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Sunday, November 06, 2011

バカの壁、壁が取れても残るバカ

結局ギリシャ1国に世界が振り回され、仏カンヌに集ったG20首脳も有効な対策を打ち出せないまま過ぎた1週間でした。1兆ユーロのEFSF拡充は決まっても、ユーロ圏の拠出は2割止まりで残りは他国や民間の資金を呼び込む算段ですが資金が集まるメドは立っておらず、危機がギリシャ以外に飛び火したらアウトということで、次への飛び火を抑えるべく、支援協議すら始まっていないイタリアへのIMF使節団派遣が決まりました。ガイアツで危機を防止しようということで異例の事態です。この辺はTPPの議論にも絡みますが、メディアはあえて踏み込みません。

この問題は結局2007年のパリバショックを契機とするサブプライム危機やリーマンショックから連なる一連の金融危機問題で、解決は容易ではありませんし、90年代の日本の金融危機で生じた貸し剥がしが飛び火した97年のアジア危機を大規模化した世界恐慌へ連なる恐れがある一方、G20でも有効な対策が打てない事が明らかとなったわけです。89年のベルリンの壁崩壊以来続いたグローバル化が、大きな課題を抱えて足踏みする状況です壁が取れても問題解決には至らなかったのですが、タイトルの壁とは別の話です^_^;。

ここで取り上げたいのは、有名な九段下の"バカの壁"の方です。最近動きがありました。

東京新聞:メトロと都営 地下鉄一元化へ  改善策続々:東京(TOKYO Web)
2013年までに実施ということで、併せて日比谷線秋葉原と新宿線岩本町の乗換駅指定や一方の乗車券や定期券保有者の他方の改札の無料通過サービスやWimaxなどの無線通信サービスの拡充や合算額から70円引きとする現行の乗り継ぎ割引制度の見直しなど、多岐にわたるサービスの一体化について言及されてます。

この問題は当ブログでも度々取り上げておりますが、猪瀬副知事が言う「一元化の一里塚」というのは明らかに違います。現時点で事実関係を追う限り、東京メトロの株主である東京都の株主提案を受けて乗り継ぎの利便性向上その他のサービスの一体化を進めることで一定の成果を得たということであって、一元化とは別の議論ですが、メディアの報道はほぼ都の猪瀬発言をそのまま垂れ流しております。大本営発表というわけです。

そもそも九段下のバカの壁は、営団半蔵門線と都営新宿線の同時施工で都が営団から工事を受託し、将来の一元化を勝手に先取りした設計としたために生じた壁である点は、メディア報道では全く触れられておりませんし、そもそも新宿線と半蔵門製の乗り換え需要がどれぐらいあるかですが、新宿線新宿側から半蔵門線で大手町やTCATへという流れは期待できるものの、この場合は同一改札内になっても階段の上り下りは生じますから、利便性の向上の余地は小さいといえます。共用ホームとなり階段の昇降が省かれるのは半蔵門線渋谷方面の4番線と新宿線本八幡方面の5番線だけですから、新宿から渋谷へわざわざこのルートを用いる乗客がどれだけいるのかというと、ほとんど役に立たないわけです。

それでも別改札だったものを統合すれば機器も要員も減らせますから、合理化にはなりますが、1つ問題になるのが、メトロと都営のどちらの管理駅になるかです。一方が他方に駅業務を委託し委託料を支払うわけですが、元々営団時代から職員の待遇差が一元化のネックになっていただけに、実務面での調整は難航すると見られます。それ以上に実際に乗客に接する駅職員の接客能力に正直差がある状況でもありますし、検討段階で組合の反対が出る可能性もあり、簡単には進まないと見られます。石原知事の1期目に都営交通の民営化をぶち上げて、結局組合との調整がつかず頓挫しましたが、その愚を繰り返す可能性があります。

九段下の乗り継ぎ駅としての機能面から見れば、副都心を素通りする東西線の新宿、渋谷へのアクセスが中心となりますが、実は東西線と半蔵門製は別改札ですから、バカの壁が撤去されても、ほとんどの乗客はその恩恵を得られないのです。都が勝手に一元化を先取りした結果、多数派の乗客にむしろ不便を強いている状況を生み出し、且つ改善されずに放置されるとすれば、あまりにもバカバカしい話です。"バカの壁"の"壁"が取れても"バカ"は残るわけです。

秋葉原と岩本町の乗り継ぎ駅指定も、結構な話です。乗り継ぎ駅が増えると、利便性の向上のみならず、メトロと都営の運賃計算の最短経路特例で、運賃が安くなる駅間が幾つか出ます。その結果、運賃低下による減収はありますが、同時に値下げ効果で利用を誘発する効果もありますが、問題はメトロと都営の運賃水準の違いで、現状メトロ<都営の関係ですから、減収効果は都側に多めに出て誘発効果はメトロに多めに出る点を指摘できます。実はこのことは現状70円の乗り継ぎ割り引きの拡大や、一歩進めて共通運賃導入などを考えるときに障害になります。ですから今回の改善策でも、乗り継ぎ割引運賃の見直しや共通運賃化までは踏み込めなかったわけで、猪瀬副知事の「一元化の一里塚」発言にも拘らず、都営側の事情で話が進まなくなるわけです。

そもそも猪瀬副知事の一元化論は、都営地下鉄が2007年に単年度黒字に転換した事を根拠としているわけですが、忘れてならないのが4,000億円を超える累積債務と1兆円を超える長期債務の存在です。単年度黒字といっても200億円程度の話で金利を加味した債務償還は塁損だけでも30年、長期債務は経年劣化による更新投資も迫られますから、結局完済は無理な水準です。それを無視して東京都心は金城湯池だから都営もメトロ並みの優良企業になるというあり得ない前提を置いて議論しているわけで、元々不可能な話です。仮に強制的に経営統合すれば、上場を目指す東京メトロの株主価値を毀損することになり、株主である東京都にも不利益となるわけです。だから再三述べているように、都がメトロの上場に合わせて国と共に保有株式を売却し、売却益で都営地下鉄の累積債務を相殺し軽減する方が、運賃の統一など実質的なサービスの一元化の実現が近づくわけです。

安倍公房の「壁―S・カルマ氏の犯罪」で「金持ちが天国へ行くのはラクダに乗って針の穴を通るより難しい」のだから「ラクダに乗れば針の穴を通れる」というレトリックが登場します。猪瀬流地下鉄一元化論は同類のまやかしだということですね。最後は壁でまとめてみますた^_^;。

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Comments

実務面での調整は難航する
組合の反対が出る可能性もあり、簡単には進まないと見られます
都営側の事情で話が進まなくなるわけです

出来ない探しをして恥をかいてしまいましたね。

Posted by: AAA | Sunday, March 17, 2013 at 06:26 AM

はて、壁が取れたけどバカは残ってます。「恥かいた」は意味不明ですね。

Posted by: 走ルンです | Sunday, March 17, 2013 at 07:29 AM

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