日本列島狂人化計画
消費税増税の茶番劇が続いています。そもそもなぜ増税しなければならないのかの説明はなく、また「税と社会保障の一体改革」と言いながら社会保障改革は棚上げですから、全く意味不明です。「日本がギリシャになる」というのも間違い。経常赤字国で財政赤字のファイナンスを外国に頼るギリシャと、経常黒字国で財政赤字を国内でファイナンスできる日本が同じわけがありません。
ギリシャ問題では本日再選挙で行方が注目されますが、メディアが盛んに言うギリシャのユーロ圏離脱は、現実的には不可能です。理由はいろいろありますが、そもそもユーロは単一通貨と言いますが、発行は各国中央銀行が行い、金融政策をブリュッセルのECBで決めて各国中銀が従う仕組みです。統一されているのは金融政策であって、国境を越える取引決済は民間同士でも中央銀行間で代理決済をする仕組みです。TARGET2と呼ぶ仕組みで、事実上同じユーロを名乗る各国通貨の固定相場制になっています。つまり仮に経常赤字国であるギリシャが離脱すると、中銀間の決済の不均衡分を経常黒字国であるドイツやオランダで国民負担が生じる仕組みです。
それでもユーロに留まったまま支援を継続するよりは、一時的な損失だけで済むならばギリシャと縁を切りたいというのがドイツの本音でしょうけど、問題はギリシャの離脱だけでは済みそうにないという点です。特にスペインはユーロ圏4位の経済大国で救済が困難なところで、しかも銀行不安が起きてきています。共通通貨としってもユーロはあくまでも為替の固定相場と中銀の金融政策の共有による通貨同盟であって、それ以上でも以下でもありませんから、日本の金融庁に相当する金融機関の監督行政は統一されておらず、銀行の規模や健全性はバラバラです。そしてスペインでは不動産ブームによるバブルの崩壊で銀行が不良債権を抱えた90年代後半の日本と同じような状況にあるわけです。当然処理には時間がかかります。
というわけで金融監督行政の統一や預金保険の統一が急浮上していますが、仮に話がまとまっても直ぐに実現するわけではありませんし、スペインの銀行をドイツの税金で救済することに対する世論の同意は高いハードルです。おそらく日米で起きたように銀行の合従連衡で大規模化が進むと思われますが、それも時間のかかるプロセスになり、そこをギリシャの次としてスペインが狙い撃ちされる可能性があるため、ギリシャの選挙結果で緊縮反対派が政権を握った場合、ユーロ圏各国は譲歩せざるを得なくなります。
その日本とアメリカも銀行の巨大化は進んだものの、結局 Too big to fail.(大き過ぎて潰せない)状態になり、過大なリスクテイクで危機を繰り返すだけという可能性もあります。その意味で示唆に富むニュースがあります。
JPモルガンリスク管理が厳格と言われるJPモルガンの巨額損失事件ですが、CEOの議会証言で通常のヘッジ取引であると認識していた事が明かされました。つまり損失を回避しようとして取引を重ね、流動性の低いデリバティブのポジションを高めてドツボに嵌まったわけです。つまり Too big to manage.(大き過ぎて管理できない)状況です。リーマンショックでリーマンブラザーズを救済しなかったことでアメリカ政府が非難される一方、 Too big to save.(大き過ぎて救えない)とも言われましたが、事態は更に進み、最早管理不可能なシステムになってしまったわけです。アングロサクソン型金融資本主義も行き着くところまで行き着いたわけで、危機を乗り越えても欧州の未来は明るいとは言いがたいところです。の巨額損失出した取引、純粋なヘッジ戦略 ダイモンCEOが議会証言 | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters
で日本ですが、そもそも本当に税収が足りないならば、なぜ2011年度に4次に亘る補正予算を組んだのかが問われます。元々当初予算は財務省の査定で安全側に糊代を見込んでおいて、当然余剰が出ると補正予算を組んで査定でカットした分にお金をつけることで、財務省が他省庁や政治家をコントロールしてきた仕組みを見直すことが先です。逆に民主党政権になってから予算の執行が滞りがちですが、政務三役による執行段階のチェック7が働いているとも言えますし、単に能力不足なのかもしれませんが、いずれにしろそうして予算が余ったから何度も補正予算を組んで使い切ってしまうということをする前に、余剰分を繰り越せば次年度の赤字国債発行額を圧縮できます。逆に言えば増税を既定路線としているから、予算を余らせないようにしたのが実態です。野田政権はここまでどっぷり官僚支配に浸かってしまったわけです。
そして自公との修正協議でマニフェストの撤回を求められた結果が社会保障改革の棚上げです。しかも自民党は日本列島強靭化計画と称して毎年20兆円、10年で200兆円の公共事業を謳っております。現在の公共事業費が6.6兆円ですから、何のことはない、増税分は全て公共事業に回して社会保障は現状維持ですから、高齢化による社会保障費の上昇を考えると実質社会保障カットを意味します。それを謳いながら増税は民主党政権にやらせて、解散総選挙で政権を奪還して自分たちだけハッピーということです。つまり行き詰っていた政権交代以前に戻して増税の果実はいただくということです。こいつらの政権返り咲きを許すべきじゃありません。
消費税問題はこれぐらいにしておきますが、どさくさ紛れにこんなものが通りそうです。
違法ダウンロード、罰金最大200万円 法案成立へ :日本経済新聞これ早い話が違法コピー対策ですが、正規の音楽配信サービス以外は刑事罰の対象とすることで、事実上独占を国が認めたもので、国民的な議論を経ずに自公両党が押し込んだものです。それをノーチェックで通した民主党政権の情けなさは万死に値します。
だんだん空しくなってきますが、先日の人気芸人の母親の生活保護問題といい、大飯原発再稼動問題といい、右旋回が鮮明です。戦前の立憲政友会と民政党の擬似二大政党制という事実上の足の引っ張り合いの狭間で、財界の後押しもあって力をつけた革新官僚が戦争へといざなった悪夢に近づいているようで恐ろしいところです。大飯原発再稼動のプロセスを見ているとそう感じます。政治家にダメ出しするのは簡単ですが、それを選んだ(選ばされた?)主権者の国民は救われません。悪いけどことここに至れば民主党は執行部の先走りを食い止めて欲しいです。あんたらだって今選挙やりたくないだろ。
大飯原発再稼動問題でひと言付け加えれば、日本の今回の対応は、今後新興国の原発の安全管理の範例となることを忘れるべきではありません。例えば仮に中国で原発事故が起きたとき、どうするんですか?って話です。日本はそのとき中国に何を言える立場なんでしょうか。
原発絡みではもう一つこんなニュースもあります。
リニア中央新幹線着工に意外なハードル 電力不足の中で原発1基近い使用量が論議に (1/2) : J-CASTニュース沿線向けに始まった説明会で電力消費量の多さが原発問題と絡めて疑問の声が上がっております。当ブログでは以前から指摘してきた論点ですが、やっと世の中が追いついてきました。なるほどこうなると原子力賠償支援機構で原子力推進、改革潰しの立ち回りをしている葛西会長は利害関係者として振舞っているわけで、原倍機構の人選を見直すべきです。
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Comments
3党合意の談合政治によって、増税法案は参議院を通過、可決しました。
一方、復興予算はいまだに5兆円が未執行のまま、あろうことか目的外流用が行われてると言うことです。
どこかの学校の改修工事や沖縄の教育事業とか、更にはもんじゅにも100億以上が転用されているとのことです。
あきれてものも言えませんが、それ以前に、税金の目的外使用が公然と行われていることにいかにいい加減なことがまかり通ってるかが示されていると思います。
一見、違法にも思えるこれらの行為も、恐らく法律の抜け道が用意されてるのでしょう。
こんな調子で本当に財政再建とやらをやる気があるのか、
そんな中での増税が有効に活用されるのか、政府も官僚も全く信用出来せん。
ただ、国土強靭化は必要なのでは?
東北にあったような被害が過去に繰り返して東南海に訪れてきたことは事実なのだろうし、過疎の東北でさえ2万人近い犠牲者と10兆単位の被害があったことを考えれば、それを今の東南海に当てはめれば背筋が凍えるような結果をもたらすことは想像に固くありません。
直接、街が破壊されるとともに、交通の分断による経済的被害もただならぬものになるでしょう。
よく言われるのは浜名湖付近に東海道新幹線、東海道本線、国道1号線の寸断はきわめて可能性が高いと思われます。
それらの被害を軽減する投資がGDP(500兆)の半分以下(100-200兆)というのは意外に安いとも言えると思います。
まあ、利権に食い込もうとする輩は必ず現れるでしょうが、結果的に必要なインフラ等が出来るならこれらの問題は些細なこと。本当に役に立つように監視し、検証し、食い逃げはさせないようにすることは前提ですが、それは強靭化の可否を決める指標にはならないでしょう。
しかし、強靭化から狂人化とは、いつもながらその発想の奇抜さには皮肉たっぷりの風刺がきいて笑わせてもらってます。
Posted by: oyoyo | Friday, August 10, 2012 07:43 PM
コメントありがとうございます。
復興予算の未執行問題ですが、元々の予算が腰だめで多すぎたということです。にも拘らず復興増税までやっちゃったから、適当な理由付けをして流用されているわけですが、メディアはほとんど報じませんね。
通常の年次予算も、腰だめの大目の予算組みをしておいて、余ったから補正予算として使い切ろうとするのは同じですが、財政再建はここから見直さないと無理ですね。
復興関連では構造不況業種のゼネコンが、がれき処理や除染など、手っ取り早く金になる分野に集中した結果、生活道路復旧や移転用地の造成などが滞っている状況で、本来は不急不要の公共工事は全て凍結してリソースを復興に集中しべきですが、逆のことが起きていて、入札がことごとく不調となっていることも、未執行を助長しています。
というわけで、選択と集中の観点から復興に直接結びつかない公共事業は凍結して復興にリソースを集中しべきですが、八っ場ダムや整備新幹線の新規着工など、逆のkとばかりやっているわけですから、復興は遅れて当たり前です。全て悪い方へ向かっています。
そういう意味では国土強靭化計画は全くナンセンスです。しかも新幹線や高速道路を作ることが強靭化になるのか?という点については、実際3.11でも東北新幹線が全面普及に2ヶ月以上要したのに対し、被災を逃れた山形空港が中継点として機能したように、元々新幹線は地震に弱いし、逆に空港は、広い敷地を有するから、簡易宿泊施設や防災倉庫を整備して地域の防災拠点にすることも容易です。
それと、基本的に1,000年に1度の災害に対しては、基本的に完全な対策は不可能です。基本的には避難場所と避難路の確保を優先する以外に方法はありません。この観点からも新幹線や高速道路はあまり意味があありません。
加えて上記のようにゼネコンのリソースを奪うことで復興を妨げることにもなるし、より重大なのは、例えば北陸新幹線で言われる設備の多重化は、平時には低稼働の過剰設備を抱えることになるわけで、経済効率を損ないます。
というわけで、あらゆる意味で「強靭化」は無意味だし有害ですらあります。
Posted by: 走ルンです | Saturday, August 11, 2012 09:59 AM
ご回答いただきありがとうございます。
しかし、強靭化は無意味との認識ですか。
リソースを復興に集中しべきなのに、あっちこっちに手を出して、そのしわ寄せが復興事業に及んでるとしても、
そのことがその他の公共事業の正当性までも失わせるものではないと思うのですが。
選択と集中とおっしゃいますが、足元ばかりもていては良くて現状維持。
中央が被災地の実態を把握し、供給能力や切迫度を勘案して事業の予算配分や優先順位を決めていかなければならないのに、
ただ総花的に事業を押し進める、つまり、戦略も理念もないと言わざるを得ないような国の振る舞いにこそ問題があると思います。
しかしながら、復興事業以外の他の公共事業を抑制しながら、供給能力が上がるのを待ったり、復興事業にはインセンティブを与えることも必要なのかもしれません。
当初の目的であるはずの治水・利水の意義が失われてしまったと考えられる八っ場ダムのような事業については異論はありません。
しかし、整備新幹線が無意味とする理由は何なのでしょうか?
平時においては、新幹線は沿線の行動範囲を在来線の2倍以上に拡大し、地域の経済を確実に持ち上げてきました。
震災直後に機能できなかった一面をもって、無意味と断定するのも拙速すぎるのではないでしょうか?
震災後、山形空港が機能した一方で、浸水被害を受けた仙台空港や松島基地が機能停止し、仙台空港は仮復旧にも1月を要しています。
この例示は、むしろ二重化の重要性を裏付けているとも言えるのではありませんか?
また、震災によって旧来の在来線や国道が軒並み寸断されたのに対し、一部区間で開通していた高速道路はその寸断箇所をカバーし、
震災直後においては救出活動、物資補給に大いに役に立っています。
つまり、これら高速道は地域の命綱となり、多くの人を救ったのです。
従って、少なくとも高速道路が防災対策上意味がないというのは事実を正当に評価してるとは言えないでしょう。
東日本大震災がそれを示しています。
むしろ、このような地域には巨大災害を想定した生命線としての防災道路は不可欠ということがわかりました。
それが必ずしも高速道路である必要はありませんが、どうせ造るなら、平時にも役立つように高速道路とするのは、
経済性を高める上でも当然の帰結と思われます。
もちろん、こと数百年スパンで発生する災害には完全な防災は不可能かもしれませんが、
数十年に一度の災害であればその被害を軽微にすることにもなりましょう。
完全な防災ができないとしても、短期的な経済性に囚われずに、視点を広げてみる必要もあるのではないでしょうか?
「1000年に一度の災害」だから仕方がないといった見方も少なくありませんが、この数字は決して小さな数字ではないと思うのです。
仮に人の一生が100年とした場合、生涯に1000年に一度の災害に遭遇する確立は10%はあるのです。
しかも災害は集中して起こる傾向があることがわかってきており、今現在の切迫度を今一度考える必要があろうかと思います。
北陸新幹線で、多重化が、平時には低稼働の過剰設備を抱え、経済効率を損なうとのことですが、
もともと、この東海道代替論に無理がある一方、単独でも十分成立する旅客流動があるのだから問題はありません。
「非常時には東海道も代替できますよ」というだけであって「非常時のために建設しますよ」というわけではないのです。
単に、東海道の代替機能も果たし得るに過ぎません。
そういった意味では、稼働率が下がるというのは視点がずれているのではないかと思います。
そもそも、こういったインフラは、その波及効果が長期に渡るものの、短期的には小さい(短期では回収出来ない)からこそ公共事業として執行されてきたのです。
短期的な視点、例えば、料金収入だけでは事業費を回収できない、あるいは、他の地域に比べ経済性が劣る、といった理由だけで判断できるものではないのです。
もし、そういった視点だけで判断するなら、長期的な効果や冗長性は考慮されず、結局、失わずに済むものさえ失うことにつながりかねないのです。
結局、沿岸の被災地では高速道路が生命線となり、
また東北新幹線は震災直後こそ機能できなかったものの、平時には地沿線の発展に貢献し、復旧後には大動脈としてその役割を果たしています。
国土強靭化はこれらを一気に整備し、整備による直接効果、利用による経済効果、防災機能強化による減災すべてを達成しようとする野心的な計画でありながら、
十分達成可能な構想ではないかと思いっています。
「基本的に1,000年に1度の災害に対しては、基本的に完全な対策は不可能」とのことですが、街全体が壊滅するような被害ならいざ知らず、
田老町のように10mの堤防を築いても守りきれなかったところもあれば、普代村のように20mの水門にこだわり浸水被害を防いだ地域もあり、
過去に整備された防災設備が機能した事例もあるのです。
「基本的には避難場所と避難路の確保を優先する以外に方法はありません」
というのはなんともお寒い限りではないでしょうか?
やはり、新幹線や高速道路が意味がないとか有害ですらあるとかいうのは、多面的な視点を欠き、正当な評価とは言えるとは思えません。
まあ、しかし、今の国のいい加減な事業の進め方では事業費が確保されても、無駄に費用を費やされる懸念はありますが。
Posted by: oyoyo | Saturday, August 11, 2012 09:16 PM
過去の公共事業は日本が成長期だったために、一見大盤振る舞いに見えても、需要が追いついて格好がついてきましたが、少なくともバブル崩壊後の公共事業の大盤振る舞いの経済効果は確実に堕ちています。
経済学で言う収益逓減の法則ですが、農地の開墾にしろインフラ投資にしろ、資本蓄積が不十分な中ではより経済効果の高いところに投資されますから、高いリターンが得られますが、逆にそうして資本蓄積が進んでくると、より収益の低い投資にも容易に資金が配分される結果、収益逓減が進みます。
国債が大量発行されているにも拘らず長期金利が1%を割る低水準にあるというのはそういうことでして、公共事業の期待収益率の低さの反映と見ることができ、この状態で公共事業を積み増せば積み増すほど、国全体の経済パフォーマンスは低下の一途を辿ります。
この段階で国としてやるべきことは、公共事業を抑制して、民間投資を活性化させるための環境づくりです。その観点から言えば、そもそも種銭を本州3社の新幹線買い取り費用に上乗せして拠出させた資金に依存した上、整備区間の開業後に発生するリース料まで充当する形で資金を拡充されたわけですが、早い話JRの利益を削って建設費に充当し、開業後もJRには恩恵がないという悪魔のような仕組みです。
しかも並行在来線の切り離しをしながらですから、地方から見れば生活圏のモビリティを犠牲にしながらJRの設備更新を助けている構図でして、その限りにおいてJRは恩恵があるので、地方が要望すれば在来線切り離しを条件に話はまとまるという構図ですから、新幹線に素通りされるところの衰退が進みます。そうすれば防災予算もままならなくなるわけで、この辺の問題がクリアにならない限り、整備新幹線の推進はむしろ強靭化に逆行します。
そして日本全体として人口減少局面にある以上、こうして廃れた地域の再活性化はほとんど不可能に近いですから、国土は荒れてますます防災対策が後手に回ります。お金の使い方って大事です。
Posted by: 走ルンです | Saturday, August 11, 2012 11:49 PM
高い成長率であった時代に比べ、、低い成長率の元での投資効果が低いのは当然です。
新規に投資される事業が過去の投資に比べ収益性、経済性が劣る傾向にあるのは事実で
しょう。
しかし、技術革新は多くの不可能を可能にしてきました。過去であれば到底成り立たな
い事業も今日では成り立ってる例は少なくありません。
オイルショックによって原油価格が30倍になれば省エネ技術が発達し、
急激な円高が起きても輸出産業は合理化を推し進め、
近年の原油の高騰によっても、倒産する会社こそあれ、産業自体がなくなることはあり
ません。
投資効果の低下も収益低減も、技術革新や合理化が全く進まなければの話であって、実
際には技術革新等によって一定程度の成長は出来るはずです。
近年の日本経済の停滞は、バブル期のツケと経済政策の失敗によるものでしょう。
日本経済は成長を止めてから20年が経過しており、世界経済が成長を続けている中、GDP
の順位も落としつつあります。しかも、過去に例を見ない長期のデフレが続いています
。
経済政策の失敗というよりはむしろ成長しないように調整してきた疑いさえ持ちたくも
なります。
このような経済状況なので、投資を抑制するしかないとする考えも出て来るのかも知れ
ません。
しかし、日本の預金残高も対外資産も世界一です。
金が余っていながら、資金が投資に向かわず、低金利であっても国債に人気が殺到。
であるなら、それらの資金を活用して公共事業を行い、デフレギャップを圧縮出来れば
、民間投資を促させることが出来、経済を成長方向に転換させられるはずです。
少なくとも、成長率を他の先進国に準じたレベルには持っていけるでしょう。
そして、その公共事業は国民の生命財産を守るものや旅客流動を押し上げるものに重点
的に振り向けることで将来は資産として残ります。
資金は贅潤、国債は超低金利、しかも、現在はデフレ。
通常、公共事業を集中して行えばインフレは避けられませんが、インフレを避けながら
大規模な投資を行うことが可能という、好条件が揃っているのです。
国債が大量発行されているにも拘らず長期金利が1%を割る低水準である理由を、公共事
業の経済性の低下に求めているみたいですが、低金利であっても引き合いがあるのは前
述の通り、単に需要が大きいからです。
期待収益率の低さで説明するのにはちょっと無理があります。
主な買い手の銀行に預金が余る一方、国債よりも有利な投資先がないから国債に人気が
殺到しているに過ぎません。
低金利でも大量に買われていることがそれを裏付けています。
だとすると国債を増発して公共事業費を積み増すことは、投資物件を増やすことになる
だけで、国全体の経済のパフォーマンスとやらへは、経済効果の上積みこそあれ、低下
することはあり得ません。
経済そのものの規模は確実に大きくなります。
国全体の経済パフォーマンスの低下が起こるとすれば、それはその事業が長期的にも経
済効果が見込めない場合に限られます。
公共事業を抑制して民間投資を活性化させるのですか?
現在のスキームでは整備新幹線は開業後のJRには恩恵がないと?
やるならJRが単独で新幹線建設を行えということですか?
運賃収入だけで建設費を賄えるのは中央リニアぐらいなものでしょう。
沿線へ与える経済効果はJRが独占して回収できる訳ではありません。
国と地方が折半し、JRは受益の範囲内でのリース料を支払う。
これに加え、既開通区間のリース料も建設費に投入しようというのが現在の建設スキー
ムであり、まことの理にかなったものです。
JRには恩恵がないという悪魔のような仕組みという認識は見当違いですね。
もっとも在来線の経営分離は問題が多く、見直しが必要だと思います。
都市間輸送が新幹線へ移行する一方、ローカル輸送と貨物輸送は在来線を必要とし、貨
物が維持費が何倍も大きい現状では、その費用を旅客会社のみに負わせるのは酷であり
、上下分離はひとつの方法でしょう。
また新幹線が停まらない駅が衰退するというのはあるでしょうが、それは、近代化の過
程でこれまでも起こってきたことであり、新幹線駅からのアクセスを改善する等で我慢
してもらわざるを得ないでしょう。
そして、その弊害を上回る経済効果が見込める限り、強靭化に逆行ということにはなり
得ません。
人口減少局面な中、廃れた地域の再活性化は不可能ですか。
つまり切り捨てれば良い訳ですね?
まるで企業が不採算部門を整理して見かけ上の利益を生み出すみたいですね。
対症療法を続ける限り、経済はジリ貧が続くことでしょう。
どうやら、走ルンですさんは、整備新幹線や高速道路の長期的な経済効果を考慮しても
建設費には見合わないと見ているようですね。
しかも、これからの日本は成長が見込めず、拡大する見込みもないと考えているのでし
ょうね。
しかし、それでは将来の国民は貧乏確定ではありませんか。
それでいいんですか?
やるべきことは、日本が成長出来なくなっている本当の原因を見つけてそれを除去し、
成長方向に転換させることです。
そして、強靭化の最終目的は日本の経済成長です。
予算が足りないなどと言って公共事業を削減したり、
予算を拡大したかと思えば継続しなかったり、
日銀が意味不明な独自ルールを作って、国債の引き受けを制限したり、
円高なのに、通貨供給を怠ったり、
景気が上向きはじめたら増税したり、
問題がある経済政策は挙げればキリがありません。
国土強靭化ならぬ日本国弱体化が押し進められた結果が今日の閉塞状況の原因であると
私は思っています。
意見がすれ違う原因を私なりに分析していたら、大変長くなってしまいました。
簡潔にまとめることが出来ず、申し訳ありません。
最後になりますが、複数に渡るご回答ありがとうございました。
Posted by: oyoyo | Monday, August 13, 2012 02:37 AM
申し訳ないですが、もう少しちゃんと経済を勉強してください。あまりにも幼稚な議論です。
まず技術革新の問題ですが、経済と技術とは密接に関連しています。というか、技術革新というのは、経済的に評価すれば価格革命に収斂されます。つまり革新的な技術によって資本、労働力、原材料などの投入量を減らしながら既存品と同等以上の価値を生み出すことができれば市場を制圧できるわけで、シュムペーターが言う「新結合」こそがイノベーションの本質です。
例えばiPhoneのように個別技術に目新しいものはないながら、ハードのパッケージやUIやネットサービスや開発環境の公開などと併せて独自の生態系を形成することで支持を受け、新たな市場を創出することも含まれます。
ただし技術革新は常に望ましい形で出現するわけではありませんし、技術革新自体にかかるコストもあります。ですから民間が積極的に技術開発投資をすれば、いかに貯蓄過剰の日本であっても、資金需要から金利が上昇し、ここまで財政赤字を拡大できなかったはずです。つまり研究開発を含む民間の資金需要が冷えている状況であり、貯蓄投資バランスに狂いが生じているわけです。
この辺は別のエントリーで別の形で解説した部分ですが、日本の現状は、古典的な貯蓄投資バランスの理論で整合的に説明できます。またケインズの流動性のわなが生じている状況でもあり、それ故に財政出動や金融緩和などのマクロ経済政策が効かなくなっていることとか、マンデル=フレミング・モデルで財政赤字が為替で調整されて通貨高になってしまうことなども、確認できる事実に基づいて指摘しています。けっしてこうすればこうなる「はずだ」というような机上の議論をしているわけではありません。
蛇足ですが収益低減ではなく収益逓減です。
Posted by: 走ルンです | Monday, August 13, 2012 10:22 PM
改行が乱れてしまい大変読みづらくなり申し訳ありませんでした。
ところで、経済成長の内訳としての一要素として「技術革新」を挙げましたが、それがすべてではないことは当然のことです。望ましい形で出現するとは限らないでしょう。
民間の資金需要が冷えている状況であることも現実でしょう。
しかし、日本の現状は、円高やデフレ下にある近年の環境抜きに説明しきれるものではありません。
少なくともそれらの影響をどう評価するかといった検証は必要でしょう。
流動性のわなが生じて金融緩和による経済政策が効かなくなるとしても、財政出動による効果については意見は分かれており、効かないとする説が有力なわけでもありません。
マンデル=フレミング・モデルについても異論があり、条件が変われば必ずしも成立するものではありません。
タイムラグがあり、そこに個々の人間の判断が関わる経済は、物理現象が理論で説明し得るものとは全く性格が異なるものであり、ある経済理論が有効な場合もあれば、無効になることもある、悪く言えば「当てにならない」のが経済理論とも言えるでしょう。
いずれにせよ「収益逓減」は収益減少にはつながらず、収益総額は増加することは否定できませんね。
確認できる事実に基づき、ある理論に合致したとしても、前提とする諸条件次第では結論が変わってしまうような経済理論に基づく議論はある意味机上の空論とも言えるでしょう。
それとも、理論に当てはめれば幼稚ではなくなるとでも言うのでしょうか?
Posted by: oyoyo | Saturday, August 25, 2012 09:41 PM
えーと、まず技術革新の評価ですが、経済成長の一要素ではあるんですが、偶然出現するものでもないんです。あくまでも市場との対話の中で実現されるもので、昨今言われる日本企業のガラパゴス化というのは、結局市場ニーズと合致しない技術を積み上げてもイノベーションは起きないということの例証です。
もう少し酷な言い方をすれば、技術力に慢心した日本企業はいつしか市場の声が聞こえなくなっているとも言えます。かつて欧米市場を席巻した突破力は既に多くの日本企業では失われており、iPhoneのような新市場を創出し有効需要を生み出せるようなものが出てこないから民間投資の効率が悪化し、それが新たな投資を躊躇させて民間投資を抑制しているというのが現状でしょう。その結果企業は過去の負債を清算し企業貯蓄を増やして、その結果銀行の預金残高を押し上げて、資金余剰を生み出し、運用難から国債に資金が流れるという構造要因があります。
この状況で財政赤字を拡大し公共投資を増やしても、前向きの民間投資を誘発するはずはありませんし、むしろ資本効率の悪化から潜在成長率を押し下げてしまうわけです。
またこの状態で中央銀行である日銀が金融緩和をしても、日銀のバランスシートを拡大するだけで、マネーサプライの増加には至りません。そもそも政府にとって負債である国債は日銀にとっては通貨発行の裏づけとなる資産ですし、政府と日銀のバランスシートを連結すれば相殺されてしまいます。つまり「流動性のわな」というのはこういうことですね。
企業貯蓄の拡大は国全体の貯蓄過剰をもたらしますすから、マクロ経済の恒等式に当てはめれば経常黒字となり円高要因です。少なくとも欧米通貨と並ぶアジア唯一のハードカレンシーである日本円という前提条件からすれば当然の結果です。つまりマクロ経済的には同じ事象の異なる視点からの観察結果としてさまざまな問題があるわけで、この辺の経済構造が劇的に変わらない限り、条件は変わりません。
加えて現在の日本のデフレは、マクロ経済現象としてのデフレとは明らかに異なり、生産年齢人口の減少や賃金の低下などからくるミクロ要因の経済現象と見るべきでしょう。だから日銀券刷っても意味がないわけです。
というわけで、収益逓減は収益減少ではないと強弁されてますが、資本効率が悪化すれば上記のように潜在成長率を押し下げますから、国全体としての経済パフォーマンスは良くなりません。
あと蛇足ですが、物理学でも素粒子の世界では不確定性原理というのがあって、素粒子の位置と速度を同時に特定できないという定理が証明されています。物理学でも時間軸で確実に未来を予言できるのは、ニュートン力学が支配する世界だけです。つまり物質の質量を巡る関係で、今年ヒッグス粒子発見されたらしいというニュースがありましたが、今後更に因果律が支配するニュートン力学と不確定性原理など確率変数が支配する世界の関係にも新たな知見が得られるかもしれません。
期待と同時に、原発事故のように確率変数として微細ながら一定割合で出現する可能性のある事象に対する備えを怠ったというのは、人間の奢りです。経済の世界も確率変数で記述可能な部分が多く、都合の良い部分だけをつまみ食いしようとする人間の浅はかさは大抵裏切られます。
Posted by: 走ルンです | Saturday, August 25, 2012 11:54 PM
日本企業のガラパゴス化とかネガティブな分析なんて探そうと思えばいくらでも探せます。
技術革新が偶然出現しないとか、市場ニーズと合致しない技術を積み上げてもだめだとか、本質にどれほど意味があるのか疑問です。
日本企業の退潮の原因は、急激な円高による企業の事業再構築の過程で工場が海外に移転していったことによる空洞化と、リストラによって、人材の国外流出を招くことによって、短期的には収支を改善しても長期的には日本企業の競争力を奪っていったことが挙げられるでしょう。
一度失ってしまった競争力の回復は至難の業で、より大きな投資が必要にもかかわらず、そのリスクも大きくなるという悪条件の中で、投資が抑制されリストラを繰り返すという悪循環が繰り返されてきた結果、ますます競争力を失い、手っ取り早く既存の資産、つまり、国内向けの商品を世界に売り込もうとしたがうまくいかなかった。
それが、ガラパゴス化と呼ばれているものの実態ではないかと思います。
もっとも、日本企業に慢心がなかったとは言いきれませんが。
そういう視点から捉えるなら、「ガラパゴス化」と呼ばれるものは、長期的視点を欠き、その場しのぎを繰り返した結果と言えなくもありません。
そもそも、投資を怠っておきながら、イノベーションとやらを期待する方が無理な話です。
企業自身が短期的な採算性に囚われず、長期的視点に基づいた投資を続けられれば良いのですが、景気の好転が見通せない中、企業に投資拡大を期待するのは無理な相談です。
そもそも、投資を思いとどまらせる現状、つまり、デフレにある現状を解消しない限りは民間投資の拡大は期待できません。デフレを追認する限りは、いつまでたっても経済は好転できないわけです。
企業の過剰貯蓄(投資されない蓄財)に対しては課税等により投資を促すといった政策も必要かもしれません。
しかし、この状況を改善する手段があるとすればそれは公共投資を増やすこと以外にありません。
直接民間投資を誘発しなくても、デフレを縮小させることによって、民間の投資意欲を刺激できるなら、結果的には、民間投資を促す動機付けにはなるわけです。
また、新規インフラの存在が、長期的には国内の生産性を上げ、資本効率を改善することにもつながります。
これら民間投資が拡大するのであれば、貯蓄過剰の緩和を意味し、円安要因にもなる、つまり、条件は変わるということです。
日本のデフレがミクロ要因による経済現象だとするのも変な話です。
生産年齢人口が減少するならどうして失業者が増加するのか?果たして、雇用のミスマッチで片付けることができる問題なのか?
賃金が低下した分の所得はどうなったのか?それが企業の過剰貯蓄にシフトしていたとして、それが国全体の経済に望ましいのか否か?
日銀券を刷るのと何か関係あるのか?
デフレ状態の現状を追認し許容し続けるのだとしたら話になりませんね。
資本効率の悪化がなんだとかいうのは、その事業が、長期的に見ても投資に見合わない場合に限られ、投資額に見合う事業であれば、確実に経済の底上げにつながり、経済にプラスになるわけです。
これを強弁としか解せないとすれば、公共事業の拡大は、資本効率を悪化させるだけで、経済のパフォーマンスも悪化したままです。
これでは経済成長できないわけですね。
Posted by: oyoyo | Tuesday, August 28, 2012 01:53 AM
えーと、以前にも指摘いたしましたが、事実関係をきちんと調べてください。
まず円高ですが、今の円高が始まったのはいつですか? 2003年から始まった円安が、5年かけて107円から2007年に124円の安値をつけた後反転して円高が進んだもので、たかだか5年の話です。日本企業による海外製造拠点の開発は、90年代からゼロ年代にかけて進んでおり、為替変動とは直接関係ありません。
まして国内製造拠点が海外へ出て行ったというよりも、新興国の中間層台頭で国内市場が活発になったことに対応するものです。
またゼロ年代に輸出が伸びたのは確かですが、同時に輸入も伸びていて、石油など資源価格の高騰と円安で、交易条件はむしろ悪化しています。その結果傾向的に貿易赤字は縮小する一方、過去の経常黒字の累積である対外純資産からの利益配当に当たる所得収支黒字は拡大を続け、2005年には貿易収支黒字額を上回り、以後この傾向は続いていて、2011年度の実績では5兆円の貿易赤字を計上しながら、経常収支で7.6兆円の黒字を計上する実態があります。もはや日本は貿易の国から投資の国へと進化しており、為替変動の影響は小さくなっています。
こんなこと公開された政府の貿易統計を見れば誰でもわかる事実なんですが、未だに円高で国内空洞化みたいなことを政治かも学者もメディアも言っているのが信じられません。彼らにとっては事実は重要ではないのでしょうか?
それからデフレですが、始まったのは90年代後半で、毎年1%程度の物価下落が継続的に観測されており、戦前の昭和恐慌や世界恐慌のように数%と2-3割とかの下落を伴う恐慌型デフレとは明らかに違います。また期間中物価は下がっているのに低率ながら実質で経済成長が続いているわけで、これらの事実だけでも、マクロ経済で起きる貨幣現象としてのデフレとは別物とわかります。また10年以上に亘る長いタイムスケールの出来事であるわけで、為替変動とは無関係とは言いませんが、別の事象と見るべきですよね。
あとこのデフレ期間中に、公共事業による財政拡大はかなり行われたわけですが、効果が出た形跡はありません。長期投資を否定するつもりはさらさらありませんが、投資から実際のリターンが得られるまでの資本の懐胎期間が長くなればなるほど、そのリターン額は金利で割り引かれるわけですから、よほど大きな収益性が見込めない限り、投資として成り立ちません。元々後回しにされた事業ならば収益逓減の法則が成り立つわけですし。
まして時間の経過は当初計画と実需の間にズレを生じて、完成したときにはミスマッチが生じている可能性もあるわけです。いわゆる陳腐化というやつです。例えばせっかく整備した高速道路も完成時は沿道が無人地帯になっていたというようなことですね。これに近い事象は実際に起きています。
あと政府と日銀の関係は既に説明したとおりで、日銀券は勝手に刷れないという説明もしてますし、会計が理解できればわかる(つまり足し算引き算がわかればわかる)政府と日銀の連結バランスシートの話までしてわかりやすく解説したんですけど、ご理解いただけていないようですね。日銀のバランスシートの拡大が経済を扶養させることはないのです。
経済成長はあくまでも生産性の向上によってもたらされるものというのが経済学の基本です。資本効率の低下も失業率の悪化も生産性の低下をもたらします。生産性を高めるには家計消費の拡大や民間投資の拡大が必要なんで、企業がブタ積みした余剰資金を国が借りて非効率な使い方をする限り、事態は悪化するということになります。
Posted by: 走ルンです | Tuesday, August 28, 2012 10:24 PM
事実関係ですか?
円高は85年からですよね。2007年って?
一体、いつの話をしているのですかね?
指摘の通り、空洞化は90年代からゼロ年代にかけて進んでしまいました。
85年からの急激な円高が空洞化をもたらしたのですよ。
この値動きは決定的で工場の海外移転の方向性が決まったといって良いでしょう。
結果、国内消費分さえも、新興国で製造される製品が増えてきています。
それが空洞化と呼ばれるものではありませんか。
新興国の中間層台頭で国内市場が活発になったといっても、現地生産の方向性は変わらなかったわけで、工場の国内回帰をもたらしたわけでもありません。
貿易赤字額は拡大傾向が続いてるとおっしゃいますが、数値を見る限り、黒字が続いています。確かに、2011年度の貿易収支は赤字でしたが、特殊要因(燃料輸入を極端に割高な条件で行っている)がありますし。
そもそも、所得収支が貿易黒字額を上回ってるとしても、輸出額自体はその何倍もあるのに「終には貿易国家から投資国家に変わった」などとは見当違いではありませんかね。
それに所得収支は、工場の国外移転が進めば増える性格のものなんだし、その増加は空洞化によるものも含まれるので、決して、手放しで喜んでられるものでもありませんね。そして、「こんなの公式資料をみればわかることなのに」って、まるで、根拠がないと言わんばかりですね。
デフレについてですが、戦前の恐慌と比較して物価下落の大きさが違うのは事実ですが、だからと言って、恐慌型デフレとは違うとか、貨幣現象とは別物だとか、何が関係あるのでしょう?
そもそもデフレギャップが存在しているからこそ物価は下がるのだし、潜在成長率が需要を上回る限りはデフレと経済成長が同時に起こっても不思議ではありません。
あと、デフレ時の公共事業の効果はなかったとの事ですが、公共事業費は1996年をピークに2008年にかけてほぼ半減化され、80年代と比較しても7割以下にまで削減されており、デフレが続いている現状は、「削減」の悪影響をはっきりと示していますね。
一方、公共投資がピークだったバブル崩壊直後から1994年にかけては、バブルの反動を抑制して著しいマイナス成長を回避することに成功したとも解釈できますし、どう考えても公共事業の効果がなかった根拠にはなりませんね。
それにしても「よほど大きな収益性が見込めない限り」って、どの程度の収益性を求めているのですか?
「完成時は沿道が無人地帯になっている高速道」って?
整備新幹線も、高速道路も、新規区間は元本割れするに決まってると確信してるわけですね。
政府と日銀の関係も、「日銀券は勝手に刷れない」とか、「バランスシート拡大がマネーサプライに影響がない」だとか、日銀の政策を代弁してるだけではありませんか?
「足し算引き算がわかればわかる」などと、何気に煽ることも忘れてないようですが、
経済状況に合わせて政策も変更すればいいだけのことです。
資本効率が下がるのはまずいからと、公共投資の抑制を続けたところで、デフレが続く限り、民間投資が抑制されることはあっても増える要素はほとんどありません。
失業率も悪化したままです。
「企業がブタ積みした余剰資金を、国が非効率な使い方をする」などと、非効率な公共事業と有用な公共事業を同一視していると、事態が好転できるチャンスまでも失ってしまうだけですね。
新幹線や高速道路は潜在需要を引き出すことなどによって経済効果をもたらし、堤防や耐震化等は国民の生命、財産を守る。
その費用が200兆円って、500万円の年収の人に例えれば200万円。
必要な投資だし、十分負担できる範囲。
出したくなければ貧乏になって災害に巻き込まれて財産を失い、たった40万人が死ぬだけです。
列島強靭化は非効率だから、日本経済の(一層の弱体化の)ためにも、やめましょう。
これからも、どんな詭弁的経済理論が展開するか、楽しみにしています。
Posted by: oyoyo | Monday, September 17, 2012 02:29 AM
85年から始まった円高は87年で終わってます。しかもこれはG5のいわゆるプラザ合意による協調介入の結果であり、2年間で250円台から120円台まで倍増という急騰ぶりでしたが、これが原因で海外移転したケースは多くありません。
当時はむしろ廉価品の評価だった日本製品は高級化路線へシフトして、単価を上げて対応しました。トヨタがレクサスブランドを投入したのもこの頃です。
その後87年のルーブル合意で行き過ぎたドル安調整でドル円レートは150円近い水準まで戻してます。その後も数年単位で円高、円安のトレンドが続く傾向があります。為替が短期、中期、長期でそれぞれ異なった要因で動く結果です。だから今の円高局面は2007年が起点で過去の円高局面とは直接関係ありません。そもそも超長期の変動で捉えるならば71年のニクソンショックからですが、それだと日本企業の生産拠点海外移転と円高の関係が曖昧になりますよね。物事都合の良い部分だけを切り取っても意味がありません。
あと「流動性のわな」に関する説明は新エントリーで行っておりますので、そちらに譲ってここでのやり取りは終わりにしたいと思います。
Posted by: 走ルンです | Tuesday, September 18, 2012 12:32 AM
円高が2年で終わっただなんて、日銀みたいなことをおっしゃりますね。
その後、以前の水準に戻ったわけでもないのに、円高は87年で終わっただなんて、その時点で、支離滅裂ですよ。
240円台から120円への変動に比べれば、その後の150円前後の水準への回復なんて、どれほどの意味があるのでしょう?(円安には違いませんが)
また、高度経済成長下にあった時代における円高を持ち出すかと思えば、
円高については2007年以降に矮小化。
物事の都合の良い部分だけを切り取るとは言ったものです。
Posted by: oyoyo | Wednesday, September 19, 2012 01:48 AM
貴方の無知がバレバレでイタいからやめましょうとご提案申し上げたんですが、まだ続けますか。
繰り返しますが85年の円高局面はプラザ合意に基づく協調介入の結果です。協調介入ですから日本を含むG5諸国で為替水準が均衡水準からずれているという意識が共有されていたということです。
それが行き過ぎたから87年のルーブル合意で逆方向の協調介入が行われました。当然プラザ合意以前の為替水準は不適切だったわけですから、元の水準に戻らないのは当たり前の話です。
加えてこれ以後協調介入は行われていませんから、少なくとも主要国で為替水準に関する不均衡という意識は共有されたことはありません。実際上がったり下がったりが繰り返されていて、経済情勢を反映して変化したものと見るのが自然です。
これ以上イタい議論をしないためにも、せめて85年以降の為替相場の推移を調べてからにしてください。
Posted by: 走ルンです | Wednesday, September 19, 2012 10:33 PM
「貴方の無知がバレバレでイタいからやめましょう」とか、
相変わらず、走ルンですさんのうぬぼれと思い上がり満載の書き出しですね。
そして、煽ることも決して忘れてはいません。
プラザ合意後については、その為替変動が行き過ぎていたことは、その後の逆介入の実施からも想像でき、各国がその認識を共有していたことを窺わせます。
しかし、その水準については各国の思惑もあり、その後の為替水準を見ても日本にとっては不利なものであったことは否定できません。
円は逆介入の後も上昇を続け変動率は下がりながらもその傾向は89年まで続いています。
その後の各国の思惑は、多少でもドル高は許さないが円高は行き過ぎてもOKということだったのでしょう。
そのような背景を考慮すると、その後協調介入が行われていないからといって、適正水準だったから介入がなかったと断定できるものでもないでしょう。
「プラザ合意以前の為替水準は不適切だったわけですから、元の水準に戻らないのは当たり前の話」などというのは、まさに詭弁の典型ですね。
もっとも、日本がその是正に積極的に取り組んだ形跡は見当たりませんが。
いずれにせよ、プラザ合意なる協調介入後の為替変動が日本の輸出環境を変え、その結果、工場の海外移転が進んだことに変わりはありません。
あと、何か早とちりしてるようですが、協調介入等の特殊要因を別とすれば、為替水準の変動が経済情勢を反映してることを否定はしてませんよ。
Posted by: oyoyo | Thursday, September 20, 2012 10:36 PM
あれ、87年からの逆介入で相場が戻ったことは認めるんですか。そうすると円高が85年からずっと続いているというところと矛盾しませんか。
ま、揚げ足取りするつもりはありませんが、相場はあがったり下がったりしてるわけで、しかも85-89年は協調介入による特殊要因であるわけですから、90年以降の為替変動とは明らかに条件が異なるわけで、85年からひと続きというのはウソといういことですよね。
協調介入に意義にしても、日本にとっての有利不利より、国際決済実務上、相場が不適切ではいろいろ不具合が出るということで協調介入の必要性の認識が共有されたのであって、そもそも為替相場を人為的に誘導すること自体は不可能ですし、敢えて行うと通貨切り下げ競争となって近隣窮乏化で戦争への道というのが大恐慌から世界大戦までの歴史の教訓です。
あと日本企業の海外製造拠点は国内をたたんで移転した事例はないはずです。むしろ冷戦終結や新興国の所得水準向上などを睨んで市場拡大に備えた生産の拡大なんで、結果的に量産効果で国内工場の競争力まで高まったり、下請け部品メーカーの場合は国内だと系列の縛りでなかなか受注を増やせない中、海外で獲得した系列外の取引先から国内取引の引き合いが出たりする事例も珍しくありません。むしろ海外工場を展開する企業ほど国内雇用を守っている実態すらあります。空洞化論は実証的には疑問が多いのです。
Posted by: 走ルンです | Saturday, September 22, 2012 01:10 AM