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Sunday, February 26, 2012

闇鍋よろしくカモられる年金

投資顧問会社AIJの年金資産消失問題で揺れております。企業年金の問題なので、該当企業に勤めていなければ他人事というのは大間違いです。AIJが運用していたのは、主に厚生年金基金の資産ですから。

企業年金問題はJAL再建問題で指摘したことですが、厚生年金基金という制度はちょっとややこしい制度です。企業年金ですから、保険料は企業が拠出しプールしファンドなどに預けて運用するわけですが、JALの場合のような確定給付型年金の場合は独自に運用する形で、非課税とすることで公的性格を担保するものですが、厚生年金基金は本来は国の公的年金である厚生年金の保険料の一部を加えて基金を作り、独自に運用するものです。資金の規模を大きくする方が運用上有利ということで、大企業ならば単独で基金を作りますが、中小企業の場合は同業の企業が集まって基金を作るケースが多くなります。

しかもほとんどの基金が運用資産の保障利回りを5.5%という高い水準のまま放置しており、いきおいハイリスクな運用を強いられますが、実績は届かず、積立不足が日常化しているわけです。その結果大企業の多くは積立不足を補填した上で基金を解散し、厚生年金からのの預かり資産を国庫に返納するいわゆる代行返上が90年代の金融危機の頃にブームとなり、同業の中小企業のいわゆる総合型基金は取り残された形になっております。つまり一部とはいえ本来厚生年金保険料として国庫に入るはずの資金が毀損したわけです。

大企業の厚生年金基金で目立つのはNTTなど旧三公社からスピンアウトしたグループで、共済年金空の移行だったのですが、旧国鉄から移行したJRの場合で言えば、元々大陸からの引揚者や退役軍人を処遇するために戦後大量採用した結果、年金財政は元々痛んでいて、いわゆる旧国鉄債務の中にはこの積立不足分が含まれますが、本州会社に関しては各社の厚生年金基金の積立不足分として追加負担されたのは以前にも指摘しました。

郵政民営化では当面郵政職員は国家公務員共済に留まるという扱いになっており、30万人もの職員の制度移行は手続き上困難と説明されておりますが、その一方で自公政権時代に被用者年金の一元化の議論がありました。120万人を擁する国家公務員共済で郵政職員30万人の離脱は、言うまでもなく国家公務員共済の破綻の危機となるわけですが、それを隠したまま厚生年金と一体化しようというのは誤魔化しなんですが、勤続20年で給付2割アップとなる職域加算の扱いがネックとなり議論自体が進んでいません。その上民主党の09年マニフェストで新年金制度への移行が提案され政権交代が実現した結果、自公政権時代の被用者年金一元化は沙汰止みとなりました。ま、その民主党案自体が先日の試算結果公表を巡るドタバタがあったように、実現可能性に疑問符がつく状況です。それ以前に郵政民営化見直しで郵政職員の年金問題は話題にも上りませんが、マニフェストで新年金制度へ移行すれば解決するというスタンスなのでしょう。また職域加算の見直しは官僚の抵抗も大きく、官僚に乗っ取られた政権では実現不可能ではあります。

その新年金制度がまた迷走してますが、元々最低保証年金は全額税方式へ移行し、従来の国民年金保険料が廃止になるという前提でした。であれば家計支出が月20万円と仮定すれば現状16千円程度の保険料は8%相当となるわけで、野田政権が進める消費税5%アップも保険料と引き換えならば理解を得られる可能性はあるのですが、引き上げられる5%分のうち社会保障の充実に使われるのは1%分だけで、残りは現行制度の維持に必要と説明されております。4%分といえば10兆円を超える額で、社会保障給付の負担が毎年1兆円程度膨らんでいるということですから、実現すれば本来向こう10年分以上となるはずです。実際は税収の増加分を積み立てて将来に備えれば更に長い期間をカバーできるはずですが、無意味な公共事業や補助金に消えそうです。

例えばこんなニュースがあります。

成田・羽田アクセス短縮 都営浅草線にバイパス新線  :日本経済新聞
羽田と成田の内際分離が見直され、オープンスカイに舵を切ったのは民主党政権の数少ない成果ですが、羽田空港と成田空港の一体運用のために両空港を1時間以内で結ぼうという話は以前からあります。そして菅政権時代の成長戦略会議でも話題に上ったものの、これから両空港ともに発着枠が拡大される局面であり、それぞれの空港の利便性を高めてそれぞれがハブ機能を持つ方が大事ということで、否定的な意見が大勢だったはずです。それがこんな風に蒸し返されるのは、増税を前提に予算請求のタガが緩んだとしか思えません。同様にTPP騒動に紛れて減額された農業基盤整備事業が復活したりしており、「社会保障充実のための消費税増税」はウソというわけです。ちなみに都営浅草線バイパス計画に対する東京都のスタンスも否定的です。東京メトロとの経営統合を目指すのに、これ以上負債を増やしたくないわけです。

厚生年金基金では上述のように給料から天引きされる厚生年金保険料の一部を国庫に収めずに自主運用される仕組みですが、政府の説明では厚生年金は賦課方式のはずですから、本来年金給付に回るはずの資金が基金に貯められるわけですから矛盾しています。年金改革を行うとすればこれも議論のネックとなる可能性がありますが、よく考えていただきたいのは、制度の対象は大手、中小を問わず正規雇用者であるという点です。ある種既得権益化しているわけですが、共済年金の職域加算を見直すならば、並行して見直すべきでしょうが、その際にNTTなど優良な大企業の労組が反対に回ることが確実ですから、労組依存の強い民主党政権では難しいでしょう。

そもそも日本の労組は企業内組合ですが、労組といえば産業別組合が当たり前です。つまり労組は社外組織なわけで、労働関連の法規もそれを前提としています。労働者の労組への加盟は企業への就職とは切り離されていて、加盟することで不利益な扱いを受ける事が禁止されているのはもちろんですが、反面労組の活動は勤務時間外に会社の外で行うものでもありわけです。この部分は日本の労働法規でもそうなっていますが、そもそも企業内組合である日本の労組でこの扱いはおかしいんです。欧米企業では、労組とは別に労使間の協議のための車内組織があるのが普通ですが、労使交渉は行いません。当然社内の調整機関なので勤務時間内に社内で活動しますが、あくまでも労使交渉の相手は社外にある産業別組合です。この体制では残業に関する36協定などは不可能なわけで、サービス在業やうつ病、自殺の労災認定の可否などという日本では見慣れた光景はかなり特殊な状況であるということができます。

その結果雇用される企業の規模に係わらず労働者の待遇は守られるのですが、日本の企業内組合では結局企業規模によって負担力の差があり、それがそのまま労働者の待遇に反映されてしまう結果となります。つまり大企業に勤めなければ良い待遇は得られないわけです。また企業業績が待遇に反映しますから、ゼロ年代の賃上げ抑制のように「企業がつぶれても良いのか」という脅し文句にも弱いわけです。そういう意味で公務員組合は最強の労組になるわけで、公務員の労働三権が制限されている理由であり、また公務員の政治活動の制限も同様ですが、欧米流の産業別組合ならば勤務時間外に社外で活動するわけで、組合活動に参加することを以て差別的待遇にできないのは公務員も同じというわけで、ギリシャもそうですが、欧米では公務員のストも珍しくないわけですし、労組が選挙で特定候補を支援する事も問題なしとなるわけです。

この観点から見ると、大阪市長選を巡る橋下氏長と市交労組との対立にも別の面が見えてきます。現業部門である交通局の労組幹部が市長選に関与したとか、勤務時間中に活動したとかが問題になって争っていますが、企業内組合を前提とする日本の労使慣行で生じたねじれ現象で、確かに日本の法令に背反してはいますが、だからといって労働者の権利としての組合活動を差別的に制限するのは不当労働行為に当たりますので、現行制度下では解決できないわけです。

話が逸れましたが、今回の年金基金の毀損問題ですが、中小企業中心の総合型基金では運用責任者が不在のケースがほとんどで、AIJのような投資顧問会社へ丸投げしているのが現状です。その結果運用実態はブラックボックス化しており、今回の問題もAIJだけの問題ではなく、200社以上あるといわれる同様のt投資顧問会社に第2第3のAIJが隠れている言われます。

あと指摘したいのは、今回のAIJ問題は民間の年金基金を民間の投資会社が投資の失敗で失ったという話ですが、公的年金でも年金積立金運用独立行政法人へ預託して運用されてますが、その保証利回りは4.1%と高く、実際2004年時点では150兆円あった積立金は2011年第2四半期末で108兆円まで減少しています。保険料の見直しとマクロ経済スライドなど給付調整の仕組みを導入して「100年安心」と謳った04年改定ですが、積立金を取り崩しながら100年保つとされていたのか、このペースだと2030年代前半で積立金が枯渇します。何のことはない公的年金自体がAIJに預託した基金と同様の状況に追い込まれております。保証利回りを実態に合わせて下げた上で、日本国債中心のローリスク運用にシフトすべきです。

というわけで年金問題は公的年金と企業年金の絡み合いも複雑で一筋縄ではいきません。将にヤミ鍋状態、突っつけば何が出るかわからないですが、確実なのは年金はカモられているということです。カモが年金背負っているわけです-_-;。それでも年金改革を進めて持続可能な制度にしないと、不安から家計の消費支出は伸びずデフレから抜けられない状況が続きます。14日に日銀が金融緩和を決めたことを好感して円安、株高、金利安に動きましたが、あくまでもアメリカの景気買う複期待とギリシャ債務問題の解決期待という根拠の薄い期待先行の動きに過ぎず、持続性は期待できません。困難であっても制度改革に取り組むしか方法はないわけです。

年金問題は複雑でまた間違った議論が横行しており、例えば公的年金の積立方式への移行などは最たるものですが、800兆円に及ぶ積立不足をどう手当するつもりなのか、また大量の積立金を誰がどう責任を持って運用するのかは明確ではありません。単にカモられるだけならば意味がありません。以前にも指摘したように見なし積立方式が考えられる唯一の現実的な解であると言えます。09年マニフェストの民主党案は移行方法を工夫すれば実現可能なだけに、簡単に手垢にまみれさせるなと言いたいところです。

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Comments

いっそ年金も介護保険も生活保護もやめちゃえばいいのに。

たとえば、所得税を細分化・厳格化した上で、ベーシックインカムを導入して給付額を固定。
社会保障を世代間扶養型から所得再分配型に移行。その代わりに相続税は廃止で。

Posted by: yamanotesen | Monday, February 27, 2012 at 11:10 PM

将にベーシックインカムの議論ですね。しかし難点もあります。

特に年金の解散は損失を確定することになりますから、国民生活に大きなインパクトとなり、現実的に難しいです。なにしろ900兆円あるはずの積立金が100兆円まで減っているんですから、GDP2年分弱の国富が消失することになります。

ただ政府の役割を究極まで絞り込んだときに所得再配分機能だけ残れば良いという考え方ですから、左右両派の議論の接点になり得る点は魅力的です。ただし究極の小さな政府論ですから、官僚や既得権者の抵抗は壮絶なものになることは覚悟がいりますが。09年マニフェストの子ども手当がいかにして潰され骨抜きにされたかは生々しいですよね。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, February 28, 2012 at 09:21 PM

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