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May 2012

Monday, May 28, 2012

とうでんかんでん

うーむ某有名ラーメン店のような^_^;。

私事になりますが、私の母は某病院の療養病棟で寝たきり9状態ですが、幸いと言うべきか少なからぬ額の寡婦年金の支給を受けているおかげで経済的な持ち出しを回避できております。厚生年金の手厚い給付に助けられた形ですが、高齢の親の扶養問題は、実はスタートラインにかくも大きな格差があるわけで、人気お笑い芸人の母の生活保護受給問題は考えさせられます。

母子家庭で十分な収入を得られず、老後の年金を当てにできない立場で、病気で仕事が続けられない状態で、息子は売れない芸人で経済的に頼れないとなれば、親として生活保護受給手続きを取るのは当然ですし、その後息子がブレークして十分な収入を得るに至ったとしても、同居していない地方の親に十分なケアができなかったとしても責められません。早い話が親の格差が子に報いる構図です。

それを叩いて売名行為に走る片山さつきのような下種な政治家がいることに憤りを禁じ得ません。同時にこれ幸いと生活保護支給額の減額や支給基準の減額化に簡単に同意を示す政府にも呆れます。おそらく生活保護受給者が戦後の混乱期を越える209万人を超えて増えていて、特に若年世代での増加が顕著な事に対する歯止めをかけようとしているのでしょう。若年世代でナマポと呼んで働かずに不正受給しているという指摘が盛んにされているのですが、そういう実態があるにしても、それがどの程度のボリュームで存在するかは明らかではありません。財政悪化の元凶を匂わせる印象操作としか見えません。

日本の格差問題では、所得再配分後の格差が拡大しているということで、特に現役世代向けの社会保障が手薄という指摘はOECDからもされていて、その意味で子ども手当は画期的な制度だったんですが、それを台無しにしただけでは足りず、若年失業率が高止まりする中、法令上は不正受給になるかもしれませんが、彼らの生きる大儀は認めるべきです。また実数としてどれだけ不正受給があるかも不明ですし、また受給者の増加が不正受給が原因というよりも、公的年金で高齢者に手厚い日本の社会保障制度の歪みが社会保障制度に現れているわけですから、社会保障全体の見直しをしなければ、単なるもぐら叩きで終わる話です。また審査の厳格化で追い込まれて犯罪に走る者が増えるならば、むしろ問題を大きくします。

また公的年金が制度として空洞化せずに持続することが、今はピンピンしている親が寝たきりになった場合のこの世代のセーフティーネットになるわけですから、世代間不公平をことさら強調して年金制度の見直し議論を膠着させることは、結局誰も幸福にしません。民主党の09年マニフェストで打ち出した最低保証年金はその意味で画期的でした。仮に基礎年金を全額税方式に移行できるならば、国民の基礎年金部分の年金保険料負担がなくなるわけですから、例えばそれと引き換えに消費税を一気に15%までアップするとしても、ほぼ保険料負担と相殺されます。こういう議論を丁寧にする事が、本来の税と社会保障の一体改革であるはずですが、現状は"イタイ改革"でしかありません。

前フリが長くなりましたが、片山さつきごときに簡単Iになびいてしまうメディアの異常さ、愚鈍さに辟易します。ま、ナマポ叩きで押し出されて犯罪に走る者が増えれば、メディアにとってはネタが増えて儲かるオイシイ話でしょうけど。

がれき処理のインチキぶりは以前にも指摘しましたが、最近宮城県のがれきの総量が減ったという変なニュースが流れました。津波で海へ流出した量を過小評価していたということですが、こんな話がありすぎて、いちいち指摘するのもアホらしいです。それでいてがれきの広域処理は相変わらず声高に叫ばれ、曰く「処理できたのは全体の5%」という数字ガ繰り返されます。この数字にはからくりがありまして、被災地のがれきの全体量約2,300万トンに対して元々広域処理予定は400万トンに過ぎず、更に受け入れが決まったのが100万トンですから、全体の5%ですが、分母が広域処理分ではなくがれきの全体量ですから、仮に受け入れが進んで全量にメドがついても20%弱にしかならないわけで、あからさまな数字のマジックです。その結果阪神大震災時の処理単価の3倍にもなる高額処理費を全額国庫負担するわけで、受託企業には、例えばいち早く受け入れを決めた東京都では東電子会社の東京臨海リサイクルパワーという処理業者が受注してます。つまり福島第一原発事故の原因企業が自らの尻拭いもできないのにがれき処理の高額受注で国庫金をくすねているわけです。

で、その東電の値上げ問題で経産省の専門委で4割の家庭や小口などの規制部門で利益の9割を出すいびつな収益構造に批判が集まっております。公式には初めて公表された事になっておりますが、東電の決算資料などから以前から指摘されていたことであり、今になって騒ぐメディアがどうかしてます。記者クラブ発表を鵜呑みにして裏づけ取材をしない新聞やテレビのダメさ加減にうんざりします。そして東電は早くも値上げのお願いのチラシを各戸に配布して既成事実作りに余念がありませんが、認可前に手回し良すぎです。というかこんなことしても叩かれないと高をくくっているのでしょう。

で、値上げの理由に燃料費の増加を上げておりますが、元々売上に対する燃料費の比率が高い大口の自由化部門と違って、小口の規制部門は設備費用の比率が高いわけで、設備の売却などで値上げ幅を圧縮できる要素はかなり大きく、燃料費が直接料金を押し上げるという説明は嘘っぱちです。

実際東電内部では有志による自主再建案が作られたのですが、その案では発電所など売れる資産は徹底的に本体から切り離して7つの子会社を設置し、本体は送電及び原子力部門のみを残して国有化し、分社した子会社は売却するという計画でした。本体を準持ち株会社のようにする計画で、現行の電気事業法では持ち株会社は解禁されていないなどの制限はあるものの、原発事故補償や送電など公的性格の強い部門を残して公的管理とし、結果的に発送電が分離されるという意欲的なもので、実はそのさわり部分は日経新聞などで記事になっていたんですが、東電幹部と経産省の双方に潰されて陽の目を見ず、今やその存在すらなかった事にされかけています。

仮に実現していれば、例えば原発再稼動問題でも、結局原発が未使用と使用済み核燃料込みで資産計上されていて、動かさなくても燃料棒の冷却でポンプを動かし、異常がないよう監視し、必要な部品交換なども発生しますし、多額の減価償却費も発生するわけですから、電力会社の経営上の理由から原発再稼動が模索されることになります。例えばこんな記事です。

大飯原発、夏だけ臨時稼働「念頭にない」 官房長官  :日本経済新聞
大阪市の橋下市長から電力不足解消のために夏ピーク限定で動かす提案に答えた会見ですが、もちろん原発の短期間運転は現実的に無理ですが、藤村官房長官は「原発再稼動をしないと火力発電で燃料費が嵩む上に、老朽火力のメンテナンスもあって電力料金に反映されるから原発再稼動が必要」と口を滑らせたのです。つまり夏の需給逼迫が原発再稼動の理由ではないとバラしちゃったわけです。原発は動かさなくてもコストが発生しますが、古い火力ならば償却が終わっていて保有コストはほとんどかからず、動かさなければ燃料費もメンテナンス費もかからないわけですから、火力を動かすより原子力を動かしたいわけです。その意味でいずれ東電以外の電力会社が保有する原発も公的管理が望ましいわけで、東電の幻の自主再建案はそれを先取りしていたわけです。

とまぁメディアの悪口ばかり言っていても埒が明きませんが、関電エリアの夏場15%の節電ですが、去年の東電エリアの経験から言えば、20%程度の節電はやる気になれば可能です。夏のピークは昼の午後で、鉄道に関してはカラ退避の解消が有効ですが、そのほかにも手段はあります。そして朝夕の通勤通学時間帯は、元々産業用電力の需要時間帯とずれているので、節電による混雑は心配要りません。むしろ首都圏では興味深い結果が出ています。

pdf「節電対策のための企業等の勤務形態変更が鉄道輸送に与えた影響に関する調査」の概要について
企業の操業時間のシフトによって結果的に混雑率が緩和されたというレポートです。最大は相鉄本線の-7.8%ですが、鉄道会社があれほど時差通勤を呼びかけても効果がなかったのに、節電がきっかけで混雑緩和が実現するなら、むしろ今年も続けて欲しいぐらいです。更に踏み込んで勤務時間や場所の多様化など、ワークスタイル自体の見直しで、節電と混雑緩和が同時に実現するならば幸いです。また以前からフレックスタイム制やワークライフバランスなどが主張されながら実現がはかばかしくない中で、電力需給の逼迫が良い変化をもたらすならばむしろ歓迎すべきです。

最後に、まともな報道もできないで嘘ばっかりのテレビはマジで夏のピークタイムは放送を止めろ!

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Sunday, May 20, 2012

損くらってますの弁明

米キャンプデービッドでのG8サミットが閉幕しました。当然メインテーマはギリシャ総選挙後の連立協議不調による再選挙で停滞する欧州問題です。野田首相も事前に「ギリシャは対岸の火事ではない」として消費税増税に意欲を見せましたが、実は対岸の火事だからこそレトリックとして利用できるはずが、今回は様子が違います。

緊縮一辺倒から「成長」、軸足移す首脳 G8で鮮明  :日本経済新聞
つまり国ごとに事情が違うんだから、個別事情を考えようよということです。経常赤字国のギリシャと経常黒字国の日本が同じわけがないのは、これまで度々指摘してきましたが、特に日本の場合、現在年間10兆円規模の経常黒字は当面続きますし、仮に万万が一赤字転落しても、300兆円季語の累積黒字がありますから、10兆円の赤字を30年続けられます。加えて中韓台ASEANなど経常黒字国が近隣に多い状況で、日本の経済規模ならば資本の流入でカバーできますので、ギリシャみたいにはなりようがありません。

また日本の円高や株安をギリシャに揺れる欧州のせいとするメディアのニュアンスも的外れです。毎年10兆円規模の経常黒字国の通貨が強くなるのは必然ですし、それが厭なら過剰貯蓄を解消するために賃上げや高配当で企業から家計へ所得移転して個人消費を促すことで、内需向けの前向きな民間投資が出てくるしかありません。この辺は既に貯蓄投資バラナスから消費税増税の無意味さを通じて指摘しております。

もちろん財政規律は大事ですが、だからといって無理な緊縮策で経済を停滞させては意味がないわけで、規制緩和や既得権益に切り込む構造改革で事態を打開する必要があります。既にアメリカはアフガンやイランの戦線拡大で増えた国防費の削減に切り込んでいるわけで、その結果沖縄の海兵隊分散配置を普天間基地移転と切り離して先行させたわけで、結果的に辺野古移転は宙に浮きました。最早辺野古移転は日本政府の事情だけしか根拠がなくなったわけです。日本側も見直すべき局面です。

しかし実際には政府は無為無策で、結果的に日銀にプレッシャーをかけて追加緩和を迫るばかりです。そんな中で先月の日銀政策決定会合で決まった期限2年以内の国債買い取り枠増枠ですが、2月のときと違って円高が進みましたし、実際に行われた買いオペでは札割れとなりました。

長期国債買い入れで札割れ | 国内 | Reuters
つまり銀行が保有する国債を買い取って追加的に貨幣供給するオペレーションの札割れですから、4月の追加緩和は結果的に無意味だったわけですし、銀行にしてみれば保有国債を売って現金を得ても、投資先がないからまた結局国債を購入する事になるので、売る意味がないわけです。日銀の金融緩和も既に限界まで来てしまったわけです。

そればかりか量的金融緩和は弊害も指摘されており、日本ではありませんが、リスク管理に厳格と言われていたJPモルガンの巨額損失も行き場のない緩和マネーがもたらしたものです。

JPモルガンが陥った量的緩和のワナ(NY特急便)  :日本経済新聞
早い話アメリカの大手銀行もバブル期の日本の邦銀と同じような失敗をしたわけです。JPモルガンのロンドン支店が舞台ですが、以前から「ロンドンのクジラ」と言われていました。金融の世界でよく言われる「池のクジラ」の連想で、CDSなど流動性の低いデリバティブ市場で巨大なポジションを取っていたことが知られていたものですが、当然池でクジラを飼うが如く動きが鈍いからヘッジファンドの餌食になりやすいわけで、意外性のない損失でもあるわけです。ギリシャ問題に揺れる欧州と共に、アメリカも日本に追いついてきたわけで、日米欧共に金融危機を起点とするカネ余り状況下の長期経済停滞の局面です。

それでもアメリカはフェイスブックのような新たなネット企業のIPOがあるのですから、底力があります。とはいえ上場初日の値動きは意外なものでした。

CNN.co.jp:フェイスブック上場 初日の終値は38.23ドル
売り出し価格が38ドルですから、終値が辛うじて上回ったものの、取引時間中に値を下げる意外な展開となったわけです。投資家の間ではIT株は値下がりしやすいと見られており、経営幹部がストックオプションを行使した場合以外ではあまり儲けられないのが現実のようです。今後は日本のようにIPO自体が減少する可能性もあります。

ただフェイスブックが注目される理由はビッグデータと呼ばれる膨大な個人情報が宝の山と見られているからですが、本名でしかアカウントが取れないということは、個人情報の扱いで難しい問題も抱えているわけで、フェイスブックのビジネスモデルのマネタイズはこれからの話です。とはいえGPSと連動したチェックイン機能やポイントのやり取りによる擬似決済システムなどは、使い方次第で権利の管理や少額決済など応用範囲も広く、クレカや電子マネーなどの少額決済システムを無力化しかねない潜在力を秘めています。ソーシャルゲームのコンプガチャ騒動で揺れる日本のSNS企業も情けないところです。

こうなるとソニーがフェリカシステムをNTTドコモの合弁会社に売り渡した事が悔やまれます。既にタッチしてデータをやり取りするNFCの国際規格からフェリカを外す動きもあり、Android版おさいふケータイと言える Google Wollet ではフェリカシステムは採用されませんでした。ソニーだけじゃありませんが、折角画期的な技術革新を実現しながら、オープン化やクラウド化を嫌って世界からそっぽを向かれる日本企業の多いことか。またICカード乗車券の乗車履歴という宝の山を活用し切れていない鉄道事業者も課題山積です。

というわけで日本株が下がるのは仕方ないですね。元々円高になればドル建てで値動きを見る海外勢が売りに回りますし、円高に負けないブランディングガできていれば問題ないのに、自らの競争力の低下を円高のせいにするようでは日本企業に未来はありません。損くらって言い訳ばかりではお話になりません。

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Sunday, May 13, 2012

民主主義のお値段

なんてタイトルだと、ギリシャ総選挙後の政治空白の話になり、日本も衆参ねじれで消費税増税が決められないとかって話になりますが、各種世論調査で6割反対の消費税増税ができなくて何が困るのか不思議です。所謂「民主主義のコスト」の議論と一線を画す意味とご理解ください。

いろんなニュースがありましたが、個人的には陸山会事件の控訴が気になりました。そもそも日本の刑事司法制度の下では99%が有罪という状況の中(このこと自体がかなり異常な問題ですがここではスルーします)、一審無罪で控訴は通常行われません。理屈としては検察が立件できなかった以上、被告を刑事被告人の状況でいることを強いることは不適切という考え方によるものです。

仮に控訴する場合は、新たな証拠が見つかった場合など、上級審で判断が覆る相当な蓋然性があるかどうかを検察サイドで検討するのが通常で、たった3人の指定弁護士の判断だけでやるべきことなのかということに疑問が残ります。少なくともかなり説得的な客観的条件は示されるべきです。刑事司法制度も民主主義を支える重要なサブシステムであり、公権力が直接的に個人に及ぶもののであるため、その行使は慎重であるべきです。とはいえ一番焦っているのは、検察審査会の議論を誘導した疑いのある検察だったりします。一審で証拠採用されなかった3秘書の供述調書が検審に資料として提出されており、検察としてはあまり突っつかれたくないはずです。

あと地方でいろんな動きがありましたが、絶句したのはこのニュースです。

武雄市図書館、TSUTAYAが運営へ : 最新ニュース特集 : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
図書館運営は小規模な地方都市にとっては悩みの種でしょう。論点としてTUTAYAを運営するカルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)を指定委託先として図書貸出カードをTカードにしてTポイントを付与しようということなんですが、これは図書館の基本原則を逸脱したもので、ほどなくTwitterで炎上しました。

議論の根拠は日本図書館協会の図書館の自由に関する宣言で、1.憲法の基本的人権の多くと表裏一体を成す国民の知る権利を保持するために、2.すべての資料を入手し利用する権利を保障する事に図書館は責任を負い、3.権力の介入を許すことなく自らの責任で資料を収集し施設を整備して国民の利用に供し、4.かつてわが国で起きた国民の「思想善導」機関に堕した図書館の反省を踏まえ、5.外国人を含め公平に利用する権利を保障し、6.すべての図書館に妥当するもの、としているわけです。

そのために図書館は、第1に資料収集の自由を有し、第2に資料提供の自由を有し、第3に利用者の秘密を守り、第4にすべての検閲に反対する、わけです。つまり民主主義の重要なサブシステムの1つであり、図書館の公的な意義を理解しない樋渡武雄市長の構想は問題だらけです。

とはいえそもそも日本の公共図書館もかなり病んでいるのも確かです。図書館の性格上蔵書など収蔵資料の増加はスペースを圧迫しますし、コストしか生じない図書館は日本の地価水準では多くのスペースを与えられる事はまれで、自由に閲覧可能な開架式書庫はスペース効率も悪いですから、そのしわ寄せで閲覧スペースが貧弱という課題を抱えているわけです。

そのために図書の貸出に傾斜するわけですが、貸出は所蔵資料の保全という意味では紛失や物理的滅失のリスクを負うわけですが、それでも閲覧スペース拡充に比べたら安上がりというわけです。加えて蔵書購入の市民リクエスト制度とオンライン貸出予約制度はほとんどの公立図書館で取り入れられており、このことが大きな問題を引き起こしております。

出版不況が言われる中で、数少ないベストセラー本は当然図書館にリクエストされますし、入荷時点で2ヶ月以上先まで貸出予約で埋まることもあり、その場合一部の図書館でベストセラー本の大量発注が行われることがあり、その結果当該地域で当該本の売れ行きに少なからずマイナスインパクトを与えるということで、出版関係者から批判されております。とはいえ日本の再販制度の中ではその実態は必ずしも明らかにされてはおらず、国民の多くは知り得ない話です。

書籍の再販制度は先進国では日本以外は見られません。元々小資本の出版社が多い中で、書籍流通をシステム化してリスクをシェアして版元を保護する仕組みと言えます。その結果書籍出版のハードルが下がって表現の自由が実現しやすくなるというのが出版関係者の言い分で、実際に欧米に比べて日本の書籍類は比較的安値ではあります。しかし残念ながら必ずしも質が伴っていないのも確かなところで、タレント本やハウツー本など数が稼げるものは安上がりだけど、むしろ部数の見込めない学術書や専門書は高価です。図書館として収集すべき価値ある資料が後者であることは言うまでもありません。

そんな日本独自の出版事情の中で、上述のように公費で運営される公立図書館が市民リクエスト制度を採用するとどうなるかというと、リクエストが多いのは専ら安値のベストセラー本が中心で、しかも入荷後暫くは貸出予約で旅に出ているわけですから、開架書庫で自由に閲覧できるという図書館本来の活動から逸脱しているわけです。言い換えれば公立図書館は公設の無料貸本業に堕しているわけです。

そして出版業界にとってはベストセラー本で数を稼いで儲けられるから、高くて売れず儲けが少ない学術書や専門書が出せるのだという言い分ですが、実際には人口減少とネットの普及で書籍販売は右肩下がりの長期低落傾向が続いており、そうなると返品OKの再販制度が災いして配本数に対する実売数の歩留まりが悪化して収益を圧迫してしまいます。出版社は元を取りたいからタイトル数はむしろ増えているのに、実売数が伸びないから、八つ当たりしたくなるのも無理からぬところではありますが、再販制度の見直しなどの本質的な議論は避けているのが現状です。このことは日本に電子書籍が普及しないこととも関係しています。この問題はいいとこおあいこかも。

あと地方公立図書館には、郷土資料や地方議会や行政関連の文書等の収集保管があり、特に議会や行政関連の文書は市民が事後的にチェックできる、つまり市民監査の機会提供という意味で重要ですが、CCCにその能力がるのかは疑問ですし、Tカードで利用履歴が収集されるとなれば問題です。もちろん宣言自体は法律ではありませんから拘束力はありませんが、民主主義のサブシステムとしての図書館の公共性を的確に表現しており、故に公的に運営されなければならないわけで、民間委託はそれをを機能停止に追い込む事になります。財政の都合で民間委託するには問題があります。

加えて参考業務(レファレンスサービス)です。ジャンルを問わずちょっとした調べもので図書館は重宝な存在ですが、昨今はウィキペディアなどネット上の事典が気軽に利用され、グーグルなどの検索サービスも充実しているとはいえ、専門外の問題に体系的なアクセスをしようとするときに欠かせないサービスであり、また本のエキスパートとして司書が専門性を発揮できる分野ですが、日本では利用が低調で、専門職として欧米では高いステータスのある司書の地位も低いなど、日本固有の問題はいろいろありますが、CCCに委託して改善される可能性は皆無と言って良いでしょう。レファレンスサービスの充実はNPOなどの市民活動のサポートには欠かせないもので、行政の手の届きにくい問題を補完し市民の自助による問題解決という面で、中長期的には行政コストを圧縮する働きがあるものと言えます。

というわけでCCCに可能なのは、公設無料貸本業の顧客情報を利用したマーケティングぐらいですが、それを「利便性」と呼ぶべきなのかは微妙です。図書館の公設無料貸本業の側面を切り出して公的スペースをCCCに貸して図書館と別個にTUTAYAカフェやります、ということならば何も問題はない話ですが、利用者にとっても、またおそらくCCCにとってもメリットはあまりない話でしょう。

地方行政でこういったいかれた首長が出現することをどう評価すべきかはわかりませんが、大阪市の橋下市長がまともに見えてしまう現実(笑)にとまどいます。それだけ地方行政の直面する現実がシビアなんだろうと思います。出口のない閉塞感が地方を追い込んでいるということなんでしょう。

大阪市の橋下市長にしても、本人はそれほど変ではないのかもしれませんが、橋下人気に便乗するしょーもない人間は多いようです。例えばこんなニュースです。

新大阪と関空直結 四つ橋線、阪急・南海と接続構想  :日本経済新聞
現時点で詳細は不明ですが、元々構想されている地下鉄四つ橋線の十三延伸と阪急の新大阪連絡線の相互直通構想を膨らまして難波で南海線と結んで相互直通するということですが、軌間、電圧、集電方式、車両規格がすべて異なる両者の直通は難問だらけで、なにわ筋線建設より安上がりというには不確定要素が多すぎます。関空活性化を唱える橋下市長に模範答案を示したいということなのかもしれませんが。

また別にこんなニュースも。

大阪市営地下鉄、15年メド民営化 13年にも終電延長  :日本経済新聞
民営化自体の成否は注目されますし、終電延長も歓迎すべきことですが、同時に運賃初乗り20円値下げも検討されています。これも具体策は不明ながら、単純計算で1日の利用客230万人*20円*365日≒168億円の減収で、黒字の2/3が消える話です。値下げの誘発効果である程度の穴埋めはできるとしても、完全に取り戻すのは無理でしょう。むしろJRや私鉄との連絡運輸を強化して乗継割引の連絡運輸運賃を広範に設定する方が増収効果があるのではないかと思います。それでも地下鉄の場合は武雄市の図書館と違って民営化や民間委託が公共性を損なうことにはならないだけマシかもしれません。ただしいずれにしても地下鉄の値下げや利便性向上ぐらいで大阪市が活性化されると考えるのも無理があります。

とはいえ物理的に困難な地下鉄と郊外鉄道の相互直通を模索するよりも、運賃制度の工夫で郊外から大阪と新への人の流れを作り出す意味はあります。地下鉄で一律20円の値下げよりも、連絡運輸限定で40円値引きした上で、JRや私鉄にも連絡運輸で値引きを促す方が、結局新たな需要の掘り起こしの可能性があります。潜在的な需要を見極めた上で、機が熟すのを待ってなにわ筋線に着手するといったクレバーな方法を模索する方が現実的です。

というわけで、民主主義という社会システムはとかくモノイリではありますが、お金の使い方次第で快適さに差が出るシステムということで、言い古された事かもしれませんが、国民のリテラシー次第なんでしょう。「お値段」を上手に見極める賢い国民でありたいものです。

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