« January 2012 | Main | March 2012 »

February 2012

Sunday, February 26, 2012

闇鍋よろしくカモられる年金

投資顧問会社AIJの年金資産消失問題で揺れております。企業年金の問題なので、該当企業に勤めていなければ他人事というのは大間違いです。AIJが運用していたのは、主に厚生年金基金の資産ですから。

企業年金問題はJAL再建問題で指摘したことですが、厚生年金基金という制度はちょっとややこしい制度です。企業年金ですから、保険料は企業が拠出しプールしファンドなどに預けて運用するわけですが、JALの場合のような確定給付型年金の場合は独自に運用する形で、非課税とすることで公的性格を担保するものですが、厚生年金基金は本来は国の公的年金である厚生年金の保険料の一部を加えて基金を作り、独自に運用するものです。資金の規模を大きくする方が運用上有利ということで、大企業ならば単独で基金を作りますが、中小企業の場合は同業の企業が集まって基金を作るケースが多くなります。

しかもほとんどの基金が運用資産の保障利回りを5.5%という高い水準のまま放置しており、いきおいハイリスクな運用を強いられますが、実績は届かず、積立不足が日常化しているわけです。その結果大企業の多くは積立不足を補填した上で基金を解散し、厚生年金からのの預かり資産を国庫に返納するいわゆる代行返上が90年代の金融危機の頃にブームとなり、同業の中小企業のいわゆる総合型基金は取り残された形になっております。つまり一部とはいえ本来厚生年金保険料として国庫に入るはずの資金が毀損したわけです。

大企業の厚生年金基金で目立つのはNTTなど旧三公社からスピンアウトしたグループで、共済年金空の移行だったのですが、旧国鉄から移行したJRの場合で言えば、元々大陸からの引揚者や退役軍人を処遇するために戦後大量採用した結果、年金財政は元々痛んでいて、いわゆる旧国鉄債務の中にはこの積立不足分が含まれますが、本州会社に関しては各社の厚生年金基金の積立不足分として追加負担されたのは以前にも指摘しました。

郵政民営化では当面郵政職員は国家公務員共済に留まるという扱いになっており、30万人もの職員の制度移行は手続き上困難と説明されておりますが、その一方で自公政権時代に被用者年金の一元化の議論がありました。120万人を擁する国家公務員共済で郵政職員30万人の離脱は、言うまでもなく国家公務員共済の破綻の危機となるわけですが、それを隠したまま厚生年金と一体化しようというのは誤魔化しなんですが、勤続20年で給付2割アップとなる職域加算の扱いがネックとなり議論自体が進んでいません。その上民主党の09年マニフェストで新年金制度への移行が提案され政権交代が実現した結果、自公政権時代の被用者年金一元化は沙汰止みとなりました。ま、その民主党案自体が先日の試算結果公表を巡るドタバタがあったように、実現可能性に疑問符がつく状況です。それ以前に郵政民営化見直しで郵政職員の年金問題は話題にも上りませんが、マニフェストで新年金制度へ移行すれば解決するというスタンスなのでしょう。また職域加算の見直しは官僚の抵抗も大きく、官僚に乗っ取られた政権では実現不可能ではあります。

その新年金制度がまた迷走してますが、元々最低保証年金は全額税方式へ移行し、従来の国民年金保険料が廃止になるという前提でした。であれば家計支出が月20万円と仮定すれば現状16千円程度の保険料は8%相当となるわけで、野田政権が進める消費税5%アップも保険料と引き換えならば理解を得られる可能性はあるのですが、引き上げられる5%分のうち社会保障の充実に使われるのは1%分だけで、残りは現行制度の維持に必要と説明されております。4%分といえば10兆円を超える額で、社会保障給付の負担が毎年1兆円程度膨らんでいるということですから、実現すれば本来向こう10年分以上となるはずです。実際は税収の増加分を積み立てて将来に備えれば更に長い期間をカバーできるはずですが、無意味な公共事業や補助金に消えそうです。

例えばこんなニュースがあります。

成田・羽田アクセス短縮 都営浅草線にバイパス新線  :日本経済新聞
羽田と成田の内際分離が見直され、オープンスカイに舵を切ったのは民主党政権の数少ない成果ですが、羽田空港と成田空港の一体運用のために両空港を1時間以内で結ぼうという話は以前からあります。そして菅政権時代の成長戦略会議でも話題に上ったものの、これから両空港ともに発着枠が拡大される局面であり、それぞれの空港の利便性を高めてそれぞれがハブ機能を持つ方が大事ということで、否定的な意見が大勢だったはずです。それがこんな風に蒸し返されるのは、増税を前提に予算請求のタガが緩んだとしか思えません。同様にTPP騒動に紛れて減額された農業基盤整備事業が復活したりしており、「社会保障充実のための消費税増税」はウソというわけです。ちなみに都営浅草線バイパス計画に対する東京都のスタンスも否定的です。東京メトロとの経営統合を目指すのに、これ以上負債を増やしたくないわけです。

厚生年金基金では上述のように給料から天引きされる厚生年金保険料の一部を国庫に収めずに自主運用される仕組みですが、政府の説明では厚生年金は賦課方式のはずですから、本来年金給付に回るはずの資金が基金に貯められるわけですから矛盾しています。年金改革を行うとすればこれも議論のネックとなる可能性がありますが、よく考えていただきたいのは、制度の対象は大手、中小を問わず正規雇用者であるという点です。ある種既得権益化しているわけですが、共済年金の職域加算を見直すならば、並行して見直すべきでしょうが、その際にNTTなど優良な大企業の労組が反対に回ることが確実ですから、労組依存の強い民主党政権では難しいでしょう。

そもそも日本の労組は企業内組合ですが、労組といえば産業別組合が当たり前です。つまり労組は社外組織なわけで、労働関連の法規もそれを前提としています。労働者の労組への加盟は企業への就職とは切り離されていて、加盟することで不利益な扱いを受ける事が禁止されているのはもちろんですが、反面労組の活動は勤務時間外に会社の外で行うものでもありわけです。この部分は日本の労働法規でもそうなっていますが、そもそも企業内組合である日本の労組でこの扱いはおかしいんです。欧米企業では、労組とは別に労使間の協議のための車内組織があるのが普通ですが、労使交渉は行いません。当然社内の調整機関なので勤務時間内に社内で活動しますが、あくまでも労使交渉の相手は社外にある産業別組合です。この体制では残業に関する36協定などは不可能なわけで、サービス在業やうつ病、自殺の労災認定の可否などという日本では見慣れた光景はかなり特殊な状況であるということができます。

その結果雇用される企業の規模に係わらず労働者の待遇は守られるのですが、日本の企業内組合では結局企業規模によって負担力の差があり、それがそのまま労働者の待遇に反映されてしまう結果となります。つまり大企業に勤めなければ良い待遇は得られないわけです。また企業業績が待遇に反映しますから、ゼロ年代の賃上げ抑制のように「企業がつぶれても良いのか」という脅し文句にも弱いわけです。そういう意味で公務員組合は最強の労組になるわけで、公務員の労働三権が制限されている理由であり、また公務員の政治活動の制限も同様ですが、欧米流の産業別組合ならば勤務時間外に社外で活動するわけで、組合活動に参加することを以て差別的待遇にできないのは公務員も同じというわけで、ギリシャもそうですが、欧米では公務員のストも珍しくないわけですし、労組が選挙で特定候補を支援する事も問題なしとなるわけです。

この観点から見ると、大阪市長選を巡る橋下氏長と市交労組との対立にも別の面が見えてきます。現業部門である交通局の労組幹部が市長選に関与したとか、勤務時間中に活動したとかが問題になって争っていますが、企業内組合を前提とする日本の労使慣行で生じたねじれ現象で、確かに日本の法令に背反してはいますが、だからといって労働者の権利としての組合活動を差別的に制限するのは不当労働行為に当たりますので、現行制度下では解決できないわけです。

話が逸れましたが、今回の年金基金の毀損問題ですが、中小企業中心の総合型基金では運用責任者が不在のケースがほとんどで、AIJのような投資顧問会社へ丸投げしているのが現状です。その結果運用実態はブラックボックス化しており、今回の問題もAIJだけの問題ではなく、200社以上あるといわれる同様のt投資顧問会社に第2第3のAIJが隠れている言われます。

あと指摘したいのは、今回のAIJ問題は民間の年金基金を民間の投資会社が投資の失敗で失ったという話ですが、公的年金でも年金積立金運用独立行政法人へ預託して運用されてますが、その保証利回りは4.1%と高く、実際2004年時点では150兆円あった積立金は2011年第2四半期末で108兆円まで減少しています。保険料の見直しとマクロ経済スライドなど給付調整の仕組みを導入して「100年安心」と謳った04年改定ですが、積立金を取り崩しながら100年保つとされていたのか、このペースだと2030年代前半で積立金が枯渇します。何のことはない公的年金自体がAIJに預託した基金と同様の状況に追い込まれております。保証利回りを実態に合わせて下げた上で、日本国債中心のローリスク運用にシフトすべきです。

というわけで年金問題は公的年金と企業年金の絡み合いも複雑で一筋縄ではいきません。将にヤミ鍋状態、突っつけば何が出るかわからないですが、確実なのは年金はカモられているということです。カモが年金背負っているわけです-_-;。それでも年金改革を進めて持続可能な制度にしないと、不安から家計の消費支出は伸びずデフレから抜けられない状況が続きます。14日に日銀が金融緩和を決めたことを好感して円安、株高、金利安に動きましたが、あくまでもアメリカの景気回復期待とギリシャ債務問題の解決期待という根拠の薄い期待先行の動きに過ぎず、持続性は期待できません。困難であっても制度改革に取り組むしか方法はないわけです。

年金問題は複雑でまた間違った議論が横行しており、例えば公的年金の積立方式への移行などは最たるものですが、800兆円に及ぶ積立不足をどう手当するつもりなのか、また大量の積立金を誰がどう責任を持って運用するのかは明確ではありません。単にカモられるだけならば意味がありません。以前にも指摘したように見なし積立方式が考えられる唯一の現実的な解であると言えます。09年マニフェストの民主党案は移行方法を工夫すれば実現可能なだけに、簡単に手垢にまみれさせるなと言いたいところです。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, February 19, 2012

振り替えればSuicaで混乱

相互直通が増えたことと、人身事故などの輸送障害で運転見合わせの頻度が体感的に上がった感のある首都圏の鉄道ですが、その結果振り替え輸送に遭遇することも珍しくないというありがたいようなありがたくないような話です。

鉄道営業法では、旅客は発駅が明示された着駅まで有効な乗車券を携帯しなければならないことになっておりますが、ioカードなどの磁気式ストアードフェアカード乗車券の導入に当たって問題となりました。自動改札機による入出場チェックによるチェックイン・チェックアウト方式で乗車券に引き換える手間を省く結果、旅客は乗車中鉄道営業法に定められた有効な乗車券を携帯していない状態になるわけです。

もちろん鉄道営業法では乗り越し精算や方面変更手続き下車前途無効扱いなど、旅客が乗車後に目的とする着駅を変更する場合の規定がありますが、これらはあくまでも例外として定義されているのですが、ストアードフェアカード乗車券の場合、これが常態化するわけですから、例外が日常となるというところが問題視されたわけです。そのためIOカードでは入場駅の最低運賃区間相当額を入場時に引き落とし、着駅で残額精算する仕様とされました。これは日本鉄道サイバネティクス協会で共通カード乗車券システムとして検討されてきたことでもあり、後に続いた首都圏私鉄のパスネットカードでも踏襲されましたし、パスネットに先行して独自規格のルトランカードを導入した京急でも同様でしたが、その結果残高が最低運賃を下回ったカードは券売機で磁気券に引き換える手間が生じました。

一方ストアードフェアカードとして先行した阪急ラガールスルーカードなどスルッとKANSAI陣営では、旅客の利便性を重視してか残高が10円でもあれば入場可能として考え方が分かれました。その後ICカード乗車券でもスル関陣営のみポストペイシステムとなるなど考え方の違いが出ていて面白いところですが、実はJR西日本のICOCAでも、タイトルの振替輸送の扱いが異なっております。

Suicaの場合、定期券カードの券面表示区間のみが振り替え輸送の対象とされる決まりです。500円のデポジットを預かっていることもあって入場時の最低運賃引き落としは見直されましたが、裏面に印字されるioカードなどの磁気カードと違って元々発駅が明示されていないICカード乗車券の場合、鉄道営業法を杓子定規に適用すれば発駅を明示し着駅までの有効な乗車券を携帯していないことになるので、規則上は止むを得ないところですが、実際は混乱を避けるために振替票を配りまくってますし、自動改札の一部レーンを開放することもあります。

ただし注意が必要なのは入場処理後出場処理されないまま放置されたICカード乗車券は、次に入場するときにエラーとなりますので、有人レーンで着駅を申告し所定運賃の引き落としと出場処理をした後に振替票を受け取るというのが、便宜措置としても正当な扱いですが、元々省力化のために自動改札化されただけに、マンパワー不足で手が回らないということになり、ノーチェックで振替票を配ったり一部レーン開放したりして混乱回避をしているのが実態です。その結果困ったことに一部乗客に「電車が止まればタダ券がもらえる」と学習させてしまっており、2007年の自動改札機ダウン時のメディア報道のようにタダ乗りを助長するような報道すら見られます。この国のメディアの堕落は止まりません-_-;。

逆に不通区間によっては複数の交通機関を併用する必要があるのに、駅で渡される振替票は1人1枚で、その振替票を振替輸送機関に中途で回収されてしまい立ち往生するなどの不具合も生じるなど、正常時のタッチアンドゴーに馴れた乗客から見るとスマートでない対応になることもあり、結構深刻な問題です。それもこれも乗車券を携帯していないことから生じる問題ですが、同時に都市交通に複数の事業者が存在し、それぞれが独立採算となっている日本の特殊事情も影響します。

考えて見れば欧州標準の都市交通の共通運賃制の下では、振替輸送は原理的に存在しないわけで、こんな問題で混乱している日本の現状の方がおかしいのかもしれません。私じゃ無理ですが^_^;外国語に堪能な方が、日本の事情を知らない外国人にこういう事態を口頭で理解できるように説明できるかどうか試してみてください。おそらくかなり難しいんじゃないでしょうか。

この辺は東京都による不毛な地下鉄一元化議論として再三取り上げておりますので繰り返しませんが、都市交通の利便性を見るときに、この振替輸送問題というのは、案外本質的な問題でもあるわけです。

また小規模な都市であれば、都市交通機関を統合して地域独占とする一方、行政が関与して安全性や利便性をチェックする体制に一定の合理性はありますが、首都圏のように広域に延びきった交通システムを1事業者に差配させる事は現実的に難しいですし、地域独占体として非効率の温床となる可能性もあるだけに現実的ではありません。複数事業者の連携を前提に、一部運休に伴う合理的な役割分担とはどういうものかを考える余地はあるわけです。冒頭で記したように、相互直通の増加で影響が広域化する一方、輸送障害は簡単に減らせない現状で、ICカード乗車券システムによる省力化が仇となっているわけですから、スマートな対策を講じることには、乗客はもちろん事業者にとってもメリットがあるわけです。ズバリ言えば運賃の共通化も対策になると言いたいわけですが^_^;。

一方同じICカード乗車券システムであるJR西日本のICOCAでは振替輸送対象となっている点は上述しましたが、これも鉄道営業法上は便宜措置に過ぎないわけで、実態を知る立場にはありませんが、JR東日本の現場対応と結局あまり変わらないのかもしれません。単に本社の見解が違うだけなのかもしれませんが断定は避けておきます。考えられるのは輸送量のボリュームの違いなのかもしれません。どこかで運休が生じるとたちまち人の滞留が始まる首都圏とおそらく事情が異なるかと思います。

PITAPAでどういう扱いがあるかはわかりませんが、元々スル関協議会を通じて関係を深めている私鉄同士では大きな問題にはならないのかもしれません。阪急と阪神のように元々ターミナル間利用で両社の乗車券類を共通利用できるようにしており、現実的に振替輸送問題は起きにくいわけですね。首都圏でも同様の動きが出てくれば良いんですが、立地条件の良さゆえに取りっぱぐれさえなければ良いという姿勢に傾きがちなのでしょう。下手すれば減収要因になる可能性のある運賃共通化の議論は進まないわけです。

しかし実際には鉄道だけでもJR、メトロ、都営地下鉄、私鉄各社に加え、ゆりかもめ、りんかい線、つくばエクスプレスその他の都市型三セク鉄道鉄道の存在もあり、高運賃もあって初乗り運賃の負担が利用を抑制している可能性があります。典型は成田スカイアクセスの車輪の下の北総鉄道ですが、地下鉄一元化を訴える東京都の出資比率が高いゆりかもめやりんかい線はどーするのというのが正直なところです。

もちろん都営地下鉄で引き取って一元化すれば、折角単年度黒字にこぎつけた都営地下鉄の収支を圧迫しますから、地下鉄一元化どころじゃなくなるでしょうけど。ただし運賃が下がれば利用客が増やせるのは間違いありませんし、規模の拡大で合理化余地ができるのもまた間違いないところです。メトロにちょっかい出す前にやるべきことじゃないの?

一方で不思議なのは同じ都営交通でも都営バスとの連携はほとんどないことです。大阪や名古屋では地下鉄と市営バスの乗り継ぎ割り引きが制度化されていますが、都営交通では定期券のみの扱いで、しかもそれぞれの定期券から10%割引という形で、PASMO定期券で一葉にはならないのです。もちろん地下鉄は区間と経路指定で最長6ヶ月、バスは都区内共通運賃区間で通用し最長3ヶ月と制度の違いもあり、単なる定期券販売のための値引きでしかないわけです。

その一方、都営バスでは90分ルールで1回目の乗車から90分以内に再度都営バスに乗車したときに100円の値引きをするもので、条件が合えば方面は問われませんから、単純往復でも別系統への乗り継ぎでも適用されます。何が言いたいかというと、同じ都営交通で見事な縦割り状態にあるということです。

その一方で、南北線と大江戸線の整備で都営バスは大幅に路線を縮小しましたが、結果的に交通不便地域が生じて港区のちいバスなどのコミュニティバスが登場するのですが、面白いのは都営地下鉄の駅周辺で特に利用が多い一方、本当に取り残された交通不便地域では利用が伸びず、利用は二極化している現実があります。

早い話がワンコイン(100円)で乗れるコミュバスが運賃お高めの都営地下鉄のフィーダー輸送に活用されているわけです。その結果コミュバス路線同士の内部補助で交通不便地域がカバーされる分には問題ありませんが、コミュバスといえども許認可上は一般乗合路線バスという位置づけで、道路管理者や警察から既存のバス路線と可能な限りバス停を共用するよう指導されるため、バス停部分で空間競合が生じています。小型のコミュバスが客扱い中に大型バスで運行される都営バスが到着すると、已む無くバス停から離れた場所で大型バスが客扱いを始める結果、車線を塞いで時ならぬ渋滞を発生させるなどの問題を生じております。

これらの現実を考えると、都営地下鉄駅周辺のコミュバスの機能は大阪等のように都営バスとの乗り継ぎ割引制度を用いて一般路線バスに吸収させる方が社会全体としては最適化されるわけです。もちろんその結果都営バスの収支が悪化したらどーするという議論はあるわけですが、小型バスで小単位輸送を旨とするコミュバスの場合、利用者が増えると車両や乗務員を追加投入する結果コストアップするという悩みもあるわけで、元々交通不便地域解消を目的とし、営利を求めないコミュバスとしては、地下鉄のフィーダー輸送からは撤退する方が合理的とも言えるわけですが、自治体が運行主体となるコミュバスの場合、納税者の理解を前提とすればこの方が本来の姿とも言えます。

この構図は民営化に揺れる大阪市営交通にも言えることです。大阪市営バスでは、地下鉄との乗り継ぎ割引制度の他、幹線バスと支線バスを切り分けて乗り継ぎを認めたゾーンバスシステムを早い段階で導入したことは以前にも指摘しましたが、これは地下鉄のフィーダー輸送に留まらず、東京でいえば交通不便地域解消のための(本来の)コミュバスの機能まで包含した存在ということでもあり、ある意味赤字は止むを得ないところです。

もちろんコミュバス機能は適切に切り分けた方が合理的な場合もありますが、地下鉄との乗り継ぎ割引制度が機能する中で、地下鉄は黒字でバスは赤字だからバスを切り離すという議論が如何に不毛かは指摘できます。敢えて言えば大阪都構想が実現すればコミュバスは特別行政区の仕事として切り離して赤字を移転するだけとなる可能性もあるわけです。

というわけで、Suicaの話題だったはずですが、脱線しまくりの結末です^_^;。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, February 05, 2012

東電下暗し

東京電力の値上げ問題が紛糾しております。当面は契約電力50kwh以上の需要家向け契約で17%を打ち出し、ユーザーとなる企業や自治体が一斉に反発しております。中には特定規模電気事業者(PPS)からの調達に切り替える動きも出てきておりますが、PPSが調達先としている日本卸電力取引所(J-PEX)市場の相場価格が上昇し高止まりしており、30円/kwhと家庭用の28円/kwhをさえ上回る水準の現状では、PPSからの調達でも値下がりはあまり期待できません。結局電力会社に依存しない電源を増やす以外に方法はありません。

気になるのはメディアの報道が必ずしも制度を正しく理解していない点です。よく言われる総括原価方式は、あくまでも50kwh以下の小口需要家及び一般住宅向けの電力料金には当てはまりますが、50kwh超の需要化向けは、当事者間の契約によるもので、原則自由であるという点です。つまり電力会社は契約先が同意しさえすれば、自由に料金を上げられます。文字通り「値上げする権利がある」のです。

1995年の発電事業者(IPP)の参入と特定地点を対象とするPPSが解禁されて以来、PPSの参入範囲の見直しと電力卸市場の整備で現行の制度になったのが2005年ですが、それ以来自由化はストップし、議論された発送電分離や自然エネルギー活用は進みませんでした。電力会社の反対で潰されたんですね。

その結果日本の電力自由化はいびつな構造になっています。50kwh超の需要家に対しては、PPSとの契約という選択肢を形式的に用意しましたが、電力会社の系統電力網による電力託送料が割高だったり、需給調整を行う必要から課される3%以内の需給バランスを超えたときに課されるインバランス料金が割高だったりという懲罰的な制度のために、新規参入は抑制されました。また不安定な自然エネルギー発電の参入障壁となって、世界に遅れを取る結果となります。

逆に自由化で電力会社にはコスト削減のインセンティブを与えた結果、原発の新設よりも既存原発の延命へ、高効率なガスタービン発電よりも償却済みの燃費の悪い火力発電の温存へと走らせ、結果として福一事故につながる安全対策の穴をつくってしまったわけです。全て電力会社の意向に沿った形式的な自由化の弊害ですし、それを無批判に伝えてきたメディアは、スルーせざるを得ない問題でもあります。そんなメディアが伝える原発再稼動の必要性はマユツバものです。

話を戻しますが、今回の東電の値上げは、当面契約電力50kwh以上の需要家対象ですが、それだけでは足りず、9割方の利益を稼ぐ小口・一般住宅向けの10%程度の値上げ申請も予定しているわけで、こちらが本命なんですが、大口契約者への値上げを実施しないと国民に説明できないとする経産省から認可を得るために避けて通れない関門でもあるわけです。

またこの値上げは原子力損害賠償支援機構の運営委員会による東電支援スキームに基づいて出されたものでもあり、東電を破綻させずに賠償に当たらせるという政府方針に沿ったもののはずですが、枝野経産相が官房長官時代からの持論としている銀行の債権放棄に踏み込まないなどで難くせつけている状況です。その一方で同じ枝野経産相が原発再稼動に前のめりなのは違和感がありますが、機構が描いたシナリオでは、電気料金値上げと原発再稼動がセットで東電の経営再建を図ることになっており、政府の対応は一貫性を欠きます。

背景には賠償のために生かしたはずの東電ですが、事故処理費用も賠償額は膨らむ一方で、今後発生する廃炉費用や使用済み核燃料の処分費用もあり、わずかばかりの引当金積み立て程度ではどうにもならず、それどころか3月に迫る決算で債務超過が避けられない見通しとなっていることがあります。こんなことは最初からわかっていたことではありますが。

それを回避する必要から、現在東電の実質国有化の議論が内々に行われているのですが、一時国有化による破綻処理ではない点がミソです。つまり破綻処理ではなく、政府が増資を引き受ける形で2/3超の議決権を確保して経営権を握り、資産売却や賃金見直しなどのリストラ策に留まらず、現経営陣の更迭や銀行の債権放棄、更には発送電分離を含む電力改革の梃子にしようという政府側の意図があります。ただし経産省主導の議論であり、強すぎる電力会社の力を削ぎ、権益を拡大する意図があることに注意が必要です。

例えば発電所の売却が取りざたされていますが、火力発電の場合燃油代が高騰している現状では、引き受ける企業にはメリットが見出せません。20年契約で燃料を調達する電力会社は、目先の相場の変動のリスクを回避できますが、一般の事業会社が参入しても直ちに利益を得ることは現時点では不可能です。この観点から言えば自然エネルギー利用の方が、全量買い取り制度を踏まえれば有望ということになりますが、未だに買い取り価格などで国の方針が固まらず、事業化は進みません。

背景にはイラン問題が影を落とします。そもそも日本の核武装準備国という平和ボケ保守の妄言に倣ってNPT加盟国の権利として核開発をしており、回りまわって日本を苦しめる皮肉な状況です。それでも石油は備蓄があるので当面どうにかなりますが、火力発電は今やLNGが主流で、しかもカタール産が9割という状況で、ホルムズ海峡が封鎖されれば燃料が調達できないという状況です。

これもLNGはそもそもLNGプラントのあるところからしか調達できない欠点があり、それを回避する目的でサハリン産天然ガスを東京まで送るガスパイプライン構想があったんですが、電力会社の反対で潰されました。サハリンの天然ガス事業は日本の商社も権益を持っていたのですが、その後ロシアの国営企業に渡されました。エネルギー資源の中東依存回避が原発推進の1つの理由だったんですが、その裏で天然ガスの中東依存が進んでいたんですから、どこまでもウソで固められた話です。

そもそも本気で電力自由化をやる気があるなら、東電は原賠支援機構による支援で生かすより、一時国有化して破綻棕櫚をしていれば、今頃は一部実現していたはずです。ここで一時国有化と実質国有化の違いが出てきます。一時国有化は株式のゼロ査定による100%減資と議決権の国による没収の形で破綻処理するスキームで、同時に経営陣から経営権を剥奪した上で新経営陣を国が決めて送り込み、債権者の債権放棄もも止めるものです。

この場合、東電が大量発行していた電力債が一般債務と見なされる原発損害賠償荷優先される事がネックと言われましたが、原発の損害賠償は国が連帯責任を負うものですから、早い話国が賠償すれば済む話なんですが、東電を生かして賠償させる途を選んだ結果、矛盾が噴出しただけの話です。

逆に東電側から見れば、国の判断で延命できはしたものの、元々まともに賠償する能力も意思も欠いていて、経営責任を自覚していないから、国が実質国有化に舵を切ろうとしても、債権放棄を求められる銀行の反対を盾に生き延びようという虫の良い立ち回りをしているわけですから、国が東電の経営責任を問わなかったことで、文字通りゾンビの如く復活してしまったわけです。こうなれば世論の反発などどこ吹く風、債務超過になろうが構わずむしろ破綻させられないことで国の足許を見るに至ったわけです。

将に東電救済で始まる新たな失われた10年を地で行く話です。当該エントリーで90年代の金融危機との対比をしておりますが、一時国有化は旧長銀、日債銀を一時国有化して新生銀行、あおぞら銀行として経営を立て直した後に、株式を売却して投入した公的資金を回収したわけですが、この結果、国の経営介入を嫌った大手銀行がこぞって不良債権処理を進め、また経営体力強化のために自主的に合従連衡していわゆるメガバンクとして経営を健全化したわけで、大手銀行に経営規律をもたらすことができました。

一方小泉政権下で行われた竹中プランの中で救済されたりそなグループは、不良債権処理を巡り迷走し、2003年に国が資本注入を行う形で実質国有化しました。議決権を握って経営陣を刷新したものの、破綻処理ではなかったことから、行員の意識改革は進まず、公的資金の返済に長い時間を要する結果となりました。かように一時国有化と実質国有化は雲泥の差があるわけです。国が電力改革に本気なら、東電を一時国有化すべきですし、その結果国が本気となれば他の電力会社への経営規律の強化を促すことにもなります。またりそなグループの救済は経営悪化した地方銀行の救済合併で金融庁に恩を売ってきた結果でもあり、大手銀行に続いて不良債権処理を進めなければならなかった地方銀行の経営改善を遅らせた面も否めません。

これは穿った見方をすれば、郵政民営化で郵貯の民間銀行化を打ち出していた小泉政権による地方銀行懐柔策の側面もあります。つまり小泉改革は郵貯を民営化して銀行を国有化したというヨタな話なんですね^_^;。というわけで、小泉改革を批判して止まなかった民主党が政権に就いたら同じことをしているわけで、何のための政権交代だったのかという話です。

鉄道会社の対応としては、JR東日本は既に川崎火力発電所の増強と信濃川の水利権追加取得を打ち出し、自力調達を強化しております。東京メトロは3.11以前からガス会社系PPSのエネットとの契約を済ませており、エネットへ出資する東京ガスが火力発電所の増強を進めておりますが、その他の社は出遅れているようです。ラッシュ輸送やダイヤ混乱時の回復運転などで需要変動の大きい鉄道会社は、上記のインバランス料金の負担が馬鹿にならないこともあり、値上げのインパクトは決して小さくはありません。

そもそもラッシュ輸送などは鉄道会社の責任ではないのに結果的に負担を強いられる状況ですが、長い目で見れば自前の電力調達へ舵を切らざるを得ないと思いますが、単独では負担が大きすぎる話でもあり、共同調達や余剰電力の融通などの仕組みができる可能性はあります。いずれにしても厄介な経営判断を迫られる話だけに、簡単ではありませんが。首都圏でもスルッとKANSAI協議会のような共同調達の仕組みができるならば良いきっかけではありますが。

| | Comments (2)

« January 2012 | Main | March 2012 »