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Saturday, June 30, 2012

Suica甘いか消費税

消費税増税法案が26日、衆院を通過しました。小沢氏ほか造反議員の民主党離党問題で揺れていますが、おそらく時間の問題でしょう。何もしなければ会期延長で9月8日に伸ばされてますから、参院の審議が止まっていても、60日条項で参院で否決されたと見なして、衆院で自公と合わせて2/3以上で再可決できますから、造反組は離党して内閣不信任を突きつける形でしか政権を揺さぶれないわけです。案外無いと思われていた解散総選挙もあるかもしれません。

といった政局絡みの話題は置いといて、今回の消費税増税のデタラメぶりはひどいです。一番頭にくるのが景気条項を逆手に取った補正予算編成です。

税収上振れで補正予算検討へ 今秋にも  :日本経済新聞
予算自体が財務省丸投げで編成されており、元々歳入を保守的に査定していますから、毎年必ずといって良いほど税収上ブレは起きます。それを補正予算に充てることで、当初予算で減額、却下されたものに箇所付けすることで、他省庁と政治家を手なずけるというのは自民党政権時代から繰り返されておりますが、予算が余ると消費税増税の必要性に疑義が生じるわけですから、力業で使い切ろうとしたというのが本当のところです。

しかしこのところ予算の使い残しが増加傾向にあることもまた確かなところで、昨年復興増税までして確保した震災復興予算も余っております。

11年度復興予算、4割が未執行=事業、想定通り進まず―復興庁 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
これも補正予算の財源に回されるとすれば、ますます増税は何のためかが曖昧になります。震災復興に関しては人手不足と重機不足でことごとく入札不調が続いている事が指摘されてますが、バブル崩壊以来の構造不況業種である建設業は人材の補充も重機などの設備投資も控えられていた中で、がれき処理と除染の国庫負担で青天井の特需にリソースが張り付いてしまっているわけですから、生活道路の復興や高地移転に伴う造成工事など被災地の生活再建に欠かせない工事ほど滞っているわけで、むしろ復興増税の裏づけが問題を引き起こしているわけです。早い話が増税しても使い切れなくなっているわけで、ますます消費税増税の意味が理解できない状況が症状として現れているわけです。

ちなみに巷間「このデフレ不況のときに増税すべきでない」という議論には私は基本的に与しません。この論点だと消費税増税法案に盛り込まれた景気条項を理由に財政出動で景気底上げという倒錯した議論を止める手立てが無いわけで、むしろ害があります。例えば前エントリーで指摘した日本列島強靭化計画は、提唱している学者は消費税増税に反対していますが、基本的に公共事業主体の財政拡大派ですから、今のように公共事業の大盤振る舞いが続けばそのうちに主張を変えること間違いありません。本来は年金など社会保障改革に道筋をつける中で議論されるべき問題です。

といった小難しい話はさて置いて、鉄道分野では運賃改定という頭の痛い問題が横たわります。実はここ数日Twitter上で「Suicaシステムで消費税ベタ打ち」というネタが拡散しました。そのネタ元はこちらです。

消費増税法案が衆院可決、JR東のスイカ、IC乗車券、改修に1年。 | NFC & Smart WORLD
記事中の記述に変な部分があって、いろいろ憶測を生んだようですが、基本的には消費税転嫁を織り込んだ運賃改定ですから、運賃テーブルの変更だけで対応可能だと思うんですが、膨大なサブシステムの中に変なのが紛れ込んでいる可能性までは否定できないところです。

とはいえ通常の運賃改定でも、システムのデバッグやテストを周到に行うには1年以上前から準備が必要で、当然コストもかかります。加えてICカード乗車券システムが全国で広範に共通化されているわけですから、作業手順はかなり複雑化しているはずで、鉄道会社の本音としては小刻みな消費税増税は勘弁して欲しいところでしょう。まして今回の法案では増税実施の判断は半年前にその時点の内閣が閣議で決定することになっていますから、決まってから作業を始めたのでは完全に間に合わないわけで、あらかじめ準備を先行させる必要があり、それが無駄になる可能性もあるとなると、システム担当者は泣きたいでしょう。

というわけで、こうなると「消費税は経済活動に中立的」という議論は怪しくなります。以前から輸入戻し税問題は指摘されてきましたが、その他にも広告や楽曲や電子書籍の海外ネット配信の非課税問題なども指摘され、これは流石に財務省として課税を検討するようですが、実効性のある具体策が出せるかどうかは微妙です。音楽ネット配信の違法ダウンロードに刑事罰を課す法律も通っており、それを避けるユーザーも現れるでしょうから、日本がネットの空洞化に悩む事態もあり得ます。笑えるけど笑えない話です。

Google walletやiPhonやWindows8などネットの世界ではNFCの話題が旬ですが、NFCの元祖であるはずのソニーのフェリカシステムは忌避されています。それもこれもフェリカシステムをドコモに身売りしたソニーのビジネス感覚のなさです。現在世界規格についての話し合いが進行中ですが、成り行き如何では国内で普及したフェリカシステムはそっくりガラパゴス化する可能性もあります。つくづくソニーのビジネス勘の悪さが悔やまれます。加えてSuicaなど交通系カードもシステム更新時に世界標準に合わせざるを得なくなる可能性もあります。とはいえ現状のように多数の事業者が別々に運賃の認可を受けて乗継割引など複雑な運賃制度が並存する日本ではフェリカ以外のシステムで対応できるかどうかはわからないわけですが、そのために世界標準システムに比べて割高になることを乗客に理解を求めるのもハードルが高い気がします。

というわけで、消費税増税に伴うシステム投資の負担は鉄道事業者には頭の痛い問題になる可能性は高いのですが、この際逆に良い機会なので複雑な運賃制度をシンプルに改める事も考えて欲しいです。例えば世界の大都市で当たり前のように導入されている運賃連合による運賃一元化などです。極端なこと言えば例えば東京山手線内+大江戸線環状部を第1ゾーン、都区内を第2ゾーンとして第1ゾーン内300円、第2ゾーン内200円、両ゾーンにまたがる場合400円として、郊外部路線との間には個別に連絡運輸運賃を設定するというような形にすれば、各事業者は自社線内と都心ゾーンとの連絡運輸運賃のテーブルを管理するだけで良くなり、システム上はシンプルになります。こういうことを考え実現する方が、九段下のバカの壁が取れたとはしゃぐより遥かに乗客の利便性を高めると思うのですが。なお、第1ゾーンを高く設定しているのは、交通インフラの集積があり利便性に差があることと共に、渋滞税の考え方で、進まない混雑解消のための設備投資の原資とする意味もあります。ですから実現のためには鉄道事業法の改正により、特特法で認められている設備投資のための無税積立を拡大し恒久化する必要はあります。猪瀬某にはこのような発想はありませんが、例えば著書で指摘した東西線の混雑に対しては、運賃を上げることで解決するのが資本主義時市場経済下では素直な解決策です。

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Comments

>フェリカシステムはそっくりガラパゴス化
一応NFCはFeliCaの上位互換とされているので、NFC搭載機器(FeliCa非対応)でFeliCaのICカードの情報を読み取ることは可能です。SuicaでNFC搭載スマホにタッチすると乗車履歴が出てくるアプリが既に実用化されています。FeliCaがNFCと完全互換ではなく国際標準から外れることで、コストや利便性の面では不利ですが、逆にセキュリティの面では強みにもなります。たとえば、企業では内部統制を強化し、Suicaの社員証一枚でNFC搭載パソコン・スマホのログイン認証から通勤定期券の不正利用防止まで一元管理が可能になるかもしれません。スマホとICカードに分離されているため、情報漏洩リスクの分散になります。アイディア次第でNFCとFeliCaを組み合わせた画期的なサービスが生まれる可能性があります。

>運賃連合による運賃一元化
山手線圏内300円は高すぎでしょう(笑)。
山手線に1駅乗っても半周しても同じ運賃なのは公平性に問題があると思います。首都高が距離別料金に移行したのとは逆の考え方ですね。

自動改札やICカードの普及でシステム化が進み、運賃の複雑化はそれほど大きな問題ではないと思います。京成が本線とスカイアクセス線で運賃を分けたのもそういった背景があるからでしょう。

むしろ、鉄道事業者の裁量で値上げを含めて柔軟な運賃設定を認めた方が良いと思います。その上で会社間乗り継ぎの通し運賃化(JR各社間の乗り継ぎのようにする)など一定ルールや規制をかけることで利便性の向上につながります。

>東西線の混雑に対しては、運賃を上げることで解決
これは賛成です。
鉄道の運賃制度は経済合理性に反して、ラッシュ時は通勤通学の定期利用客が多く、単価が昼間より低くなってしまいます。
定期運賃を割り引く代わりにピーク時の改札を制限する「オフピーク定期券」を新設するとか、逆に通常のIC定期でピーク時に改札を通過すると加算運賃を徴収するのも1つの手かもしれません。定期券の利用を平日に限定する代わりに、休日は定期券所有者の家族全員が割引運賃で利用できる制度があってもいいと思います。

Posted by: yamanotesen | Friday, July 06, 2012 at 11:56 PM

急所を突いてきますね(笑)。

ガラパゴス化の問題はコスト面の問題と言い換えても良いでしょう。ただしICカード乗車券に関しては、乗客側に選択の余地はなく、高いコストを負担させられるわけですから、それを是認できるか?という点は指摘できます。

加えて新興国へのインフラ輸出で圧倒的に不利になる点も指摘できます。

アジア地域の都市鉄道では無賃乗車が横行していて、屋根上に乗ったり手すりにしがみついたりして、事故の犠牲者も出ています。それでも混雑する現実の前で手の打ちようがない中で、確実に運賃を収受できる仕組みを含めたトータルシステムで売り込むときに、コスト問題は無視できません。

JRや私鉄でせっかく世界へ打って出ようという機運が出てきた中で、最初からハンデキャップを背負うことになるのはどうかと思います。

運賃一元化に関してはかなり説明を省きましたが、ゾーン運賃制は均一運賃に近い仕組みですから、ある程度高い価格設定にはなりますが、一定時間内の自由乗降とセットならば是認されるのではないでしょうか。例えばゾーン内1時間、2ゾーンにまたがる場合2時間のタイムリミットを設けるわけです。

当然時間内ならば途中下車可能で、乗換指定駅も意味がなくなりますから、複雑な経路特定はいりません。運賃分配は自動改札の入出場記録の集計で大数の法則で極端なケースは相殺されますから、システム自体もかなりシンプルになり、結果的に間接経費が削減されます。

また運賃テーブルの複雑さゆえにフェリカ縛りから抜けられないということもなくなり、安価な国際規格のNFCが導入可能になります。あと以前のエントリーで指摘した運転抑止時の振替輸送のマンパワー浪費やバックオフィス業務も不要となります。ざっと思いつくだけでもいろいろメリットはあり、バカの壁がどーしたみたいな議論よりもマシです。

あと首都高の距離制料金ですが、ETC限定ということで、こちらもガラパゴス化しているETCの普及が狙いです。現金利用時の一律900円自体は、ロードプライシングと考えれば妥当な水準だと思います。

ピーク時の混雑解消にはいろいろな事を考えないといけませんが、既にある特特法の仕組みを恒久化することは考えて欲しいですね。オフピーク定期なども手ですが、話が拡散してもなんですから、ここでは都心アクセスに対するアクセスチャージで過度な集中を抑制しつつ、得られた超過利潤を改善投資に振り向ける仕組みという提案をさせていただきました。都市交通の問題は多岐に亘ります。

Posted by: 走ルンです | Saturday, July 07, 2012 at 11:06 AM

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