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June 2012

Saturday, June 30, 2012

Suica甘いか消費税

消費税増税法案が26日、衆院を通過しました。小沢氏ほか造反議員の民主党離党問題で揺れていますが、おそらく時間の問題でしょう。何もしなければ会期延長で9月8日に伸ばされてますから、参院の審議が止まっていても、60日条項で参院で否決されたと見なして、衆院で自公と合わせて2/3以上で再可決できますから、造反組は離党して内閣不信任を突きつける形でしか政権を揺さぶれないわけです。案外無いと思われていた解散総選挙もあるかもしれません。

といった政局絡みの話題は置いといて、今回の消費税増税のデタラメぶりはひどいです。一番頭にくるのが景気条項を逆手に取った補正予算編成です。

税収上振れで補正予算検討へ 今秋にも  :日本経済新聞
予算自体が財務省丸投げで編成されており、元々歳入を保守的に査定していますから、毎年必ずといって良いほど税収上ブレは起きます。それを補正予算に充てることで、当初予算で減額、却下されたものに箇所付けすることで、他省庁と政治家を手なずけるというのは自民党政権時代から繰り返されておりますが、予算が余ると消費税増税の必要性に疑義が生じるわけですから、力業で使い切ろうとしたというのが本当のところです。

しかしこのところ予算の使い残しが増加傾向にあることもまた確かなところで、昨年復興増税までして確保した震災復興予算も余っております。

11年度復興予算、4割が未執行=事業、想定通り進まず―復興庁 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
これも補正予算の財源に回されるとすれば、ますます増税は何のためかが曖昧になります。震災復興に関しては人手不足と重機不足でことごとく入札不調が続いている事が指摘されてますが、バブル崩壊以来の構造不況業種である建設業は人材の補充も重機などの設備投資も控えられていた中で、がれき処理と除染の国庫負担で青天井の特需にリソースが張り付いてしまっているわけですから、生活道路の復興や高地移転に伴う造成工事など被災地の生活再建に欠かせない工事ほど滞っているわけで、むしろ復興増税の裏づけが問題を引き起こしているわけです。早い話が増税しても使い切れなくなっているわけで、ますます消費税増税の意味が理解できない状況が症状として現れているわけです。

ちなみに巷間「このデフレ不況のときに増税すべきでない」という議論には私は基本的に与しません。この論点だと消費税増税法案に盛り込まれた景気条項を理由に財政出動で景気底上げという倒錯した議論を止める手立てが無いわけで、むしろ害があります。例えば前エントリーで指摘した日本列島強靭化計画は、提唱している学者は消費税増税に反対していますが、基本的に公共事業主体の財政拡大派ですから、今のように公共事業の大盤振る舞いが続けばそのうちに主張を変えること間違いありません。本来は年金など社会保障改革に道筋をつける中で議論されるべき問題です。

といった小難しい話はさて置いて、鉄道分野では運賃改定という頭の痛い問題が横たわります。実はここ数日Twitter上で「Suicaシステムで消費税ベタ打ち」というネタが拡散しました。そのネタ元はこちらです。

消費増税法案が衆院可決、JR東のスイカ、IC乗車券、改修に1年。 | NFC & Smart WORLD
記事中の記述に変な部分があって、いろいろ憶測を生んだようですが、基本的には消費税転嫁を織り込んだ運賃改定ですから、運賃テーブルの変更だけで対応可能だと思うんですが、膨大なサブシステムの中に変なのが紛れ込んでいる可能性までは否定できないところです。

とはいえ通常の運賃改定でも、システムのデバッグやテストを周到に行うには1年以上前から準備が必要で、当然コストもかかります。加えてICカード乗車券システムが全国で広範に共通化されているわけですから、作業手順はかなり複雑化しているはずで、鉄道会社の本音としては小刻みな消費税増税は勘弁して欲しいところでしょう。まして今回の法案では増税実施の判断は半年前にその時点の内閣が閣議で決定することになっていますから、決まってから作業を始めたのでは完全に間に合わないわけで、あらかじめ準備を先行させる必要があり、それが無駄になる可能性もあるとなると、システム担当者は泣きたいでしょう。

というわけで、こうなると「消費税は経済活動に中立的」という議論は怪しくなります。以前から輸入戻し税問題は指摘されてきましたが、その他にも広告や楽曲や電子書籍の海外ネット配信の非課税問題なども指摘され、これは流石に財務省として課税を検討するようですが、実効性のある具体策が出せるかどうかは微妙です。音楽ネット配信の違法ダウンロードに刑事罰を課す法律も通っており、それを避けるユーザーも現れるでしょうから、日本がネットの空洞化に悩む事態もあり得ます。笑えるけど笑えない話です。

Google walletやiPhonやWindows8などネットの世界ではNFCの話題が旬ですが、NFCの元祖であるはずのソニーのフェリカシステムは忌避されています。それもこれもフェリカシステムをドコモに身売りしたソニーのビジネス感覚のなさです。現在世界規格についての話し合いが進行中ですが、成り行き如何では国内で普及したフェリカシステムはそっくりガラパゴス化する可能性もあります。つくづくソニーのビジネス勘の悪さが悔やまれます。加えてSuicaなど交通系カードもシステム更新時に世界標準に合わせざるを得なくなる可能性もあります。とはいえ現状のように多数の事業者が別々に運賃の認可を受けて乗継割引など複雑な運賃制度が並存する日本ではフェリカ以外のシステムで対応できるかどうかはわからないわけですが、そのために世界標準システムに比べて割高になることを乗客に理解を求めるのもハードルが高い気がします。

というわけで、消費税増税に伴うシステム投資の負担は鉄道事業者には頭の痛い問題になる可能性は高いのですが、この際逆に良い機会なので複雑な運賃制度をシンプルに改める事も考えて欲しいです。例えば世界の大都市で当たり前のように導入されている運賃連合による運賃一元化などです。極端なこと言えば例えば東京山手線内+大江戸線環状部を第1ゾーン、都区内を第2ゾーンとして第1ゾーン内300円、第2ゾーン内200円、両ゾーンにまたがる場合400円として、郊外部路線との間には個別に連絡運輸運賃を設定するというような形にすれば、各事業者は自社線内と都心ゾーンとの連絡運輸運賃のテーブルを管理するだけで良くなり、システム上はシンプルになります。こういうことを考え実現する方が、九段下のバカの壁が取れたとはしゃぐより遥かに乗客の利便性を高めると思うのですが。なお、第1ゾーンを高く設定しているのは、交通インフラの集積があり利便性に差があることと共に、渋滞税の考え方で、進まない混雑解消のための設備投資の原資とする意味もあります。ですから実現のためには鉄道事業法の改正により、特特法で認められている設備投資のための無税積立を拡大し恒久化する必要はあります。猪瀬某にはこのような発想はありませんが、例えば著書で指摘した東西線の混雑に対しては、運賃を上げることで解決するのが資本主義時市場経済下では素直な解決策です。

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Sunday, June 17, 2012

日本列島狂人化計画

消費税増税の茶番劇が続いています。そもそもなぜ増税しなければならないのかの説明はなく、また「税と社会保障の一体改革」と言いながら社会保障改革は棚上げですから、全く意味不明です。「日本がギリシャになる」というのも間違い。経常赤字国で財政赤字のファイナンスを外国に頼るギリシャと、経常黒字国で財政赤字を国内でファイナンスできる日本が同じわけがありません。

ギリシャ問題では本日再選挙で行方が注目されますが、メディアが盛んに言うギリシャのユーロ圏離脱は、現実的には不可能です。理由はいろいろありますが、そもそもユーロは単一通貨と言いますが、発行は各国中央銀行が行い、金融政策をブリュッセルのECBで決めて各国中銀が従う仕組みです。統一されているのは金融政策であって、国境を越える取引決済は民間同士でも中央銀行間で代理決済をする仕組みです。TARGET2と呼ぶ仕組みで、事実上同じユーロを名乗る各国通貨の固定相場制になっています。つまり仮に経常赤字国であるギリシャが離脱すると、中銀間の決済の不均衡分を経常黒字国であるドイツやオランダで国民負担が生じる仕組みです。

それでもユーロに留まったまま支援を継続するよりは、一時的な損失だけで済むならばギリシャと縁を切りたいというのがドイツの本音でしょうけど、問題はギリシャの離脱だけでは済みそうにないという点です。特にスペインはユーロ圏4位の経済大国で救済が困難なところで、しかも銀行不安が起きてきています。共通通貨としってもユーロはあくまでも為替の固定相場と中銀の金融政策の共有による通貨同盟であって、それ以上でも以下でもありませんから、日本の金融庁に相当する金融機関の監督行政は統一されておらず、銀行の規模や健全性はバラバラです。そしてスペインでは不動産ブームによるバブルの崩壊で銀行が不良債権を抱えた90年代後半の日本と同じような状況にあるわけです。当然処理には時間がかかります。

というわけで金融監督行政の統一や預金保険の統一が急浮上していますが、仮に話がまとまっても直ぐに実現するわけではありませんし、スペインの銀行をドイツの税金で救済することに対する世論の同意は高いハードルです。おそらく日米で起きたように銀行の合従連衡で大規模化が進むと思われますが、それも時間のかかるプロセスになり、そこをギリシャの次としてスペインが狙い撃ちされる可能性があるため、ギリシャの選挙結果で緊縮反対派が政権を握った場合、ユーロ圏各国は譲歩せざるを得なくなります。

その日本とアメリカも銀行の巨大化は進んだものの、結局 Too big to fail.(大き過ぎて潰せない)状態になり、過大なリスクテイクで危機を繰り返すだけという可能性もあります。その意味で示唆に富むニュースがあります。

JPモルガンの巨額損失出した取引、純粋なヘッジ戦略 ダイモンCEOが議会証言 | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters
リスク管理が厳格と言われるJPモルガンの巨額損失事件ですが、CEOの議会証言で通常のヘッジ取引であると認識していた事が明かされました。つまり損失を回避しようとして取引を重ね、流動性の低いデリバティブのポジションを高めてドツボに嵌まったわけです。つまり Too big to manage.(大き過ぎて管理できない)状況です。リーマンショックでリーマンブラザーズを救済しなかったことでアメリカ政府が非難される一方、 Too big to save.(大き過ぎて救えない)とも言われましたが、事態は更に進み、最早管理不可能なシステムになってしまったわけです。アングロサクソン型金融資本主義も行き着くところまで行き着いたわけで、危機を乗り越えても欧州の未来は明るいとは言いがたいところです。

で日本ですが、そもそも本当に税収が足りないならば、なぜ2011年度に4次に亘る補正予算を組んだのかが問われます。元々当初予算は財務省の査定で安全側に糊代を見込んでおいて、当然余剰が出ると補正予算を組んで査定でカットした分にお金をつけることで、財務省が他省庁や政治家をコントロールしてきた仕組みを見直すことが先です。逆に民主党政権になってから予算の執行が滞りがちですが、政務三役による執行段階のチェック7が働いているとも言えますし、単に能力不足なのかもしれませんが、いずれにしろそうして予算が余ったから何度も補正予算を組んで使い切ってしまうということをする前に、余剰分を繰り越せば次年度の赤字国債発行額を圧縮できます。逆に言えば増税を既定路線としているから、予算を余らせないようにしたのが実態です。野田政権はここまでどっぷり官僚支配に浸かってしまったわけです。

そして自公との修正協議でマニフェストの撤回を求められた結果が社会保障改革の棚上げです。しかも自民党は日本列島強靭化計画と称して毎年20兆円、10年で200兆円の公共事業を謳っております。現在の公共事業費が6.6兆円ですから、何のことはない、増税分は全て公共事業に回して社会保障は現状維持ですから、高齢化による社会保障費の上昇を考えると実質社会保障カットを意味します。それを謳いながら増税は民主党政権にやらせて、解散総選挙で政権を奪還して自分たちだけハッピーということです。つまり行き詰っていた政権交代以前に戻して増税の果実はいただくということです。こいつらの政権返り咲きを許すべきじゃありません。

消費税問題はこれぐらいにしておきますが、どさくさ紛れにこんなものが通りそうです。

違法ダウンロード、罰金最大200万円 法案成立へ  :日本経済新聞
これ早い話が違法コピー対策ですが、正規の音楽配信サービス以外は刑事罰の対象とすることで、事実上独占を国が認めたもので、国民的な議論を経ずに自公両党が押し込んだものです。それをノーチェックで通した民主党政権の情けなさは万死に値します。

だんだん空しくなってきますが、先日の人気芸人の母親の生活保護問題といい、大飯原発再稼動問題といい、右旋回が鮮明です。戦前の立憲政友会と民政党の擬似二大政党制という事実上の足の引っ張り合いの狭間で、財界の後押しもあって力をつけた革新官僚が戦争へといざなった悪夢に近づいているようで恐ろしいところです。大飯原発再稼動のプロセスを見ているとそう感じます。政治家にダメ出しするのは簡単ですが、それを選んだ(選ばされた?)主権者の国民は救われません。悪いけどことここに至れば民主党は執行部の先走りを食い止めて欲しいです。あんたらだって今選挙やりたくないだろ。

大飯原発再稼動問題でひと言付け加えれば、日本の今回の対応は、今後新興国の原発の安全管理の範例となることを忘れるべきではありません。例えば仮に中国で原発事故が起きたとき、どうするんですか?って話です。日本はそのとき中国に何を言える立場なんでしょうか。

原発絡みではもう一つこんなニュースもあります。

リニア中央新幹線着工に意外なハードル 電力不足の中で原発1基近い使用量が論議に (1/2) : J-CASTニュース
沿線向けに始まった説明会で電力消費量の多さが原発問題と絡めて疑問の声が上がっております。当ブログでは以前から指摘してきた論点ですが、やっと世の中が追いついてきました。なるほどこうなると原子力賠償支援機構で原子力推進、改革潰しの立ち回りをしている葛西会長は利害関係者として振舞っているわけで、原倍機構の人選を見直すべきです。

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Saturday, June 09, 2012

電気鉄道夏景色

前エントリーの続きです。予想されたことですが、野田首相は大飯原発3,4号機の再稼動に踏み込みました。

大飯再稼働、首相「国民生活守るための判断」  :日本経済新聞
「国民生活を守るため」という嘘で押し切ったわけですが、本当の理由は原発は動かさないとコストばっかりかかるからであることは、今まで度々指摘してきた通りです。原発を電力会社が保有する限り、この嘘は繰り返されます。ピーク対応のために過大な資産を抱え込んだ電力会社のメタボ体質の問題です。国民生活という意味ではピークシフトこそが重要です。

95年以来、GDPが伸びない中で、電力消費量は確実に伸びている日本では、元々電力の過剰消費が疑われる状況にあるわけですが、同時に大規模発電と高圧遠距離送電の組み合わせの非効率もあり、省電力の余地は大きいのはこれまでにも指摘してきました。ここでは繰り返しませんが、系統電力の非効率の改善は、日本の産業構造を根本から作り変えられるポテンシャルを秘めており、その意味で大飯原発の再稼動でせっかくの節電機運に水を差すことは残念です。逆に節電機運が定着することを電力会社は恐れているんでしょうけど。

昨年は首都圏の鉄道各社はさまざまな省電力対策を実施しましたが、今年は今のところ特に対策はないようですが、大口電力の値上げの影響は大きく、JR東日本では川崎火力発電所の設備増強と信濃川の水利権追加取得で自家発電電力を増強しておりますし、東京メトロは震災以前からPPSとの契約を進めて電力費を節約しています。加えて都営地下鉄と東急、西武もPPSとの契約を進めており、電力自由化されればこの傾向は拡大するものと考えて良いでしょう。実際それ以外の各社はPPSの電力供給能力の問題で東電の値上げを受け入れざるを得なくなり、その影響で本業の運輸業で今年度の業績予想の下方修正を余儀なくされております。

そんな1社が京王電鉄ですが、不動産部門は90億円前後の安定した営業利益を計上する一方、調布市内連続立体化事業の関連で固定資産除却費が発生することと、電力値上げの影響で、前期比34%減の76億円となり、部門別開示に移行した03年以来初めて収益トップが運輸部門から不動産になる見込みです。不動産が収益トップとなるのは大手私鉄上場13社中6社で、他は東京急行電鉄、阪急阪神ホールディングス、相鉄ホールディングス、京阪電気鉄道、西日本鉄道ですが、元々の不動産事業の比重から見て、京王の逆転は目立ちます。

その京王ですが、不動産事業でも一味違う展開に特徴があります。東急などで見られる自前での沿線の大規模開発は少なく、むしろ駅ビルや駅近接の商業ビルやオフィスビル中心の賃貸業がメインでした。その一方で沿線人口の高齢化を睨んだ住み替え支援新型ビジネスホテルの京王プレッソイン駅前保育に有料老人ホームなど、他社でも取り入れられた施策も多数ありますが、いずれも時代の変化に対応した積極的な投資戦略として進められている点は特筆すべきです。

そして東電子会社の不動産会社をM&Aで取得しています。株式会社リビタ(リビタ - Wikipedia参照)ですが、中古マンションのリノベーションを主力事業とし、他にも中古オフィスビル等の用途変更(コンバージョン)や起業家向けのシェアスペース事業などで、既存の不動産ストックの有効利用を中心とした業態です。元々は中古物件のオール電化やオフィスのインテリジェント化などを狙ったのでしょうけど、福島第一原発事故を受けて非中核事業としてリストラ対象となった会社を京王が買い取ったわけです。京王電鉄にとっては久々の本格M&Aでしたが、バブルに踊らず財務体質の強い京王電鉄では、100億円規模のM&A資金枠を設定しており、今後も戦略的M&Aを行い、成長見込みガ立てにくい運輸業を補完すると思われます。余談ですが、東電の画上げで「リストラが不十分」との声が多いですが、リビタのように売れる会社はまだまだ多数ありそうです。

鉄道会社の不動産事業としては、今年4月の渋谷ヒカリエ(東急)、5月の東京スカイツリーとソラマチ(東武鉄道)などが耳目を集めていますし、昨年は阪急百貨店をキーテナントとするJR九州博多駅ビルやJR西日本大阪駅の大阪ステーションシティなど太鼓簿開発が続きました。その意味で京王は地味なメニューばかりですが、大規模開発の持続可能性に疑問符ガつくこんなニュースも。

都心のオフィス空室率、過去最高を更新 5月末  :日本経済新聞
渋谷ヒカリエのオフィスフロアはDeNAをはじめテナントが集まり埋まっていますが、今年開業の高層オフィスビルではテナントが埋まらないまま開業したビルガ多く、さすがに過剰感が出ています。もちろん設備が整いバックアップ電源も確保されている新築ビルへの移転需要は一定に存在しますから、いずれ埋まるでしょうけど、その分中古オフィスビルの空室率は上がるわけで、リビタの事業領域であるコンバージョンの需要は高まると考えられます。

しかもヒカリエやスカイツリーのような巨大インフラは開業後のメンテナンスや集客やテナントの入れ替えなどで収益力を維持するケアが欠かせませんが、経年で確実に古くなる中古マンションや中古オフィスビルは、時間軸で確実に増えていくわけで、実は潜在市場はかなり大きいわけです。当ブログで度々指摘する内需振興の種は身近に多数あるわけです。

そして京王が100億円のM&A資金枠を活用してどんな会社を買うかというのも興味深いですが、本業関連では電力事業への参入が考えられます。上記のように京王をはじめ、東武、京急、京成など東電から電力供給を受けている事業者は負担増を強いられているわけですが、PPSの能力不足で値上げを呑まされており、今後も最値上げの可能性が否定できない中で、自前の電力調達は喫緊の課題でもあります。手っ取り早い方法としては東電の火力発電所を買い取って電力事業に参入する手ですが、1兆円の資金注入で公的管理に移行する東電が追加リストラする可能性は高いだけに、財務余力のある京王電鉄が一歩を踏み出す可能性は高いと考えられます。そして保育や有料老人ホームなどでトレンドを生み出したように他社に波及するとすれば、地域独占に安住してきた日本の電力事情もかなり変化する可能性があります。

元々電力と鉄道は関係が深く、後の関西電力の母体となる宇治川電気の直営鉄道部門が電力国家管理で独立し山陽電気鉄道になったことなどは既に指摘しておりますが、戦後、重工業の拡大で産業用電力の需要が増大すると共に、ラッシュ輸送で負荷変動の激しい鉄道向け電力は電力会社にとってはありがたくない存在となりました。しかもサイリスタチョッパ制御やVVVF制御などで電力回生制動が常用されるようになると、むしろ負荷変動は増幅されました。直流電化の特性で架線電圧が制約条件となり、回生が働いたり働かなかったりするわけですが、鉄道会社にとっては積算の電力消費を減らして省電力となりますが、電力の安定供給を義務付けられている電力会社にとっては迷惑な話というわけで、大手製造業で適用される安い料金プランは適用されず、今回は値上げを呑まされたわけですから、ただでさえ人口減少で増収が見込めない中、このまま大人しく高い電力料金を受け入れ続けることは難しくなると考えられます。いずれにしても電力鉄道の関係に新たな歴史が始まる可能性は高いと考えられます。

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Sunday, June 03, 2012

カネとネタ福井85センチ

スカイマークの機内備え付けのサービスコンセプトなるチラシが話題になっています。チラシの画像を貼り付けておきます。ある種の人たちには発狂しそうな内容で、またスカイマーク自身が重大インシデントで国交省から度々処分を受けていることもあり、否定的な見方が一定に存在しますが、もう少し違った見方ができます。例えばこんな記事です。

NEWSポストセブン|スカイマークのコストダウン戦略 丁寧な言葉使い義務付けず
記事中の杉浦一機氏のコメントが簡潔に本質を突いています。スカイマーク自身はLCCではありませんが、在来型のフルサービスエアライン(FSA)に価格を対抗軸に新規参入した事業者で、大手の寡占に対抗する存在であるのですが、LCCは着陸料の安い空港を拠点に point to point で結ぶ新しいコンセプトの航空サービスであり、どちらかと言えば新規需要の掘り起こしに力点が置かれている存在です。LCCのビジネスモデルをまとめると
1.着陸料の安い大都市第2空港などを拠点としておおむね1-2時間程度のフライト時間で目的地と往復する point topoint のシャトル運行(乗継は考慮しない)。
2.燃費が良く地上での整備時間の短い200人乗り程度の新しい同じ機材を揃えて、座席感覚も詰めて定員を増やし何回もフライトする(稼働率向上)。
3.座席のweb販売で代理店を通さずマージンをなくし、予約時期で価格を変えるなどして搭乗率を高めて利益を最大化する(イールドマネジメント)。
4.付加サービスの有料化。
といったところですが、スカイマークの場合はこれらの要素を選択的に採用しているものの、FSAへの対抗のための低価格化ですから、新規需要を狙うLCCとは違うわけです。とはいえ日本でも今年からLCCの参入が本格化しており、いずれもレガシーベイビー(既存航空の子会社)として発足しているように、より新規需要創出の狙いが強いわけですが、レガシーの裏をかく戦略のスカイマークにとっては、単純な低価格訴求が成り立ちにくくなることでもあります。その対応策としてサービスコンセプトを明確化することで、コストダウンに繋げようということですね。つまりはサービスのダウンサイジングが狙いというわけです。LCCの参入がスカイマークに変化を促したわけです。

元々お金持ちの乗り物だった航空において、付加サービスは当然のものだったのかも知れまっせんが、航空輸送の大衆化が進み、利用者が増えてくれば、いつまでも付加サービス込みの高運賃を維持するのも難しくなりますし、アメリカが提唱するオープンスカイ政策が世界に浸透し新興国需要が立ち上がると共に、事実上の価格カルテルであるIATA協定運賃の維持が難しくなる中でLCCは誕生し、急速に世界に広がっている状況で、立ち位置の微妙なスカイマークがサービスのダウンサイジングに向かわざるを得なかったわけですね。

逆に最初からLCCとしてスタートしたピーチの場合、サービスコンセプトは「空飛ぶ電車」としているわけで、機内での飲食などは全て有料としているわけです。しかし「空飛ぶ電車」は意味深です。早い話サービスは電車並みと言っているわけで、航空分野では電車並みは簡略サービスというわけです。つまり鉄道のサービスレベルはLCC並みとも言える訳で、日本でもLCCが定着すると断言できる根拠でもあります。でもJR新幹線の運賃料金はLCC運賃を上回ります。理由は線路保有によるコスト負担にあるわけです。

既存新幹線では旧国鉄長期債務負担と鉄建・運輸機構への拠出金負担があり、また鉄建・・運輸機構資金による整備新幹線建設費のリース料による償還がありますので、コスト構造上LCC並みの運賃料金は実現不可能です。この辺は整備しても進化せん日本の高速鉄道で指摘したとおりです。その意味でJR東日本E5系のグランクラスで、弁当込みの付加サービスを売りにするというのは、ある意味新幹線のコスト構造を意識した施策であり、高付加価値サービスを並存させることで付加サービスなしの利用の価格水準を下げる効果もあります。つまり今後整備される新幹線はいよいよLCCとの競争にさらされるシビアな輸送市場への進出を余儀なくされるわけで、それをある程度先取りした形といえます。ツアーバスに翻弄される高速バスのプレミアムシートのブームにも通じる視点です。

以下は一般論ですが、LCCの登場で立ち位置が微妙になったスカイマークに限らず、日本のサービス産業では過剰サービスが生産性の低下に繋がっている事例が散見されます。そのために80年代の日米構造協議の時代から言われていた日本の内需拡大による過少消費の解消が求められながら、世界と闘う輸出製造業に見劣りする生産性レベルではうまくいきませんでした。80年代後半、リゾート法などの国内法の整備で地域開発に民間資本を誘導し、世界の金融センターになるという思惑から都市開発を活性化したしたりした結果が、地価上昇によるバブル経済を生み、その崩壊と共に失われた20年の始まりとなりました。ある意味込み込みの過剰サービスを前提とした価格体系が崩壊したわけです。

それを踏まえて生産性の高い輸出製造業へのてこ入れで景気浮揚を図ったのがゼロ年代だったわけですが、その結果は外需依存で内需は細るばかりのデフレ経済に陥り出口が見えないばかりか、リーマンショック後の世界経済のリセッションで円高による輸出製造業の壊滅的打撃に至り、外需依存の持続可能性も否定されました。残るは国内サービス産業の生産性向上による過少消費解消による消費と投資の拡大しかない状況です。その意味でスカイマークのサービスのダウンサイジングの取り組みは興味深いものです。つまりサービスは対価を生む商行為なわけで、それに適切な値付けが為されることによって、利用者はさまざまなサービスから自分に合ったものを選択できるわけで、客目線での顧客満足度は確実に上がり、消費の拡大に寄与します。日本企業が今やるべきことって、つきつめればこういうことなんでしょう。

そういう意味からなし崩しで始まろうとしている関西電力大飯原発3,4号機の再稼動の問題点を改めて指摘できます。前のエントリーでも指摘しましたが、原発は動いていてもいなくても保有コストが発生し、運転して電気を送り出さない限り売上にはならない一方、原発の点検時のバックアップ用で償却済みの老朽火力発電を残しているため、保有コストはほぼゼロで、燃料も消費しないから、原発を動かして火力を使わないことにインセンティブが働くわけです。丁度コスト構造が新幹線とLCCに対応する関係です。いわば原発保有による電力会社のメタボ体質問題があるわけです。

メディア報道では反対姿勢の関西広域連合の首長たちに対する経済界からの原発再稼動の要望が強かったことが首長たちの翻意を促したという見方がされているようですが、原発再稼動を要望していた関西経済連合会の会長は関電会長だったりしますから、完全にマッチポンプです。加えて政府側から暫定的な基準であるという説明を受けたということですが、それにしても関西の首長たちが揃いも揃って態度を変えたことに疑問があります。そしてある疑念に辿り着きました。

メディアが踊った官房機密費問題です。おそらく首長たちの一部または全員に対する秘密工作があったんじゃないかという疑念です。もちろん裏づけはありません。憶測でしかありませんが、当然メディアにも配られているとすれば、まずメディア報道には現れない話です。しかしこういうニュースを並べると疑念が深まります。

大飯再稼働「限定的なものとして判断を」 関西広域連合  :日本経済新聞
首相、消費税で自民連携に傾く 問責2閣僚交代探る  :日本経済新聞
民主、自公に消費増税法案の修正協議打診  :日本経済新聞
公明幹事長、消費増税法案「修正協議応じられない」  :日本経済新聞
裏づけはありませんが、こう並べて見ると、世田谷の土地購入でポンと4億円立て替えられる小沢氏はカネじゃ転ばなかったので、自公に話を振ったら、巨大宗教団体がスポンサーの公明は乗り気じゃないけど、野党になって見入りが減って貧すれば鈍すの自民は乗り気ということで、官房機密費が配られていると仮定すれば話の辻褄が合ってしまうんです。困った事に(笑)。

というわけで、関西首長たちの不可解な腰砕けぶりも説明がつきそうだなというわけです。どうせメディアにも機密費が配られているでしょうけど、生憎私のところには来てませんので、憶測でも何でも悪口並べます(笑)。仮に配られたら? そん時は貰いますが何か? でも自分を傷つけないように貰った事実を伏せながらネタにするかもしれません(笑)。となると橋下大阪市長はある種悔しさを滲ませながら再稼動容認としていますが、ネタにしているのだとすれば、困った事にまた辻褄が合っちゃいます^_^;。うーむ。

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