新駅報道で「わかった」JR東日本と東京都の大人の事情
JR東日本が2013年度を目標に整備中の東北縦貫線ですが、完成後に田町車両センターを廃止して再開発されることは、かなり前からわかっていましたし、新駅建設も非公式に検討されてきたものですが、それが新年1月3日というタイミングでニュースになるということに驚きました。時系列でいうとここからのようです。
山手線、40年ぶりに新駅…品川―田町間 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞その後他のメディアが後追いで報道し、相変わらずの横並び報道です。しかもニュースソースが不明確で、いわゆる「わかった」報道という奴です。この主語のない報道の形は、何らかの意図を持ったリークによるものであることが多く、またメディアの横並び報道は、誰かが口火を切ることを号砲とする記者クラブメディア特有の現象です。基本的には各メディアは事実を認識していて報じていなかっただけなんです。
そういう意味でこのニュースはとても気持ち悪いニュースです。しかも松も明けない正月3日というタイミングは、狙っていたとも取れるだけに、本当に不気味です。問題は誰が何の目的でリークしたかですが、実にバカバカしいほどあっさりと、その正体は割れました。
山手線に新駅「採算合う」、都知事ら歓迎の声 : 東京 : 首都圏 : 鉄道ニュース : 新おとな総研 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)いや石原知事は正直です^_^;。早い話が都は費用負担をしたくないけど、港区が負担するには大き過ぎるということで、暗にJR東日本に圧力をかけているのです。読売を尖兵にメディア各社はその尻馬に乗ってしまったんですね。結果JR東日本に世論の圧力が向くというシナリオです。
13年度に迫る東北縦貫線の完成を見越して、田町車両センター所属の211系がE233系3000番台での置き換えが始まっております。東北新幹線との二重高架区間前後の勾配登坂性能を言われますが、それならば国府津区や新前橋区の211系も対象になるはずですが、今のところ動きはないようですから、おそらく客用ドアの半自動スイッチがないことから、東北縦貫線ができれば尾久かどこかへ転属して東北線や高崎線でも運用されることを想定したものかと思います。残る211系に関しては上野以北と東京以南限定で運用することで当面存続させることは可能でしょう。
こうして着々と進む東北縦貫線の開業準備ですが、新駅設置で都とJRのさや当てが起きていることは間違いないでしょう。JRとしては新幹線、在来線を含め、民営化後に駅を新設する場合は地元負担が原則で、これはJR東日本に限らない話です。2006年には東海道新幹線の南びわ湖駅設置をめぐり滋賀県知事選で差し止めを訴えた新人の嘉田知事が当選しニュースになりました。駅設置は地元の利害が絡む問題であり、営利企業のJRは地元の意思に従うという意味で、民営化後の一般原則として踏まえるべきものと言えます。また実際に駅設置の費用負担をした各自治体の立場からいえば、東京都Iだけ特別扱いは容認できないでしょう。
その意味では都の費用負担をJRに押し付けるかのごとき姿勢には問題があります。というか最近の都の姿勢は問題だらけです。例えば東京スカイツリー開業で渋滞が予想されることから、業平橋―曳舟の役50mほどの区間の立体化に都は支出せず、墨田区の単独事業となりました。これには前段がありまして、元々東武鉄道が伊勢崎線の混雑緩和を目的に特特法事業として半蔵門線直通と業平橋駅の改良と併せて立体化を計画していたのですが、1995年を境に乗客が減少に転じ、計画を断念したことで立体化が宙に浮いたものです。元々右肩上がりを前提とした特特法の枠組みでは対応できなかったわけです。
皮肉なことにその結果宙に浮いた業平橋駅構内の敷地にスカイツリー誘致が実現したわけですが、その結果今度は踏切の渋滞が問題になるわけです。元々まちづくりのグランドデザインがない中での行き当たりばったりの結果ですが、東武鉄道を責めるわけにはいかないでしょう。行政が対応すべき問題です。
田町車両センター跡地再開発問題も同じ構図です。東京都や港区がまちづくりのグランドデザインを策定し、その中に新駅を組み込むのが筋で、営利企業であるJR東日本に負担を求める性格の問題ではありません。ま、特殊要因としては、この区間は丁度京浜東北北線行線が山手線を乗り越す部分でもあり、計画では現行東海道上り線側に線路を振り替えて再開発用地を捻出する形ですから、事業費が大きくなることがあり、どこまでを自治体で負担すべきかは確かに難しいところがあります。逆に言えば自治体側が駅の設置に深くコミットしないと、そもそも再開発用地捻出のための線路振り替え工事にも着手できないわけで、下手すれば田町車両センター跡地は広大な空き地と化す可能性もまります。
とはいうものの、世は既にオフィス不況の時代です。国の「国際戦略総合特区」に指定され、税制の優遇や外国人就労者の入獄審査軽減などの措置を取るとはいっても、その結果別のエリアのオフィスが余剰になるだけで、狙い通りの国際ビジネスセンターになれるかどうかもあやしIところです。例えば再開発が活発だった丸の内や日本橋地区では、結局増床部分のかなりの割合を商業施設に充てていて、それが百貨店の客を奪うなどしているのですから、何のための再開発だったのかというところです。
また品川に新幹線が停車しリニアの始発駅になり、京急で羽田空港とも繋がるなど立地の優位性を喧伝されてますが、その羽田の国際線発着枠が埋まっていない現状も見ておくべきでしょう。もちろん近距離国際線以外は早朝深夜中心で現状では使い勝手が悪いということもありますが、それでも成田の利用実績を前年割れに追い込む程度には利用されており、早朝深夜便などはむしろビジネスよりも観光利用が目立つところです。
余談ですが全日空の合弁によるエアアジアジャパンでLCCへの参入は、裏を返せば成田の発着枠が余って国に返すぐらいならばLCCで活用しようということであり、日本航空の合弁のジェットスタージャパンも同様です。つまり航空大手2社はLCC進出でしか事業継続の展望を得られなくなっているわけで、必然的にLCCの路線拡充は今後も進み、リニアの実現可能性は遠のくわけです。つまり品川はリニアの始発駅になれないわけです。
というか、そもそも未だに再開発頼みで経済を浮揚させられると考えているとすれば、恐ろしく頭悪い話です。当面欧州危機は続きますし、欧州の停滞はアジア景気も冷やします。在来型の夢のあとの豊かにはなれません。ハコモノを積み上げてもこの辺は大阪市の橋下市長にも共通しますが、いい加減途上国の開発独裁の真似事は打ち止めにしないと、財政力のある東京都といえども将来が心配です。田町が広大な空き地になるなら、いっそ防災拠点にでもすれば? 豊島園の何倍も役に立つと思うけど(笑)。
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