるだけで、元本が膨張し続ける事に変わりはありません。

イタリアの場合9年在職したベルルスコーニ首相が原因を作った張本人です。ザックリ言えば積極財政で赤字を垂れ流し、プライマリーバランスは黒字化したものの、財政危機は防げなかったわけで、震災復興や社会保障を口実に歳出の見直しが進まない現状では10年後の日本を示唆する出来事です。

というわけで、メルトダウンしているのは福一だけじゃないかもしれません。神国日本の八百万の神々もたそがれている今日この頃です。

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Sunday, November 06, 2011

バカの壁、壁が取れても残るバカ

結局ギリシャ1国に世界が振り回され、仏カンヌに集ったG20首脳も有効な対策を打ち出せないまま過ぎた1週間でした。1兆ユーロのEFSF拡充は決まっても、ユーロ圏の拠出は2割止まりで残りは他国や民間の資金を呼び込む算段ですが資金が集まるメドは立っておらず、危機がギリシャ以外に飛び火したらアウトということで、次への飛び火を抑えるべく、支援協議すら始まっていないイタリアへのIMF使節団派遣が決まりました。ガイアツで危機を防止しようということで異例の事態です。この辺はTPPの議論にも絡みますが、メディアはあえて踏み込みません。

この問題は結局2007年のパリバショックを契機とするサブプライム危機やリーマンショックから連なる一連の金融危機問題で、解決は容易ではありませんし、90年代の日本の金融危機で生じた貸し剥がしが飛び火した97年のアジア危機を大規模化した世界恐慌へ連なる恐れがある一方、G20でも有効な対策が打てない事が明らかとなったわけです。89年のベルリンの壁崩壊以来続いたグローバル化が、大きな課題を抱えて足踏みする状況です壁が取れても問題解決には至らなかったのですが、タイトルの壁とは別の話です^_^;。

ここで取り上げたいのは、有名な九段下の"バカの壁"の方です。最近動きがありました。

東京新聞:メトロと都営 地下鉄一元化へ  改善策続々:東京(TOKYO Web)
2013年までに実施ということで、併せて日比谷線秋葉原と新宿線岩本町の乗換駅指定や一方の乗車券や定期券保有者の他方の改札の無料通過サービスやWimaxなどの無線通信サービスの拡充や合算額から70円引きとする現行の乗り継ぎ割引制度の見直しなど、多岐にわたるサービスの一体化について言及されてます。

この問題は当ブログでも度々取り上げておりますが、猪瀬副知事が言う「一元化の一里塚」というのは明らかに違います。現時点で事実関係を追う限り、東京メトロの株主である東京都の株主提案を受けて乗り継ぎの利便性向上その他のサービスの一体化を進めることで一定の成果を得たということであって、一元化とは別の議論ですが、メディアの報道はほぼ都の猪瀬発言をそのまま垂れ流しております。大本営発表というわけです。

そもそも九段下のバカの壁は、営団半蔵門線と都営新宿線の同時施工で都が営団から工事を受託し、将来の一元化を勝手に先取りした設計としたために生じた壁である点は、メディア報道では全く触れられておりませんし、そもそも新宿線と半蔵門製の乗り換え需要がどれぐらいあるかですが、新宿線新宿側から半蔵門線で大手町やTCATへという流れは期待できるものの、この場合は同一改札内になっても階段の上り下りは生じますから、利便性の向上の余地は小さいといえます。共用ホームとなり階段の昇降が省かれるのは半蔵門線渋谷方面の4番線と新宿線本八幡方面の5番線だけですから、新宿から渋谷へわざわざこのルートを用いる乗客がどれだけいるのかというと、ほとんど役に立たないわけです。

それでも別改札だったものを統合すれば機器も要員も減らせますから、合理化にはなりますが、1つ問題になるのが、メトロと都営のどちらの管理駅になるかです。一方が他方に駅業務を委託し委託料を支払うわけですが、元々営団時代から職員の待遇差が一元化のネックになっていただけに、実務面での調整は難航すると見られます。それ以上に実際に乗客に接する駅職員の接客能力に正直差がある状況でもありますし、検討段階で組合の反対が出る可能性もあり、簡単には進まないと見られます。石原知事の1期目に都営交通の民営化をぶち上げて、結局組合との調整がつかず頓挫しましたが、その愚を繰り返す可能性があります。

九段下の乗り継ぎ駅としての機能面から見れば、副都心を素通りする東西線の新宿、渋谷へのアクセスが中心となりますが、実は東西線と半蔵門製は別改札ですから、バカの壁が撤去されても、ほとんどの乗客はその恩恵を得られないのです。都が勝手に一元化を先取りした結果、多数派の乗客にむしろ不便を強いている状況を生み出し、且つ改善されずに放置されるとすれば、あまりにもバカバカしい話です。"バカの壁"の"壁"が取れても"バカ"は残るわけです。

秋葉原と岩本町の乗り継ぎ駅指定も、結構な話です。乗り継ぎ駅が増えると、利便性の向上のみならず、メトロと都営の運賃計算の最短経路特例で、運賃が安くなる駅間が幾つか出ます。その結果、運賃低下による減収はありますが、同時に値下げ効果で利用を誘発する効果もありますが、問題はメトロと都営の運賃水準の違いで、現状メトロ<都営の関係ですから、減収効果は都側に多めに出て誘発効果はメトロに多めに出る点を指摘できます。実はこのことは現状70円の乗り継ぎ割り引きの拡大や、一歩進めて共通運賃導入などを考えるときに障害になります。ですから今回の改善策でも、乗り継ぎ割引運賃の見直しや共通運賃化までは踏み込めなかったわけで、猪瀬副知事の「一元化の一里塚」発言にも拘らず、都営側の事情で話が進まなくなるわけです。

そもそも猪瀬副知事の一元化論は、都営地下鉄が2007年に単年度黒字に転換した事を根拠としているわけですが、忘れてならないのが4,000億円を超える累積債務と1兆円を超える長期債務の存在です。単年度黒字といっても200億円程度の話で金利を加味した債務償還は塁損だけでも30年、長期債務は経年劣化による更新投資も迫られますから、結局完済は無理な水準です。それを無視して東京都心は金城湯池だから都営もメトロ並みの優良企業になるというあり得ない前提を置いて議論しているわけで、元々不可能な話です。仮に強制的に経営統合すれば、上場を目指す東京メトロの株主価値を毀損することになり、株主である東京都にも不利益となるわけです。だから再三述べているように、都がメトロの上場に合わせて国と共に保有株式を売却し、売却益で都営地下鉄の累積債務を相殺し軽減する方が、運賃の統一など実質的なサービスの一元化の実現が近づくわけです。

安倍公房の「壁―S・カルマ氏の犯罪」で「金持ちが天国へ行くのはラクダに乗って針の穴を通るより難しい」のだから「ラクダに乗れば針の穴を通れる」というレトリックが登場します。猪瀬流地下鉄一元化論は同類のまやかしだということですね。最後は壁でまとめてみますた^_^;。

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Thursday, November 03, 2011

ガイアツの夜明け

またもや日本政府が為替介入を実施しました。しかも今回は79円台前半の指し値介入という手法を用い、結果的に推定7-8兆円という大規模なものとなり、さすがにドル/円レートは押し戻されましたが、その後ジリジリと円高は進み、日本の祝日に当たる本日(3日)に1円以上の円高となると予想されます。

為替介入で相場を動かすことはできないことは、過去の事例で学習されるべきことですが、月末狙い撃ちの指し値介入というところに政府の意図が見えます。早い話企業の決済集中日に大幅な円安水準の指し値ポジションを取ることで、円高で目減りする企業利益の補填は可能なんで、言ってみれば国による企業の粉飾幇助です。よくもまぁこんな途上国ばりの国家資本主義政策ができるものです。あ、どじょう宰相のどじょう国か(笑)。

まぁこんな国だから、ほかの問題でもあらゆるレトリックを行使して目くらましを仕掛けます。例えばTPP交渉参加問題です。TPPに関してはあまりにも誤解に基づく言説が流布されていますが、そもそも関税撤廃で自由貿易促進というロジックが大嘘です。TPP自体は単純な関税同盟ではありませんが、日本にとって貿易シェアの高いアメリカの工業製品の関税は元々低く、例えば乗用車で2.5%とか家電品で4%とかその他もせいぜい数%程度です。08年のリーマンショック後に日本円が対ドルで4割以上増価したように、輸出の障害としては為替変動のほうが遥かに大きく、わずかばかりの関税撤廃は大勢に影響はありません。

逆に日本の高関税が問題視される農業分野ですが、これもコメ、小麦、乳製品、コンニャクなど一部品目の高関税に留まり、野菜などは既に低関税で事実輸入野菜が日常的にスーパーの店頭に並ぶ状況です。これら高関税品はつまるところ既得権益の保護問題でして、ここにメスを入れられるならば直ぐにでも日本単独で解決できる問題です。何も多国間協定のような不自由な枠組みの外交交渉の中で行う必然性はありません。つまりTPP交渉参加は無意味です。

むしろ貿易分野以外の規制改革分野こそが重要なんですが、TPPは基本的にネガティブリスト方式となるわけで、つまり規制や高関税の根拠となる例外事項を列挙して、記載のない事項は原則自由となるわけで、提訴合戦に発展する可能性を秘めています。ま、そこまで極端な議論をしても始まりませんが、確実にガイアツは増すということは指摘できます。

逆に邪推すると、このガイアツこそが狙いという見方も可能です。実際メディアに露出している議論は農業分野に偏っていますが、これは多分農業分野への補助金バラマキの地ならしです。実際10年度本予算で大幅削減された農地基盤整備滋養が、菅政権次代に組まれた10年度補正予算でTPP対策として復活しております。つまり与党内で行われているTPP参加に関する意見集約も、予算をつけて黙らせようという執行部の思惑が透けて見えます。つまりガイアツを利用すればいくらでも無駄なバラマキができて、むしろ既得権益を保護できるわけで、復興増税や消費税増税の既成事実にもなるわけです。将に"ガイアツの夜明け"です(怒)。つまり自由貿易を標榜しながら逆のことが行われようとしていると見るべきでしょう。

確かに新興国では国際社会とは異なった商慣習で摩擦を生じる事が多く、貿易や投資を活発にするためには、各国の努力は欠かせませんし、進まない国内改革の梃子に外圧を利用するというのは、かつての台湾やIMF管理下のタイや韓国でも見られたことですし、その結果当該国が経済的に躍進したことは確かです。しかしその結果韓国では格差拡大で政治が不安定になりましたし、タイはタクシン派と反タクシン派の不毛な対立が続き、2006年の軍事クーデターに至り、その結果タクシン政権下で計画されていた大規模治水事業が頓挫し、大洪水の遠因となるなどしているわけです。

同様にEUの市場統合も相互に外圧を利用し合う側面はありますが、その結果がギリシャ危機であるということも指摘すべきでしょう。ギリシャではEUの支援策の条件となる財政再建を巡って国民投票の実施と言う話にまでなっております。結果如何ではユーロ離脱の可能性もあり、世界を慌てさせましたが、リスボン条約ではユーロ離脱の規定はなく、EUからの離脱のみ規定されており、実際の国民投票はEUに留まるべきかどうかとなると見られ、ギリシャ国民の多数派はEUに留まる選択をすると見込まれますので、むしろ足を引っ張る議会対策の側面が強いものです。とはいえそれだけ支援スキームの実行が遅れるわけで、やはり影響は計り知れません。

というわけで、政治の停滞は日本に限った話ではないんですが、官僚機構が強固な日本の場合、結果的に官僚支配が強まる傾向は否めません。その意味で捨て身の国民投票に舵を切ったギリシャのパパンドレウ政権の方がまだ政治家の顔が見えます。政治主導はどこ行った-_-;。

あとメディアではほとんど振れられませんが、TPPはWTOのような包括的な国際機関ではなく、あくまでも参加国同士の協定で、非加盟国に対しては排他的です。特に日本の最大の貿易相手国は中国であり、TPP参加は当然中国との関係を微妙にします。

これは別に日本のTPP参加に中国が政治的に反応するというよりも、既に関係の深いEUとの関係を深化させるという形で対応すると考えられます。中国市場では自動車や鉄道分野でドイツのプレゼンスが大きく、ただでさえ日本勢は劣勢にありますが、中国とEUのFTA締結で結果的に日本勢が中国市場からはじき出される危惧もあります。そうなるとTPPで得られるものより失うものの方が大きいという結果にさえなります。

中国はとかく付き合い辛い国ではあります。特に知的財産権問題は悩みの種で、高速鉄道技術の特許申請など油断できない動きを示しますが、この問題はどちらかといえば日本側の特許の管理の甘さをつけ込まれたとみるべきでしょう。旧国鉄の解体で権利者が不明確だったことや、メーカーとの権利関係が曖昧だったりという、日本側の事情によるものと言えます。そういう観点からこのニュースを見るべきでしょう

東急車輛製造株式会社の鉄道車両製造事業の経営権取得について(PDF)
新津での車両製造を始めるときに東急車輛に半ば強引に特許の公開をさせたJR東日本に国鉄体質があったことは否めませんが、特許の共同管理という曖昧な状態を放置すれば、世界ではいつどこで足許をすくわれるかもしれないわけで、その意味で中国で良い勉強をしたと言えます。というか、そもそもスマートフォンやタブレットを巡るアップルとサムスンの訴訟合戦のように、世界へ進出する場合は特許紛争は付き物ぐらいに見ておくべきです。

元々特許関連の制度は国によってまちまちで、特許申請は主要国を網羅しなければ意味がなく、当然コスト面から大手企業でなければ扱えない現実があります。同時に類似する特許の相互利用といったいわゆるクロスライセンス契約も広範に行われるわけで、Googleによるモトローラ・モバイル買収はアンドロイド陣営のハードメーカーに特許紛争の足場を提供するためと言われます。JR東日本も痛い目に遭って世界の現実を知ったと見ることができます。

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