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Saturday, March 10, 2012

がれき処理と除染で不幸が始まる?

のっけから苦言で恐縮ですが、11日に首都圏私鉄の中心に、全営業列車と停車させて黙祷するというイベントが計画されているそうですが、やめて欲しいです。防災訓練ならいざ知らず、無意味ですし、乗り合わせた乗客にとっては、時間ロスもさることながら、気持ちを強要されるのは不快です。またこういうことに異を唱えると村八分というのも日本らしいといえばらしいですが、「神に祈れ」と命令できるのは位の高い神職者が信徒に対して行うときにのみ許されること。あくまでも宗門内のみの話です。

というわけで、本題ですが、週刊ダイヤモンド3/10号で特集された復興が利権化されている現状のレポートに怒りを感じております。特にタイトルのがれき処理と除染に群がる有象無象は将に、復興が食い物にされている図といえます。

がれき処理も除染も国の負担で行うことが決められ、予算化されているわけですが、その結果どういうことが起きているかというと、大手ゼネコンを中心とする利権化が進んでいるのです。東京都をはじめとしてがれき受け入れ問題があちこちで起きていますが、別にタダで引き受けているわけではなくて、国が被災地自治体へ渡す特別交付金で95%が負担されるわけですが、他地域で処理すれば処理費用は他地域に支払われるわけで、被災地には落ちません。この辺は新聞やテレビはほとんど報じませんが、実際に陸前高田市では処理施設の建設を岩手県に具申して門前払いされていたりします。

その一方で大手ゼネコンが重機を使って短時間で大量に処理する案件は、特別交付金の申請も通りやすくなりますが、それでは地元にお金が落ちないので、結果的にがれきは片付いたのに更地のまま放置される土地まで出てきています。土地を造成して再利用する費用は自治体が工面しなきゃならない上に、大手ゼネコンにリース重機や職人を押さえられて地元業者は手が出せず、入札の半分が不調という状況になっているのです。それなら最初から地元業者を使ってがれき処理と土地の造成を並行して進められるようにすれば、復興と同時に被災地の雇用対策にもなるのですが、そのような復興計画はなかなか認められません。

この問題ではどちらかといえば震災がれきの受け入れ問題としてメディアを賑わせており、「放射能汚染の心配はわかるけど、絆をいつなごう」みたいな話の流れになっており、「放射線測定が受け入れ自治体の負担になっているから国が面倒見よう」みたいな話になるのですが、問題はそこじゃないんです。広域処理自体が被災地の空洞化を進めてしまい、復興増税までして確保した復興予算が食い物にされているということが問題なんです。

加えて3.11地震では、地質構造に大きな変化があったようで、半年程度で戻ると言われた沿岸部の地盤沈下は戻っておりません。港湾再生のためには埋立が必要になると見られます。一方住居の高地移転でも、平坦地の少ない高地の造成にがれきを転用すれば、処理量を減らせるわけですが、それは他所から土を買ってこいというのも変な話ですが、国庫支出が減るような話はなかなか進みません。

除染問題も同様ですが、こちらは東電の関連会社が受注したりと更に露骨な利益誘導となっております。また国が進める除染は無意味という指摘もあります。例えば屋根を高圧洗浄しても屋根瓦に吸着したセシウムは除去されず、除染後も頭上から放射線が降り注ぐ状態が続きます。この場合屋根瓦を葺き替える必要がありますが、国の基準では認められておりません。

また土壌の除染でも表土を機械的に剥ぎ取る手法は、大量の汚染土を発生させ、その中間貯蔵で揉めているのはニュースにもなっております。元々排水溝周辺など汚染が集まりやすいホットスポットの除染を中心にすれば、もっと効率よく除染できるんですが、その場合小刻みに空間線量を計ってホットスポットを見つける必要がありますが、国の基準では無視されます。

雑な空間線量測定に基づいて表土を剥がすような作業ならば、重機や人員を大動員できる大手ゼネコンの方が「効率よく」作業が可能ですから、入札で地元業者は負けるわけです。不謹慎な喩えで恐縮ですが、東京大空襲の焼夷弾攻撃に竹槍で対抗するような話です。

加えて森林部分の除染は手付かずです。その結果森林の樹木の葉などに付着したセシウムは、時間をかけて地下水へと移り、里の湧き水や河川の流れで下流へ運ばれますので、今後数年かけてかなり広範囲に汚染をモニターする必要があります。下流域の水田で汚染米ができてしまうなどの出来事が今後数年以上続く事になります。これもおそらく問題が発覚してから対策ということになれば、処理費用は青天井となり、除染を請け負う業者にはおいしい話です。

こうなるのは公共事業で90年代には年間15兆円規模で推移してきた公共事業が6兆円規模まで縮小し、ゼロ年代の不動産再開発ブームで活発だった民間工事も縮小する中、手っ取り早く稼げる事業として大手ゼネコンが群がった結果ですし、復興を口実に財政支出が大盤振る舞いされた結果でもあり、去年4月のエントリーで危惧していたことでもあります。復興を進めるためには他地域の公共事業は一時凍結を基本とすべきですが、実際は八ッ場ダムをはじめ多くの公共事業がドサクサ紛れに着手が決まりました。

八ッ場ダムではダム湖に沈む家や畑や温泉や鉄道が、手厚い補償で移転されるのに対し、津波で洗われた家や田畑や会社や鉄道の再生は自己責任という不条理は以前にも指摘いたしました。公共事業優先で国民生活は後回しがこの国の作法という現実を思い知らされます。

いろいろあって三陸鉄道は復旧費用の国の補助率を50%とすることで復活の方針が示されました。4/1には陸中野田―田野畑間が復活します。元々インフラは岩手県保有で上下分離されていましたから、三陸鉄道の負担は大幅に軽減された形ですが、全業黒字のJR東日本に関しては国の補助はなく、国交省が沿線自治体に働きかけて常磐線と仙石線に関しては、海岸線の護岸工事や集落の内陸部移転に伴う自治体の区画整理で鉄道用地を生み出す形でフォローはされるものの、復旧費用自体はJR東日本の自己負担となります。そのため仙台近郊区間で利用の多い上記2路線に関しては復旧のための自治体との協議が始まり、やっと動き始めました。

八戸線に関しては、地元自治体との協議がまとまり、海岸線の護岸と駅から高台への避難道路の整備が確認されたということで、2012年春に復活が決まり、いち早く復旧しますが、山田線、大船渡線、気仙沼線に関しては見通しが立たず、JR東日本が気仙沼線でBRTによる仮復旧を提案したことで、岩手県の2線の沿線自治体が過剰反応しております。とはいえ自治体の復興計画がはっきりしないと復旧に取り掛かれないこともまた確かなところです。

某大学教授がいうようにJR東日本が新幹線の復旧を優先させたから遅れているわけではありませんし、また三陸鉄道は建設時期の関係で旧鉄建公団工事線として高規格で造られ、トンネル、盛土、高架橋で構成され、防災対策もそれなりにされていたこともあり、沿線自治体は迷いなく三鉄の復旧を前提にできましたが、旧国鉄軽便線規格で集落に寄り添い蛇行するJRのローカル線を地域の産業振興と防災に整合的に復活させることの難易度はかなり高いと言えます。

加えて旅客輸送だけを考えれば、需要面からバスで十分なレベルですし、むしろ運行頻度を高められるなどプラス面もあるわけで、鉄道でなければならない理由をはっきりさせる事も必要ではないでしょうか。私案ですが、貨物輸送インフラとして活用できるならば考えようが出てくる気がします。震災後の燃料不足でJR貨物が燃料輸送列車を仕立てた事を思い出していただきたいんですが、貨物列車の設定のない磐越西線を利用して、新津まで1,000t列車で組成された列車を新津で2分割してDD51で牽引という手間のかかる方法が取られました。

DD51自体は老朽化sが進んでおり、数年以内には淘汰されると考えられますし、動かせる運転士も高齢化しており、今後仮に同じような状況で迂回輸送が求められても不可能となります。北陸新幹線や中央リニアで言われる防災対策としての輸送路の多重化ですが、自らの意思で輸送機関を選べる旅客よりも、自動化を進めても人手をかける部分が無くせない貨物輸送こそ多重化を考える必要があります。

今回福一事故で常磐線の広野―原ノ町間はおそらく何十年かに亘って不通状態でしょうから、貨物の迂回路として使えないわけです。だからといって磐越東線を電化しても、線路の弱さや勾配などの問題で迂回路として使うのは難しいでしょうから、別の方法を考えたいですね。

というわけで、非電化区間の小単位輸送用の貨物列車を車両サイドで実現できないかと考えました。イメージとしてはコンテナ貨車5両を2両のパワーカーで挟んだプッシュプル編成で編成出力1,500kwh程度で、幹線筋は複数編成併結で編成をバラせばローカル線にも入れる電気式ディーゼル列車で、1,300t列車が走る東海道山陽筋ならば4編成、1,000t列車運行路線で3編成併結といったところでしょうか。これならば幹線ルートでは集約しローカル線では分割する形で、かなり自由度の高いルートを運行できます。この仮称リージョナルカーゴトレインを走らせる前提で三陸道に代わる輸送インフラとして三陸縦貫鉄道を位置づけるということができるならば、大規模工事で復興事業を圧迫すること確実な三陸道よりも優れた復興計画となります。ま、鉄ちゃんのたわごとと笑われるかもしれませんが、旅客輸送だけを考えたときよりは復活のハードルを下げられる可能性はあります。またどのみち常磐線不通区間の迂回対策は必要なんですから、一考の余地はあるように思います。

というわけで話が逸れましたが、がれき処理と除染が復興の始まりにならず、タイトルのように不幸の始まりになっている現状を憂います。

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Comments

瓦礫処理にかかるお金の流れとしては大よそおっしゃられるとおりだと思いますが、東北域内での処理力では捌ききれてないのも事実ですね。
そのまま長期間放置できるならいろんな手が打てると思うんですが、瓦礫周辺の衛生環境はかなり劣悪です。
記事内で書かれているよな域内処理での費用取り込みは是非すべきだと私も思いますが、他地域での処理もせざるをえないのではないでしょうか。
三陸縦貫鉄道の貨物重点化はネタとしては楽しかったです。
ただ、私個人としては山田線あたりは以前書かれていたような、岩手県と三陸鉄道に実質もたせるような方法、大船渡線、気仙沼線についてはBRTなどでの運行実施までの速度の速い手法を本気で考えた方が良いのではないかなと感じています。
そう考える理由は実際に三陸沿線住民が公共交通の消失によって苦労していることです。
また、生活の為の職を得る為や不便さなどに耐えかねての住民の流出に歯止めがかかっていません、このままだと本当に限界集落を越えて消失集落が頻出し復興自体が計画実施前に瓦解します。
メディアに露出する情報は自治体の長の声が中心で本当の意味での沿線利用者の声はあまり拾われていません。
どちらにしろ復興するならするで三陸の彼らにとってより良い形にできればよいのですが。

Posted by: 幻月 | Monday, March 12, 2012 at 07:27 PM

コメントありがとうございます。誤解があるようですのが、広域処理自体が問題なのではなく、広域処理を口実とした利権化の問題なんです。

阪神のときの処理単価2.2万円が、今回は10万円(島田市のケース)とも言われるほど高騰しております。このこと自体異常ですが、特別交付金が自治体に渡し切りにされるのではなく、事業ごとに国(復興庁)が査定するのですが、書類上処理量の多い案件の方が通りやすい一方、被災自治体独自の処理案は後回しや門前払いとなるケースが多いようです。その結果除染の場合と同様、大手ゼネコンの手になる広域処理が優先着手されてしまいます。

神奈川県でも受け入れ問題で揉めてますが、メディアで報道されているような放射能汚染の懸念のみが反対の理由ではなく、処理費用の問題が開示されていないなど、市民感覚で違和感のあるところが指摘されています。

仰るようにがれき全量を現地処理というのも非現実的ですし、特に都市部では衛生問題もありますので、急いで処理しなきゃならないところはあるでしょう。一方で10年かけてゆっくりできるところもあるわけで、地域によって事情は違うはずです。がれき処理の特別交付金を渡し切りにして自治体の判断でやれば良いところを国が変に関与して利権化してしまっているわけです。

BRT化問題も不幸な展開ですね。鉄道を復旧したくても、高地移転や護岸など自治体の復興計画が出揃わないと前へ進まない一方、自治体から見れば鉄道がどうなるかわからない中で復興計画が立てられないのが本音でしょう。実際他地域への移転は現在進行中で、時間をかければかけるほど人口が減って鉄道の復旧が難しくなるわけですから、とりあえずBRTで地域のモビリティを高めておくことは必要な事だと思います。

結局時間の経過がネガティブに働くわけで、鉄道の復活が長期戦になるのならば、元のローカル線として復活させること以上の、鉄道でなければならない理由を見つけておくことが必要ではないかと考えました。貨物ルートとしての活用はそんな中からの発想です。

Posted by: 走ルンです | Monday, March 12, 2012 at 10:32 PM

がれき処理の問題、大変参考になりました。
広域処理について、急いで処理すべきものは広域で、そうでないものは地元に施設を作って、と普通に考えると当たり前の手法がとられないのは変な話です。
ただ一方で広域処理に反対する人たちの中にも、放射能汚染拡散を防ぐために反対(汚染を全国に拡散させる陰謀だから反対)という人もいて、本質的な議論が見えにくくなっていたので、今回のブログはすっきりとしました。
あと、貨物列車のアイデア、面白いです。こういう列車があれば、オフレールステーションへの列車復活も出来るのでは?などと思います。

Posted by: あかぐま | Wednesday, March 14, 2012 at 11:32 AM

コメントありがとうございます。がれき処理問題では新聞やテレビの報道姿勢がかなり変です。

放射能汚染問題に関心が集まっているのはその通りですが、汚染がれきを拡散するなという主張は一部に留まります。それを針小棒大に取り上げて、一部の変な人たちの反対に市民感情が引き摺られているというフィクションを垂れ流してます。

逆に国会中継でがれき処理問題は自民党議員がやけに張り切って早期の広域処理を政府に迫ってますが、地方議会でも同じ構図が見られ、ゼネコンや産廃処理業者のロビーイングを窺わせます。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, March 14, 2012 at 11:16 PM

貨物輸送をセットにしたローカル線の復興というアイディアは面白いですが、個人的には貨物新幹線も1つ手かなと思います。

将来的には被災地以外の地域でもローカル線の存廃は避けて通れない問題でしょう。
無理に鉄道路線として延命せずにBRTなど身の丈に合った輸送モードに転換した方が良いと思います。

その場合、在来線が担ってきた役割を新幹線に移す必要があります。
鉄ヲタの妄想ですが、貨物新幹線と寝台新幹線が実現すれば無理に在来線を残さずに済みます。
新幹線なら災害後の復旧が在来線よりたいてい早いですし、新幹線の車両限界の広さと速達性を活かしたピギーバック輸送の復活や豪華寝台特急も可能かもしれません。

0〜6時までの長時間停車の問題や貨物新幹線の開発、貨物駅の設置など課題は多いですが、実現すれば整備新幹線の諸問題の解決にもつながる気がします。

Posted by: yamanotesen | Sunday, March 18, 2012 at 10:16 PM

貨物新幹線に関しては、夜間保守間合い問題と構造物荷重の問題がネックになります。

実は新幹線と欧州の高速鉄道との決定的な違いはこの部分でして、動力分散前提の日本の新幹線では、貨物輸送を行う事は難しいところです。

ま、航空貨物のように軽量な専用コンテナにキャスターをつけて1分停車の間に荷役が可能とでもすれば、旅客輸送と共生できるでしょうけど、輸送力はたかが知れてます。というわけで、在来線の貨物輸送は簡単に無くせないのが現実です。新在の規格が違いすぎる問題は簡単には解決できません。

東北新幹線の復旧が早かったのは、阪神大震災を教訓に耐震補強を行っていたことによります。逆に言えば在来線は無防備だったとは言えますが、それ故に復旧の際に防災強化が求められるわけで、皮肉なことにそれが復旧を遅らせる事にもなりますが、止むを得ないでしょう。

逆にだからこそ時間の経過で鉄道復活の意義が薄れることに対して何らかの仕掛けが欲しいところです。というか、震災直後に物流が遮断されて店から商品が消えたことを忘れないで欲しいんです。多重化は物流にこそ必要なんです。

Posted by: 走ルンです | Sunday, March 18, 2012 at 11:08 PM

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