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Sunday, April 01, 2012

かべこえてめいしょうふっかついわいずみ「公共性」考

2010年7月に土砂崩れで線路上に被さった土砂に乗り上げて脱線事故を起こし、それ以来休止を余儀なくされていたJR岩泉線について、JR東日本から復旧を断念し廃止する旨の発表がありました。

JR岩泉線:廃止へ 「乗車率悪い」、利用者は落胆 /岩手 - 毎日jp(毎日新聞)
地元の岩手県と岩泉町、宮古市は反発し、協議には応じず鉄道としての早期復旧を国に働きかけてゆく意向ですが、見切り廃止条項がある以上、廃止が覆る可能性は皆無と考えられます。

記事中にあるように1987年のJR発足以来、整備新幹線の並行在来線以外では初の廃止ということですが、あくまでもJR東日本の話で、JR西日本の可部線可部-三段峡間が2003年に廃止されましたし、2009年10月に台風10号の被害で路盤流出し全面運休し、その後松阪-家城間は復活したものの家城-伊勢奥津間はバス輸送への切替を自治体に提案し、事実上の廃止を宣言しました。名松線に関してはその後三重県、津市との協議の末、治山と河川改修及び維持管理を自治体が責任を持つことを条件に復活協議が行われ、2016年の復活をめざして動き始めております。

また可部線に関しても、広島市安佐北区の中心市街地を形成する地域でもあり、旧河戸駅付近までの路盤は維持されており、広島市も都市計画で可部線の電化復活を盛り込むなどしておりますが、手続き上新線建設となるため、途中の踏切の扱いがネックで話が進んでおりません。市街地ゆえに却って難しい問題を抱えているわけで、皮肉な話です。

というわけですから、岩泉線に関しても復活の可能性自体は皆無ではないでしょうけど、同様の危険箇所が111ヵ所に及び、復旧に130億円かかる状況で、キロ当たりの乗車密度は46人で、幹線と地方交通線を区分する4000人の1/100レベルでは、営利企業であるJRの負担での復活は無理な話です。というよりも、いままで残っていた方が奇跡です。

例によって「数字だけで決めるな、鉄道には公共性がある」という声があちこちで上がっていますが、乗車密度46人の鉄道に公共性があるという主張がそもそも馬鹿げてますし、百歩譲って公共性が認められるとして、民間の営利企業であるJR東日本が公共性を負うべき主体なのかという点には賛成できません。仮に復活させるならば、公共部門の負担において岩盤の風化が進む危険箇所の改修と維持を約束することが必要です。そうすれば名松線のケースと同じになるわけです。

となると県や宮古市、岩泉町に負担が生じますが、記事中にもあるように、元々岩泉線乗車を目的とするツアー客などの入り込みで支えられていた地域ということで、鉄道で残すなら自治体出資の三セク鉄道として引き受ける形にならざるを得ないのではないでしょうか。逆に言えば乗り鉄目的の鉄ちゃんを当てにしても乗車密度46人ですから、そもそも鉄道を集客の目玉にすること自体に無理があるところです。

同じ廃止路線でも、可部線は政令指定都市内の市街地に立地するわけですから、公共性はある程度自明ですし、名松線の場合は治山治水を自治体が手がけるに足る地域であるということでしょう。それもできないとすれば廃止は避けられません。それとも鉄ちゃんを当てにして明日なき戦いを引き受ける覚悟はあるでしょうか。それよりもどうせ危険箇所を改修するならば、道路を整備して代替輸送の環境整備をする方が公共性に合致するとも言えるわけで、この辺は地元にとっては重い決断になることは重々承知で申し上げますが、あらゆる可能性を冷静に比較検討して結論を得るしかない問題です。

別の視点からも問題提起させていただきたいんですが、民主党は交通基本法の制定を主張していて、既に昨年3月に閣議決定しているにも拘らず、国会審議に諮られる気配はなく、成立のメドは立っておりません。震災があったり原発事故があったりしてそれどころじゃなかったという言い訳は聞こえてきそうですが、仮に震災前に成立していれば、津波で被災した路線の復活も道筋をつけることができただけに残念です。

考え方としては、従来は鉄道、道路、航空、海運それぞれが独立して整備されてきた日本の交通政策の縦割りを廃し、横の連携を図り役割分担をすると共に、あまねく輸送サービスを提供するユニバーサルサービスの実現をめざすものです。実現していれば全業黒字のJRだから復旧資金の援助はできないというようなこともなかったはずですし、集落の高台移転などで路線を移転することも手続き上容易になるはずです。岩泉線に関しても、ユニバーサルサービスの観点から最適な交通モードを模索するというアプローチになったはずです。

ところが政府が交通基本法の成立に向けて努力している風には見えませんし、それどころか震災復興を口実に三陸道の着工や整備新幹線の新規着工を決めるなど、交通基本法の精神に逆行する事ばかりやってます。穿った見方をすれば交通基本法成立前に駆け込みかとも勘ぐりたくなります。羽田の国際化に併せて羽田と成田の内際分離の見直しとオープンスカイ政策へのシフトなど交通分野では政権交代の成果はある程度出ていたわけですが、その延長線上で考えれば、地方空港の活性化で整備新幹線着工は当面見合わせるはずですが、どこで心変わりしたのか、折角の成果を台無しにしているのは子ども手当だけではありません。

あと前エントリーの議論を一部引き継ぎますが、折角ソウルで核セキュリティサミットが開催されたのに、野田首相は消費税増税法案の党内承認から閣議決定へという手続きに固執し、サミットでは2国間外交はなく、全く心ここにあらず状態でした。

それでいて原発再稼動には前のめりなのが変です。繰り返しますが、私自身は反原発でも脱原発でもありません。それよりも福一の廃炉作業で40年もかかる事を考えると、その作業に当たる技術者や作業員は今の子どもたちの中から養成しなければならないわけですし、また40年に亘って国民が興味を失わずに廃炉作業を監視し続けられるかと考えると、下手すれば人形峠の二の舞で、福一周辺エリアは立ち入り禁止のまま地図から消える可能性すらあり背筋が寒くなります。そう考えると脱原発は良い解とは到底言えません。

あるいは核燃料の管理を安全保障問題と考えれば自衛隊に管理させるというオプションもあり得ますが、内外のセンシティブな反応を引き起こす事を考えると非現実的です。

そんな私から見ても今の時点での原発再稼動は無謀としか思えません。福一問題と共に、既に大量の核燃料を備蓄している状況で、核セキュリティの観点から言えば、コストがかかる厄介者でしかないわけで、問題解決の手段としては、安全に燃やして安全に廃棄するのが最も現実的な解だろうと思います。そのためにはアメリカがやっているように核燃料使い捨て(ワンススルー)として、大量に出る使用済み核燃料の処分は米ロ両国の協力を取り付ける事で道筋をつけるのが現実解となると見ます。

というのは、米ロの核軍縮の本気度の問題があります。米ロ共に冷戦時代に核抑止力のためにウラン濃縮を競っていたのが、冷戦終結で不良在庫化に悩まされています。いずれも厳重なセキュリティが求められる中で、特にアフガンからイラクへと戦線拡大して財政を悪化させたアメリカの財政再建待ったなしの中で、軍事用の濃縮ウランを原発用の核燃料に転用する事で、不良在庫を宝の山に変えようという構想です。

これを実現する上で福一事故は大きな障害になるわけですが、当事国である日本が使用済み核燃料のバックエンド処理を米ロに求める事は、核の平和利用の観点から米ロ共にウェルカムな話になりますし、福一の事故処理も含めて国際社会に開かれた対応を取る事で、核開発に突っ走るイランへのけん制にもなりますし、新興国の原発建設に対して、例えば核燃料のリースのような核拡散を防止する仕組みを組み込む流れも作りやすくなります。またオバマ政権に対して恩を売ることにもなるわけですから、消費税問題にかまけてないで外交をきちんとやって欲しかったですね。

またそもそも消費税増税は確実に景気を腰折れさせます。それはクサイ話で説明したとおり、消費税制度が内包する問題点が改善されないためで、巷間いわれる「デフレ脱却が先」とは別の論点です。こういった制度的欠陥を放置したまま増税に突っ走ることに「不退転の決意」なんかして欲しくないです。迷惑です。「国民の生活が第一」はいずこへ-_-;。

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Comments

福一とは福島第一原発のことですね。
略称も結構ですが、折角書いたBlogを公開されるなら、福一(以下福島第一原発を略す)など、注記に配慮は欲しいものです。

Posted by: つあら | Friday, April 06, 2012 at 05:06 PM

ご指摘ありがとうございます。原発で福一は福島第一で自明という感覚でしたが、わかりにくかったとすれば、表現を工夫しなければいけませんね。

以下蛇足ですが、注記がうるさいと、やるべきことをやらないでどうでもいいことばかりやる政府というコンテクストがぼやける感もありますので、適切な表現というのは難しいですね。

Posted by: 走ルンです | Friday, April 06, 2012 at 11:48 PM

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