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Saturday, June 09, 2012

電気鉄道夏景色

前エントリーの続きです。予想されたことですが、野田首相は大飯原発3,4号機の再稼動に踏み込みました。

大飯再稼働、首相「国民生活守るための判断」  :日本経済新聞
「国民生活を守るため」という嘘で押し切ったわけですが、本当の理由は原発は動かさないとコストばっかりかかるからであることは、今まで度々指摘してきた通りです。原発を電力会社が保有する限り、この嘘は繰り返されます。ピーク対応のために過大な資産を抱え込んだ電力会社のメタボ体質の問題です。国民生活という意味ではピークシフトこそが重要です。

95年以来、GDPが伸びない中で、電力消費量は確実に伸びている日本では、元々電力の過剰消費が疑われる状況にあるわけですが、同時に大規模発電と高圧遠距離送電の組み合わせの非効率もあり、省電力の余地は大きいのはこれまでにも指摘してきました。ここでは繰り返しませんが、系統電力の非効率の改善は、日本の産業構造を根本から作り変えられるポテンシャルを秘めており、その意味で大飯原発の再稼動でせっかくの節電機運に水を差すことは残念です。逆に節電機運が定着することを電力会社は恐れているんでしょうけど。

昨年は首都圏の鉄道各社はさまざまな省電力対策を実施しましたが、今年は今のところ特に対策はないようですが、大口電力の値上げの影響は大きく、JR東日本では川崎火力発電所の設備増強と信濃川の水利権追加取得で自家発電電力を増強しておりますし、東京メトロは震災以前からPPSとの契約を進めて電力費を節約しています。加えて都営地下鉄と東急、西武もPPSとの契約を進めており、電力自由化されればこの傾向は拡大するものと考えて良いでしょう。実際それ以外の各社はPPSの電力供給能力の問題で東電の値上げを受け入れざるを得なくなり、その影響で本業の運輸業で今年度の業績予想の下方修正を余儀なくされております。

そんな1社が京王電鉄ですが、不動産部門は90億円前後の安定した営業利益を計上する一方、調布市内連続立体化事業の関連で固定資産除却費が発生することと、電力値上げの影響で、前期比34%減の76億円となり、部門別開示に移行した03年以来初めて収益トップが運輸部門から不動産になる見込みです。不動産が収益トップとなるのは大手私鉄上場13社中6社で、他は東京急行電鉄、阪急阪神ホールディングス、相鉄ホールディングス、京阪電気鉄道、西日本鉄道ですが、元々の不動産事業の比重から見て、京王の逆転は目立ちます。

その京王ですが、不動産事業でも一味違う展開に特徴があります。東急などで見られる自前での沿線の大規模開発は少なく、むしろ駅ビルや駅近接の商業ビルやオフィスビル中心の賃貸業がメインでした。その一方で沿線人口の高齢化を睨んだ住み替え支援新型ビジネスホテルの京王プレッソイン駅前保育に有料老人ホームなど、他社でも取り入れられた施策も多数ありますが、いずれも時代の変化に対応した積極的な投資戦略として進められている点は特筆すべきです。

そして東電子会社の不動産会社をM&Aで取得しています。株式会社リビタ(リビタ - Wikipedia参照)ですが、中古マンションのリノベーションを主力事業とし、他にも中古オフィスビル等の用途変更(コンバージョン)や起業家向けのシェアスペース事業などで、既存の不動産ストックの有効利用を中心とした業態です。元々は中古物件のオール電化やオフィスのインテリジェント化などを狙ったのでしょうけど、福島第一原発事故を受けて非中核事業としてリストラ対象となった会社を京王が買い取ったわけです。京王電鉄にとっては久々の本格M&Aでしたが、バブルに踊らず財務体質の強い京王電鉄では、100億円規模のM&A資金枠を設定しており、今後も戦略的M&Aを行い、成長見込みガ立てにくい運輸業を補完すると思われます。余談ですが、東電の画上げで「リストラが不十分」との声が多いですが、リビタのように売れる会社はまだまだ多数ありそうです。

鉄道会社の不動産事業としては、今年4月の渋谷ヒカリエ(東急)、5月の東京スカイツリーとソラマチ(東武鉄道)などが耳目を集めていますし、昨年は阪急百貨店をキーテナントとするJR九州博多駅ビルやJR西日本大阪駅の大阪ステーションシティなど太鼓簿開発が続きました。その意味で京王は地味なメニューばかりですが、大規模開発の持続可能性に疑問符ガつくこんなニュースも。

都心のオフィス空室率、過去最高を更新 5月末  :日本経済新聞
渋谷ヒカリエのオフィスフロアはDeNAをはじめテナントが集まり埋まっていますが、今年開業の高層オフィスビルではテナントが埋まらないまま開業したビルガ多く、さすがに過剰感が出ています。もちろん設備が整いバックアップ電源も確保されている新築ビルへの移転需要は一定に存在しますから、いずれ埋まるでしょうけど、その分中古オフィスビルの空室率は上がるわけで、リビタの事業領域であるコンバージョンの需要は高まると考えられます。

しかもヒカリエやスカイツリーのような巨大インフラは開業後のメンテナンスや集客やテナントの入れ替えなどで収益力を維持するケアが欠かせませんが、経年で確実に古くなる中古マンションや中古オフィスビルは、時間軸で確実に増えていくわけで、実は潜在市場はかなり大きいわけです。当ブログで度々指摘する内需振興の種は身近に多数あるわけです。

そして京王が100億円のM&A資金枠を活用してどんな会社を買うかというのも興味深いですが、本業関連では電力事業への参入が考えられます。上記のように京王をはじめ、東武、京急、京成など東電から電力供給を受けている事業者は負担増を強いられているわけですが、PPSの能力不足で値上げを呑まされており、今後も最値上げの可能性が否定できない中で、自前の電力調達は喫緊の課題でもあります。手っ取り早い方法としては東電の火力発電所を買い取って電力事業に参入する手ですが、1兆円の資金注入で公的管理に移行する東電が追加リストラする可能性は高いだけに、財務余力のある京王電鉄が一歩を踏み出す可能性は高いと考えられます。そして保育や有料老人ホームなどでトレンドを生み出したように他社に波及するとすれば、地域独占に安住してきた日本の電力事情もかなり変化する可能性があります。

元々電力と鉄道は関係が深く、後の関西電力の母体となる宇治川電気の直営鉄道部門が電力国家管理で独立し山陽電気鉄道になったことなどは既に指摘しておりますが、戦後、重工業の拡大で産業用電力の需要が増大すると共に、ラッシュ輸送で負荷変動の激しい鉄道向け電力は電力会社にとってはありがたくない存在となりました。しかもサイリスタチョッパ制御やVVVF制御などで電力回生制動が常用されるようになると、むしろ負荷変動は増幅されました。直流電化の特性で架線電圧が制約条件となり、回生が働いたり働かなかったりするわけですが、鉄道会社にとっては積算の電力消費を減らして省電力となりますが、電力の安定供給を義務付けられている電力会社にとっては迷惑な話というわけで、大手製造業で適用される安い料金プランは適用されず、今回は値上げを呑まされたわけですから、ただでさえ人口減少で増収が見込めない中、このまま大人しく高い電力料金を受け入れ続けることは難しくなると考えられます。いずれにしても電力鉄道の関係に新たな歴史が始まる可能性は高いと考えられます。

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