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Sunday, June 03, 2012

カネとネタ福井85センチ

スカイマークの機内備え付けのサービスコンセプトなるチラシが話題になっています。チラシの画像を貼り付けておきます。ある種の人たちには発狂しそうな内容で、またスカイマーク自身が重大インシデントで国交省から度々処分を受けていることもあり、否定的な見方が一定に存在しますが、もう少し違った見方ができます。例えばこんな記事です。

NEWSポストセブン|スカイマークのコストダウン戦略 丁寧な言葉使い義務付けず
記事中の杉浦一機氏のコメントが簡潔に本質を突いています。スカイマーク自身はLCCではありませんが、在来型のフルサービスエアライン(FSA)に価格を対抗軸に新規参入した事業者で、大手の寡占に対抗する存在であるのですが、LCCは着陸料の安い空港を拠点に point to point で結ぶ新しいコンセプトの航空サービスであり、どちらかと言えば新規需要の掘り起こしに力点が置かれている存在です。LCCのビジネスモデルをまとめると
1.着陸料の安い大都市第2空港などを拠点としておおむね1-2時間程度のフライト時間で目的地と往復する point topoint のシャトル運行(乗継は考慮しない)。
2.燃費が良く地上での整備時間の短い200人乗り程度の新しい同じ機材を揃えて、座席感覚も詰めて定員を増やし何回もフライトする(稼働率向上)。
3.座席のweb販売で代理店を通さずマージンをなくし、予約時期で価格を変えるなどして搭乗率を高めて利益を最大化する(イールドマネジメント)。
4.付加サービスの有料化。
といったところですが、スカイマークの場合はこれらの要素を選択的に採用しているものの、FSAへの対抗のための低価格化ですから、新規需要を狙うLCCとは違うわけです。とはいえ日本でも今年からLCCの参入が本格化しており、いずれもレガシーベイビー(既存航空の子会社)として発足しているように、より新規需要創出の狙いが強いわけですが、レガシーの裏をかく戦略のスカイマークにとっては、単純な低価格訴求が成り立ちにくくなることでもあります。その対応策としてサービスコンセプトを明確化することで、コストダウンに繋げようということですね。つまりはサービスのダウンサイジングが狙いというわけです。LCCの参入がスカイマークに変化を促したわけです。

元々お金持ちの乗り物だった航空において、付加サービスは当然のものだったのかも知れまっせんが、航空輸送の大衆化が進み、利用者が増えてくれば、いつまでも付加サービス込みの高運賃を維持するのも難しくなりますし、アメリカが提唱するオープンスカイ政策が世界に浸透し新興国需要が立ち上がると共に、事実上の価格カルテルであるIATA協定運賃の維持が難しくなる中でLCCは誕生し、急速に世界に広がっている状況で、立ち位置の微妙なスカイマークがサービスのダウンサイジングに向かわざるを得なかったわけですね。

逆に最初からLCCとしてスタートしたピーチの場合、サービスコンセプトは「空飛ぶ電車」としているわけで、機内での飲食などは全て有料としているわけです。しかし「空飛ぶ電車」は意味深です。早い話サービスは電車並みと言っているわけで、航空分野では電車並みは簡略サービスというわけです。つまり鉄道のサービスレベルはLCC並みとも言える訳で、日本でもLCCが定着すると断言できる根拠でもあります。でもJR新幹線の運賃料金はLCC運賃を上回ります。理由は線路保有によるコスト負担にあるわけです。

既存新幹線では旧国鉄長期債務負担と鉄建・運輸機構への拠出金負担があり、また鉄建・・運輸機構資金による整備新幹線建設費のリース料による償還がありますので、コスト構造上LCC並みの運賃料金は実現不可能です。この辺は整備しても進化せん日本の高速鉄道で指摘したとおりです。その意味でJR東日本E5系のグランクラスで、弁当込みの付加サービスを売りにするというのは、ある意味新幹線のコスト構造を意識した施策であり、高付加価値サービスを並存させることで付加サービスなしの利用の価格水準を下げる効果もあります。つまり今後整備される新幹線はいよいよLCCとの競争にさらされるシビアな輸送市場への進出を余儀なくされるわけで、それをある程度先取りした形といえます。ツアーバスに翻弄される高速バスのプレミアムシートのブームにも通じる視点です。

以下は一般論ですが、LCCの登場で立ち位置が微妙になったスカイマークに限らず、日本のサービス産業では過剰サービスが生産性の低下に繋がっている事例が散見されます。そのために80年代の日米構造協議の時代から言われていた日本の内需拡大による過少消費の解消が求められながら、世界と闘う輸出製造業に見劣りする生産性レベルではうまくいきませんでした。80年代後半、リゾート法などの国内法の整備で地域開発に民間資本を誘導し、世界の金融センターになるという思惑から都市開発を活性化したしたりした結果が、地価上昇によるバブル経済を生み、その崩壊と共に失われた20年の始まりとなりました。ある意味込み込みの過剰サービスを前提とした価格体系が崩壊したわけです。

それを踏まえて生産性の高い輸出製造業へのてこ入れで景気浮揚を図ったのがゼロ年代だったわけですが、その結果は外需依存で内需は細るばかりのデフレ経済に陥り出口が見えないばかりか、リーマンショック後の世界経済のリセッションで円高による輸出製造業の壊滅的打撃に至り、外需依存の持続可能性も否定されました。残るは国内サービス産業の生産性向上による過少消費解消による消費と投資の拡大しかない状況です。その意味でスカイマークのサービスのダウンサイジングの取り組みは興味深いものです。つまりサービスは対価を生む商行為なわけで、それに適切な値付けが為されることによって、利用者はさまざまなサービスから自分に合ったものを選択できるわけで、客目線での顧客満足度は確実に上がり、消費の拡大に寄与します。日本企業が今やるべきことって、つきつめればこういうことなんでしょう。

そういう意味からなし崩しで始まろうとしている関西電力大飯原発3,4号機の再稼動の問題点を改めて指摘できます。前のエントリーでも指摘しましたが、原発は動いていてもいなくても保有コストが発生し、運転して電気を送り出さない限り売上にはならない一方、原発の点検時のバックアップ用で償却済みの老朽火力発電を残しているため、保有コストはほぼゼロで、燃料も消費しないから、原発を動かして火力を使わないことにインセンティブが働くわけです。丁度コスト構造が新幹線とLCCに対応する関係です。いわば原発保有による電力会社のメタボ体質問題があるわけです。

メディア報道では反対姿勢の関西広域連合の首長たちに対する経済界からの原発再稼動の要望が強かったことが首長たちの翻意を促したという見方がされているようですが、原発再稼動を要望していた関西経済連合会の会長は関電会長だったりしますから、完全にマッチポンプです。加えて政府側から暫定的な基準であるという説明を受けたということですが、それにしても関西の首長たちが揃いも揃って態度を変えたことに疑問があります。そしてある疑念に辿り着きました。

メディアが踊った官房機密費問題です。おそらく首長たちの一部または全員に対する秘密工作があったんじゃないかという疑念です。もちろん裏づけはありません。憶測でしかありませんが、当然メディアにも配られているとすれば、まずメディア報道には現れない話です。しかしこういうニュースを並べると疑念が深まります。

大飯再稼働「限定的なものとして判断を」 関西広域連合  :日本経済新聞
首相、消費税で自民連携に傾く 問責2閣僚交代探る  :日本経済新聞
民主、自公に消費増税法案の修正協議打診  :日本経済新聞
公明幹事長、消費増税法案「修正協議応じられない」  :日本経済新聞
裏づけはありませんが、こう並べて見ると、世田谷の土地購入でポンと4億円立て替えられる小沢氏はカネじゃ転ばなかったので、自公に話を振ったら、巨大宗教団体がスポンサーの公明は乗り気じゃないけど、野党になって見入りが減って貧すれば鈍すの自民は乗り気ということで、官房機密費が配られていると仮定すれば話の辻褄が合ってしまうんです。困った事に(笑)。

というわけで、関西首長たちの不可解な腰砕けぶりも説明がつきそうだなというわけです。どうせメディアにも機密費が配られているでしょうけど、生憎私のところには来てませんので、憶測でも何でも悪口並べます(笑)。仮に配られたら? そん時は貰いますが何か? でも自分を傷つけないように貰った事実を伏せながらネタにするかもしれません(笑)。となると橋下大阪市長はある種悔しさを滲ませながら再稼動容認としていますが、ネタにしているのだとすれば、困った事にまた辻褄が合っちゃいます^_^;。うーむ。

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Comments

スカイマークの件、このブログを見て知りました。
内容はともかく、客を不快にさせるような書き方はまずいと思います。
最近は社内の公用語を英語にする動きもありますが、それ以前に国語力に疑問を感じる企業が多いですね。

Posted by: yamanotesen | Wednesday, June 06, 2012 01:45 AM

表現の問題は確かにあります。まぁよほど機内でいろいろあったんだろうと推測します。価格初級中心の営業戦略が裏目に出たのだと思います。

それとは別に行政からいちゃもんがついて、チラシの内容が見直されることになりました。http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD060O1_W2A600C1TJ1000/
行政機関に尻拭いさせるなという意味なんでしょうけど、実際に苦情が来たわけでもないのに、行政側の過剰反応は考え物です。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, June 06, 2012 10:13 PM

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Tracked on Monday, June 04, 2012 04:02 PM

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