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Sunday, February 19, 2012

振り替えればSuicaで混乱

相互直通が増えたことと、人身事故などの輸送障害で運転見合わせの頻度が体感的に上がった感のある首都圏の鉄道ですが、その結果振り替え輸送に遭遇することも珍しくないというありがたいようなありがたくないような話です。

鉄道営業法では、旅客は発駅が明示された着駅まで有効な乗車券を携帯しなければならないことになっておりますが、ioカードなどの磁気式ストアードフェアカード乗車券の導入に当たって問題となりました。自動改札機による入出場チェックによるチェックイン・チェックアウト方式で乗車券に引き換える手間を省く結果、旅客は乗車中鉄道営業法に定められた有効な乗車券を携帯していない状態になるわけです。

もちろん鉄道営業法では乗り越し精算や方面変更手続き下車前途無効扱いなど、旅客が乗車後に目的とする着駅を変更する場合の規定がありますが、これらはあくまでも例外として定義されているのですが、ストアードフェアカード乗車券の場合、これが常態化するわけですから、例外が日常となるというところが問題視されたわけです。そのためIOカードでは入場駅の最低運賃区間相当額を入場時に引き落とし、着駅で残額精算する仕様とされました。これは日本鉄道サイバネティクス協会で共通カード乗車券システムとして検討されてきたことでもあり、後に続いた首都圏私鉄のパスネットカードでも踏襲されましたし、パスネットに先行して独自規格のルトランカードを導入した京急でも同様でしたが、その結果残高が最低運賃を下回ったカードは券売機で磁気券に引き換える手間が生じました。

一方ストアードフェアカードとして先行した阪急ラガールスルーカードなどスルッとKANSAI陣営では、旅客の利便性を重視してか残高が10円でもあれば入場可能として考え方が分かれました。その後ICカード乗車券でもスル関陣営のみポストペイシステムとなるなど考え方の違いが出ていて面白いところですが、実はJR西日本のICOCAでも、タイトルの振替輸送の扱いが異なっております。

Suicaの場合、定期券カードの券面表示区間のみが振り替え輸送の対象とされる決まりです。500円のデポジットを預かっていることもあって入場時の最低運賃引き落としは見直されましたが、裏面に印字されるioカードなどの磁気カードと違って元々発駅が明示されていないICカード乗車券の場合、鉄道営業法を杓子定規に適用すれば発駅を明示し着駅までの有効な乗車券を携帯していないことになるので、規則上は止むを得ないところですが、実際は混乱を避けるために振替票を配りまくってますし、自動改札の一部レーンを開放することもあります。

ただし注意が必要なのは入場処理後出場処理されないまま放置されたICカード乗車券は、次に入場するときにエラーとなりますので、有人レーンで着駅を申告し所定運賃の引き落としと出場処理をした後に振替票を受け取るというのが、便宜措置としても正当な扱いですが、元々省力化のために自動改札化されただけに、マンパワー不足で手が回らないということになり、ノーチェックで振替票を配ったり一部レーン開放したりして混乱回避をしているのが実態です。その結果困ったことに一部乗客に「電車が止まればタダ券がもらえる」と学習させてしまっており、2007年の自動改札機ダウン時のメディア報道のようにタダ乗りを助長するような報道すら見られます。この国のメディアの堕落は止まりません-_-;。

逆に不通区間によっては複数の交通機関を併用する必要があるのに、駅で渡される振替票は1人1枚で、その振替票を振替輸送機関に中途で回収されてしまい立ち往生するなどの不具合も生じるなど、正常時のタッチアンドゴーに馴れた乗客から見るとスマートでない対応になることもあり、結構深刻な問題です。それもこれも乗車券を携帯していないことから生じる問題ですが、同時に都市交通に複数の事業者が存在し、それぞれが独立採算となっている日本の特殊事情も影響します。

考えて見れば欧州標準の都市交通の共通運賃制の下では、振替輸送は原理的に存在しないわけで、こんな問題で混乱している日本の現状の方がおかしいのかもしれません。私じゃ無理ですが^_^;外国語に堪能な方が、日本の事情を知らない外国人にこういう事態を口頭で理解できるように説明できるかどうか試してみてください。おそらくかなり難しいんじゃないでしょうか。

この辺は東京都による不毛な地下鉄一元化議論として再三取り上げておりますので繰り返しませんが、都市交通の利便性を見るときに、この振替輸送問題というのは、案外本質的な問題でもあるわけです。

また小規模な都市であれば、都市交通機関を統合して地域独占とする一方、行政が関与して安全性や利便性をチェックする体制に一定の合理性はありますが、首都圏のように広域に延びきった交通システムを1事業者に差配させる事は現実的に難しいですし、地域独占体として非効率の温床となる可能性もあるだけに現実的ではありません。複数事業者の連携を前提に、一部運休に伴う合理的な役割分担とはどういうものかを考える余地はあるわけです。冒頭で記したように、相互直通の増加で影響が広域化する一方、輸送障害は簡単に減らせない現状で、ICカード乗車券システムによる省力化が仇となっているわけですから、スマートな対策を講じることには、乗客はもちろん事業者にとってもメリットがあるわけです。ズバリ言えば運賃の共通化も対策になると言いたいわけですが^_^;。

一方同じICカード乗車券システムであるJR西日本のICOCAでは振替輸送対象となっている点は上述しましたが、これも鉄道営業法上は便宜措置に過ぎないわけで、実態を知る立場にはありませんが、JR東日本の現場対応と結局あまり変わらないのかもしれません。単に本社の見解が違うだけなのかもしれませんが断定は避けておきます。考えられるのは輸送量のボリュームの違いなのかもしれません。どこかで運休が生じるとたちまち人の滞留が始まる首都圏とおそらく事情が異なるかと思います。

PITAPAでどういう扱いがあるかはわかりませんが、元々スル関協議会を通じて関係を深めている私鉄同士では大きな問題にはならないのかもしれません。阪急と阪神のように元々ターミナル間利用で両社の乗車券類を共通利用できるようにしており、現実的に振替輸送問題は起きにくいわけですね。首都圏でも同様の動きが出てくれば良いんですが、立地条件の良さゆえに取りっぱぐれさえなければ良いという姿勢に傾きがちなのでしょう。下手すれば減収要因になる可能性のある運賃共通化の議論は進まないわけです。

しかし実際には鉄道だけでもJR、メトロ、都営地下鉄、私鉄各社に加え、ゆりかもめ、りんかい線、つくばエクスプレスその他の都市型三セク鉄道鉄道の存在もあり、高運賃もあって初乗り運賃の負担が利用を抑制している可能性があります。典型は成田スカイアクセスの車輪の下の北総鉄道ですが、地下鉄一元化を訴える東京都の出資比率が高いゆりかもめやりんかい線はどーするのというのが正直なところです。

もちろん都営地下鉄で引き取って一元化すれば、折角単年度黒字にこぎつけた都営地下鉄の収支を圧迫しますから、地下鉄一元化どころじゃなくなるでしょうけど。ただし運賃が下がれば利用客が増やせるのは間違いありませんし、規模の拡大で合理化余地ができるのもまた間違いないところです。メトロにちょっかい出す前にやるべきことじゃないの?

一方で不思議なのは同じ都営交通でも都営バスとの連携はほとんどないことです。大阪や名古屋では地下鉄と市営バスの乗り継ぎ割り引きが制度化されていますが、都営交通では定期券のみの扱いで、しかもそれぞれの定期券から10%割引という形で、PASMO定期券で一葉にはならないのです。もちろん地下鉄は区間と経路指定で最長6ヶ月、バスは都区内共通運賃区間で通用し最長3ヶ月と制度の違いもあり、単なる定期券販売のための値引きでしかないわけです。

その一方、都営バスでは90分ルールで1回目の乗車から90分以内に再度都営バスに乗車したときに100円の値引きをするもので、条件が合えば方面は問われませんから、単純往復でも別系統への乗り継ぎでも適用されます。何が言いたいかというと、同じ都営交通で見事な縦割り状態にあるということです。

その一方で、南北線と大江戸線の整備で都営バスは大幅に路線を縮小しましたが、結果的に交通不便地域が生じて港区のちいバスなどのコミュニティバスが登場するのですが、面白いのは都営地下鉄の駅周辺で特に利用が多い一方、本当に取り残された交通不便地域では利用が伸びず、利用は二極化している現実があります。

早い話がワンコイン(100円)で乗れるコミュバスが運賃お高めの都営地下鉄のフィーダー輸送に活用されているわけです。その結果コミュバス路線同士の内部補助で交通不便地域がカバーされる分には問題ありませんが、コミュバスといえども許認可上は一般乗合路線バスという位置づけで、道路管理者や警察から既存のバス路線と可能な限りバス停を共用するよう指導されるため、バス停部分で空間競合が生じています。小型のコミュバスが客扱い中に大型バスで運行される都営バスが到着すると、已む無くバス停から離れた場所で大型バスが客扱いを始める結果、車線を塞いで時ならぬ渋滞を発生させるなどの問題を生じております。

これらの現実を考えると、都営地下鉄駅周辺のコミュバスの機能は大阪等のように都営バスとの乗り継ぎ割引制度を用いて一般路線バスに吸収させる方が社会全体としては最適化されるわけです。もちろんその結果都営バスの収支が悪化したらどーするという議論はあるわけですが、小型バスで小単位輸送を旨とするコミュバスの場合、利用者が増えると車両や乗務員を追加投入する結果コストアップするという悩みもあるわけで、元々交通不便地域解消を目的とし、営利を求めないコミュバスとしては、地下鉄のフィーダー輸送からは撤退する方が合理的とも言えるわけですが、自治体が運行主体となるコミュバスの場合、納税者の理解を前提とすればこの方が本来の姿とも言えます。

この構図は民営化に揺れる大阪市営交通にも言えることです。大阪市営バスでは、地下鉄との乗り継ぎ割引制度の他、幹線バスと支線バスを切り分けて乗り継ぎを認めたゾーンバスシステムを早い段階で導入したことは以前にも指摘しましたが、これは地下鉄のフィーダー輸送に留まらず、東京でいえば交通不便地域解消のための(本来の)コミュバスの機能まで包含した存在ということでもあり、ある意味赤字は止むを得ないところです。

もちろんコミュバス機能は適切に切り分けた方が合理的な場合もありますが、地下鉄との乗り継ぎ割引制度が機能する中で、地下鉄は黒字でバスは赤字だからバスを切り離すという議論が如何に不毛かは指摘できます。敢えて言えば大阪都構想が実現すればコミュバスは特別行政区の仕事として切り離して赤字を移転するだけとなる可能性もあるわけです。

というわけで、Suicaの話題だったはずですが、脱線しまくりの結末です^_^;。

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Comments

>規模の拡大で合理化余地ができる
スケールメリットの点では、直通運転している各社の運行管理システムと指令室を会社単位ではなく、路線ごとに統合すれば合理化と輸送障害対策につながると思います。

実際、京王では京王線と井の頭線の指令室を統合したことで人員の融通が利き、異常時の対応が楽になったという話があります。
東海道山陽新幹線はJR東海と西日本が共同で運行管理を行っているように、会社を跨いで一体的に管理することで柔軟な対応が可能になります。

経営や運賃はともかく、運行管理だけでも縦割りをやめて欲しいものです。
京王の例でいえば、さらに1歩進めて都営新宿線と指令を統合しても良さそうな気がします。

Posted by: yamanotesen | Tuesday, February 21, 2012 at 11:18 PM

逆に田園都市―半蔵門ルートは、東武鉄道との相互直通以前は一体感が強かったのが後退しています。浅草線ファミリーも羽田と成田の空港連絡輸送でライバル関係となって一体感が薄れた気がします。相鉄の都心プロジェクトもどうなるでしょうか。

多数の事業者が並存しながらそれぞれ独立採算というのは、考えてみればかなり異常ですね。例えば混雑率の東西横綱のメトロ東西線と東急田園都市線ですが、東西線はメトロの低運賃が、田園都市線は地域ブランド力の強さがそれぞれ背景にあり、いずれもポジティブに評価されるはずの問題なのに、単独で解決不能というジレンマがあります。なかなか深淵な問題です。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, February 21, 2012 at 11:38 PM

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