« March 2012 | Main | May 2012 »

April 2012

Monday, April 30, 2012

ホリデーイールドマネジメント

連休初日の朝からツアーバスに追い込まれるムーンライトながらの過去記事が突然閲覧数が伸びました。言うまでもなく関越道藤岡ジャンクションのツアーバス事故を受けたのもですが、ツアーバスの問題点は既にいろいろ述べております。

特に乗合免許の高速バスとの関係で、コスト構造の違いがあることも既に指摘しておりますが、主に公共交通として乗客の有無に係わらず運行を義務付けられる高速バスと、最小催行人数に満たなければ運休できるツアーバスという視点と、ターミナルフィーの負担問題に絞って説明しました。

その他にも高速バスは公共交通であるが故に、交通バリアフリー法の適用を受けて、車いす乗車などの対応を迫られる一方、ツアーバスに義務はないですし、ターミナルフィー問題も、ツアーバス大手のウィラートラベルが東京と大阪に専用ターミナルを設置するなど、新しい動きもあって、ツアーバス問題も事業者ごとに取り組みの違いがありますし、高速バスを運行する地方事業者が、共同運行の大都市事業者のターミナルフィー負担の高さから逃げ出してツアーバスに衣替えするケースもありで、単純に高速バス=善、ツアーバス=悪という二分法も通用しません。

加えて今回の事故では、事故の損傷の激しさと、当該ツアーバスの乗客名簿をツアー主催の旅行会社が把握していなかったなど、特に中小旅行社と中小バス事業者に特有で且つ現代的な問題も内包しております。その意味で高速バスとツアーバスの垣根が払われる既定路線が決まった中での、中小の最後の稼ぎ時に起きた事故という側面も指摘できます。制度が変わるときにはいろいろな事が起きるものです。

また報道によれば、ツアー主催の旅行社ハーヴェストホールディングスが連休の多客時対応として運行社の針生エクスプレスに手配した臨時便ということで、国交省の夜行バス運行の指針で670km以内はワンマン運行可としていたのに従っていて、2時間ごとに休憩を指導するなど、一応の形式は整えていたのですが、始業時の点呼や運行記録などに抜けがあれば無意味ですし、ドライバーも運転暦10年のベテランとしつつ、運転暦は大型バスではなく大型車のものということで、新規参入の急増でバス運転手の質の低下は否めないところでもあります。

また大手事業者では組合との労使交渉もあって、あまりタイトな運行計画はそもそも組めないという要素もあります。この辺は組合を目の敵にしている大阪市バス問題にも通底しますが、組合に揺さぶられながらも事業を継続してきた事業者の経験値は高く、新規参入の中小事業者が「国の指針を守ってます」と言うのとは覚悟が違うわけですね。ツアーバスの普及で格安運賃で利用可能になったことは歓迎すべきですが、価格に惑わされず利用する交通機関を選ぶ乗客側の自己責任も問われます。

また基本的にワンドラなら危険、ツードラなら安全とも言えません。ツードラの場合交代運転手が仮眠できるから、良好な状態で乗務できるわけですが、ワンドラでも途中での運転手の仮眠時間を兼ねた長い休憩が取れれば良いわけで、実際乗合免許の夜行高速バスの一部路線で時間調整を兼ねて行われてますし、またJRバスドリーム号のように、三ケ日IC至近の操車場と仮眠施設を用意して途中交代で対応するケースもあります。JRドリーム号の場合は昼行便と組み合わせた乗務員運用で全体の生産性を調整しているわけです。

というわけで、ここまでが前フリですが、ツアーバス問題で見落とされがちな論点として、高速乗合バスの硬直的な制度や事業者の保守的スタンスの問題があります。高速乗合バスと言えども道路運送事業法の乗合バスの一種で、制度上特段の違いがないわけですが、どちらかといえば地域交通に特化され、運賃一つも公共料金と見なされて柔軟な値引きなどが難しいわけです。加えて上述のように交通バリアフリー法への対応は、座席数を減らさざるを得ない現実もあります。昨今の夜行高速バスでプレミアムシートが流行っているのは、座席減のカバーとバリアフリー対応の両睨みと見れば納得しやすいでしょう。

既存事業者の保守性は、例えばターミナル問題などがありますが、以前指摘した富士交通(現さくら交通)の失敗でJR福島駅前への乗り入れ拒否に遭うなどしてます。もちろんターミナルフィーの負担問題と表裏一体ですが、公共スペースであるはずの駅前広場への乗り入れが制限されるというのはやや違う話です。もちろん物理的な空間競合の問題はあるわけで、解決のために必要なコスト負担がルール化されていないなどの問題もあるわけで一筋縄ではいきません。

この辺はスカイマークなどの新規参入を迎え撃ったJALやANAの対応と同様ですが、航空分野ではLCCのビジネスモデルが認知されて、ピーチが本拠とする関空ではとりあえず1年をめどに着陸料免除を行い、またその間にLCC専用の格安料金のターミナルを建設して対応するなどしています。LCCの場合、ボーディングブリッジや牽引車など利用料の高い地上設備を使わない前提で、前進で退出できる駐機場に平屋のターミナルを配し、シャトルバスで近づいてタラップで搭乗とすることでターミナルフィーを削減する方向性を打ち出しており、成田でも同様の対応を進めています。ま、事業費削減を要請された茨城空港では既に実現していることではありますが。

それと航空分野では既に運賃の弾力化が進み、LCC以外でも早割は既に当たり前ですが、このキモは黙って正規運賃を出してくれる当日搭乗のビジネス客などの上客向け座席枠を残して、残りの座席を効率的に埋める手法が一般化したものです。これをイールドマネジメントと呼びます。

固定的な運賃で集客する限り、航空のように提供座席数を簡単に増減できない場合は搭乗率6割を超えると、希望する便の予約を断るケースが増えると言われます。つまり4割の空席を残した形にしないと、機会損失が発生するわけで、それをs前提にペイできる運賃水準が設定されていたわけですが、この4割の座席を最初から安く売ってしまえば、それだけ運賃収入を増やすことができますから、大元の正規運賃もその分下げられるわけです。結果的にLCCでは搭乗率8割にも達し、その分運賃を下げられるわけです。またweb予約を活用することで、この手のマネジメントが容易に可能になってきたと言う背景もあります。

鉄道ではJRの認可運賃は一律に近い形態で、届出制の特急、指定、グリーン、ライナーなどの目的別の料金プランを並存させることで、ある程度の弾力化を実現していますが、航空のイールドマネジメントには及びません。というよりむしろ、大量輸送を旨とする鉄道では、きめ細かい料金設定はむしろバックオフィス業務を増やすことになりますので難しいところがあります。加えて整備新幹線の場合はリース料の根拠となる受益の原資が特急料金分がメインですので、今後LCCなど航空からのアタックを受けても、簡単に対抗して値引きできません。

既存新幹線でも新幹線買い取り価格に上乗せされた長期債務の償還が終わるまでは同様ですから、値下げできないライバルを尻目に正規運賃で簡単に集客できる羽田―伊丹線が航空会社のドル箱になるわけです。しかもJR東海は長期債務の償還が終わったらリニアを作ると言っているわけですが、リニアが大阪まで到達する2045年まで航空各社が眠りこけていてくれる保証はありません。長期債務の軽減分は割引に回さざるを得なくなると考えられます。

やや脱線しましたが、バスの場合は地域の路線バスの認可運賃をベースに、高速走行によってもたらされる生産性向上分が超過利潤となるわけで、それを見越して高速路線では一般路線の賃率より割安な運賃が設定できるわけですが、一旦認可を受けた運賃は公共料金と見なされ、航空運賃のように柔軟な設定はできない縛りがあります。

実はツアーバスの台頭は、旅行会社の主催旅行として設定されているからこそ可能な、運賃の弾力化に秘密があります。ツアー募集段階から複数の割引プランを用意して、効率よく座席を埋めていければ、一部の座席を安く売っても、乗車率を高くすることができます。web予約で座席の販売管理も容易になりますし、楽天トラベルのように格安ツアーバスプランを売るための専用サイトまで登場し、中小の旅行会社でも簡単にツアーを組める条件が整ってきたわけです。

実は今回の事故ではその実態が明らかになりました。ツアーを主催した旅行社のハーベストホールディングスでは、直接集客の10人程度を除いてツアー参加者の名簿を把握していなかったという点です。そのために死者の身元確認が遅れるなどの弊害が出たわけですが、ちょっと変な話です。楽天トラベルはあくまでもツアーの代理販売をしたに過ぎないわけで、本来ツアー主催者が名簿を把握していなければおかしいんですが、これが常態化していたとするならば、楽天トラベルも責任を免れません。今後の解明が待たれます。

と同時に、高速乗合バスの運賃規制が現状にそぐわなくなってきている実態もあるわけで、運賃の弾力化が進めば、ツアーバスのあり方も見直さざるを獲なくなると考えられます。このことは鉄道は高速バスのアタックにも晒されることを意味しますから、廃止が相次ぐ夜行列車の復権はますます困難になります。

ただし気になるのが安全性の問題ですが、今回の事故報道では専らバス会社の安全管理やツアー主催の旅行社の対応など、従来ツアーバス問題として取り上げられてきた視点ばかりが強調されておりますが、もっと重大な安全問題があります。それは道路の構造上の欠陥です。

今回の事故は藤岡ジャンクションの上信越道ランプウェーが乗り越した地点で、高さ3mの防音壁が始まった場所にバスが刺さった事故ということです。確率的には可能性が低いとはいえ、大型バスがナイフで切り裂かれたような状態になったわけですから、事は重大です。壁が連続している場所での側面衝突ならば、ここまで損傷する事はなかったはずで、ありふれたツアーバス事故tとしてベタ記事扱いだったはずです。

あいにくメディア報道ではほとんど取り上げられておりませんが、同様の危険がある地点は全国に多数あります。規制を強化して安全対策をいくら補強しても、肝心の道路に危険箇所があるのでは意味がありません。道教にか亀岡で起きた無免許暴走事故でも同様ですが、そもそも通学路に指定されている生活道路に通過車両外とも簡単に乗り入れられる都市構造、道路構造に問題があるわけで、こういった場所では車道を狭めてでも歩車道を分離するとか、意図的な段差や障害物を設置して減速を促すなどの対策が取られるべきところですが、厳罰化を促すようなバイアスのかかった報道ばかりです。亀岡事故では高速道路無料化社会実験の対象となっていた京都丹波道路の社会実験終了で、国道9号線の渋滞が日常化していたことも遠因と考えられます。つまり社会実験を中止に追い込んだ自民党とそれを認めた民主党政権の道路利権に連なる連中が加害者というわけです。

というわけで、道路の危険箇所は高速道一般道を問わず多数放置されている現状があるわけですが、それを見直す契機になるならば、この悲惨な事故の犠牲者の鎮魂にもなると愚考いたします。

最後になりますが、そもそもGWとはなんぞやですが、民主党政権では休日の分散化も過大として取り組んできたはずですが、いつの間にか立ち消えとなっています。そもそも全国民が一斉に休んで一斉に行楽に向かえば混雑が発生するわけで、今回のバス事故も多客期の増発便だった事が示唆します。ツアーを組めば楽天トラベルが集客してくれて、電話1本でバスも簡単に手配できて、満席で走らせてしっかり儲けているのに、事故の対応も含めてお粗末なサービスしか提供できない現状は、結局限られた稼ぎ時を逃さない企業サイドの最適行動でもあるわけで、休日を分散し行楽需要を平準化できればそもそも安かろう悪かろうなサービスは選別され淘汰されるのではないかと思います。この観点からも今回の事故は政府の不作為の犠牲と断じることが可能です。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

Sunday, April 22, 2012

JR四国の高速化計画

興味深いニュースです。

JR四国、主要路線の高速化検討 一部在来線、減便も  :日本経済新聞
以前JR四国の活性化策として大胆なショートカット線の建設などをほとんど思いつきで^_^;述べたことがありますが、ひょっとするとその第一歩となるかもしれないニュースです。

具体的には予讃線の伊予西条から松山までを、現行の海岸沿いの今治経由ルートから内陸部を直線で結ぶショートカット線を建設して、併せて160km/hレベルのスピードアップをめざすものです。基本的に国道11号線と松山道に近いルートとなるわけで、現状よりも対クルマで競争力が高まると見られます。上記リンク先の記事では高速道路無料化との関連で影響が大きいと見られるJR在来線の活性化の必要性を述べたわけですが、とりあえず検討段階とはいえ、本四3ルートの通行料金の見直しは行われるわけですから、JR四国がリスクを取って一歩を踏み出すことにはエールを送りたいと思います。

四国の鉄道の脆弱さは改めて指摘しておきたいのですが、路線網でトラフィックの重複する最重要区間である高松-多度津間でさえ完全複線化はJR化後の話で、全国組織の国鉄では投資順位が劣後するのが地方の宿命だったわけですから、国鉄改革で地域分割が為されたことは意味があります。地域の実情に合わせて身の丈に合った選択的な投資を動機付けるわけですから。

とはいえ立地条件の悪い3島会社に自前で投資できる余力はなく、にも拘らず高松ー多度津間に関しては1988年の瀬戸大橋開業に伴う線路付け替えや、坂出、丸亀両市の都市計画による連続立体化事業のタイミングの問題もあって国鉄時代には実現しなかったわけです。加えて予讃線の電化区間が繋がるのが93年という具合で、国鉄時代よりも鉄道資産を上積みしている一方で、高速道の整備で利用者は減っているわけです。つまり資産総額は拡大する一方、競合条件は悪化し、事業の基本的な収益性を示す総資産利益率(ROA)を悪化させているわけです。

それ故に旧国鉄債務の返済義務を負わず、更に経営安定基金を渡されてその運用益で赤字補填できる仕組みが考えられたわけですが、バブル崩壊後の低金利で運用難に見舞われてますし、そもそも本業で黒字が出せない状況では、追加投資は難しいわけです。だからこそ鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余金の一部を利用した助成制度を活用して、追加投資に舵を切ったわけです。ある意味国鉄時代の投資不足を政府貯蓄を取り崩して民間投資をプラスするわけですから、マクロ経済的にも整合性のある施策です。

その一方で四国地方の人口減に対応した列車本数の削減にも踏み込むとしており、おそらくスピードアップで増収に繋がる優等列車の強化の一方で、ローカル列車はかなり整理されるものと思います。ひょっとしたら県庁所在地近郊以外は普通列車がなくなるか、通学列車だけになるか、それぐらいドラスティックな変化があるかもしれません。それでも鉄道がより優位性を発揮できる分野に特化する"選択と集中"と考えることができます。フィーダー輸送はバスやマイカーに任せてしまうという考え方もありますし、例えば松山近郊ならば路線が重複する伊予鉄道に委託してエリア内の公共交通を一元化するという考え方もあり得ます。民間同士の話ですから、東京の地下鉄一元化よりも実現可能性はありそうです。

あとJR四国でもICカード乗車券の導入が検討されるようですが、そうなるとますます地場の民間事業者との連携は大事になります。というかJR各社で導入の進むICカード乗車券すら、自前では導入できず情勢を得て初めて具体化するという窮状を見るべきでしょう。鉄道の高速化でも1989年に200系振り古式気動車による土讃線多度津-阿波池田間120km/h化、90年には予讃線・内子線と土讃線高地-窪川間120km/h化と牟岐線110km/h化、93年には予讃線高松―伊予市間の電化完成で8000系電車が投入され130km/h化、96年高徳線高速化で特急剣山が110km/h運転。98年高徳線130km/h化など、地道な投資は続けられてきましたが、高速道の延伸で競争条件の悪化は止まらない現状です。

その意味で在来区間の改良がどこまでできるかによりますが、160km/hレベルのスピードアップが実現するならば、鉄道がかなりのアドバンスを得ることになります。岡山ー松山間で2時間以内ならば、新幹線乗り継ぎで新大阪から松山までが3時間圏となり、ビジネス客の取り込みが可能となり、航空からのシフトも見込めますから、おそらくこのラインが目標になるものと考えられます。

ただ人口動態に合わせたローカル列車の減量化は地元自治体からかなりの抵抗を受けるでしょうから、高速化のメリットを言うにしても、簡単には説得できない可能性があります。特に今治を中心とするエリアは完全に取り残されるわけですが、内子線による短絡ルートで取り残された予讃線旧線の衰退ぶりを間近に見ているはずですから、相当な抵抗は覚悟する必要があります。地元が納得するような輸送サービスを打ち出せるかどうか注目されます。

今治の場合は造船やタオル生産など、地場に有力な産業集積があり、本四ルートの1つであるしまなみ海道の四国側の拠点でもあり、それらを総合して最適化されることが望ましいところです。高速化からは取り残されるけれど、しまなみ海道の通行料金の値下げがあれば、例えば広島空港を介して高速交通網にアクセスするルートが活性化される可能性もありますし、松山空港連絡鉄道を実現させて今治から直通させるというオプションも考えられます。その意味では閣議決定されながら未だに国会審議にすら入れない交通基本法の制定が本当に必要です。

話題を戻しますが、87年の国鉄民営化で発足したJR各社の中でも、JR四国は黒字はバス路線の松山高知急行線だけという状況でスタートしました。88年の瀬戸大橋開通でブームとなり利用は上向いたものの、四国内の構想同の整備と明石海峡大橋の開通でジリ貧が続きます。松山高知急行線も急行便のなんごく号は高速道経由のなんごくエクスプレスに発展的に解消され、ローカル便も高知側は全滅し松山―落出駅間を残すのみですが、高速バスは民間事業者との競合もあり、かつてのようなドル箱ではなくなっています。元々松山―佐川間の急行便でスタートした松山高知急行線は、鉄道では迂回となるルートを短絡する路線として機能していたわけで、1961年にはマイクロバスによるワンマン運行の特急便を松山―高知間に走らせるなどしして滋養を掘り起こしてきた路線です。国鉄時代には鉄道では投資順位の低い四国で実に柔軟なチャレンジが行われていたわけで、JR発足から四半世紀を経た今、JR四国は新たなチャレンジに舵を切ったわけです。今後も注目していきたいですね。

| | Comments (17) | TrackBack (0)

Sunday, April 15, 2012

事実上の2012

今年はマヤ暦の最終年に当たるそうで、何かが終わるらしい。地球なのか、人類なのか、文明なのかはわかりませんが、そう固く信じる人は少なからずいるらしいです。ま、興味ないけど。

一方で今年は世界に指導者の交代の多い年ということで、ロシア、フランス、アメリカ、韓国で大統領選があり、中国で指導部の交代があると言われます。それに絡んで重慶市トップの簿煕来氏の失脚があり、権力闘争を疑われる中、香港行政長官選挙では親中派2候補で争われ、権力闘争の余波かと言われたりしてますが、日本のメディアの扱いは小さく、世界の見方とずれてます。政治体制の如何に係わらず権力継承は政治を不安定にします。

その一方でここ数日、メディアは日米韓が事実上のミサイルと称する三代世襲途上の北朝鮮の衛星打ち上げ問題の露出が多かったのですが、何騒いでんだか。リアルは見事な昼花火に終わりました。平壌政府が失敗を認めたのは珍しいですが、そもそも鳥取県レベルの経済規模に鳥取県の40倍の人口を抱える国の衛星打ち上げで失敗は別にあり得ない話じゃありませんし、むしろサイエンスチャレンジとして「衛星:」と強弁する口実にもなり、北朝鮮政府の体面も保てるわけで、それよりも発射情報を把握しながら発表を遅らせた日本政府の危機管理の問題を世界に晒しました。

冷静に見れば打ち上げ失敗の可能性はあったわけで、それも含めてアメリカにも先んじていち早く速報を打った韓国政府の対応は見事でした。日本政府にとっては福島の原発事故同様「想定外」だったわけですね。というか、韓国では日本ほどメディアが騒いでいないようです。迎撃を口実に自衛隊配備に抵抗感のある沖縄へのPAC3配備など、騒ぐことでメリットを得る人たちがいるわけで、それを暴き出すのがメディアの本来の仕事のはずです。

その一方で鳩山元首相のイラン訪問で与野党双方から叩かれてますが、別に鳩山氏が行ってどうなる問題でもありませんが、日本ではイラン問題の重要性に関する認識が弱い気がします。鳩山氏の意図はわかりませんが、当ブログでも再三指摘しているように、IAEA加盟国の権利として核開発を進めるイランは、ある意味核武装に必要なプルトニウムを得るには多すぎる54基もの原発を保有する日本をお手本にしているわけで、原発事故の対応を含め、日本の態度は重要です。日本では原発と核兵器は別物と説明されてますが、世界はそうは見ていないということを自覚すべきです。鳩山氏への批判も同盟国アメリカの意図に反して政治利用されたというのですから、悲しいかな属国根性丸出しです。

そのアメリカ自身が核の抑止力を否定し、核がテロリストに渡らないことが新たな防衛線となっていて、国内に大量に抱える核兵器用濃縮ウランを原発用燃料として民間転用する方向性を打ち出しているわけですが、だからこそ核拡散につながるイランや北朝鮮に自制を求めているのです。そのときに日本の存在が悩ましいところなのに、冷戦時代さながらにアメリカの核の傘に依存し続けつつ、原発大国として商業利用は抜け目なくやっている日本の存在はかなり疎ましい存在なんですが、日本にはその認識はほとんどありません。だから福島第一原発の事故原因もわからない段階で関西電力大飯原発3,4号機の再稼動に踏み込めるんですね。

この問題は民主党内でも反対論があって一枚岩ではないんですが、枝野経産相の福井訪問に合わせて仙谷政調会長代行も福井に入り、民主党系地方議員を集めて説明会を開催しています。元々福井は09年総選挙でも自民党が小選挙区3議席を独占した保守王国でもあり、本音は電力利権、原発利権を独占してきた自民党の選挙基盤の切り崩しにあるようです。しかし原発再稼動のような重要問題を政争の具にするのは問題です。政権中枢の対応だけに鳩山氏よりもよっぽど問題行動です。

実は東電への資本注入問題や値上げ問題などで、経産省や原子力賠償支援機構と東電が対立する場面が多いですが、自民党の選挙基盤だった電力利権の解体を進めたい政権の意図が働いています。枝野経産相の発言が度々ブレるのもそのためですが、やり方が稚拙なのでゴタゴタが見えてしまうわけです。その意味ではギリギリ政権交代の意義は認められますが^_^;。

夏のピーク電力に関する政府や関電の説明も、中身を見れば夏の需要期に火力発電所の定期点検を入れていたり、利用可能な自家発電電力のデータが古くて実際はもっと多かったり、揚水発電が算入されていなかったり、大口需要家の需給調整契約が考慮されていなかったりします。基本的に嘘っぱちです。おそらく原発再稼動がなくても電力は足りるという状況では原発再稼動が難しくなるという思惑があると思われます。

大口電力の需給調整契約というのは、需要逼迫時に給電を停止する代わりに料金を割り引く契約で、大口契約の大企業などで採用されていると見られますが、電力会社は守秘義務を盾に明らかにしておりません。契約先は停電のリスクを負う代わりに安い料金で利用できるわけで、公共性を問われる公共施設、病院、鉄道などは含まれないと考えられますが、安定供給先から外すのでなければ単なる不公平な値引きです。実際は昨年の東電の計画停電のように、需給調整契約による給電停止は実行されず、安定供給を義務付けられている小口電力や鉄道を止めたのはご存じの通りです。また利用可能な自家発電や揚水発電の電力を無視したり低く見積るのも同じで、批判を浴びて渋々認めた経緯があるのに、またぞろ同じ手で国民を騙そうとしているのですから、政府も関電もよほど国民をバカだと思っているんでしょうね。

実際大企業の利害を代表する経団連は東電の値上げにも理解を示し、電力の安定供給が日本の競争力の源泉として原発再稼動にも踏み込む発言をしています。悪いけどあんたら安定供給先から外れてるじゃないか。夏場ピークの数日の休業と土休日への振替で対応すりゃ問題ないはずです。第一シャープ堺工場やパナソニック尼崎工場のように稼働率ガタ落ち状態で本当に電力不足が企業活動のネックになるのかも定かではありません。そもそも人件費が台湾は日本の3/4、韓国で半分、中国は地域によりますが平均で1/10で、電気の安定供給以上に国内生産のネックです。

加えて人口減少による国内市場の縮小で、ますます国内生産を続ける理由が見出せない状況です。いわゆる人口動態の2012年問題で、団塊世代のリタイアが始まると言われたのが2007年ですが、実際には定年後再就職で65歳まで働く人の割合はそれなりに高く、2012年には年金が満額支給となることから、離職する人人が増えると見られています。つまりその分労働人口が減少するわけですが、これには2つの意味があります。

1つは国全体で見た家計所得の減少で、国内市場の縮小ということですが、もう1つは労働力の希少化で、これは賃金単価の高止まりを意味しますから、韓国や台湾との賃金差は埋まらないということでもあります。実際には賃金は下がっていますが、賃金の低下は物価の下落すなわちデフレを引き起こしますので、中長期では購買力平価に収斂される為替水準の調整が起こります。また日本が対外純資産国であるため、当面は製造業が縮小して貿易赤字になっても、所得収支黒字で穴埋めされて経常黒字が維持されますし、万万が一経常収支が赤字転化したとしても、当面は対外純資産の取り崩しで円買い圧力が発生しますから、少なくとも10年20年のスパンでは円高基調は変わらず、結果的に台湾や韓国との賃金差は縮まらないわけです。

また人口動態の変化はオフィス需要を縮小させますが、折悪しく2012年は2006-2007年ごろの再開発ブームのときに計画されたオフィスビルの完成が重なるタイミングでもあり、実際、従来は完成前に埋まっていたテナントは集まらず、新築ビルでも半分は空室という状態で、再開発ブームで高く仕入れた物件なのに儲からないし、値引きすれば既存ビルからテナントが移るだけで、相対的に老朽化したオフィスビルからテナントが消えるという状況が顕在化しています。

こうなると東北縦貫線開業後に田町車両センター跡地開発と新駅建設の構想はうっかり手がつけられません。幸いというか、震災の影響で13年度中とされた東北縦貫線の開業は1年延期がJR東日本から発表されましたが、新年早々の都からのリークと思われるニュースに見られる微妙な問題もあり、後述の地震対策強化の影響も絡んでいるかもしれませんが、東京のオフィスビル開発は一区切りとなる可能性が高いと考えられます。

そこで問題になるのが空室を抱えた老朽オフィスビルをどうするかという問題です。特に耐震補強の必要なビルの場合、テナントがいなくて工事費用が出せないし、仮に建て替えるにしてもテナントが埋まる見込みが立たなければ着手できません。つまり放置される危険があるわけですが、物件によっては補強を兼ねたオフィスから住居へコンバージョンを考える余地はあります。元々都心部は夜間人口の少なさが問題だったわけですが、交通インフラが整った利便性を考えると、住居への転用は魅力的です。また結果的に長距離通勤が減れば災害時の帰宅困難者問題も軽減されるわけですから、震災時のような混乱も起きにくくなるわけです。首都直下地震の想定震度が7に引き揚げられたり、発生頻度に疑問符がつく東海、南海、中南海連動地震の想定の上方修正などで耐震や津波対策の強化が言われますが、人口減少を踏まえて、住まい方から見直すことで、インフラ投資を抑制しながら安全性を高めていくのが現実的です。

その意味で昨日開通した新東名高速道路について、多重化の観点から評価する声があることには釘を刺しておきます。単純に津波対策などの防災強化ならば由比海岸などの危険区間に迂回路を整備する事で足ります。今回の開業区間は東名の渋滞が日常化している区間でもありますから、渋滞緩和の意義は認めますが、前後区間の渋滞で新たなボトルネックが発生する可能性はあるわけです。そもそも民主党のマニフェストで謳った高速道路無料化が実現していれば、必要最小限のインフラ投資という方向性へシフトしたはずで、今からでも考え直して欲しいところです。また実際に無料化社会実験で神奈川県内の新湘南バイパスと西湘バイパスが無料化されて国道1号の渋滞が緩和したと思ったら、復興予算捻出を口実に終わり、従前どおり茅ヶ崎駅前の渋滞が復活し、R134平塚市塔が原は落ち着きました。早い話渋滞が都市中心部へ移動したわけで、経済的損失は大きいと言えます。

人口の都心回帰自体は90年代から見られる現象で、郊外部でも一部で人口減少は見られます。例えば立川市では子どもが減って小学校が廃校される事態も起きてますし、震災関連で千葉県が首都圏の都県レベルだ初の人口減少となった他、神奈川県でも横須賀市が藤沢市に逆転され、三浦市に至っては寒川町に逆転を許す結果となっています。交通の利便性や自然地形などで住宅適地の選別が始まっているわけで、もはや交通インフラの整備で開発利益を得るビジネスモデルも過去のものになったと考えるべきでしょう。むしろ今後は人口の高齢化も進み、都心、郊外、地方を問わず、徒歩圏に生活インフラを集積させたコンパクトシティを目指すべきです。またその方が避難場所や避難路の確保や津波を減衰する防潮林などのバッファの整備もやりやすくなり、必ずしもめったに来ない大津波に備えた高い堤防は必要ないわけですね。被災地復興も同様の考え方が可能です。

といろいろ書き綴りましたが、今年2012年はLCC元年という点を特質すべきでしょう。元々ビジネス客主体だったエアラインですが、3月就航のピーチでは、女性や高齢者など従来利用が少なかった層が目立ち、現在搭乗率は予定を上回っております。ピーチは関空ベースですが、7月にはジェットスター・ジャパンが、8月にはエアアジア・ジャパンが成田をベースに就航予定で、首都圏での集客となるだけに注目されます。またLCCではありませんが、ハイブリッド型のスターフライヤーや国際線進出を模索し独自性を出すスカイマーク。それに名古屋空港を拠点に小型機で独自のポジションを取るフジドリーム・エアラインズもあり、日本の空の変貌は急です。

例えば札幌(新千歳)―福岡間でフジドリーム便を松本乗り継ぎで利用するような事が可能となってきており、発着枠がタイトで着陸料も高くハブ機能を発揮しにくい首都圏の羽田や成田を尻目に、地方空港でも複数地域への就航便の離発着の時間帯を集約して積極的にトランスファーを促すミニハブ機能を持たせるなどして、発着枠の余裕を活かした地方空港の独自性を打ち出すことが考えられます。航空機のスピードを活かせば、新幹線やリニアの恩恵が及ばない地域でも高速交通ネットワークを構築できるとなれば、整備新幹線の着工も見直しが迫られます。

LCCに関しては日本の場合レガシー・ベイビーと呼ばれる大手エアラインの資本でスタートするという特殊性がありますが、欧米やアジアの実績ではシェア30%程度にはなりそうです。その場合新規顧客の獲得が肝ですが、既存大手がある程度食われることは避けられません。それでも仮に全体で30%の市場拡大があったとして、現状を100として

レガシー:130*0.7=91
LCC:130*0.3=39
となり、レガシーキャリアは絶対量で9%減でもベイビーのLCCが利益を紡ぐことで、利益を最大化できることになります。おそらくこの辺が黄金律になるんだと思います。ただしあくまでも航空だけで見た場合であって、新規需要の中身は従来は鉄道やバスやマイカーの利用層からの移転も含まれますから、線路という固定施設を持つJRはかなり苦しい立場になりそうです。逆に地方も含めた空港連絡輸送には活路がありそうで、千葉県や横須賀市・三浦市の人口減で追い込まれる京成と京急が共に空港連絡輸送を担っているのは偶然ですが、鉄道の今後の投資の方向性としては妥当性がありそうです。また新潟など新幹線を空港まで延長してスポークの1つとして活用する事も考えられます。

というわけで、長くなりましたのでこの辺で。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, April 07, 2012

マクロ経済から見た消費税増税

核セキュリティよりも消費税増税にまい進する政権のしょーもなさは前エントリーでも取り上げましたが、そもそも消費税増税が本当に必要なのかどうかについては敢えて触れてきませんでした。

しかしメディアに露出している賛成反対の議論がひどすぎます。例えば景気配慮条項で名目3%実質2$の経済成長目標に言及されてますが、基本的に税と景気の問題は無関係です。税はつまるところ所得再配分機能に意味があるのであって、どのような再配分が妥当かという議論が重要なのに、さっぱり聞こえてきません。

その一方で「ギリシャの轍を踏むな」という議論のバカバカしさは繰り返し述べてまいりましたが、改めて少し整理して述べてまいります。

マクロ経済学では次の式が成り立ちます。

貯蓄-投資=経常収支+財政収支
これはマクロ経済学の基本中の基本となる貯蓄投資バランスを表す恒等式で、事後的に必ず成立します。各項の定義は以下の通りです。
貯蓄=生産-消費
投資=民間投資+公共投資
経常収支=広義の輸出-広義の輸入
財政収支=歳出-歳入
貯蓄は生産(GDP)から消費を引いた残りですが、貯蓄の主体は家計のみならず企業や政府もあります。

企業の場合はいわゆる内部留保と呼ばれるいわゆる現金資産ですが、通常は資産の減価償却に合わせて投資を行わないと生産設備が老朽化するわけですが、生産を縮小すれば減価償却で生じるキャッシュフローが内部留保され、企業の銀行口座に積み上がります。これを給与で従業員に、あるいは株式配当で株主へ還元すれば、家計に渡って消費に結びつきますが、企業が投資を抑制して得た資金は単純に退蔵されます。また有利子負債の返済に回せば、返済を受けた銀行などが預金者などから預かった資金に利息を払うのが困難になるため、やはり家計への富の移転を阻害し、消費を冷やします。つまり(生産-消費)はそれらの総計としてイメージする必要があります。

政府の貯蓄はやや複雑ですが、政府等の公共部門で積み上げられた資金で、いわゆる埋蔵金の類いで、例えば公的年金などさまざまな必要から行われますが、不必要に積み上げられている部分があることは間違いありません。ただし煩雑になりますので今回は深入りしませんが、存在だけは指摘しておきます。

投資に関しては、バブル崩壊以降、民間投資がなかなか戻らない日本ですが、上記のように企業部門で投資が手控えられている結果、民間投資は低調なわけですね。一方の公共投資は90年代以降の長期不況で大盤振る舞いが続いた結果、肥大化して財政を圧迫してきたわけで、公共投資の拡大が財政を悪化させたわけで、政府が言うように社会保障費の増大は必ずしも主たる原因ではありません。もちろん社会保障費の増大に対応した制度の見直しが必要なことは確かですが、公共投資の拡大がそれを難しくした点も指摘しておきます。

経常収支は、貿易収支、サービス収支、所得収支、移転収支の合計になります。貿易収支はモノの取引で黒字基調、サービス収支は海運などの輸送に通信や金融などの分野ですが、基本的に赤字基調、所得収支は株や債券などの金融資産と工場などの実物資産で、日本は対外純債権国ですから構造的に黒字、移転収支は海外在住日本人の国内送金と国内在住外国人の海外送金の収支で、外国人就労の増加で赤字基調というところですが、2005年以降、日本の貿易収支黒字を所得収支黒字が上回り、貿易に関しては度々赤字も報告されるなど、既に潮目は変わっており、いわゆる空洞化の議論は完全に実態から乖離した周回遅れの議論です。また高齢化で家計貯蓄が取り崩されているから、経常収支もいずれ赤字化するという議論がありますが、日本が保有する海外資産の取り崩が起こるだけで、10年やそこらで事態が激変する事はあり得ません。まして原発停止などの特殊要因でたまたま発生した貿易赤字の影響は皆無です。

財政収支は定義上赤字でプラスとなるところがミソです。つまり貯蓄が投資に回って循環することで経済は成長するのですが、輸出等で経常黒字になれば投資に回りきらずに貯蓄に回るということで、既に長期に亘って黒字を続けている日本は、基本的に貯蓄過剰な経済という特徴があるわけです。そして民間投資で使い切れない貯蓄が公共投資に回っているということを表します。つまり10兆円前後の経常黒字と40兆円を越える財政赤字の合計である50兆円相当の需給ギャップがあるわけで、丁度GDPの1割相当で、それを輸出と財政赤字でカバーしている形で、物価下落の原因とされるデフレギャップともほぼ符合します。つまり日本のデフレは日銀の金融政策とは無関係に構造的に定義されるもので、いわゆるリフレ論がインチキだとわかります。

ま、実際クサイ話で指摘した2月14日の日銀のバレンタインプレゼントも、単に追加緩和のタイミングと一致しただけで、実際はアメリカの景気回復期待から投資家マインドにスイッチが入っただけで、既に調整局面に入り円高がジワジワ進んでいます。日銀の金融緩和は、心理面で投資家の背中を押したかもしれませんが、実質的な効果はなかったわけです。

このマクロ構造の中での増税の意味を改めて考えれば、ゴマカシが簡単に見えてきます。政府が言うように増税効果があるとして、その結果左辺の財政収支の赤字圧縮分は右辺で貯蓄の減少に現れます。ところが消費税は貯蓄の主体である会計、企業、政府に等しくかかるわけではなく、主として家計が負担する税ですから、マクロ的には消費税増税は家計から企業と政府への所得移転に他ならないわけです。結果家計の可処分所得の減少で消費を冷やし経済成長を圧迫します。また年金の積立方式への移行がマクロ経済的には政府貯蓄を増やすだけの愚策であることもわかります。

それを防ぐには低所得者対策として議論されている給付付税額控除の仕組みを入れる必要がありますが、2014年の3%&アップ時点では採用されませんから予定通り実施されれば間違いなく経済を冷やします。ただし増税そのものが原因というよりは税の仕組みの問題でそうなるということはくどいようですが繰り返しておきます。つまりこの部分の議論が不十分な今回の増税に国民が同意する道理はないわけです。

それどころか政府は増税を既成事実化するかのように凍結されていた八ッ場ダムの建設再開整備新幹線の新規着工に加え、京滋バイパスと第二京阪道路で代替可能として2003年に凍結された新名神道の新規着工まで認めるなど大盤振る舞いが続きます。大飯原発再稼動に反対する京阪滋の自治体懐柔策との憶測も。それどころか震災復興予算まで無駄遣いのオンパレードで、がれき処理や除染が食い物にされている現状は憂うばかりです。

この状況を上記のマクロ恒等式に当てはめると、左辺の財政収支の赤字圧縮のために右辺の公共投資を増大させているわけですから、貯蓄の減少で窮屈になる民間投資環境をさらに圧迫するわけで、これで経済成長できるわけがありません。政府の説明はデタラメのオンパレードです。

その意味で注目しているのがツアーバス問題とJALの再生と国内LCCの就航で変化が見られる航空分野です。ツアーバスについてはやっと方向性が出されました。ざっくりいえば乗合高速バスと高速ツアーバスの垣根を払って、乗合は規制緩和しツアーバスは乗合バスレベルに近い安全対策を義務付けるという方向性で、既に東京や大阪で独自ターミナルを構え、大阪港のフェリー連絡バスで乗合免許を取得したウィラートラベルのように変化を先取りする事業者も現れており、劣悪な安全管理の中小事業者が淘汰されるならば歓迎すべき改革ですが、実態を見て成否を判断したいところです。

一方、LCCの台頭で日本は遅れを取ってきたのですが、大手2社がLCC事業に活路を求めるに至って状況が変わってきました。先に動いたのはANAですが、JALの再生がうまくいった事でANAを刺激したというのが実態です。JALは公的な破綻処理で債務を整理しリストラを実施した事で、事業規模は縮小したものの利益率がANAを上回る状況となりました。震災の影響もむしろ東北新幹線の被災に助けられた面があり、運がよかった面は否めませんが、従業員のコスト意識が高まったこともあり、あとは再上場を待つばかりですが、ここへ来てワンワールドで提携関係にあるアメリカン航空が連邦破産法13条による法的整理という思いがけない事態ですが、JAL同様むしろ飛躍のチャンスになりうるものでもあります。加えて一旦立ち消えとなったスカイチーム所属のデルタ航空がJALの上場を機に再度提携の意思を示しており、アライアンス問題が再燃しそうな状況です。とはいえそれだけ現在のJALが魅力的な存在である事の証明でもあるわけで、どう決着するにせよ、JALにとっては悪くない話です。

一方のANAは瀕死のライバルの復活で、むしろ海外での知名度のなさというハンデを背負いながら対峙しなければならないわけですから、LCCに対しても前のめりにならざるを得ないのですが、整備新幹線の着工が続く中でどうせ需要を切り取られるならば、LCCを梃子に新規需要を掘り起こそうとしたわけで、JALの法的整理が良い連鎖を生んでいる状況です。欧米では既に定着し一部淘汰が始まっているLCCですが、アジアではこれからが本番で、しかも所得水準の相対的に低いアジアだからこそLCCの成長性も高く、人口も多いしアジア全体ではなお増加傾向ですから、従来どおり空の鎖国を続けていれば取り残されるところでしたが、航空政策の見直しは民主党政権としては数少ない得点です。だから東電も法的整理すべしと申し上げておりますが、JALの成功を忘れたかのような政府の対応です。

この辺は整備新幹線問題とも重複するんですが、採算に課題を抱える多数の地方空港を抱える日本が、アジアの成長を取り込むにはLCCによる新規需要の掘り起こしこそ優先課題なはずです。当然JALやANAにとっては自社競合問題もあるわけですが、LCCの成否を計るときには移転率が問題になります。簡単に言えば例えば50%割引運賃のLCCへ既存エアラインからの移転客が50%を超えれば航空産業全体ではパイが縮むわけです。となればLCCの標的はボリュームの大きい鉄道利用客ということになるわけで、LCCで航空活性化をしようとする局面での整備新幹線の新規着工は愚策です。本来は航空の活性化の状況を見極めて、十分な新規需要が顕在化してからでも投資タイミングとしては遅くはないし、高いリターンも期待できます。逆にハイリターンを見込んだハイグレードな新幹線を整備できる可能性すらあります。この辺の優先度を決めずに遮二無二公共投資を増やす今の政府のスタンスは、結局国民窮乏化策にしかならないということを申し上げて終わりたいと思います。ご精読ありがとうございます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, April 01, 2012

かべこえてめいしょうふっかついわいずみ「公共性」考

2010年7月に土砂崩れで線路上に被さった土砂に乗り上げて脱線事故を起こし、それ以来休止を余儀なくされていたJR岩泉線について、JR東日本から復旧を断念し廃止する旨の発表がありました。

JR岩泉線:廃止へ 「乗車率悪い」、利用者は落胆 /岩手 - 毎日jp(毎日新聞)
地元の岩手県と岩泉町、宮古市は反発し、協議には応じず鉄道としての早期復旧を国に働きかけてゆく意向ですが、見切り廃止条項がある以上、廃止が覆る可能性は皆無と考えられます。

記事中にあるように1987年のJR発足以来、整備新幹線の並行在来線以外では初の廃止ということですが、あくまでもJR東日本の話で、JR西日本の可部線可部-三段峡間が2003年に廃止されましたし、2009年10月に台風10号の被害で路盤流出し全面運休し、その後松阪-家城間は復活したものの家城-伊勢奥津間はバス輸送への切替を自治体に提案し、事実上の廃止を宣言しました。名松線に関してはその後三重県、津市との協議の末、治山と河川改修及び維持管理を自治体が責任を持つことを条件に復活協議が行われ、2016年の復活をめざして動き始めております。

また可部線に関しても、広島市安佐北区の中心市街地を形成する地域でもあり、旧河戸駅付近までの路盤は維持されており、広島市も都市計画で可部線の電化復活を盛り込むなどしておりますが、手続き上新線建設となるため、途中の踏切の扱いがネックで話が進んでおりません。市街地ゆえに却って難しい問題を抱えているわけで、皮肉な話です。

というわけですから、岩泉線に関しても復活の可能性自体は皆無ではないでしょうけど、同様の危険箇所が111ヵ所に及び、復旧に130億円かかる状況で、キロ当たりの乗車密度は46人で、幹線と地方交通線を区分する4000人の1/100レベルでは、営利企業であるJRの負担での復活は無理な話です。というよりも、いままで残っていた方が奇跡です。

例によって「数字だけで決めるな、鉄道には公共性がある」という声があちこちで上がっていますが、乗車密度46人の鉄道に公共性があるという主張がそもそも馬鹿げてますし、百歩譲って公共性が認められるとして、民間の営利企業であるJR東日本が公共性を負うべき主体なのかという点には賛成できません。仮に復活させるならば、公共部門の負担において岩盤の風化が進む危険箇所の改修と維持を約束することが必要です。そうすれば名松線のケースと同じになるわけです。

となると県や宮古市、岩泉町に負担が生じますが、記事中にもあるように、元々岩泉線乗車を目的とするツアー客などの入り込みで支えられていた地域ということで、鉄道で残すなら自治体出資の三セク鉄道として引き受ける形にならざるを得ないのではないでしょうか。逆に言えば乗り鉄目的の鉄ちゃんを当てにしても乗車密度46人ですから、そもそも鉄道を集客の目玉にすること自体に無理があるところです。

同じ廃止路線でも、可部線は政令指定都市内の市街地に立地するわけですから、公共性はある程度自明ですし、名松線の場合は治山治水を自治体が手がけるに足る地域であるということでしょう。それもできないとすれば廃止は避けられません。それとも鉄ちゃんを当てにして明日なき戦いを引き受ける覚悟はあるでしょうか。それよりもどうせ危険箇所を改修するならば、道路を整備して代替輸送の環境整備をする方が公共性に合致するとも言えるわけで、この辺は地元にとっては重い決断になることは重々承知で申し上げますが、あらゆる可能性を冷静に比較検討して結論を得るしかない問題です。

別の視点からも問題提起させていただきたいんですが、民主党は交通基本法の制定を主張していて、既に昨年3月に閣議決定しているにも拘らず、国会審議に諮られる気配はなく、成立のメドは立っておりません。震災があったり原発事故があったりしてそれどころじゃなかったという言い訳は聞こえてきそうですが、仮に震災前に成立していれば、津波で被災した路線の復活も道筋をつけることができただけに残念です。

考え方としては、従来は鉄道、道路、航空、海運それぞれが独立して整備されてきた日本の交通政策の縦割りを廃し、横の連携を図り役割分担をすると共に、あまねく輸送サービスを提供するユニバーサルサービスの実現をめざすものです。実現していれば全業黒字のJRだから復旧資金の援助はできないというようなこともなかったはずですし、集落の高台移転などで路線を移転することも手続き上容易になるはずです。岩泉線に関しても、ユニバーサルサービスの観点から最適な交通モードを模索するというアプローチになったはずです。

ところが政府が交通基本法の成立に向けて努力している風には見えませんし、それどころか震災復興を口実に三陸道の着工や整備新幹線の新規着工を決めるなど、交通基本法の精神に逆行する事ばかりやってます。穿った見方をすれば交通基本法成立前に駆け込みかとも勘ぐりたくなります。羽田の国際化に併せて羽田と成田の内際分離の見直しとオープンスカイ政策へのシフトなど交通分野では政権交代の成果はある程度出ていたわけですが、その延長線上で考えれば、地方空港の活性化で整備新幹線着工は当面見合わせるはずですが、どこで心変わりしたのか、折角の成果を台無しにしているのは子ども手当だけではありません。

あと前エントリーの議論を一部引き継ぎますが、折角ソウルで核セキュリティサミットが開催されたのに、野田首相は消費税増税法案の党内承認から閣議決定へという手続きに固執し、サミットでは2国間外交はなく、全く心ここにあらず状態でした。

それでいて原発再稼動には前のめりなのが変です。繰り返しますが、私自身は反原発でも脱原発でもありません。それよりも福一の廃炉作業で40年もかかる事を考えると、その作業に当たる技術者や作業員は今の子どもたちの中から養成しなければならないわけですし、また40年に亘って国民が興味を失わずに廃炉作業を監視し続けられるかと考えると、下手すれば人形峠の二の舞で、福一周辺エリアは立ち入り禁止のまま地図から消える可能性すらあり背筋が寒くなります。そう考えると脱原発は良い解とは到底言えません。

あるいは核燃料の管理を安全保障問題と考えれば自衛隊に管理させるというオプションもあり得ますが、内外のセンシティブな反応を引き起こす事を考えると非現実的です。

そんな私から見ても今の時点での原発再稼動は無謀としか思えません。福一問題と共に、既に大量の核燃料を備蓄している状況で、核セキュリティの観点から言えば、コストがかかる厄介者でしかないわけで、問題解決の手段としては、安全に燃やして安全に廃棄するのが最も現実的な解だろうと思います。そのためにはアメリカがやっているように核燃料使い捨て(ワンススルー)として、大量に出る使用済み核燃料の処分は米ロ両国の協力を取り付ける事で道筋をつけるのが現実解となると見ます。

というのは、米ロの核軍縮の本気度の問題があります。米ロ共に冷戦時代に核抑止力のためにウラン濃縮を競っていたのが、冷戦終結で不良在庫化に悩まされています。いずれも厳重なセキュリティが求められる中で、特にアフガンからイラクへと戦線拡大して財政を悪化させたアメリカの財政再建待ったなしの中で、軍事用の濃縮ウランを原発用の核燃料に転用する事で、不良在庫を宝の山に変えようという構想です。

これを実現する上で福一事故は大きな障害になるわけですが、当事国である日本が使用済み核燃料のバックエンド処理を米ロに求める事は、核の平和利用の観点から米ロ共にウェルカムな話になりますし、福一の事故処理も含めて国際社会に開かれた対応を取る事で、核開発に突っ走るイランへのけん制にもなりますし、新興国の原発建設に対して、例えば核燃料のリースのような核拡散を防止する仕組みを組み込む流れも作りやすくなります。またオバマ政権に対して恩を売ることにもなるわけですから、消費税問題にかまけてないで外交をきちんとやって欲しかったですね。

またそもそも消費税増税は確実に景気を腰折れさせます。それはクサイ話で説明したとおり、消費税制度が内包する問題点が改善されないためで、巷間いわれる「デフレ脱却が先」とは別の論点です。こういった制度的欠陥を放置したまま増税に突っ走ることに「不退転の決意」なんかして欲しくないです。迷惑です。「国民の生活が第一」はいずこへ-_-;。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« March 2012 | Main | May 2012 »