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Sunday, April 15, 2012

事実上の2012

今年はマヤ暦の最終年に当たるそうで、何かが終わるらしい。地球なのか、人類なのか、文明なのかはわかりませんが、そう固く信じる人は少なからずいるらしいです。ま、興味ないけど。

一方で今年は世界に指導者の交代の多い年ということで、ロシア、フランス、アメリカ、韓国で大統領選があり、中国で指導部の交代があると言われます。それに絡んで重慶市トップの簿煕来氏の失脚があり、権力闘争を疑われる中、香港行政長官選挙では親中派2候補で争われ、権力闘争の余波かと言われたりしてますが、日本のメディアの扱いは小さく、世界の見方とずれてます。政治体制の如何に係わらず権力継承は政治を不安定にします。

その一方でここ数日、メディアは日米韓が事実上のミサイルと称する三代世襲途上の北朝鮮の衛星打ち上げ問題の露出が多かったのですが、何騒いでんだか。リアルは見事な昼花火に終わりました。平壌政府が失敗を認めたのは珍しいですが、そもそも鳥取県レベルの経済規模に鳥取県の40倍の人口を抱える国の衛星打ち上げで失敗は別にあり得ない話じゃありませんし、むしろサイエンスチャレンジとして「衛星:」と強弁する口実にもなり、北朝鮮政府の体面も保てるわけで、それよりも発射情報を把握しながら発表を遅らせた日本政府の危機管理の問題を世界に晒しました。

冷静に見れば打ち上げ失敗の可能性はあったわけで、それも含めてアメリカにも先んじていち早く速報を打った韓国政府の対応は見事でした。日本政府にとっては福島の原発事故同様「想定外」だったわけですね。というか、韓国では日本ほどメディアが騒いでいないようです。迎撃を口実に自衛隊配備に抵抗感のある沖縄へのPAC3配備など、騒ぐことでメリットを得る人たちがいるわけで、それを暴き出すのがメディアの本来の仕事のはずです。

その一方で鳩山元首相のイラン訪問で与野党双方から叩かれてますが、別に鳩山氏が行ってどうなる問題でもありませんが、日本ではイラン問題の重要性に関する認識が弱い気がします。鳩山氏の意図はわかりませんが、当ブログでも再三指摘しているように、IAEA加盟国の権利として核開発を進めるイランは、ある意味核武装に必要なプルトニウムを得るには多すぎる54基もの原発を保有する日本をお手本にしているわけで、原発事故の対応を含め、日本の態度は重要です。日本では原発と核兵器は別物と説明されてますが、世界はそうは見ていないということを自覚すべきです。鳩山氏への批判も同盟国アメリカの意図に反して政治利用されたというのですから、悲しいかな属国根性丸出しです。

そのアメリカ自身が核の抑止力を否定し、核がテロリストに渡らないことが新たな防衛線となっていて、国内に大量に抱える核兵器用濃縮ウランを原発用燃料として民間転用する方向性を打ち出しているわけですが、だからこそ核拡散につながるイランや北朝鮮に自制を求めているのです。そのときに日本の存在が悩ましいところなのに、冷戦時代さながらにアメリカの核の傘に依存し続けつつ、原発大国として商業利用は抜け目なくやっている日本の存在はかなり疎ましい存在なんですが、日本にはその認識はほとんどありません。だから福島第一原発の事故原因もわからない段階で関西電力大飯原発3,4号機の再稼動に踏み込めるんですね。

この問題は民主党内でも反対論があって一枚岩ではないんですが、枝野経産相の福井訪問に合わせて仙谷政調会長代行も福井に入り、民主党系地方議員を集めて説明会を開催しています。元々福井は09年総選挙でも自民党が小選挙区3議席を独占した保守王国でもあり、本音は電力利権、原発利権を独占してきた自民党の選挙基盤の切り崩しにあるようです。しかし原発再稼動のような重要問題を政争の具にするのは問題です。政権中枢の対応だけに鳩山氏よりもよっぽど問題行動です。

実は東電への資本注入問題や値上げ問題などで、経産省や原子力賠償支援機構と東電が対立する場面が多いですが、自民党の選挙基盤だった電力利権の解体を進めたい政権の意図が働いています。枝野経産相の発言が度々ブレるのもそのためですが、やり方が稚拙なのでゴタゴタが見えてしまうわけです。その意味ではギリギリ政権交代の意義は認められますが^_^;。

夏のピーク電力に関する政府や関電の説明も、中身を見れば夏の需要期に火力発電所の定期点検を入れていたり、利用可能な自家発電電力のデータが古くて実際はもっと多かったり、揚水発電が算入されていなかったり、大口需要家の需給調整契約が考慮されていなかったりします。基本的に嘘っぱちです。おそらく原発再稼動がなくても電力は足りるという状況では原発再稼動が難しくなるという思惑があると思われます。

大口電力の需給調整契約というのは、需要逼迫時に給電を停止する代わりに料金を割り引く契約で、大口契約の大企業などで採用されていると見られますが、電力会社は守秘義務を盾に明らかにしておりません。契約先は停電のリスクを負う代わりに安い料金で利用できるわけで、公共性を問われる公共施設、病院、鉄道などは含まれないと考えられますが、安定供給先から外すのでなければ単なる不公平な値引きです。実際は昨年の東電の計画停電のように、需給調整契約による給電停止は実行されず、安定供給を義務付けられている小口電力や鉄道を止めたのはご存じの通りです。また利用可能な自家発電や揚水発電の電力を無視したり低く見積るのも同じで、批判を浴びて渋々認めた経緯があるのに、またぞろ同じ手で国民を騙そうとしているのですから、政府も関電もよほど国民をバカだと思っているんでしょうね。

実際大企業の利害を代表する経団連は東電の値上げにも理解を示し、電力の安定供給が日本の競争力の源泉として原発再稼動にも踏み込む発言をしています。悪いけどあんたら安定供給先から外れてるじゃないか。夏場ピークの数日の休業と土休日への振替で対応すりゃ問題ないはずです。第一シャープ堺工場やパナソニック尼崎工場のように稼働率ガタ落ち状態で本当に電力不足が企業活動のネックになるのかも定かではありません。そもそも人件費が台湾は日本の3/4、韓国で半分、中国は地域によりますが平均で1/10で、電気の安定供給以上に国内生産のネックです。

加えて人口減少による国内市場の縮小で、ますます国内生産を続ける理由が見出せない状況です。いわゆる人口動態の2012年問題で、団塊世代のリタイアが始まると言われたのが2007年ですが、実際には定年後再就職で65歳まで働く人の割合はそれなりに高く、2012年には年金が満額支給となることから、離職する人人が増えると見られています。つまりその分労働人口が減少するわけですが、これには2つの意味があります。

1つは国全体で見た家計所得の減少で、国内市場の縮小ということですが、もう1つは労働力の希少化で、これは賃金単価の高止まりを意味しますから、韓国や台湾との賃金差は埋まらないということでもあります。実際には賃金は下がっていますが、賃金の低下は物価の下落すなわちデフレを引き起こしますので、中長期では購買力平価に収斂される為替水準の調整が起こります。また日本が対外純資産国であるため、当面は製造業が縮小して貿易赤字になっても、所得収支黒字で穴埋めされて経常黒字が維持されますし、万万が一経常収支が赤字転化したとしても、当面は対外純資産の取り崩しで円買い圧力が発生しますから、少なくとも10年20年のスパンでは円高基調は変わらず、結果的に台湾や韓国との賃金差は縮まらないわけです。

また人口動態の変化はオフィス需要を縮小させますが、折悪しく2012年は2006-2007年ごろの再開発ブームのときに計画されたオフィスビルの完成が重なるタイミングでもあり、実際、従来は完成前に埋まっていたテナントは集まらず、新築ビルでも半分は空室という状態で、再開発ブームで高く仕入れた物件なのに儲からないし、値引きすれば既存ビルからテナントが移るだけで、相対的に老朽化したオフィスビルからテナントが消えるという状況が顕在化しています。

こうなると東北縦貫線開業後に田町車両センター跡地開発と新駅建設の構想はうっかり手がつけられません。幸いというか、震災の影響で13年度中とされた東北縦貫線の開業は1年延期がJR東日本から発表されましたが、新年早々の都からのリークと思われるニュースに見られる微妙な問題もあり、後述の地震対策強化の影響も絡んでいるかもしれませんが、東京のオフィスビル開発は一区切りとなる可能性が高いと考えられます。

そこで問題になるのが空室を抱えた老朽オフィスビルをどうするかという問題です。特に耐震補強の必要なビルの場合、テナントがいなくて工事費用が出せないし、仮に建て替えるにしてもテナントが埋まる見込みが立たなければ着手できません。つまり放置される危険があるわけですが、物件によっては補強を兼ねたオフィスから住居へコンバージョンを考える余地はあります。元々都心部は夜間人口の少なさが問題だったわけですが、交通インフラが整った利便性を考えると、住居への転用は魅力的です。また結果的に長距離通勤が減れば災害時の帰宅困難者問題も軽減されるわけですから、震災時のような混乱も起きにくくなるわけです。首都直下地震の想定震度が7に引き揚げられたり、発生頻度に疑問符がつく東海、南海、中南海連動地震の想定の上方修正などで耐震や津波対策の強化が言われますが、人口減少を踏まえて、住まい方から見直すことで、インフラ投資を抑制しながら安全性を高めていくのが現実的です。

その意味で昨日開通した新東名高速道路について、多重化の観点から評価する声があることには釘を刺しておきます。単純に津波対策などの防災強化ならば由比海岸などの危険区間に迂回路を整備する事で足ります。今回の開業区間は東名の渋滞が日常化している区間でもありますから、渋滞緩和の意義は認めますが、前後区間の渋滞で新たなボトルネックが発生する可能性はあるわけです。そもそも民主党のマニフェストで謳った高速道路無料化が実現していれば、必要最小限のインフラ投資という方向性へシフトしたはずで、今からでも考え直して欲しいところです。また実際に無料化社会実験で神奈川県内の新湘南バイパスと西湘バイパスが無料化されて国道1号の渋滞が緩和したと思ったら、復興予算捻出を口実に終わり、従前どおり茅ヶ崎駅前の渋滞が復活し、R134平塚市塔が原は落ち着きました。早い話渋滞が都市中心部へ移動したわけで、経済的損失は大きいと言えます。

人口の都心回帰自体は90年代から見られる現象で、郊外部でも一部で人口減少は見られます。例えば立川市では子どもが減って小学校が廃校される事態も起きてますし、震災関連で千葉県が首都圏の都県レベルだ初の人口減少となった他、神奈川県でも横須賀市が藤沢市に逆転され、三浦市に至っては寒川町に逆転を許す結果となっています。交通の利便性や自然地形などで住宅適地の選別が始まっているわけで、もはや交通インフラの整備で開発利益を得るビジネスモデルも過去のものになったと考えるべきでしょう。むしろ今後は人口の高齢化も進み、都心、郊外、地方を問わず、徒歩圏に生活インフラを集積させたコンパクトシティを目指すべきです。またその方が避難場所や避難路の確保や津波を減衰する防潮林などのバッファの整備もやりやすくなり、必ずしもめったに来ない大津波に備えた高い堤防は必要ないわけですね。被災地復興も同様の考え方が可能です。

といろいろ書き綴りましたが、今年2012年はLCC元年という点を特質すべきでしょう。元々ビジネス客主体だったエアラインですが、3月就航のピーチでは、女性や高齢者など従来利用が少なかった層が目立ち、現在搭乗率は予定を上回っております。ピーチは関空ベースですが、7月にはジェットスター・ジャパンが、8月にはエアアジア・ジャパンが成田をベースに就航予定で、首都圏での集客となるだけに注目されます。またLCCではありませんが、ハイブリッド型のスターフライヤーや国際線進出を模索し独自性を出すスカイマーク。それに名古屋空港を拠点に小型機で独自のポジションを取るフジドリーム・エアラインズもあり、日本の空の変貌は急です。

例えば札幌(新千歳)―福岡間でフジドリーム便を松本乗り継ぎで利用するような事が可能となってきており、発着枠がタイトで着陸料も高くハブ機能を発揮しにくい首都圏の羽田や成田を尻目に、地方空港でも複数地域への就航便の離発着の時間帯を集約して積極的にトランスファーを促すミニハブ機能を持たせるなどして、発着枠の余裕を活かした地方空港の独自性を打ち出すことが考えられます。航空機のスピードを活かせば、新幹線やリニアの恩恵が及ばない地域でも高速交通ネットワークを構築できるとなれば、整備新幹線の着工も見直しが迫られます。

LCCに関しては日本の場合レガシー・ベイビーと呼ばれる大手エアラインの資本でスタートするという特殊性がありますが、欧米やアジアの実績ではシェア30%程度にはなりそうです。その場合新規顧客の獲得が肝ですが、既存大手がある程度食われることは避けられません。それでも仮に全体で30%の市場拡大があったとして、現状を100として

レガシー:130*0.7=91
LCC:130*0.3=39
となり、レガシーキャリアは絶対量で9%減でもベイビーのLCCが利益を紡ぐことで、利益を最大化できることになります。おそらくこの辺が黄金律になるんだと思います。ただしあくまでも航空だけで見た場合であって、新規需要の中身は従来は鉄道やバスやマイカーの利用層からの移転も含まれますから、線路という固定施設を持つJRはかなり苦しい立場になりそうです。逆に地方も含めた空港連絡輸送には活路がありそうで、千葉県や横須賀市・三浦市の人口減で追い込まれる京成と京急が共に空港連絡輸送を担っているのは偶然ですが、鉄道の今後の投資の方向性としては妥当性がありそうです。また新潟など新幹線を空港まで延長してスポークの1つとして活用する事も考えられます。

というわけで、長くなりましたのでこの辺で。

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