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Monday, November 14, 2011

八百万の神々のたそがれ?

震災から8ヶ月。福島第一原発では放射性キセノンが検出され、俄に再臨界が疑われましたが、その後の東電の発表で自発核分裂と発表され訂正されました。大事ではないということですが、気をつけなければならないのは、通常の運転停止でも起きる事象という説明を鵜呑みにしないことです。

何故ならば通常の運転停止では自発核分裂は全て圧力容器内での出来事で、環境中にキセノンが漏出する事はないのですが、それが漏出している事が問題なんです。つまり8ヶ月経っても事故の収束に至らず、また東電が再臨界の疑いと発表した事によって、東電自身が現場の状況を把握し切れていない事を露呈した事が問題なんですね。

それでいて十分な情報開示は行われず、最近の海外メディアの論調は、明らかに東電や政府の対応の遅さや情報開示の不十分さに苛立っています。そして複数のメディアが環境中に漏出した放射性物質の量が東電発表を上回り、チェルノブイリを越えた最悪の原発事故という見方をするようになっています。ですから再臨界はなく状況は安定しているという事を言えば言うほど不信感が増幅する結果になるばかりです。

こんな状況ですから、原発の再稼動問題はすんなり進むはずもなく、九電のやらせメール問題もあって国や電力業界に対する内外の目は厳しさを増します。その中で再臨界の発表がされた同日、九電は事故で緊急停止した限界原発4号機の運転再開をしました。とはいえ12月には定期点検で運転停止の予定ですから、僅か1ヶ月の運転のために第三者委員会の調査結果を無視して世論の逆風を浴びるのは、定期点検後の再稼動を難しくするだけで、ただただ愚かとしか言いようがありません。というわけで、福一の事故収束もままならず原発再稼動はかなり遠い話となりそうで、当面日本は節電モードが続きます。

そんな中で政府も節電の長期化を睨んで、電気事業法27条による総量規制から、ピーク抑制に重点を移す事となり、企業に一律に課している節電目標を、自家発電やタイムシフトなどでピーク抑制に取り組む企業には緩和する事が1つ目の柱。もう1つは民生用の省エネ家電や蓄電池、EVなどの開発を促進する制度の導入ということで、うまくいけば問題ないものの、まかり間違えば大停電のリスクがある大きな賭けでもあります。

とはいえ発送電分離による自由化や、ピークロードの料金上乗せなどには踏み込んでおらず、現行の発送電一体の電力会社の業態を維持するものでしかありません。特に原発依存度の高い関西電力と九州電力は厳しい状況で、それぞれ10%と5%の節電要請を需要家に求めるとしております。電力使用制限令の発動ではなくあくまでも自主的な節電を呼びかけるものだそうです。加えて世論の批判を浴びた鉄道会社や病院などへの電力供給には配慮されるということですが、冬の節電には夏とは違った事情もあります。

夏の場合ピークタイムは昼間ですから、通勤輸送でピークを迎える鉄道にとってはある意味省電力に取り組みやすい状況でした。幾つかの手法がありますが、主なものはカラ退避の解消です。つまり緩急運転を行う路線では、朝夕と比べてダイヤの空いている昼間は、ダイヤ編成上普通が優等を退避するために退避駅で長時間停車が常態化している実態があるわけですから、これを優等の運転に支障しない範囲で普通の退避駅での停車時間を切り詰め、その分普通を通常ダイヤよりわざと遅らせて走らせるものです。この方法の優れた点は、元々加減速が頻繁な普通の方が消費電力が大きいところを削減できて、しかも乗客の乗車距離も短いので相対的に乗客への迷惑を最小化できる点です。社によって節電ダイヤとしてダイヤ改正を行ったケースと、ダイヤはそのままで指令による計画的遅延の指示によって実行されたケースの2通りがあったようですが、乗客に知らせる運行時刻より早発は乗り逃しになりますが、多少の遅延ならば乗車は可能で、特に退避駅で優等へ乗り換えるケースならば実害ゼロとなるという優れものです。

ところが暖房の必要からピークが夜にずれる冬の節電は、この手では乗り切れないわけで、新たなI対応を考えなければなりませんが、考えられるのが終車の繰り下げです。つまり元々朝と比べて乗客も分散しており、朝ほど時間制約のきつくない夕刻ダイヤにあえて余裕を持たせると共に、そこでの積み残しを後ズレさせることで電力のピークカットを行うというものです。それで居酒屋が繁盛すれば少しは景気が上向くかも^_^;。

あと鉄道で電力使用量が増加する要因として、事故等によるダイヤの乱れで回復運転を行うケースですが、この場合も一部列車の運休と運用変更で回復運転を回避すれば節電、厳密に言えば電力増加の回避につながります。そのためにはそもそも事故を減らす必要があり、特にホーム転落による人身事故は、首都圏では毎日必ずどこかではおきてしまうぐらい頻度が高いということもあり、ひょっとしたら節電のためにホーム柵設置が進む可能性もあるかもしれません。それと連動して定位置停止装置(TASC)の設置が進めば、未熟練の運転士による減速後の再加速などのいわゆるノコギリ運転の防止にもなり、この面でも省電力が進む可能性があります。

あと高加速運転ですが、京王電鉄が全線のATC化を進め、その関連で従来2.5km/h/sとしていた加速度を3.3km/h/sとする高加速運転モードに切り替えました。問題は高加速を利用してスピードアップせずに余裕時間を増やす形にすれば、それだけ力行時間を短縮できて省電力になります。調布市内の連続立体化を期にスピードアップを目論んでいたと見られる京王線のスピードアップお預けは残念ですが、当面の電力事情を考えればやむをえないところです。

そして東京メトロが導入したPMSMの積極的利用も1つの解になり得ます。メトロ以外では東武鉄道が30000系6連1編成をPMSMに換装して長期テストを始めたものの、現状ではIM式VVVFに対して明確な優位があるというわけではないことは既に指摘しましたが、PMSMの弱点を消す意味で車上にバッテリーやキャパシターなどの蓄電装置を搭載し、PMSMから発生する回生電力を吸収し利用する事を考えれば、ある意味鉄道にとって大きな省電力ツールとなる可能性があります。加えて短時間の停電でも動力を失わないならば、地上側の保安装置の電力が生きているならば運転が継続できるなどの利点もありますから、この方向性でPMSMが普及する可能性はあります。

と言うわけで、電力問題に関しては悲観も楽観もしておりませんが、制約条件となることは間違いないところです。そして制約条件の中でこそ、真のイノベーションに期待が出てくるものです。正直言ってTPPで関税を撤廃して日本製品が売れるとも思えませんし、日本企業が利益を減らしながら成長を模索している図は、言い方は悪いですが滅びの美学に見えます。その過程でギャンブル狂いの御曹司のご乱行や精密機器メーカーの20年越しの損失隠し発覚など、個別事例とは言い切れない日本企業の闇が明るみに出てきました。こんな企業を国ぐるみで助けても無駄です。

円高で物が売れないというのもどうでしょうか。80年代には円高を受け入れながら世界シェアを拡大してきたわけですが、高品質ならば高くても買ってくれる先進国市場から価格見合いのバリューが重視される新興国市場への重心移動に日本企業が対応できていないだけの話です。

そんな中でのTPP論争のアホらしさは、結局参加のための事前協議の開始としてはぐらかされましたが、実態は何1つ動いていないのに、推進派は評価し反対派も納得して矛を収めて、結果的に議論は置き去りです。TPPの議論で私が思うのは、EUに至る欧州の統合の歴史も、決して平坦ではなく行きつ戻りつしながら試行錯誤されていて、日本で考えられている以上に複雑ということです。ここでは立ち入りませんが、以下にキーワードを並べておきます。

ECSC+EEC+EANC→EC/EU
EFTA*EC/EU→EEA
この辺の解説がスラスラできる人はおそらく日本にはほとんどいないでしょう。ただただ欧州の多様性に脱帽です。

そしてそれよりメディアの扱いが大きかったのが読売の清武の乱ですが、日本シリーズを逃した読売のシリーズ潰しかとも取れるタイミングで、しかも両者の言い合いが余りにアホらしくて笑えます。思えば日本の原子力開発道筋をつけたのが読売の正力松太郎ですが、福一と同様にメルトダウンしてしまったのか(笑)。日本の統治構造が崩壊し始めたかもしれません。

ま、先日のG20もギリシャの突然の迷走で実質何も成果を残せず、そればかりか信用不安がイタリア国債にまで飛び火し、本当に世界恐慌の可能税さえ出てきました。とはいえなぜイタリアに飛び火したかは必ずしも明確ではありません。イタリアの財政赤字は単年度でGDP比4%でフランスより上、プライマリーバランスはユーロ圏諸国で赤字オンパレードの中2%の黒字と、これだけ見れば悪くないのですが、債務残高がGDP比120%の1.9兆ユーロで金額はギリシャの5倍以上で、且つ欧米の多くの銀行が保有しているということで、金融危機の恐れがあるわけです。

こうやって数字を見ていくと日本はそれぞれ単年度GDP比9%の赤字、累積で200%、金額では1,000兆円に届く水準でイタリアの5倍、ギリシャの25倍超という状況ですが、現時点で日本国債は安泰です。それと同時に小泉改革で目標とされたプライマリーバランスの黒字化が如何に無意味かということでもあります。国債危機は金利上昇の形で突然起きるということに成ります。イタリア国債で問題視された金利7%という水準ですが、以前ご紹介した複利計算の7の法則で簡単に説明できます。つまり10年で元本2倍の水準ですから、プライマリーバランスの黒字化では追いつかないで財政赤字は発散し続けるわけです。イタリアではプライマリーバランスが2%の黒字ですから正味5%と見ることも可能ですが、それでも10年が15年に変わるだけで、元本が膨張し続ける事に変わりはありません。

イタリアの場合9年在職したベルルスコーニ首相が原因を作った張本人です。ザックリ言えば積極財政で赤字を垂れ流し、プライマリーバランスは黒字化したものの、財政危機は防げなかったわけで、震災復興や社会保障を口実に歳出の見直しが進まない現状では10年後の日本を示唆する出来事です。

というわけで、メルトダウンしているのは福一だけじゃないかもしれません。神国日本の八百万の神々もたそがれている今日この頃です。

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Comments

「足らぬ足らぬは工夫が足りぬ」
そんな標語が頭に浮かびました。
原発、節電、企業経営・・・。
今回取り上げられたテーマにことごとく通じますね。

とにかく、スカッと元気の出る話はないものでしょうか。

世界中で不幸合戦を繰り広げているようで・・・。

え~。
あと・・・。

>これを優等の運転に死しよしない範囲

「優等の運転に支障しない範囲」でよろしいですか?
当て字だったら、すいません。。。

Posted by: blue sky | Tuesday, November 15, 2011 at 12:28 AM

重ね重ね、誤変換のご指摘感謝です。

世界の不幸合戦ですが、欧州危機はつまるところバブル崩壊ですから、ITバブルと住宅バブルが崩壊したアメリカ共々、日本同様に10年単位の経済停滞局面に入ったということになります。

日米欧三極が足並みを揃えれば、その内需で潤っている新興国も道連れですから、当面はスッキリしない状況が続きそうです。

とはいえ、だからこそイノベーションのチャンスであるということは言えます。逆境の乗り越え方こそ経営の巧拙が出る場面でもあります。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 15, 2011 at 08:07 PM

ご丁寧に恐れ入ります。

私のペンネームが「呪いのネーム」になってやしないか、冷や冷やです(汗)

日米欧と足並み揃えて停滞局面。

20世紀前半なら戦争で打開を図る行動の選択肢もあったのでしょうが、
21世紀はどのような対処となるのでしょうか。
局地戦で戦争というオプションは活用されてしまうのでしょうかね?

過去の経験則が処方箋になりにくいので、この苦難を乗り越えるのは並大抵のことでは
ないでしょうが・・・。

勇敢に立ち向かうしかないですね。

しかし、このタイミングのTPP加入はどういう結果をもたらすのでしょうか。

Posted by: blue sky | Wednesday, November 16, 2011 at 12:04 AM

鉄道の節電は各社で事情が異なるので、これといった特効薬がないですよね。ご指摘の待避時間削減は京急のようなタイトなダイヤでは優等のスジを寝かせないと難しいですし、加速度の向上も瞬間的には消費電力が増えます。実際、国鉄101系は消費電力が多く加速度を下げた経緯がありますし、田園都市線では一部の区間で朝ピーク時にフルノッチを禁止したりしています。福知山線の脱線事故の教訓から、節電のためとはいえ過度に余裕時分を削るのは難しいでしょうね。

そもそも、全体に占める鉄道の電力使用量の割合は小さいので、無理して節電する必要はないと思います。

Posted by: yamanotesen | Wednesday, November 16, 2011 at 07:52 PM

コメントありがとうございます。

>BlueSkyさん
ホントに冗談ではなく戦前と状況が酷似してきてます。とはいえ戦争のオプションは兵器の性能向上でダメージが大きすぎます。皮肉な現実ですが。

TPPはISD条項が盛り込まれているとすれば、明らかに中国排除の経済同盟で、ある意味戦争に代わるオプションなのかもしれません。とすると中国が最大の貿易相手国である日本にとっては何の国益もありませんね。

>yamanotesenさん
元々産業用電力と鉄道用電力は需要が重ならないので、本来は親和性が高いはずなんですが、ダイヤが乱れたときの回復運転などで予想外の需要が出たりするために、安定供給を口実に電力会社に嫌われているのです。

本来は電力自由化で電力供給源を多様化することが、鉄道会社にとっては望ましいわけですが、東電を潰さない選択をした時点で、鉄道が目の敵にされる体制が固定化されたわけです。

JR東日本は川崎火力の設備更新までして電力供給に協力したにも拘らず、東電の買い取り価格の値下げで完全に裏切られております。電力会社の身勝手は本当に腹が立ちますね。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, November 16, 2011 at 11:11 PM

震災に関連して。
JR東日本が震災被災地域の鉄道復旧をバスで進める
方針とか。
「バス高速輸送システム=BRT」ってのを不勉強
ながら初めて知りました。

線路を道路にして、というと旧北陸本線の跡を走る
国鉄バス、という印象があるのですが、そうなると
廃止するのも簡単ですね。
反面、東京との高速バスをより効率的に設定できる
ことも可能となるでしょうから、活路を見出し易い、
というメリットもあるのでしょうか。

地域にとって、いい方向に進んでほしいですね。

Posted by: blue sky | Monday, November 21, 2011 at 11:52 AM

JR東日本が山田線、大船渡線、気仙沼線の各一部区間をBRTで復旧させるそうですね。

詳細はわかりませんが、JRバスを走らせるとは限らないのでしょう。集落の高地移転の問題もあり、鉄道としての復旧には時間がかかる状況で、とりあえず復旧を急ぐということでしょう。バスならば高地移転にも一般道を組み合わせて柔軟に対応できますし。

首都圏では鹿島鉄道の廃線跡をバス専用道としてBRTと称してます。逆に鉄道としての復旧は難しくなる可能性もありますが、バス利用だと通学時間が倍増するケースもあることから、鉄道用地を専用道とすることで、サービス水準を鉄道に近づける狙いと考えられます。地元がどう判断するかは微妙ですね。

Posted by: 走ルンです | Monday, November 21, 2011 at 10:53 PM

>鹿島鉄道の廃線跡
思い出しました。
あのシステムをBRTと称するのですね。

被災地線区のBRT化ですが、JRバスが走るもの、
と合点していましたが、異なる事業者が運行させる
可能性もあるのですね。

そうなると、運賃は鉄道と通しになるのか。
JR以外の事業者が運行となると通行料は
どうなるのか、とか、実質的にバス転換だな、
とか考えることは沢山有りますね・・・

Posted by: blue sky | Tuesday, November 22, 2011 at 09:33 AM

BRTですか、一つの方向性ですね。
参考になるかどうか分かりませんが常磐線の代行区間では普通に切符を買って乗って出るときに渡してます。
それと相馬、原ノ町間は地元のバス会社に委託してるので仕事の枯渇している現状ではありがたいと運転手の人は言ってました。

実際問題、JR東日本に基礎体力があるとはいっても震災前から営業係数なとても残念なことになってた地方過疎路線を公共の助成無しで単独で復元というのはあまりにも酷な話だと私はおもってます。

地元の判断についてですが元に戻りたい人と同じくらい津波地域が怖いという人がいますから、おそらくになってしまいますが沿線の意見の今回については完全に割れてしまうんじゃないでしょうか。

なんにせよ地域の人たちが使ってくれての公共交通ですから多少揉めてでもいい機会なのでベストと思えるものを模索してみてもいいのではないでしょうか。
(石巻の友人に同様の事を話したら生活苦しいのに揉めてる余裕なんぞないっておこられましたが。それももっとも話です(笑))

Posted by: 幻月 | Tuesday, November 22, 2011 at 07:26 PM

バス高速輸送システム(Bus Rapid Transit)でイニシャルを取ってBRTですね。

現時点で詳細は不明ですが、地元との協議次第で中身も変わると思います。場合によっては鉄道による復旧を担保する意味で鉄道扱いで地元バス会社に運行委託という代行輸送のスキームで長期化することも考えられます。

日本の法律では全業黒字のJRへの公的支援は難しいだけに、どうすることが真に地域にとって望ましいのか、本当に深く考えて欲しいですね。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 22, 2011 at 11:45 PM

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